西岡武夫の発言 (本会議)

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○西岡武夫君 私は、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)を代表して、小泉総理の施政方針演説について質問いたします。
 小泉総理は、政権担当以来九か月、ただひたすら構造改革を唱え、それに伴う痛みに国民が耐えてくれることを求め続けてこられました。
 その挙げ句、敗戦後の混迷収まらぬ昭和二十一年年頭に昭和天皇が詠まれた和歌を施政方針演説で引用されました。これは、昭和天皇の権威を政治の場に利用して、総理が国民に訴えてきた痛みを正当化するという、憲法の精神に違反する暴挙です。昨日、江田五月議員の指摘に対し、反省のそぶりも示されませんでした。言語道断と言わなければなりません。直ちに、直ちに撤回されることを求めます。
 昨年来、そうして施政方針演説においても肝心の構造改革の内容は断片的な手直し案でしかなく、改革が実現した暁にどのような日本の姿を描いておられるのか、いまだに不明であります。
 私は、自由主義社会と議会政治が完全なものとは考えませんが、現時点で人類が考え得る最良の政治体制であると信じます。
 自由社会は、正しく努力する者が正当に評価され、それぞれの個性を伸ばし、報われる社会であることによってのみ成り立ちます。同時に、この自由主義社会は、強い個人、自立し自律的精神を持った個人によって構成されて初めて維持されます。そうして、その自立した個人は広い意味での教育によって育成されます。
 一方、どのような社会においても、残念ながら自分の責任でない不条理な原因によって不幸に見舞われる方がおられます。そのような方々には、社会的連帯によって助け合う、このことがなければ自由社会は存続できないでしょう。なぜなら、すべてが自由競争、市場原理で動くならば、自由社会は弱肉強食の修羅の場になってしまうからであります。
 以上が私の政治に取り組む基本的考え方です。
 この考えに基づいて、小泉総理に質問いたします。
 まず、日本経済の現状を小泉総理はどう認識しておられるのか、お尋ねいたします。
 現在、我が国には自由社会の根幹が問われる厳しい兆候が各分野に現れています。本格的構造改革は何ら具体化しないままに、総理の説く痛みだけが国民を襲っているのです。
 今日まで国民の皆さんは、日本の置かれている困難な経済状態を肌で感じ、その打開の難しさに理解を示しておりました。その素地の上に小泉総理の一見率直で真剣な訴えを受け入れ、痛みをも理解しようと受け止められたのが小泉総理の高い支持率だったと思われます。
 小泉総理、今、我が国では一年に三万人を超す方が自ら命を絶つ悲劇が続いています。三万人といえば、地方の一都市の人口が一年間に忽然と消えてしまうことを意味しています。この異常な状況を統計数字として見るだけで、自ら死を選択した複雑な悲しみの背景を政治の責任として真剣に受け止め対応できなかったことに私自身じくじたる思いであります。
 その自殺者の中には、自分の生命保険金と引換えに、すなわち自分の命で借金を清算するという悲惨な不幸が後を絶ちません。総理のお考えを承ります。
 自民党は、今国会において国会議員の歳費を一〇%削減する方針を固めたようですが、なぜそれが一年間だけに限られているのか、根拠が分かりません。私どもは、あえて反対するものではありませんが、余りにも小手先のやり方であって、国会議員の歳費が公務員の俸給体系と関連するだけに、もっと根本的な検討をすべきと考えます。
 自由党としては、既に衆議院議員定数五十名削減を提案し、最終的に定数を三百名にする考えを明らかにしています。参議院については、これは私見でありますが、現状のままでは、抜本改革か廃止をも含めて、その在り方を検討すべきだと考えます。
 このように、政治が率先して身を削り、自らを正すことによって初めて官僚機構を本格的に改革する力を持ち、国民に痛みを求めることができると私は考えます。
 政治と金をめぐる不祥事などは許されるものではなく、政権党の責任者として小泉総理の責任は極めて重いものがあります。総理の御見解を承ります。
 これまで、国会改革などの質問に歴代の総理は、国会のことに行政府の長が口を出すことは差し控えると答弁されるのが常でありました。ところが、小泉総理の場合、その答弁は通用いたしません。なぜなら、小泉総理は、総理の立場で、善しあしは別にしても、国会の権能に介入し、議院内閣制を根底から否定する首相公選論を正式に提起し、諮問機関で論議を進めておられます。明快にお答えください。
