鶴保庸介の発言 (本会議)

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○鶴保庸介君 私は、自由民主党・保守党を代表して、小泉総理の施政方針演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 改革断行内閣と銘打ってスタートした小泉内閣も二年目に入りました。総理の改革に掛ける情熱は国民の多くの共感を得、幾つかの前進を見たところでありますが、まだ道半ばであります。これからも支持率の高低にはこだわらず、断固とした決意を固めていただきたいと思います。
 総理は、このたびの施政方針演説において、我が国が目指すべき社会として、努力が報われ再挑戦できる社会という明確な理念を指し示されました。
 しかし、日本はなぜ今こうした社会を目指さなければならないのか、いつまでに改革の工程を終えなければならないのか、また、改革にしくじったならばどうなるのかということについては、まだまだ言及が足りないのではないかと思います。国民に対し、痛みに耐えよ、こぞって改革を決意せよと言うならば、総理はこうした哲学を説かれるべきではないか。まだまだ日本には底力があるのだから、急がなくても少しずつ部分的に改革していけばいいと総理はお考えでしょうか。
 改革が志半ばで倒れてしまうか否かは、一に総理の描くグランドデザインが国民の共感を得られるか否かに掛かっていると思います。今、日本は重大な変革期にあるとの認識は、多くの国民が皆共有するところであります。国民を信じて大いに語っていただきたいと思います。
 私たち政治家にもこうした理念に基づいた政策が求められています。
 まず、経済です。総理の理念に従えば、努力が報われることを実感できるような税制改正を始め、会社を必死で立て直そうと汗をかいている経営者あるいは従業員の方々の努力が報われる社会を作らなければなりません。
 企業の再生などについても、制度インフラの整備を進めることによって再挑戦ができる社会を作るということを意味すると拝察いたします。また、再挑戦するために起業をしやすくする規制緩和も必要です。そして、その裏付けとなる金融部門の整備は焦眉の急であります。
 特に、デフレスパイラルの瀬戸際にあるとも言われるこの不景気の中で、車の両輪である事業会社と金融機関に対して、どのような再生のための制度インフラの整備が行えるかが重要であります。
 事業会社再生のためのプロジェクトファイナンス、とりわけDIPファイナンスなどは今後ますます活用されねばなりませんが、その環境整備として、いわゆるアメリカのチャプターイレブンのような法整備の可能性など、今後の事業会社の再生の具体策について総理にお尋ねをいたします。
 また、金融機関の再生策については、不良債権の処理が急がれる中で、特に今年度から来年度に掛けては大口社債の借換え時期が重なっているなどとの指摘もあります。
 一方、銀行は生き残りを懸けた合併の結果、不良社債の保有には慎重になっているとも言われます。偶然が重なったとはいえ、こうした厳しい状況下で果たして本当に不良債権処理が進むのか危ぶまれています。債権の株式化や公的資金投入の際に提出を求められる事業計画の見直しなど、具体策の有無をお聞かせください。
 次に、外交問題について質問をいたします。
 内外の諸問題が存在する困難なこの時期に外務大臣に就任された川口大臣には並々ならぬ意気込みが必要です。
 アフガン支援政府代表の緒方貞子さんは、日本の外務大臣は国会対策とか内政中心で、海外からは存在感がないことが最大の問題と指摘がありましたが、外務省改革との要請の中で、これから難しい調整が必要になってまいります。
 豊富な海外経験とリーダーシップを発揮し、大いに腕を振るっていただきたいと思いますが、一つ残念なことは、このたびの演説の中で国益という言葉はついぞ聞き及びませんでした。一国繁栄主義が成り立たないのは当然のことでありますが、国際社会が現実には各国の国益追求なくして存在していないことも受け止めなければならないと思います。
 今日の幾つかの外交政策では国民感情と乖離しているかのような印象を受けざるを得ないものもある一方で、国益は経済的観点からとらえるだけでなく、地理上、歴史上の考察を含めて戦略的な視点が必要なはずです。そうした大きな意味での国益を守っているということを国民に示すことこそ、大臣のおっしゃる国民に理解され国民に支持される外交につながるのではありませんか。
 例えば、昨年の十二月に起きた不審船事件において、国民の多くは、こうした不審船がいかなる経緯で何を目的にして潜入してきたか、大いに関心があると思います。しかし、これを引き揚げることについて、政府は明確な方針を指し示してはおりません。なぜ引揚げは難しいのか、交渉の経緯、方針を大臣にお伺いをしたいと思います。
 また、アフガンの復興会議等では積極的にイニシアチブを取っていくことは、名誉ある地位を占めたいと思う憲法の趣旨に照らしても、非常に重要なことであると認識いたしております。しかし、たとえ復興が国際社会の一時的興奮の中で騒がれていたとしても、我が国は、冷静にこれからのアフガンとの国交を戦略的に洞察する必要があるのではないでしょうか。
 かかる観点から、アフガン支援は、行うならば食料・農業分野の支援を重点分野の一つと位置付けるなど、自立につながる支援を行う必要があるのではないかと思うが、いかがでありましょうか。大臣の見解をお伺いいたします。
 歴々たる諸先輩に混じって質問をさせていただいております私は、恐らく議員としても年少に属するでしょう。しかし、私以下の世代は戦争の歴史は教育の中でしか実感できません。
 我が国が日中国交正常化三十周年を記念して、相互理解、相互信頼を醸成するとのことでありますが、必ずしも中国国内での日本人へのイメージ教育は相互信頼を生み出すものとは言えない部分もあるように思います。新たな世代がこの国を担うようになったとき、対等に相互信頼を得るためには、中国の例のように、他国の歴史教育がどのように行われているか、政府はしっかりとこれを注視していく必要があるのではないでしょうか。
