首藤信彦の発言 (憲法調査会)
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○首藤委員 民主党の首藤信彦です。五分ということなので、限られた時間で三点ほど意見を述べさせていただきます。
私はもともと経済の出身なんですが、経済学の中にマーケットフェイリア、市場の失敗という概念がございます。例えば環境問題のように、市場が十分に機能しない、あるいは市場に任せられない、そういった状況を市場の失敗と言うわけですが、もちろん経済的な考え方を憲法にそのまま移すわけにはいきませんが、ある意味においては憲法も、憲法の失敗というような考え方があるのではないか、そういうふうに思っております。それはすなわち、現在起こっているさまざまな問題、そして起こり得るであろう問題に対して対応箇条が不存在である、存在していない、あるいはあっても十分に現在の問題をカバーしていない、そういった問題があるのではないかな、そういうふうに考えております。
どういう問題があるかということですが、限られた時間の中で三点ほど意見を申させていただきます。
第一は、安全保障の問題です。これはやはり、冷戦構造崩壊後の世界システムの大変容に対応していないということはだれの目にも明らかだと思っております。
現在の安全保障の考え方は、一六四八年、ウェストファリア条約によって、国家以外の組織が戦争をしないということを前提として成立しているわけですが、そうした安全保障の国家中心の考え方は現在さまざまな形で挑戦を受けております。
世界で蔓延する難民や移動する人口の問題、地域紛争の問題、あるいは低強度紛争と言われるLIC、ロー・インテンシティー・コンフリクトと言われるんですが、そうした問題。そして、テロリズム、あるいはだんだんと深刻化している麻薬や重大犯罪。こうしたものを考えますと、我々の安全保障というものはより広域的なものに考えなければいけないし、またその主体も国家中心だけの問題ではないし、いわゆる人間の安全保障と言われるように、私たち人間一人一人の安全保障の視点からこの問題を再構築していかなければいけない、こういった問題に今の憲法は十分にこたえていない、そういうふうに考えております。
第二点は、やはり危機管理の視点がどうしても必要となってきているという点であります。
それは、私たちの現代社会を取り巻くものに非常に多くの巨大リスク、今までとは考えられないほどの巨大なリスクが私たちの市民社会を襲うようになったからであります。例えばグローバル経済あるいは近代化、近代技術、こうしたものが巨大なリスクをもたらすということがわかってきたわけでありまして、これに対しては、やはりそういう危機的な状況に対して、それを単に超法規的に対応するのではなく、一定の手続を明確化させていく必要があるのではないかと思っています。
私の意見の第二点は、世界全体システムの問題であります。
既に多くの委員から指摘されていますが、地球環境の劣化の問題、あるいは、ますます貧困が蔓延し、難民が多くなっているような現状、そしてまた、それを管理しようとしている国連などの国際機関、そしてさらに、そうした世界全体のものではなく、より地域的な対応をしていこうという地域機関との関係が今の憲法では明確ではない、そういうふうに思っているわけであります。こうした問題に関して、日本がどのように関係を持ち、またどのように貢献していくのか、こうした視点を憲法にも盛り込んでいく必要があると思います。
そして、第三点目は、国家と市民社会との関係であります。
先ほどから、憲法八十九条、私学助成の問題などが取り上げられていますが、さらに、最近ではさまざまな市民社会組織、例えばNGO、NPOというものが現代社会において欠くべからざるものであるとして市民権を得ています。例えば、アメリカにおいても、USAID、アメリカの公的な援助機関が、その資金の半分をこうしたNGOを通して現実の援助を行おうとしているように、国家がそうした市民社会組織と直接に契約し、直接に協力して世界の問題に取り組んでいく、こうした姿勢が世界でだんだんと広がっております。
その意味で、市民社会組織、国家と個人の中間にある組織も憲法の中においてきちっと明確化して、そうした問題にどのように取り組んでいくのかを我々も研究していく必要があると思います。
以上で終わります。