 小泉総理は、大手金融機関や大企業には積極的に直接、間接的に国民の税金を使って救いの手を差し伸べておられます。その上、施政方針演説で述べられたように、銀行の保有株買取機構を作って公的資金で株を買い取るという手厚い対策も用意しておられます。自由経済の原則から、金融機関だけをこれ以上例外とすることは、金融機関の特性を考えても、明らかにゆがめられた政策と言わなければなりません。必ずこの施策は後遺症をもたらすでしょう。
 さらに、大手の金融機関は、大企業の借金には巨額の債権放棄を認めていますが、中小零細企業や個人商店の借金を棒引きにして再建策を考えてくれたという実例を私は寡聞にして知りません。総理は、資金繰りにあえいでいる中小零細企業の現場の状況をどこまで知っておられるのか、融資が必要な中小零細企業に資金が供給されていると本当に思っておられるのか、お尋ねいたします。
 中高年齢層だけでなく、若者の就職難はいよいよ深刻であり、言葉の羅列でなく、具体的な施策として示されなければ重大な社会問題になりかねません。総理はどうお考えですか。
 構造改革なくして成長なしという歯切れのいいスローガンで、小泉総理は九か月間国民の高い支持を受けてこられました。しかし、総理の言われる構造改革とは何なのか、いまだに分からないのです。
 現に、独立行政法人という新しい組織が行政改革や特殊法人改革の中心に据えられていますが、これは全くのまやかしです。特殊法人を衣替えさせ、多くの政府機関を独立行政法人化して、国の機関を身軽にしたと見せ掛けるだけのごまかしであります。これは直ちにやめるべきであります。
 特殊法人は、当初、全部を廃止するというのが原則のはずでありました。中でも理解に苦しむのは、道路公団の民営化と道路特定財源の一般財源化についてであります。
 有料道路は、本来、利用者の支払う料金によって建設費を賄い、その後は国道に編入して、当然、通行料は無料になる仕組みで発足したのであります。国の基幹的道路の建設と管理を民間に移譲することが構造改革とは到底思えません。総理はどういう理由で道路公団の民営化を推進されるのか、御説明ください。
 さらに、道路特定財源となる税は、国民が自分の、自分が通る道路を建設するためだから受け入れてきたのです。もし、今後、道路の建設費を減額するという小泉政権の方針ならば、運送業や個人の自動車所有者の税負担を軽くするのが税制の基本と考えます。総理のお考えをお聞かせください。
   〔議長退席、副議長着席〕
 不良債権の処理が緊急の課題であると言われる総理の考えは当然であります。しかし、住宅金融専門会社の後始末に国民の税金を六千八百五十億円使ったあのあしき前例を小泉総理に思い起こしていただきたいのです。特定の企業や業態の借金を棒引きにし、一方で大手銀行に政府が資本注入を行うというやり方は、勤勉な国民の意欲を損なうものであります。もし、これ以上、預金保険機構を通じて大手金融機関に政府が資金を投入するのなら、まず経営陣の責任を明らかにすべきであります。
 総理が議長である金融危機対応会議で次のことを決めておられます。三点であります。
 金融機関の連鎖的な破綻、連鎖的な資金繰り難、大規模な貸し渋りの発生などを想定して資本注入できる方針を決めておられるようですが、国民に分かりやすく、預金者や取引先が安心する具体的な内容を示す責任があると私は思います。小泉総理の御所見を伺いたいと思います。
 私たちは小さな政府を目指しております。
 地方自治体を適正な規模に再編して、行政の中心とすべきであります。政府は、外交、防衛、義務教育、社会保障、医療制度と基幹的な国土・交通・通信政策に責任を持ち、国民の日常生活にかかわる行政はすべて地方自治体が財源と行政責任を持つ仕組みに変えなければなりません。補助金を廃止し、その金額を地方自治体に交付して自治体の自由な判断で施策を進める改革は、自治体の統合を待たなくても今年度からでも実行できたはずであります。なぜこんなに分かりやすい改革ができないのか、総理の御意見をお聞かせください。
 今、国民の多くが消費を手控えている最大の理由は、生活の将来展望が立たないことにあります。年金制度を見直し、年金の将来像を速やかに示すべきであります。医療保険についてもこのことは同様です。私は、基礎年金、介護、高齢者医療と子供の難病の医療費について、消費税を財源として国の負担を明確にすべきと考えます。同時に、税制については、所得税制の単純化と税率の引下げを行い、税制全体を見直し、申告納税制度への移行が必要であります。
 今回の田中眞紀子外務大臣更迭の経緯によって、国民の皆様方は小泉政治の手法に疑問を持ち始めたと思います。
 小泉内閣が誕生したとき、小泉総理は一内閣一閣僚を表明されました。私もこのことには大賛成でした。この小泉総理の宣言には、二つの意味があったはずであります。
 まず第一に、半年や一年で交代する大臣が自分の考える政策を実現することは物理的にもほとんど不可能であります。官僚政治がまかり通るのは当然だったのです。
