高野博師の発言 (憲法調査会)

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○高野博師君 公明党の高野でございます。
 これから述べることは、党とは関係なく、全く個人的な私の意見であります。
 最初に憲法観的な話なんですが、当委員会でも何のために憲法論議をしているのかと、その原点を私は確認する必要があるのではないか。
 現在、我が国は、政治的、経済的、社会的にも未曾有の危機にあるのではないか。これからの十年は恐怖の十年だと言う人もいるのでありますが、国家の存立が揺らいでいるかのような事態であろうと思います。これを構造改革で乗り切れるのかという問題があります。私は、これらの危機のよって来る原因というものが、直接であれ間接であれ、憲法にあるとする、あるいは国の在り方にあるとするならば、早急に対応する必要があるのではないか、少なくともこれらの危機と憲法の問題についての関連性について議論すべきではないかと思います。そうでないならば、すなわち関連、関係がないというのであれば、十年でも五年でもゆっくり議論し、法律論をやっていればいいんではないかと思います。
 私の認識は、政治、経済、社会、文化、教育、これらの様々な問題の根底に国の在り方そして憲法、これらの問題は憲法の問題に帰着するという認識であります。
 他の国の憲法事情等を見てみますと、国の在り方が問われて、あるいはシステムを変えるためには、あるいは更には大きな政策転換を行う場合には、基本法である憲法を改正している。極めて現実的な対応をしていると思います。例えばドイツの場合には、戦後の国際情勢の変化に対応して、自国の防衛のために軍隊を持つ、あるいは徴兵制を復活するような改正も行っている。我が国の場合は一文一句変えていないんですが、実質的に解釈改憲をやってきている。しかも、それも限界に来ているんではないかと思います。憲法改正についての世論も賛成が多くなってきていると。
 そこで、現実と憲法との乖離を埋めて、歴史とか伝統とか文化とかあるいは国民性を踏まえて新しい国家像を目指して、国の骨組み、あるいは根本の法を変えることは当然ではないかと思います。その際には、当然のことながら現憲法の三原則は厳守すべきだと思います。
 私は、この憲法論議をする大前提として、あるいは国家像なり、国の、国家のアイデンティティーは何かという議論の中では、その中心となるべき理念、哲学、その国、社会の中で最も尊重されるべき普遍的な価値は何かということが重要ではないかと思っておりまして、一つの制度なりシステムなりあるいは法律なりが、この良しあし、あるいは正しいかそうでないかという判断の基本的な基準というのは、人間の尊厳、あるいは人間の尊厳を実現するという権利ではないかと思っておりまして、それを根本に据えた上での平和の問題、環境、福祉、教育、これをどうあるべきかということを考えるべきだと思っております。
 ちなみに、人間の尊厳というのは、個人の尊厳とは違いまして、人間と人間との関係の中でその人があるがままの姿で尊重される、尊厳を認められるというのが人間の尊厳でありまして、改憲か護憲かというそういう議論は、それによって何を守るかという、それが、その視点が重要であろうと思います。本質的には、この人間の尊厳という価値が尊重されるかどうかというによるべきであって、憲法は絶対的、固定的に考える必要はないというのが私の考え方であります。
 最後に、国際社会と我が国の在り方についてでありますが、国際社会あるいはこの地球社会がどんな方向に行くのか、どういう形になるのか、それを見極めた上での我が国の国の位置付け、あるいは国家像、これを描くべきだと思っております。
 今、グローバリゼーションの流れにありますが、このグローバリゼーションの中では一つの価値観、あるいは文化、経済システム、これを各国に押し付ける、あるいはのみ込んでいくという流れの中にあるわけですが、そういう中では主権国家の歴史とか伝統とか文化、あるいはそういうものが尊重されるような共生の社会、いわゆるインターナショナリズムとは違った大きな流れでありますが、このグローバリズムの中で最も尊重される価値というのは市場の原理であり、競争原理であると思いますが、これは強者の論理であり、力の論理。したがって、強い者がどんどん勝つ社会になり、貧しい者はより貧しくなっていくというような社会であります。
 我が国がこのグローバリゼーションに対応した社会を目指していると思いますが、我が国の場合には、自己責任型の社会を目指すということで経済構造改革あるいは司法改革ということをやっているのでありますが、私は、自己決定能力のある人は自己責任型社会であっても問題ないと思いますが、自己決定能力のない弱者、例えば子供であり高齢者であり障害者等に自己責任を求めるのはこれは無理であり、弱者にとってはつらい社会になるんではないか。そういう中では、人間の尊厳というものを実現する権利はなかなか持ちにくいのではないか。
 したがって、競争原理から、共生の論理というか協力型の社会、この協力原理が支配的になる国家を目指すべきではないか。そういう視点に立って、人間の尊厳という理念で将来の国家ビジョンを描いた上で憲法を考えることは重要であろうと思います。
 以上です。

発言情報

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発言者: 高野博師

speaker_id: 15245

日付: 2002-04-10

院: 参議院

会議名: 憲法調査会