木川真の発言 (国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会)

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○木川参考人 富士銀行の人事部長の木川でございます。本日は、こういう席にお呼びいただきまして、まことにありがとうございました。
 九月十一日に米国で起きました同時多発テロ、これで実は私ども富士銀行も多大な損害をこうむっております。そういう被害の状況を織りまぜながら、私の意見を少し申し述べさせていただこうというふうに思います。
 その前に、今回のテロ被害に当たりまして、きょう御参加されている皆様方を初め極めて多数の皆様方から、温かいお見舞いの言葉をちょうだいしております。この場をおかりしまして、厚く御礼を申し上げたいというふうに思います。
 それでは、まず、ニューヨークにおける私ども富士銀行及び私どもの現地の関連会社等が受けました被害の状況について御報告を申し上げたいというふうに思います。
 私どものニューヨーク拠点は、業務量が非常に大きな、私どもの海外の拠点の中では最大の拠点でございまして、行員が約七百名、そのうち日本からの派遣行員が百十七名という陣容でございまして、今回テロの対象になりました二つのワールド・トレード・センターに勤務をしておるというふうな状況でございました。
 今回の事故では、日本からの派遣をした行員が十二名、それから現地で採用をした行員六名、合わせて十八名、それに加えまして、今度みずほ統合でたまたま当行のオフィスに来ていた日本興業銀行の現地の幹部社員の方一名、合わせて十九名がみずほフィナンシャルグループとしては行方不明になられてしまった、こういう状況にあります。そして、現在のところ、一名の方の御遺体が発見をされているという状況でございます。
 当日の状況につきましては、もう皆様方、マスコミの報道等で御存じだとは存じますが、私の方からも簡単にちょっと御報告だけさせていただこうというふうに思います。
 現地時間の九月十一日の朝早い時間でございましたが、二つのワールド・トレード・センタービルに二機の旅客機が激突をしたということでございます。
 最初に激突をしたのは、北側の方の、我々ワンワールドと言っていたビルでございまして、このビルの四十八階から五十階に第一勧業銀行のオフィスがございます。そこに実は私どもの行員が約百五十名勤務をしておりました。そして、彼らについては、幸いにしてというか、たまたま激突をした場所がかなり上層階でございましたものですから、全員が難を逃れることができたわけでございます。
 その一方、その直後に二機目が激突をした南側の方のツーワールドというビルでございますが、そちらの方には私どものメーンオフィスがございまして、約五百五十名の行員が当時勤務をしておりました。そして、その全員が最初のビルに激突をしたその直後から避難を開始しまして、ほとんどの行員は無事に避難し終わったということでございました。
 しかしながら、私が聞いた情報では、避難の途上で、外に出るのは危ないんだ、北側のビルの事故であって、南側のビルは安全だというふうな館内放送が流れたようでございまして、それを受けて、実は行方不明になった方々は避難をそこでやめて銀行のオフィスの方に戻っていったというふうな目撃情報を私自身聞いております。その後間もない、九時三分というふうなことを言われていますけれども、二機目の旅客機が私どものオフィスのちょうどその付近に激突をしたわけでございます。
 行方不明になったほとんどの人間というのは、私どものニューヨークの拠点における幹部社員でございまして、彼らはその館内放送を受けて、責任感からだと思いますけれども、オフィスに戻ったというふうに考えられますけれども、同時に避難をしていた連中は全員無事に避難し終えているということを考えますと、その彼らの行動が今の時点では大変悔やまれるというふうに思えてなりません。
 一機目の激突の直後に、私ども現地から東京サイドに第一報が入りました。それを受けて、当行の東京の方に緊急対策本部を設置いたしました。私どもの副頭取、平出という副頭取がその委員長を務めまして、行員の安否確認、それから情報収集というのを開始したわけでありますけれども、現地も大変混乱をしておりまして、もちろん東京サイドも混乱をしていたのですが、そういう中で、電話も通じにくいということで、結果として、行方不明者が何名であるのかということを確定するのにも時間がかかるというふうな状況でございました。
 その後も、行員の安否確認というのを大前提、最優先の課題としまして、現地の病院などにニューヨークにいる行員を総動員しまして回らせまして安否確認というのを続けてきたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、御遺体が確認できた一名を除いて、今時点でもその他全員が行方不明のままというふうな状況になっておるわけでございます。
 次に、業務関係でどんな状況であったかということを御報告したいと思います。
 まず、ビル自体が崩壊をしてしまったということで、私ども、メーンオフィスが全くなくなってしまったというのが最大の被害ということになります。ただ、業務上の観点でいいますと、幸いにしてコンピューターのシステムにつきましては、去る九三年に、皆さん覚えていらっしゃると思いますけれども、同じトレードセンターのビルに爆破テロがございまして、そのときの教訓で、ハドソン川の対岸にございますニュージャージー州に、私ども、コンピューターセンターを改めてつくりまして、そちらの方でコンピューターが作動しておりました。その結果、いろいろな業務データというのは完璧に残っておりまして、お客様には余り御迷惑をかけないような最小限の時間で復旧が一応できたということは不幸中の幸いだったというふうに思います。
