井上美代の発言 (本会議)

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○井上美代君 私は、日本共産党を代表して、雇用対策臨時特例法案について質問をいたします。
 九月の完全失業率は五・三%、過去最悪となりました。求職をあきらめた潜在的な失業者を加えれば、十人に一人が失業をしております。また、先日発表された全国私立学校教職員組合連合会の調査によると、親のリストラ、破産、廃業などで授業料が払えず、停学に追い込まれた子供が急増をしております。
 昨年一年間の自殺者は三万一千九百五十七人で、過去最高です。親がリストラ自殺した遺児は、昨年度百四十四人に上り、日本育英会の調査によると、奨学金出願の理由の項には、ここでは一例しか紹介できませんけれども、父は二年前にリストラで会社をやめ、その後再就職がうまくいかず、これからの生活を悲観して家族の留守中に自殺と書かれております。
 総理、このような子供や家族、国民の実情をどう考えるんですか。こうしたことを引き起こさないことこそ、政治の責任ではありませんか。
 政府の雇用対策の最大の問題は、ルールなき大量解雇を全く野放しにしていることです。大企業を中心としたリストラは、NTT、東芝、日立など、電機を中心とした製造業大手三十社だけでも十六万人という未曾有の規模になっております。大手金融機関の四大グループで二万三千人の人員削減を行うと発表され、一部上場企業の六割の企業が社員を減らすと答えるなど、リストラの火の手はさらに広がりつつあります。これでは一層の雇用不安と将来不安を招き、景気のさらなる悪化を招くのは必至です。
 総理、あなたは、雇用を守る企業の社会的責任や国民の働く権利を保障する政府の役割をどのように考えているのでしょうか。今こそ政府が、この野放しのリストラ、大量解雇を規制し、率先して国民の雇用を守るべきではありませんか。
 ドイツでは、航空会社の四千人削減計画によるリストラと失業が社会問題になったときに、シュレーダー首相は、企業には雇用を守る責任があると発言し、そして景気悪化をリストラの口実としないようにと各企業に訴えています。総理、あなたとの違いは余りにも明白ではありませんか。今こそ政府がこのようなイニシアチブを発揮すべきではありませんか。答弁を求めます。
 国内外での長年にわたる努力によって、労働者の諸権利は多く制度化されております。日本国憲法は二十七条で、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」と規定しており、雇用の確保は政府の重要な責務なのです。国連の社会権規約委員会は、日本政府に、長時間労働の問題と四十五歳以上の中高年労働者の雇用と給与の不安定な実態について、人権上の問題としてその是正を勧告しております。総理、あなたはこれをどう受けとめ、いかなる具体的措置をとるつもりなのでしょうか。
 次に、本法案の重要な内容である派遣労働者の派遣期間延長問題について尋ねます。
 法案は、極めて深刻な中高年の雇用問題に名をかりて、派遣労働者の派遣期間の上限を現在の一年から三年に延長することを提案しております。雇用流動化の名のもとに、常用雇用が減る一方、パート、そして契約社員、アルバイトなどの不安定雇用労働者がふえており、派遣労働者も百万人を突破したと言われております。最近の民間団体の調査では、不況と競争激化で賃金が下がり続けるなど、労働条件が悪化をしております。また、契約の中途解除など、弱い立場の派遣労働者に不当な攻撃が強まっております。総理は、この深刻な派遣労働者の現状をどう考えているのですか。
 政府は派遣期間を三年にすれば雇用が拡大するといいますが、延長すればこの深刻な状況が解決する根拠があるというのですか。財界、業界団体がコストダウンと営利目的で要求しているだけで、労働者からの要望はありません。根拠があるというのなら明確に示していただきたいと思います。
 深刻なのは、正社員をリストラし、派遣労働者に置きかえる企業が増加していることです。製造業への請負を偽装した違法な派遣も広がっております。厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会において、労働者代表は、本法案に対して、常用代替の防止策なしには賛成しがたいと、このように述べているのであります。全国的な労働組合団体も皆反対をしております。
 今回の派遣法改正が常用雇用から派遣労働者への置きかえにつながらない保障はどこにあるのか。それは結局、労働者の身分を不安定にして低賃金を促進するだけではないでしょうか。総理の納得できる答弁を求めたいと思います。
 政府の総合規制改革会議は、七月の中間取りまとめで、既に派遣労働者の派遣期間延長や製造業への派遣禁止の撤廃を求めております。総合規制改革会議が十二月に提出しようとしている最終取りまとめでも、これらの規制撤廃の方針が打ち出されると大きく新聞で報道されていることは、皆様御存じのとおりでございます。今回の法案が、この派遣労働の全面的な解禁に向けた一歩となることは、余りにも明白ではありませんか。このような改悪は絶対にやめるべきであります。
 年休の取得率は、昨年度ついに五〇%を割り込みました。一〇〇%の取得が当たり前の欧米に比べて、異常な事態です。総理は、先日の党首討論で、働くのが好きな人がいて年休をとってくれないと、このように国民に責任を押しつける発言をしました。これは、企業で働く人たちの実情、実感を全く顧みない驚くべき発言です。
 昨年、政府が行った委託調査でも、休暇取得を妨げる要因が本人の意識などの問題ではなく、業務遂行体制など、企業全体のあり方にあると述べております。事実、企業が労働者の権利である年休を取得しないことを前提にした生産・要員計画を立てていることが全国各地で問題になっております。こうした事態をなくすよう、政府が企業を早急に指導すべきではありませんか。総理の決意を込めた答弁を求めます。
 最後に、求職者から紹介手数料を徴収する問題です。
 二年前の法改正で、それまで禁止だった求職者からの手数料徴収を、モデルそしてまた芸能人など特定の職業についている人たちに認めました。しかし、これらはあくまでも例外であり、ILO百八十一号条約でも原則は禁止です。現行の職業安定法では、民間の有料職業紹介にも平等取り扱いの原則があり、高い手数料を払った人が優先的に紹介を受けることがあってはならないとされております。今回の雇用対策においてもこの原則は厳格に守られるのですか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
 日本共産党は、大規模なリストラに反対し、雇用を守る国民的闘いに全力を挙げる決意を表明いたしまして、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 井上美代

speaker_id: 25482

日付: 2001-11-28

院: 参議院

会議名: 本会議