 これは文部科学省のみの問題ではなく、外務省の言う相互信頼を醸成する重要な外交事務の一つではないかと思います。外務大臣の見解をお伺いをいたします。
 総理は再挑戦するという理念を目指されました。私は、もう一つ、その理念とは表裏一体のものとして、安全セーフティーネットの充実ということも重要ではないかと思います。
 挑戦というものは最低限のセーフティーネットがしかれていて初めてなし得るものであるはずであります。したがって、労働分野における雇用の流動性確保に関する諸施策の整備、福祉分野における国民が安心して暮らせる社会、将来に不安を感じることのない社会の構築は決してゆるがせにはできません。
 特に、医療、保険制度においては、昨年十一月に決定された医療制度改革大綱に基づき、医療制度の抜本的改革が進められることとなります。その中で、三方一両損の名の下に個人負担の割合を一律三割にする方針が示されていますが、改革なくして負担増なしという考えの下、総理はどのような改革案を持っているか、その内容と具体的スケジュールをお聞きしたいと思います。
 また、保守党が主張する消費税を社会保障に使用するための目的税化も、恒久的改革案としては是非とも検討されるべきであります。
 消費税を社会保障目的税として、基礎年金、高齢者医療、介護の財源に使用するという保守党の主張は、さきの大綱においても新しい高齢者医療制度の創設という形で論議を進めることが決定されておりますが、今回提出を予定している健康保険法の改正案においてもその方向性を明示すべきと考えます。総理の見解を伺います。
 また、あわせて、消費税そのものの改革として、益税の解消、インボイス方式の導入など改革を行うとともに、飲食品等については軽減税率を設けることの方向性を明示してはどうかとも思いますが、御見解をお伺いをいたします。
 総理、もう一つ国家のグランドデザインをお伺いせねばなりません。それは、都市と地方、特に国土の約半分を占める過疎の地方をどうするかであります。
 都市と地方のありようをどのように調和させてこの国土の未来を考えておられるか。こうした理念なきまま経済の合理性を持ち出すことは、それこそ抵抗があると言わざるを得ません。国土の均衡ある、あるいは調和ある発展というのが、開発至上主義でないことは当然としても、ふるさとを愛していながら、目立った産業がないために郷土を後にしなければならない事情をどうお考えになられますか。総理のお考えをお伺いしたいと思います。
 また、最近では、特に地方の市町村での合併が問題となっています。総合的、広範囲の行政サービスが求められるようになったからとか、行財政基盤の充実を図るためであるとか、関係市町村が足腰の強いものとなるためにということでありますが、市町村によってはいま一つ切実な問題として受け止められていない雰囲気もあるようであります。改めて総理から合併の理念と必要性についてお伺いし、あわせて、これからは市町村だけではなく府や県の合併も必要なのではないかと思う点について、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
 こうした地方では、多くの場合、主産業が農林水産業です。そして、こうした産業の具体的な指針が今問われているんです。総理の言う努力の報われる社会とは、農林水産業の分野においてはどのような具体論、方策でこれを担保するのでしょうか。
 特に、林業は戦後の住宅需要にこたえる形で植林がなされてきました。こうした人工林の多くがわずかな人口の過疎地域に集中し、外材との競争の中で、伐採すればするほど赤字を生み出す構造的悩みを抱えています。
 戦後五十年を経てこうした森林が伐期に来ている今、いかにしてこうした構造問題を救い得るか、経済の合理主義においてはやむを得ないとお考えならば、環境という観点からこれらの山林をどう守っていくおつもりか、お伺いをしたいと思います。
 木を育てることより息長く努めなければならないのは、人を育てることであります。
 私は、以前、ベトナムへ出張した際、現地の青年にこれからの夢は何ですかと聞いてみたことがあります。彼は、アメリカへ行って自分の可能性を試したいと希望を語ってくれました。聞くと、彼はさきのアメリカとの戦争で父親を亡くし、母親は片足を切断されていたそうで、それでも可能性のあるアメリカにあこがれる様子は、この国にある大きな問題を突き付けられたような気がいたしました。アメリカという国は憎い、でも夢は捨てられないと語った青年の情熱であります。
 総理、現在の我が国の教育には何が欠けているのでしょうか。総理は演説の中で、日本人としての誇りと自覚を持ち、新たなる国づくりを担うことのできる豊かな個性と能力を持った人間に育つようにと言われました。しかし、本当に必要なのは、総理の言う再挑戦できる社会を作るために、何度挫折してもくじけない意欲を持った人間を育てることではないでしょうか。総理の見解をお伺いします。
 最後に、努力が報われ再挑戦できる社会をという総理の理念が、今こそ問われているときはありません。
 人の幸せを定義するのは甚だ困難でありますが、人生いかに生くべきかの哲学なくして政治はないと思います。総理が総理自身の哲学をお持ちになってその実現のため努力され、それが報われるよう我々も精一杯支えてまいりたいと思います。
 ただし、この場合は、国民に与える影響を考えると簡単に再挑戦というわけにはまいらないこと、それだけの覚悟を持って当たっていただきたいことを申し添えて、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 115415254X00720020208_021

発言者: 鶴保庸介

speaker_id: 4118

日付: 2002-02-08

院: 参議院

会議名: 本会議