加藤秀樹の発言 (経済産業委員会)

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○加藤参考人 構想日本という非営利のシンクタンクを主宰しております加藤秀樹でございます。よろしくお願いいたします。
 私が主宰しております構想日本では、エネルギーの研究者を中心にして、一年半ほど前から、エネルギー戦略について考えようという勉強を続けてまいりました。エネルギー戦略、レジュメの表紙をめくっていただきまして、一ページ目に「構想日本「エネルギー戦略会議」の提言」というのがあります。
 大変大げさな名前をつけた会議なんですが、なぜあえてこんな大げさな名前をつけたかと申しますと、どうも今までの日本にはエネルギー戦略というものがなかったのではないか。現在の経済産業省、あるいはかつての通産省がつくった一本の需給見通しがあって、その中で石油代替という、これも非常に単純で明快ではあるわけですけれども、政策があり、これが七〇年代からずっと続けられてきた。
 それで、先ほど秋元参考人のお話の中にありましたけれども、石油に対する依存度が下がって、今原子力はかなり高いわけでありますけれども、エネルギー自体が多様化してきたこと、これは大変いいことだと思いますし、かなりの程度成功してきた、あるいはうまくいってきた部分もあるわけですけれども、今の時点で、引き続きこういうことでいいのかということについて、これはエネルギーの専門家の間で非常に大きい疑問があります。
 そこで、あえてこの戦略ということについてよく考えてみようということでやってきました。そして、昨年の末に大まかな提言を行いました。
 そこで、戦略ということの必要性ですけれども、まず、エネルギーというのはいろいろな、これはエネルギー源を輸入に頼っているということもあって、未来の不確実性を明確に織り込んだものじゃないといけない。
 それから二番目に、空間枠と時間枠。空間枠といいますのは、例えば日本の中だけで考えていいのか、日本だけなのか、あるいはアジアを一つの枠として考えるのか、さらには、世界はもう一つのものだという前提を中心にして考えていくのかということです。時間枠といいますのは、十年、二十年、三十年、どういう時限で考えるのか、あるいはそれ以上なのかということ。
 それから三番目に、選択肢をどういうふうに提示して評価するのか、そこに選択肢が日本の場合には今まであったのかという、この三つが主な視点であります。
 そこで、考えなければならない要素として、これは大体共通しております。この法案の中でも、あるいは法案の提案理由説明の際の、昨年の十二月ですか、甘利議員の説明の中にもありました。三つの要素としては、安定供給と環境、それから市場の活用、自由化ということだと思います。この三つについては、我々の議論の中でもほぼ同じ要素で考えておりました。ただ、その安定供給と環境と市場活力というものについて、変化への対応という点がこの法案の中でどうも不十分ではないのかなという感じがしております。
 これについては、平成十三年の四月の自民党の七つの提言というのがありますが、これは自民党の石油等資源・エネルギー対策調査会に大変おもしろい表現がありました。情緒的、硬直的でなく、科学的、柔軟な発想で対応していく必要があるということがあります。これは非常にいい指摘であります。
 そんなことを念頭に置いて議論していきましたけれども、そこで一つの手法を使いました。それが、先ほどのレジュメの二ページ目にありますシナリオ・プランニングという手法であります。シナリオ・プランニングというのは、最初はたしかシェルが使って将来のビジネス戦略を考えていった手法であると思います。これは、シェルも石油のエネルギーの供給会社でありますから、不確定な要素にどう対応していくかというのが非常にクリティカルな問題であった、そこから出てきた手法であると思います。
 シナリオ・プランニングというのは、八ページ目に簡単な図を、これだけではわかりにくいんですが、御参考までにつけておきました。ごく簡単に申し上げますと、一つのシナリオをあらかじめ決めて描いておくということではなくて、考えられるさまざまな事柄を想定して、その中でどういう異なるシナリオがあり得るのか、それで、そのあり得るさまざまなシナリオに対して常に柔軟な対応ができるようにあらかじめ心構え、それを我々は戦略と称したわけですけれども、それを考えておこう、そのための手法だと言えると思います。
 そこで、次に、そのようなシナリオ・プランニングという手法で議論をしたわけですけれども、今申し上げましたような柔軟な対応あるいは戦略的に対応できるかどうかということを考えますと、次に大事になってきますのは、二つあります。一つは、必要な情報をどれだけ関係者の間で共有できるかということです。もう一つは、それに基づいたオープンでフェアな議論がどこまでできるか。オープンでフェアな議論といいますのは、これはいろいろなニュアンスがあり得ると思います。
 抽象的になりますけれども、ある、一度決めたからこれでいかざるを得ない、あるいは既存の利害関係があるからこれからはなかなか出ることはできないなということではなくて、先ほどの柔軟なということと重なるわけですけれども、さまざまな可能性がある上で国民の利益あるいは国益というものを考えた場合に、常に謙虚でオープンな議論ができるかどうかというこの二点であります。
 その二点を考えた場合に、この法案なりあるいは現在のエネルギー政策に関する意思決定の仕方というのが、果たして適切なものであるのかどうなのか、あるいは何が欠けているのかということが次の問題になってくると思います。
 そのような観点からこの今回の法案を見てみますと、「目的」のところに、長期的、総合的かつ計画的な政策推進のための基本法制定と書いてありますが、このこと自体は大変に結構なことだと思います。
