舛添要一の発言 (憲法調査会)

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○舛添要一君 自由民主党の舛添要一です。
 まず、最初に申し上げておきたいことは、この憲法問題というのは極めて今日的な課題であるということであります。
 例えば、国民と国家の関係について申し上げますと、首相公選制、住民投票というような形で直接民主主義的な要素が国民により求められていると思いますので、この点もまず申し上げておきたいと思います。
 それから、今、自民党の中におきまして、与党審査をどうするかというような政と官の関係についての議論がありますけれども、これも、実は憲法の第六十五条「行政権は、内閣に属する。」という規定の絡みにおいて内閣の権限をどうするのかと、これとも非常にかかわっております。
 さらに、今、介護保険が実施されております。介護保険というのは実を言うと地方自治の実験の場であると思っていますし、さらに市町村合併が平成十七年までの特例によって政府によって推進されようとしておりますけれども、これは第八章「地方自治」に大きくかかわっている問題でありますが、この点についても詳細に述べたいと思います。
 それから第四番目に、今通常国会において有事法制の議論がございますけれども、これも我が憲法に緊急事態の規定がないということとの関連で問題になると思います。
 そこで、順不同になりますが、まず緊急法制の問題について一言申し上げます。
 私は、ドイツの憲法のように、ドイツの基本法のように、この憲法に緊急事態を明言すべきであるというふうに思います。基本的人権を定めた立派な憲法でありますから、その基本的人権の制限ということが加わる事態についての想定があれば、これは当然、緊急事態についての条項が憲法にあるべきだと、そういうふうに考えております。もしそれが欠落しているならば、プログラム法として有事を想定する法律があるべきであるというふうに思っています。
 これは、もう憲法議論として申し上げていますので、政治の議論とは一線を画しまして申し上げますが、憲法に明記するかプログラム法にするかは別として、例えば緊急事態というのはどうであるかと。武力攻撃もそうでありますし、大規模テロもそうでありますし、震災のような大災害でもそうであります。さらに第四番目に、その他内閣総理大臣が認める事態ということであっていいと思いますから、そういうことを明記しないで、ただ武力攻撃だけにアドホックに対応するような継ぎはぎ的な法律の整備でよろしいのかと。私は、日本国憲法体制、法体制の整備という観点から見て問題があろうというふうに考えております。
 それから二番目に、直接民主制について若干議論いたしたいと思います。
 三月二十三、二十四の両日に全国の有権者三千人を対象にしまして読売新聞が世論調査をしました。これは四月五日付けの朝刊にその詳細が出ておりますけれども、それによりますると、首相公選制に、望ましいという人が六三%、望ましくないが一四%。望ましいの内訳を見ますと、二十から四十歳代で六七%、民主支持層で六七%、自民支持層で五八%、無党派層で六六%ということになっております。ということは、今の世論のムードというのは首相公選制に極めて積極的に賛成したいということだと思いますけれども、私自身は首相公選制には基本的には反対です。
 それは、常にポピュリズムの危険が伴いますし、例えば不信任決議、解散、こういうことを考えても、国会との関係などで、本調査会でもいろいろ議論がありましたように、余りにも問題が多過ぎると思います。したがいまして、首相公選制の、もちろんプラスの側面もありますけれども、マイナスについて、もう少し国民に対して十分に説明をする責任が我々にもメディアにもあるのではなかろうかというふうに思います。
 特に、議院内閣制とやはり首相公選制というのは整合的ではありません。やっているのもイスラエル、しかしこれもうまくいかなかった。ただ、国民の直接民主制への要望が強いということは議院内閣制に対する非常に幻滅があるわけですから、国会議員として我々はそこは反省しないといけないと思います。
 ただ、憲法改正という観点から見ますと、極論を申せば、大統領制というのも当然あり得ていいというふうに思いますし、フランスのように大統領と首相が併存するシステムも考えられないわけではない。しかし、これは象徴天皇制との絡み合いもあると思います。
 問題は、議院内閣制の下においても、大統領制の下における大統領と同等ないしそれ以上のリーダーシップを行使する内閣総理大臣は十分に作り得るということでありますので、具体的に言うと、イギリスのブレア首相を見れば分かりますけれども、これは他国の大統領と全く遜色ないだけのリーダーシップを発揮しているというふうに思います。正にこれが政と官の関係でありますけれども、この点で憲法六十六条第一項は、「内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。」。その首長、ヘッドである内閣総理大臣とあるにもかかわらず、更にもっと申し上げますと、あるにもかかわらず、六十五条では「行政権は、内閣に属する。」と。
