市川一朗の発言 (憲法調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○市川一朗君 私は、二院制の問題に絞って私見を申し述べたいと思います。
 ほとんど周知の事実でありますが、現行憲法の制定過程におきまして、当初、GHQは一院制を主張したわけでありますが、日本側の強い主張によりまして二院制になったという経緯がありました。そうした経緯があったことが要因の一つだったのかなと私は思っておりますが、我が国の二院制は、両院とも直接公選制が取られておるにしては衆議院の優越性が極めて強いと思っております。憲法第四十三条で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と規定されておりますけれども、極めて衆議院の優越性が高いと。その結果として、例えば参議院無用論が論じられるに至っている面があるのではないかというのが私の基本的な問題意識でございます。
 そこで、まず二院制そのものについて触れる必要があると思いますが、私は、民主主義国家におきましては、立法府である国会が立法に当たりまして国民の総意を二度にわたる慎重な審議を通じてより正確に確認するというシステムになっております二院制の方が一院制よりも優れていると思っております。これに対しましては、いわゆる効率性を重んずる考え方を中心といたしまして一院制を主張する有力な反対論があります。国の統治機構を効率性重視の論点から、観点から論ずることは極めて危ない危険な発想ではないかと私は考えております。
 ところで、少し飛びますが、二院制を採用している国にほぼ共通しておりまして我が国にも当てはまる幾つかの特徴点がございますが、一つは、上院議員の任期は下院議員の任期より長いと。そして、上院は部分交代制が取られている点が挙げられております。なぜそうなっているのか。
 これにつきましては、下院において総選挙が行われると構成員の全部交代制によって議席の政治勢力が一挙に大きく変わり得るが、その際、上院にはその劇的な変化をある程度緩和する働きが期待されているからだというのが通説とされておりまして、いわゆる上院の保守的役割論であります。上院のこうした保守的役割論につきましては、民意の正確な反映にはかえって邪魔ではないかという考え方もあるわけでありまして、大きく議論が分かれているところでございます。
 その際に改めて問題となりますのが、憲法第四十三条の両院の直接公選制の規定ではないかなと私は思っております。つまり、上院の保守的役割論を重視する考え方に立ちますと、上院議員の選出方法について直接公選制以外の仕組みを導入することは十分考えられることでありまして、現在でもイギリスの貴族院はそうなっているわけであります。
 しかしながら、我が国におきましては、さきにも申し上げましたが、現行憲法制定時において、GHQが当初一院制を主張しました。最終的には、両院とも国民の選挙で選ばれるのであれば二院制そのものには反対しない旨を日本政府に伝え、そして二院制の採用が決定した経緯があります。私は、その経緯の持つ意味は極めて大きいと思っております。
 当時GHQが主張し日本側も了解したいわゆる国会の直接公選制は、当時、戦後の日本につきまして、両院の直接公選制を担保として議会制民主主義を確立し、もって真の民主主義国家を建設するという基本的考え方に立脚したものであったと思っておりまして、非常にこの考え方は二十一世紀の今日でも重要視すべき考え方であると思っておる一人でございますが。
 ところで、両院とも直接公選制が取られているにしては、先ほど申し上げましたように、現行憲法の衆議院の優越性が余りにも強いんじゃないかと。二院制の下で、参議院に期待される役割をこれでは十分に果たすことができないということになっているのではないかというふうに思うわけでございます。
 現行憲法上、衆議院の優越性に関する規定は、委員の皆さんに改めて御紹介をする必要はないと思いますが、法律案、予算の関係、条約の承認、それから内閣総理大臣の指名、内閣に対する信任、不信任など一杯あるわけでございますが、参議院が衆議院と対等の関係に立ちますのはわずかに二つでございまして、一つは憲法改正の発議、それからもう一つは皇室財産授受についての議決のみでございます。
 したがいまして、素朴な国民感情といたしましては、国政上重要な問題のほとんどは衆議院で先に審議され、その結果が参議院で覆ることは全くと言ってもよいほどないのでありますから、参議院は無用ではないかということになるわけでございまして、いわゆる政治不信につながってくる問題がそこにはあるというのが私の認識でございます。
 この衆議院の優越性に関する規定につきまして、必要最小限の範囲にとどめるべきではないかという議論をしました場合に、最も懸念される問題点は国政の混乱であります。有名な言葉でございますが、二院制は、両院が結局同じ結論になるなら意義が低いし、異なる結論になるなら混乱要因であるという、いわゆる根強い二院制反対論がありまして、これと激突することが予想されるわけでございます。
 これから先の詳細な議論、論ずる必要があるわけでございますが、本日はちょっとこの辺を論じ切るには不可能でございますので、国政の混乱と二院制の問題について、私の私見、一、二のポイントについて触れておきたいと思います。
 一つは、予算についてでございますが、私は、予算につきましては、例えば議会において予算成立に至るまでの間は政府は前年度の予算を施行すべしという規定が明治憲法第七十一条にありましたが、例えばそういう同趣旨の規定を設けて両院での対等な、そして慎重な予算審議を確保する必要があるのではないかということでございます。
 二つ目は、内閣総理大臣の指名でございますが、これにつきましては若干考え方が変化しまして、やはり内閣総理大臣の指名の最も典型的な場合は、衆議院の解散・総選挙直後のときじゃないかなと思います。そういうことを考えますと、それに関します現行憲法の衆議院の優越性の規定は、これは残した方がやはり妥当なのかなと。
 こういったようなことで、いろいろ問題によりましていろいろ議論をしていかなきゃならないわけでございますが、いずれにしても、二院制の議論が本格的に期待し得る場は参議院における憲法調査会で、ほかにはないということを改めて主張いたしまして、討論を終わります。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 115414184X00420020410_034

発言者: 市川一朗

speaker_id: 15143

日付: 2002-04-10

院: 参議院

会議名: 憲法調査会