吉川春子の発言 (憲法調査会)
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○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、国民主権と統治機構について意見を述べます。
日本国、国民主権は、国家の権力は国民が持っており、政治は国民によって行われる原理であると長谷川三千子埼玉大学教授が述べましたが、私も同感です。
二十世紀は主権在君から主権在民へ、すなわち君主制から共和制への闘いの世紀であったと言えると思います。日本共産党は一九九二年創立のときから主権在民の主張を掲げました。当時、天皇は神聖にして侵すべからずとされ、一切の権力は天皇が握っており、我が党の主張は危険思想として弾圧されました。
一九四五年、我が国は第二次世界大戦に敗れ、ポツダム宣言を受け入れ、平和と基本的人権の保障を基調とする現憲法が制定されました。日本国憲法前文は、日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、我らと我らの子孫のために、諸国民との協和による成果と、我が国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を制定するとして、国民主権を宣言しています。
小澤隆一静岡大学教授は、当調査会参考人として次のように述べました。
国民主権の原理は、アメリカの独立革命やフランス革命によって樹立され、日本では現在の憲法によって初めて採用され、今日に至るまでその内容を豊富化させてきた。国民主権の原理は、西欧近代におけるその成立以来、今日に至るまで普及発展し、世界の多くに憲法の基本となっている。今日なお重要な役割を果たしており、二十一世紀中も相当程度の間、重要な役割を果たし続けるだろうと。これは、人類普遍の原理として永遠に守られるべきものであり、いかなる改憲論もこの部分を変えることができないことは論をまちません。
二院制について小澤教授は、参議院は、直接内閣の基礎となる衆議院とは違った立場で、ただし全国民の代表としては同等の立場で内閣のチェックを行うことが期待されると述べています。
敗戦後、新しい憲法に向けた議論の際、貴族院を参議院として残すことは、戦前果たした反民主的な、反民主主義的な行動について厳しい批判と、参議院議員を天皇の任命にする考えなど、新生日本にふさわしくないものがありました。しかし、五十年にわたる国民の努力の結果、参議院は今日、国民の人権を守る役割を果たし、二院制は日本の民主政治になくてはならないものです。
参考人の隅野隆徳専修大学教授は、参議院が全国民の代表機関であるという性格は尊重され、また発展されるべきだと指摘し、第一に、下院での性急な行為や、場合によっては過誤の修正、回避という任務、第二に、民意を確実に反映させることを指摘しています。そして、参議院には解散がなく、議員は六年の任期を持ち、三年ごとに定期的選挙によって民意が表明され、他方で衆議院の解散及び総選挙が言わば政治的な性格を強く持って行われることと相まって、参議院独自の重要な役割を果たしている。総体として、日本国憲法の二院制は妥当な基本制度になっている。第二に、国会における慎重な審議の保障によって国民の知る権利と国民の政治判断への貢献が国会において特に必要であり、しかもその点で参議院の役割が重要である。衆議院が政治の論理、数の論理に左右されることはある面でやむを得ないとしても、参議院は政権形成から一定の距離を置くということは重要な意味を持つとしています。
主要国ではおおむね二院制を取っていますが、それは、一院だけでは重要法案について慎重で的確な判断ができないこと、審議に時間を掛けることによって世論への浸透、変化を国会に反映できる等、人類の英知が結集した制度であるからです。我が国で民主主義を成熟させていくためにも二院制を守っていくべきです。
我が憲法は、内閣の存立を国会の信任にかからしめる議院内閣制を取っています。小澤隆一参考人は、議院内閣制の健全な運営のためには、両院による内閣の行政運営に対する適切なコントロール、これが不可欠なものとし、参議院においても適切なコントロールを行使するよう期待し、内容としては、国政調査権の行使、質問権、問責決議等による内閣の責任追及であると述べています。私自身、国会の審議が形骸化していると感じることが間々ありますが、内閣に対するチェック機能を果たすためには、参議院は法案と一般質問など国会審議の充実を図る必要があります。
