森岡正宏の発言 (憲法調査会)
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○森岡委員 私は自由民主党の森岡正宏でございます。
憲法改正を前提として、二点申し上げさせていただきたいと思います。五分程度お願いいたします。
第一は、人間の安全保障という理念についてでございます。
私は、九月に、本調査会の中山会長を団長とするOECDの拡大議員会議に加えてもらって、出席してまいりました。OECD加盟三十カ国のほとんどの国は欧米の先進国であり、金持ちクラブという感じがいたしました。アメリカで起こった同時多発テロの直後でありましただけに、各国代表は、テロリストを生む土壌は貧困と教育の低さにあると異口同音におっしゃっていました。そして、今回のテロは文明社会への挑戦だということもおっしゃいました。
ところが、その後、日本に帰りまして、イスラム諸国二十四カ国の大使のお話を聞く機会を得ました。すると、その中の一人が、アメリカも日本も一緒になって、今回のテロは文明社会、自由社会に対する挑戦だと言っている、イスラムは世界の人口の六分の一を占めているんだ、私たちの社会は皆文明社会、自由社会ではないのかと強い口調でおっしゃいました。
私は、はっとしました。私たち日本人は、同盟国であるアメリカとの関係を最も大切にしていかなければならないということは当然でございます。しかしながら、欧米諸国と同じ視線で物事を見ようとし過ぎているのではないか、もっとイスラムの社会を知らねばならない、この人たちの気持ちを理解する努力が足りなかったのではないかと私は率直に思いました。冷戦後の新たな秩序を求め模索が続く中にありまして、また今回のテロが起こったことによりまして、世界で起こる問題は、超大国や先進国だけの力で解決できるものではないということを知らされました。
私は不勉強で、今国会、本調査会で質問の機会を与えていただくまで、人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーという言葉すら知りませんでした。人間の安全保障とは、人類が、環境問題、紛争、国際組織犯罪、貧困、難民流出、人権侵害、感染症、対人地雷等、さまざまな脅威に直面する中で、人間一人一人の生存、尊厳に対する脅威への対応を強化すべきとの考え方であります。
世界は、二十一世紀に入り、ますますこの人間の安全保障が求められる時代に入ってきているように私は思います。新しい憲法をつくり、この人間の安全保障という理念を明確に位置づけ、世界の中でもっともっと日本が大きな役割を果たすべきだと私は考えます。
もう一つ私が申し上げたいことは、家庭というものをどう考えるかであります。
戦前までありました家の制度がなくなり、現憲法下では法のもとの平等がうたわれ、民法には子供の均分相続が定められております。
戦後日本の半世紀を振り返りますと、個人主義が行き過ぎて利己主義となり、義務を果たすことよりも権利意識ばかりがはびこるような世の中になってまいりました。社会の一番小さな単位である家庭の中でも、個人の権利が優先され、家を守る、墓を守る、老親の介護をすることなどだんだんと疎ましく思われるような社会になってまいりました。そして、女性の中には、働きに出る人たちが多くなって、夫婦別姓を望む声も強くなっているようであります。子供が十八歳になったら家族の解散式をやろうなどと言う国会議員があらわれたりしている現状を私は悲しく思っております。
今、選択的別姓が論じられておりますけれども、私は、夫婦別姓が親子別姓、兄弟別姓を生み、家族のきずながだんだん弱くなる日本社会になっていくと心配しております。
自分で自分の氏、姓を選べない子供のことを何も考えないで、大人が身勝手に議論していることも問題であります。おじいちゃん、おばあちゃんが、自分と同じ姓の孫とそうでない孫とを差別するような問題も生まれてくるでありましょう。また、どうして僕はお母さんと別姓なんだ、愛されていないんだと悩むような子供もできるでしょう。そして、何よりも夫婦の結婚、離婚がルーズになり、事実婚のままで入籍しない人たちがふえてくるでありましょう。
旧姓を名乗っていたいというキャリアウーマンや、家名が絶えるという人を救済する例外的な措置は別途考えるとしても、私は夫婦別姓の導入には慎重であるべきだと考えております。それよりも、民法を改めて、家を守り、墓を守る人、親の介護をする人には相続で恩典が与えられるようにすることが先決ではないでしょうか。
そして、現憲法には婚姻や夫婦に関する規定はあるものの、社会生活の基礎単位としての家庭について何の定めもないこと、これが私は問題だと思っております。夫婦が家庭の中心であることは否定しませんが、家庭はほかに親や子供をも含んで構成されているものであり、家庭生活が円満であるよう、憲法には、国は、家庭を尊重する、これを保護しなければならないという規定を置くことを主張するものであります。
以上でございます。ありがとうございました。