 私は、やっぱり内閣総理大臣を主体にした形での規定に変える。つまり、内閣総理大臣が国務大臣を任命して内閣を組織するのであって、内閣総理大臣に最終的な責任があると。それをもっと明記する形でなければ首相のリーダーシップが十分に担保できないし、内閣主導でなくて総理大臣主導にしなければ官僚のばっこということになるというふうに思います。そういう意味で、首相のリーダーシップを担保するための制度が不可欠だというふうに思います。
 私はフランスで長いこと勉強していましたけれども、例えばフランス憲法の二十一条、これは、大統領がいるにもかかわらず、ル・プルミエル・ミニストル・ディリージュ・ラクション・デュ・グーベルヌマント、首相は政府の行動をディリージュ、主導すると、主語はプルミエル・ミニストルになっているわけであります。
 問題は、内閣法第三条、これは行政事務の分担管理原則を定めたものでありまして、「各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分担管理する。」というようにありますけれども、これがある意味で首相の権限を弱体化することにつながっていると思いますので、私は内閣法の三条の改正ということは必要だというふうに思います。この観点から、与党の事前審査の問題も再検討すべきであると思いますし、政府・与党の一体化、一元化を更に図るための施策を講じるべきだというふうに考えます。
 後ほど同僚の議員から議論があると思いますけれども、この文脈でも参議院の在り方ということが問われていると思います。非常に極端に衆議院の優越ということを打ち出せば、首相は国会議員じゃなくて衆議院議員から選ぶ、参議院は政権の存否にかかわるべきでない、問責決議案はなくてよろしい、参議院選挙の結果が政権の行方に影響することがあっちゃならない。例えば、五十九条の二項の、参議院否決法案に対する衆議院の再議決要件を三分の二としていますけれども、これを五分の三とか二分の一に改めるということも考えていいと思いますので、私はやっぱり、今一つの極端を申し上げた。逆に、人事案件や何かについて参議院の優越ということもあっていいと思いますので、参議院の在り方というのを考えることはこの首相のリーダーシップの問題にもかかわってくると思います。さらには、私は行政権の一部である内閣法制局が憲法解釈を独占するということがあってはならないと思いますから、憲法院なり憲法裁判所なりを作るような形で、司法ができる限りで違憲立法審査をやる機関を作るべきだというふうに考えています。
 早口になりますけれども、最後に地方分権の話を一言申し上げたいと思います。
 私は、地方組織を再編すべきであって、平成の廃藩置県、具体的に言うと、正確に言うと平成の廃県置州、道州制ないし連邦制への方向を目指すべきでありまして、三千二百以上も市町村があるというのは多過ぎますから、八百ぐらいにできればやりたい。これをなくして、それは外国のまねじゃなくて、江戸時代そうだったわけですから、こういう地方組織の再編がなくて行政改革や政治改革は完成しないというふうに思っています。もちろん財源の地方移譲もそれに伴って必要です。
 一言、最後に住民投票について申し上げておきますが、これの憲法上の正しい位置付けがないから非常に混乱をしているわけであります。
 住民投票条例につきましては、日本国憲法は「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と第九十四条で定めてあります。これを受けまして地方自治法が定められておりまして、首長や議員の提案に加えて有権者の五十分の一以上の署名で住民が直接条例制定を請求することができます。ただし、条例は法律の範囲内で国の法令に反しない限りにおいて、これは地方自治法十四条一項で認められているのでありまして、その効力については法律は言わずもがな、政令省令などの国の命令よりも劣ります。つまり、投票結果についての法的拘束力はありません。しかし、形式的には首長や議会は住民投票の結果に左右されないとしても、これはあくまで形式論で、政治的には非常な拘束力を持ちます。
 したがって、住民投票をどう憲法上位置付けるか、九十五条の特別法の住民投票以外にこれは明確な規定を設けるべきだというふうに申し上げておきます。
 これで私の意見は終わります。

発言情報

speech_id: 115414184X00420020410_002

発言者: 舛添要一

speaker_id: 6496

日付: 2002-04-10

院: 参議院

会議名: 憲法調査会