 ただ、私どもにとってかけがえのない多くの幹部社員、これが依然として行方不明になっているということであるとか、メーンオフィスがなくなったということで、日本のお取引先の会社さん初め、多数の会社さんからオフィスを提供したいというお申し出をちょうだいし、その中で、今現在間借りをさせていただきながら、複数のオフィスで営業をしておるわけでありますが、その関係で、現地採用の行員のかなりの人数がまだ自宅待機を強いられているというふうな状況にございます。そういう意味では、業務遂行上、まだまだ大変厳しい状況にあるというのが現実でございます。
 実は十月九日、つい先日でありますけれども、当行は現地におきまして、メモリアルサービスという現地の慣習にのっとったセレモニーを開催いたしました。それに私も参加をいたしまして、実は一昨日戻ってきたばかりでありますけれども、そのときに見た状況、聞いた状況、これを踏まえてそのときの印象を申し上げますと、現地で見ました被害の大きさというのは、もう予想を超える、テレビ画面で見たものとは全然違う、まさにそれを見た瞬間、私、茫然といたしましたけれども、そういう印象を持ったと同時に、やはり人のメンタル面での問題、これが実は極めて深刻だというのが率直な印象でございました。
 行方不明となっている行員の御家族の皆様方のみならず、危うく難を逃れた行員の生々しい話を直接聞きましたけれども、彼らが受けた心理的なストレス、その影響ははかり知れないぐらい大きかったというふうに思います。事故直後から、銀行としては、そういうメンタル面でのケアについてはできる限りのことをしようと思いまして、いろいろ仕組みもつくり、ワークをさせてきたわけであります。
 しかしながら、約一カ月たちましたけれども、この一カ月たった現在においても、ケアを要する状況、これは何ら変わっていないというのが現実でございます。むしろ、その当時のパニック状態というのは、表面的には消えておりますけれども、やはり心の傷というのは非常に奥深く潜んでいるというふうな印象を強く持って帰ってきた次第でございます。
 以上が、被害の現状ということでございますけれども、最後にちょっと私の方から、この事件を踏まえて感じていることというのを幾つかお話し申し上げたいというふうに思います。
 今回の事件、これは、企業活動が現在のように非常にグローバル化しておりまして、多くの日本人が世界の各地で営業活動をしている、仕事をしているという状況を考えますと、アメリカという他国で発生した事件であるというふうに片づけるには余りにも身近な事件だったというのが実感でございます。また、ハイジャックされた飛行機がまさにオフィスのビルに突入をするというふうな、そういう出来事自体、私ども一民間企業の危機管理という観点での想定をはるかに超えた出来事であるというふうに思いますし、また、こういったテロが、昨今のいろいろなうわさ話にも出ていますけれども、ニューヨークのみならず東京でも起こり得るんだというふうなことを考えますと、何だか言い知れぬ恐怖心というのがわき上がってくるというのが今の偽らざる気持ちということでございます。
 それからまた、米国の金融の中心地であるニューヨークのダウンタウン、この中でも象徴的な建物であるワールド・トレード・センタービル、ここがテロの対象になったというのは、私ども金融に携わる人間にとっては大変実はショッキングな出来事でございます。と申しますのも、今現在、御承知のように、金融機関の仕事というのは、例えば日本の企業で、日本の銀行であっても日本国内で完結をするというのはほとんどございません。一つの取引が全世界につながっているケースがございまして、その決済の仕組みが一瞬にしてとまった瞬間に、実はこれが世界の金融不安の引き金になりかねない、こういうふうな状況でございますし、またそれ自体、株価も大幅に下がるとか企業活動が停滞をするとか、世界経済にやはり多大なる影響を及ぼしかねない事件であるということであるからであります。
 そういう観点で申しますと、幸いにして、実はアメリカの政府あるいは金融当局は、極めて迅速に的確な手当てをしていただきました。その結果、表面に出てくる影響は軽微に済んだわけでありますけれども、ただ、これが同じように日本で起きたときに同じようなリスクが発生するんだということについては、ぜひここで申し上げておきたいというふうに思います。それが我々にとっても大事な教訓になろうかというふうに思います。
 いずれにしましても、実際に現場を私見てまいりまして、それから、先ほど申し上げたように、行員と生に話をしてまいりました。そういうことで、改めて卑劣なテロ行為に対する強い憤りと、それから、その怒りをどこにもぶつけられないといういら立ち、これを感じているということを申し上げまして、私の冒頭での陳述にさせていただこうと思います。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 木川真

speaker_id: 15471

日付: 2001-10-13

院: 衆議院

会議名: 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会