 先ほども少し申し上げましたけれども、そこで問題になってきますのは、具体的なこの「目的」のところはまさにそのとおりであると思いますし、そういう意味での基本法の制定というのは必要であると思うんですけれども、そのときのこの基本法の枠の中における意思決定の仕方がどうなるのかというのが次の問題になると思います。
 これは、この基本法案が世の中に出てくる少し前の時点で我々のこの研究会というのは大体議論を終えていたわけですけれども、そこで何人かの専門家の議論をまとめたものが、レジュメでいきますと二ページから三ページにかけてまとめております。
 そこで問題になりましたのは、これも先ほどのことと少し重複いたしますけれども、現在の政策決定に関する意思決定のプロセスであります。これも最初に申し上げましたけれども、これまではどうしても、石油代替、それから、一つの需給見通しということの中で、その延長線上で政策が決められてきたのではないか。これは、ややきつい言い方をいたしますと、一つの虚構で、必ずしも現実を冷静かつ謙虚に認めた上での議論でない部分が多い。ですから、そこを、あくまでも現実がどうなっているかということをよく見て考えないと、この戦略性というのがどうしても出てこないのではないかということです。
 やや抽象的な議論をしておりますが、これに関しては、例えば幾つかその例が挙げられると思います。構想日本の議論自体は、特別、これはいいんだとか、あるいはこれは悪いんだとか、先ほど最初に三つの要素を挙げました、環境問題あるいは市場メカニズムの活用あるいは安定供給、どれも必要な要素ですし、あらかじめこれが一番大事だということを決めているわけではありません。
 また、原子力政策についても、それは必要なものだという認識ですが、例えば核燃料サイクルの問題については、原子力は必要である、あるいは核燃料サイクルというものも考えないといけないという前提の上で、しかしなおかつ、そのリサイクル政策について、例えば、具体的には、六ケ所村での施設の建設、あるいは間もなくテストを始めようということが、今まで申し上げてきましたような、現実を素直に受けとめて、それに対して、将来どういう不確定要素があるのか、それに対してどう対応しないといけないかということについて、謙虚に、オープンに議論した上で対応しているかというと、そこが欠けているのではないか。今まで大体こういうことをやってきたからちょっと変えるわけにはいかないんじゃないか、あるいは、かなり今までの政策について固まった利害があるから、それはもう今さら崩せないという部分が非常に大きいのではないかということであります。
 これについてはさまざまな議論があると思いますけれども、今後対応していくに当たっては、やはり情報をどれだけきちっと十分にオープンにしていくか。これは官庁の側からすると、あるいは政府の側からすると情報の公開ということでありますし、国民全体の目から見ると情報の共有ということになると思いますし、その上でどれだけオープンな議論をできるかというところが大事になってくると思います。
 そのためには、私自身、やや個人的なことになりますけれども、霞が関で二十年余り過ごしてきた人間ですし、官庁での仕事ぶり、決定に関して、さまざまないい面、悪い面、両方あると思います。あると思いますけれども、今申し上げましたような、情報をきちっと世の中に出して、それに対してオープンな議論をしていく、それをやろうとしていくと、かつて決めたことを大幅に変えないといけないというような種類の対応に対しては大変に弱い、なかなかできない。そこはまさに政治主導であり、国会での議論というのは非常に大事になってくると思います。
 この点について、私は、法案そのものについてよりも、この点について今は戦略性を考えないといけないんだ、そのためには従来の議論をかなり大幅に根幹から変えないといけない部分もたくさんあるんだ、だからこそその点については大いに国会の中で議論をしていただきたい、これが私のきょうここで申し上げたいことの最大のことであります。
 そういう目で見ますと、この法案には幾つかの問題点が見えざるを得ないということではないか。
 最初に、自民党の七つの提言の中に、情緒的、硬直的でなくて、科学的、柔軟な発想でと。大変にいいわけですけれども、どうも、現在の経済産業省での議論あるいは審議会での議論というのは、まさにこの情緒的、硬直的であって、科学的、柔軟ではないというふうに見ざるを得ないと思います。
 法案についてでありますが、足りない部分ということについて幾つか項目だけ申し上げたいと思います。
 一つは、情報の公開ということについての十分な言及がないということです。それから、オープンかつフェアな議論、あるいは決め込みではなくて柔軟な対応ということに関しては、基本計画についてのところに、現在さまざまな政府の長期計画の見直しが指摘されているときに、ややこれはおくれて出てきたスタイルではないのかなと。計画そのものは必要、あるいは戦略というものは必要なわけですけれども、一つは、国会での議論に十分な記述が行われていない、閣議で決めるということだけだということと、もう一つは、五年というのはやはり今のような時代においてはかなり長いんじゃないか。具体的にはそんなところであります。
 基本法の性格自体は、もともと、基本的な考え方をそこで述べて、こういう考え方でやろうという法律ですから、どうしても抽象的なものになります。それ自体はそういう性格のものだと思いますけれども、抽象的で、雑な言い方ですけれども、何とでもとれる、何とでも解釈して運用できる余地が大きいだけに、この委員会での議論で、ここはこういうふうに今後運用すべきだ、運用に先ほど申し上げました戦略性がきちっと盛り込んでいけるような議論をお願いしたいと思います。(拍手)

発言情報

speech_id: 115404080X01620020521_006

発言者: 加藤秀樹

speaker_id: 31480

日付: 2002-05-21

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会