 第二に、これが議院内閣制の本質的な問題でありますが、憲法第六十六条の「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」という、これまでの内閣で形骸化していた憲法の精神を小泉総理は実践する決意を示されたと私は理解しておりました。
 具体的には、小泉内閣は、閣僚を一人でも更迭又は罷免する事態になれば、内閣全体の責任であり、総辞職することを国民に約束されたと私は当時受け止めておりました。小泉総理の真意をお聞かせください。
 政治は、何事によらず、まず基本方針を定めなければなりません。特に、世界で独特の憲法を持つ我が国の安全保障政策は、国際社会に参画する場合、その時の政府は基本方針を明確にした上で行動すべきであります。
 今回、自衛隊が、第二次世界大戦における敗戦以来、初めて海外に派遣されました。私たちは、自衛隊の海外派遣に当たり、小泉政権の憲法第九条についての解釈を明確にすることを求めました。ところが、小泉総理は、最も基本的なこの問題を避け、あいまいにしたまま自衛隊を海外に派遣したのです。
 これからでも遅くはありません。その是非は別にしても、小泉内閣の憲法解釈は、我が国が集団的自衛権を行使できるという立場に立つのかどうか、政府声明を出して態度をはっきりさせるべきと考えます。なぜならば、国連決議のあるなしにかかわらず、なし崩しに自衛隊の海外派遣が拡大し、場当たり的に日本の方針が決められることを私は恐れるからであります。
 日本が複雑さを増す国際情勢の下で、第一に重視すべきは米国との関係です。そうして、相互に信頼関係を揺るぎないものにしていくためには、日本の考えを常に正確に伝え、時には大いに議論を闘わせるべきであります。
 例えば、沖縄県に集中している米軍基地の問題についても、日本全体の問題として改めて考えるべきであります。沖縄県の基地を縮小する方向で改めて米国と話し合う必要があると考えますが、総理の見解をお聞かせください。
 もう一つ大切なことは、東南アジア、EUとともに、特に中華人民共和国と大韓民国との関係を重視すべきということであります。そのためにも、両国に対してこれまでの我が国の外交姿勢を改めるべきであります。その上で、中華人民共和国との経済関係は、その政治体制を考え、政府が十分責任を持つべきであります。
 朝鮮民主主義人民共和国との関係は、日本人拉致問題の解決を最優先すべきであります。政府が国民の生命の安全を保障することは、国家としての第一義的責務であります。この問題をうやむやにして中途半端な関係を保つことは絶対に許されないことであります。小泉総理の見解を求めます。
 小泉総理は、初めての所信表明で、長岡藩の米百俵の故事を引用して教育の重要性を述べられました。ところが、歴代の内閣が不十分ながら重視してきた科学研究費などの予算以外は、どこにも米百俵の姿はありませんでした。
 最も大切な児童生徒の教育条件の整備に関して矛盾を抱えたまま、今年の新学期から始まる学校五日制についても、総理の声は聞こえず、実施される前から、文部科学省もマイナス面をどう補うか苦労している様子がありありと見られます。また、国立大学の独立行政法人化の準備も進められています。
 小泉総理、このような組織で日本の基礎研究と高等教育が大丈夫とお考えですか。私には別の方策がありますが、教育問題に熱意を持たれる総理御自身でその是非を見極め、再検討されることを提案いたします。
 あなたは、自由民主党総裁選挙に三回挑戦され、三度目に総裁に選出されました。これまで、自民党総裁を目指すということは政権を担当するということでありました。したがって、あなたは、早くから日本のあるべき姿への展望と具体的な政策を十分用意しておられたはずであります。
 日本の抱えている問題点は既に出尽くしているのです。問題点が明らかだということは、やるべき政策は選択肢も含めて明確だということであります。
 エンジンのない、すなわち政策も理念もない、あるいは持ってはいても具体化できない与党内事情のある小泉総理が風を失って墜落するのは自業自得ですが、国民の皆さんを、そうして日本を道連れにさせるわけにはまいりません。
 かねて、総理は、構造改革に抵抗する勢力とは断固闘うと決意を述べてこられました。構造改革に反対する自民党内の勢力が本当に存在し、改革が実現しないと言われるのなら公約どおり直ちに自民党を解体する引き金を引かれるか、それができなければ小泉内閣は総辞職すべきであると申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 115415254X00720020208_014

発言者: 西岡武夫

speaker_id: 16289

日付: 2002-02-08

院: 参議院

会議名: 本会議