山本一太の発言 (国際問題に関する調査会)

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○山本一太君 先ほど森元委員がおっしゃったように、やっぱり大勢の日本人にとってイスラム文化というのはかなり理解しにくいものだということは間違いないと思います。
 ただ、今、佐藤委員の方からNHKの「おしん」の話を伺って、一つ思い出したことがありました。私が国連の機関、ある国連機関のニューヨークの本部に勤めていたときに日本人の友人がおりまして、その彼女の御主人がイラン人だったんですね。そのときにその彼女が私に言ったことは、日本の文化とイランの文化はとても似ていると。「おしん」は今イランで大変人気があって、日本のおこたつみたいなものに入って、それでおこたつなのか、じゅうたんが掛けてあるのか布団が掛けてあるのか分からないんですけれども、そういう暖房器具の中に入って「おしん」を見ながらミカンを食べると言っていまして、実はイランの文化と日本の文化はとても似ているといった話を、今──どのミカンだったかは覚えていないんですけれども、佐藤委員の話を聞いて思い出しました。
 佐藤委員がテレビの話をしたので、私はちょっと映画の話を今思い付いてさせていただこうと思うんですが、この間、夜遅くうちに帰ってきてケーブルTVをつけたら、ある映画をやっておりました。学生時代に見たディア・ハンターという映画で、七八年か九年のアカデミー賞の作品賞と監督賞を取ったマイケル・チミノの名作なんですけれども、久しぶりにこのディア・ハンターを見ながら、このベトナム戦争というものがやっぱりアメリカの社会あるいはアメリカの外交政策に与えた傷、トラウマ、こういうものの大きさを感じずにはいられない気持ちがしました。
 実は今、久々にベトナム戦争を扱った映画がクランクインしようとしておりまして、元々はベトナムに従軍したたしか大尉か部隊長と、そこにくっ付いていったジャーナリストが書いた本で、ワンス・アンド・フォーエバーというたしかタイトルだったんですが、映画のタイトルはちょっと違うんですけれども、メル・ギブソン主演で、非常に、何というんですか、淡々とアメリカとベトナムの戦争のことを描いていると。しかも、初めてアメリカ映画としてベトコンを異常な正に野蛮人として描いていないということで、これはクランクインしたら是非見てみたいと思っています。
 私は、実は一昨晩、久々に明石康元国連事務次長とお目に掛かりまして、国連時代から大変お世話になっている明石さんと二人で二時間半ぐらいいろんな話をしました。そんな中で、昔のコソボ、いろいろな国連の、例のUNTACの話から今の安保理改革の話等々、明石さんといろんな議論をさせていただいたんですが、その中で二人一致して非常に心配だという点は、やはりブッシュ政権になってからのアメリカのユニラテラリズムといいますか、非常に孤立主義──孤立主義とも違うんですね、つまり一国主義という傾向が非常に強まっているんではないかという話だったんです。
 それは、先ほどのベトナム戦争の話に結び付くんですけれども、やはりアメリカの外交というのはベトナム戦争で変わったと。この戦争権限法なんかの話もあるんですけれども、やはりベトナム戦争のトラウマというものがアメリカ外交を形作ってきたと言ってもいいと思います。七〇年代、八〇年代、ベトナムで失敗した後、様々な本とかあるいは論文とか、あるいはテレビのシリーズとか映画とか、これはすべてネバーアゲインというか、二度とベトナムの失敗を繰り返してはいけないという潮流を作ってきたんだと思います。
 クリントン政権になって、ソマリアのPKOの事件というのがあって、あのソマリアのちょっと前まで、私が覚えているところではジョージタウンのときに非常に厳しくやられたオルブライト教授が国務長官になって、オルブライトさんがマルチなPKOの展開というようなこともおっしゃっていたんですけれども、そういう流れでPKOにアメリカが接していたところ、このソマリアで十数名のアメリカPKO要員が殺りくをされて一気にアメリカはこのPKOに対する立場も変わったということで、クリントン政権下においても、やはりベトナム以来のああいう地上戦、ああいう地域戦争に余り足を踏み込んではいけないという伝統が続いていたように思います。湾岸戦争のときにはもちろん多国籍軍ができたわけなんですが、その多国籍軍をリードしたパウエル今の国務長官も、やはりこのベトナムのレッスンをきちっと頭に置いて行動されている方じゃないかというふうに思っています。
 ところが、最近のやはりブッシュ政権の動きを見ていますと、これは明石さんとも議論になったんですが、もしかするとこのベトナムイズムみたいなものからアメリカ外交は脱却しようとしているんではないかと。アフガニスタンで地上軍を入れたと、地上軍と呼べるか分かりませんけれども。ここ一年ぐらいのアメリカの動きを見ていますと、やはりそういう懸念を持たざるを得ない。特に、先ほどから話題になっているこの中東に対するアメリカの姿勢、パレスチナ問題にもそれは如実に表れているんではないかという話をいたしました。
 私が一つあと一分ぐらいで問題提起したいのは、アメリカがイラクを攻撃する可能性が極めて高いということだと思います。
 最近、アメリカ人のシンクタンクの友人が、日本に来るとよく会うんですけれども、イラクのことを聞くとみんなは、イラク攻撃というのは、アメリカはイラクを攻撃するかどうかではなくて、一体いつやるか、ア・マター・オブ・タイムだというようなことをみんなが言います。私は、もしアメリカが、今年一杯ぐらいはパレスチナ情勢があるのでアラブ諸国に対する配慮からイラク攻撃はできないかもしれませんけれども、これは間違いなく今の情勢ですと、アメリカのイラク攻撃というものは現実の可能性として浮上してくると。
 そのときに一体日本はどうやって対応するんだろうか。イギリスは当然アメリカと一緒に行動するだろう。もうちょっと端の極にあって反対するのはフランスだろう。真ん中がドイツだろう。当然ロシアも反対する。しかし、一つ一つ考えてみると、やっぱりアメリカがやる場合には、EUも消極的ながらサポートせざるを得ないんではないか。中国はもしかしたら棄権するんではないか。そうすると、安保理決議は通ってしまうということになります。
 アメリカのイラク攻撃という事態が起こったときに日本外交は大きな踏み絵を迫られる。この有事法制の話にも結び付くんですけれども、どういうふうに日本は米軍に協力をしていくのか、それとも協力できないのか、それとも協力するとするとどういう範囲でアメリカに対して協力をすることになるのか、こういう事態が遠くない将来に私はやってくるというふうに思っています。
 そのときに、やはり米国とイスラムという最も両極端にある言わば二つの文化を日本がつなぐことができるのか、日本が何らかのメディエーターとしての役目を果たすことができるのか、こういうことをやはり国際問題のいろんな議論の中でヒントとして発信をしていければ、やはりこの間ずっとイスラムのことをこの委員会でやってきた意味があるのではないかということをコメントさせていただいて、大体五分ぐらいなので、私の意見表明にさせていただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 115414308X00820020522_017

発言者: 山本一太

speaker_id: 17573

日付: 2002-05-22

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会