速水優の発言 (財務金融委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○速水参考人 日本銀行は、先月、平成十三年度下期の通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出いたしました。今回、日本銀行の金融政策運営につきまして詳しく御説明申し上げる機会をいただきまして、厚く御礼申し上げます。
本日は、最近の経済金融情勢や金融政策運営について、日本銀行の考え方を申し述べさせていただきます。
まず、我が国経済の動向につきまして御説明申し上げます。
昨年初来、IT分野の調整に伴い世界的に景気が急速に後退する中で、我が国経済も悪化傾向をたどってきました。しかし、ことしの春先以降は、海外経済の回復を背景にして、景気悪化のテンポは緩やかになり、最近では、輸出や生産面の明るさが増して、企業の収益や業況感についても改善していくなど、全体としてほぼ下げどまっております。雇用面でも、所定外労働時間や新規求人数が持ち直すなど、限界的な部分には改善の動きが続いております。しかし、持続的な景気回復のかぎを握る民間需要につきましては、設備投資が引き続き減少しているほか、個人消費も全体として弱目の動きが続いており、まだ回復へのはっきりとした動きがうかがわれません。
先行きにつきましては、海外経済の回復基調が続けば、輸出や生産の増加が企業収益の回復を通じて国内民間需要を下支えしていくことによって、景気は下げどまりが明確になっていくものと予想されます。もっとも、過剰雇用や過剰債務の調整圧力が根強いことなどを踏まえますと、景気は当面、自律的な回復力に乏しい展開となる可能性が高いと思います。また、最近の景気改善の動きを支えてまいりました輸出をめぐる環境を見ますと、米国を初めとする世界的な株安やドル安の動きに見られますように、このところ、幾分不透明感を増していると言えます。
この間、物価面を見ますと、国内卸売物価は、これまでの輸入物価上昇や在庫調整一巡の影響もあって、ほぼ横ばいの動きとなっております。前年比で見たマイナス幅は徐々に縮小しつつあります。他方、消費者物価につきましては、緩やかな下落を続けております。
先行きにつきましては、消費財輸入の増勢鈍化が価格低下圧力を何がしか緩和する要因として働くと考えられます。しかし、先ほど申し上げましたように、国内民間需要の回復力に乏しい展開が予想されることや、技術革新、規制緩和、流通合理化といった要因も、引き続き物価を押し下げる方向に作用すると考えられます。これらを踏まえますと、当面、物価は緩やかな下落傾向をたどるものと見られます。
次に、金融面の動きを見ますと、金融・資本市場は、本年三月にかけて、ペイオフ解禁を控えた金融システム不安の高まりなどを背景にして、神経質な展開をたどりました。企業金融面でも、民間銀行の貸し出し態度が慎重化し、信用力の低い企業、とりわけ中小企業では資金調達環境が徐々に厳しさを増してまいりました。
しかし、四月以降、金融・資本市場は、経済情勢が幾分改善傾向を示すもとで、全般に徐々に落ちつきを取り戻してまいりました。社債、CPなど、市場を通じた企業の資金調達環境はこのところ改善傾向にあり、投資家の信用リスクに対する姿勢が回復してきたことがうかがわれます。もちろん、相対的に信用力の低い企業の資金調達環境がなお厳しい状況にありますことも確かでございます。このため、金融機関行動や企業金融の動向には引き続き十分注意していく必要があると考えております。
また、米国株価の下落などを背景にして、六月中旬以降、株価がやや軟調に推移しておりますほか、為替相場も、ひところに比べて、ドル安・円高の動きとなっております。
こうした市場の動きが行き過ぎて、金融・資本市場が大きく不安定化すると、改善傾向にある我が国経済にも悪影響を及ぼすおそれがあります。このため、金融・資本市場の動きにも細心の注意を払ってまいりたいと思っております。
次に、金融政策運営について御説明申し上げます。
日本銀行は、昨年三月、コールレートがほぼゼロに達して、オーソドックスな金融政策による緩和余地がほぼなくなったもとで、日銀当座預金という資金の量を目標とした金融政策運営の枠組みを採用いたしました。それ以来、こうした新しい政策の枠組みのもとで、内外の中央銀行の歴史に例のない思い切った金融緩和を実施してまいりました。
また、金融緩和の効果が企業金融の面でも浸透していくことを期待して、資金供給手段や担保面でもさまざまな工夫を凝らしてまいりました。
この結果、金融市場では、オーバーナイト金利はもちろん、やや長目の短期金利までもほぼゼロに低下するなど、金利は極めて低水準で推移いたしております。また、マネタリーベースは、前年比三割弱の高い伸びとなっております。
こうした日本銀行の金融政策運営は、IT分野の世界的な調整や、米国テロ事件の発生、金融システム不安の高まりなど、我が国経済に大きなストレスがかかる中で、金融市場の安定を確保することを通じて景気の底割れを防ぐという意味で、大きな役割を果たしてきたと思います。
しかしながら、我が国経済がさまざまな構造問題を抱えるもとで、企業の投資や家計の支出が十分活発化するには至っていないことも事実であります。金融緩和がその効果を十分に発揮し、景気の本格的な回復を実現していくためには、税制改革や経済活性化策の具体化といったことなどにより経済、産業面での構造改革を進めて、民間需要を引き出していくことが不可欠だと思います。同時に、不良債権処理を通じて金融システムの強化、安定を図ることが極めて重要であります。
終わりに、我が国経済は、九〇年代以降、循環的には三度目の景気回復局面を迎えようとしております。これまでの二度の回復局面、九五、六年と九九年、二〇〇〇年でございますけれども、この二度の回復局面におきましては、海外経済の減速や金融システム不安などをきっかけにして景気は勢いを失って、民間需要全体の自律的かつ持続的な拡大には至っておりませんでした。こうした点を踏まえまして、我が国経済の持続的な成長の基盤を整えるために、各方面における構造改革への取り組みが粘り強く進められることを強く期待いたしております。
日本銀行としましても、今後とも、デフレ脱却に向かって、潤沢な資金供給を通じて市場の安定と緩和効果の浸透に全力を挙げていくこと、また、最後の貸し手としてシステミックリスクの顕現化を回避することの両面において、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けてまいりたいと思っております。
以上で、私からの御説明を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。