小泉総理は、首相のリーダーシップを強めるとして首相公選制を主張していますが、これに対して当調査会では、委員からも参考人からも多くの問題点が指摘されました。内閣は連帯して国会に対し責任を負うとしているのであって、首相のみの突出を憲法は認めていません。現憲法では、大臣の選定、罷免権を総理が持ち、十分にリーダーシップを発揮できる制度になっています。これ以上首相の権限を強めることは国会として行政府の暴走に歯止めが掛けにくくなり、国民の人権保障のために危険な制度です。
曽根泰教慶応大学大学院教授は、憲法の全面改正だと思う、イスラエルのようななかなかややこしいことが起きると言い、また浦田賢治早稲田大学教授は、我が党の小泉議員の、三十七年前の内閣調査会の首相公選制は独裁への危険性を内包しているとの指摘にも、異論がないとしています。
首相公選制はアメリカ型の三権分立につなげるものであり、現憲法の議院内閣制とは両立せず、改憲につながる議論です。我が党は、首相公選制は首相と政府を国会から事実上独立させて執行権を独走させ、国権の最高機関としての国会の地位を制度的に脅かす危険を持つもので反対です。
選挙制度は議会制民主主義の土俵です。衆議院は小選挙区比例代表並立制で、四百八十議席のうち三百が小選挙区です。参議院は直近の選挙から比例代表区に非拘束名簿方式を採用し、当時の全国区制度の弊害を取り除こうとした八二年の選挙制度の改革の結果を無視しています。
小澤参考人は、国民の中には様々な政治的意見を持つ人が含まれている、両院がそのような国民すべての代表であるためには多様な民意が反映される選挙制度を採用することが望ましい、選挙制度は立法府の裁量によるところが少なくないが、それでも少数意見が著しく過小にしか代表されない、民意の正確な反映という趣旨から大きく逸脱するような選挙制度は裁量の限界を超えたもの、いわゆる死票を大量に生じさせるような選挙制度はこの要請にそぐわないとし、このたび本院に導入された候補者名と政党名のいずれの投票も可とする比例代表選挙の方式は、国民にとって極めて分かりづらい選挙制度ですので、改めていただきたいと述べています。
また、隅野専大教授も、何よりも国民の意思の議席への公正な反映のための選挙制度を追求することが大事である、その点で、十八歳選挙権を日本では認めていないのは今日の世界の趨勢から大変立ち後れており重大問題だと、また、女性の国会議員が日本では諸国に比べると少ない点を指摘しています。被選挙権年齢を低くする必要性は、前田英昭駒澤大学教授からも指摘されました。
小選挙区制は死票が多く、また今日の日本では女性が進出しにくい選挙制度であって、国民の意思が国会の議席に反映されません。必ずしも反映されません。日本国民は、正当に選挙された国会における代表を通じて行動しとされており、代表民主制の基礎である選挙制度が公正で有権者の意思を正確に反映するものでなければ、憲法の基礎が揺らぐことになりかねません。民主的な選挙制度に改めるべきです。
最後に、人権が侵害されたときの国内最後の救済機関は裁判所ですが、裁判所は憲法判断をほとんどしない現状に照らして憲法裁判所設置の意見もありますが、最高裁の機能に問題があるとの私の質問に対し、最高裁は当委員会で、もっと憲法判断を行うべき旨の発言を表明しており、改善を期待したいと思います。
また、迅速な裁判の保障、三十七条が不十分な結果、行政裁判所の設置を求める声が当委員会でも表明されました。人権侵害救済についての対応の遅れを防止するためには、まず行政レベル、あるいは男女共同参画条例で、地方自治体レベルでの救済措置を充実させるなどの努力が行われています。
現憲法では特別裁判所を設置することはできません。これは、戦前、軍法会議などで裁判が複線化されていたため、基本的人権が侵害された歴史があるからです。これを繰り返さないために、憲法は特別裁判所を禁じています。
迅速な裁判、国民の基本的人権の保障のとりでとしての裁判所の役割を果たすためには、裁判官の増員、国連などが勧告しているような裁判官の人権教育の実施、司法権の独立を自ら尊い任務とする裁判官の養成によって可能となるのではないでしょうか。特別裁判所を設けるのは筋違いです。
以上見たように、国民主権は国民の間にいよいよ根付き、これからも豊かな内容に発展されるべきであり、また、統治機構について憲法が十分に生かされていないことが幾つか指摘されました。改めるべきは憲法の方ではなく、法律以下の制度や運用実態であることが参考人の陳述からも裏付けられたと言うべきでありましょう。
以上で終わります。