松下正明の発言 (法務委員会厚生労働委員会連合審査会)

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○松下参考人 皆さん、こんにちは。都立松沢病院の院長の松下と申します。
 実は、合同委員会の先生方には松沢病院をかつて見学していただきまして、その折に少しディスカッションをしていろいろ私の考えなどを伝えたということがありますが、きょうはこういう機会を与えていただきまして大変ありがたく思っておりますし、また、当時お話ししたことと重複をするかもしれませんけれども、それはお許し願いたいというふうに思っております。
 ひとまず、私の立場というのは、現場で大変多くの、この法案で言いますと対象者となりますが、その対象者を抱えて、その治療に励んでおりますが、現場から見て一体どうかという話を少しさせていただきたいというふうに思っております。
 レジュメでは「現場で困っている」という表現をしました。困っているという表現がいいかどうかわかりませんが、ともかく現場で非常に苦労をしているというところがあって、もしもそういうところが解決をすればもっと精神医療の方が発展していくのではないかというふうな思いを込めて、そういうことを少しピックアップしてみました。
 一つは、病院に入る入り口のところの話なんですが、起訴前の、不起訴になってそのまま措置入院の形、医療福祉法の対象として来る、あるいは裁判の中で心神耗弱とか喪失とか、そういう形で来る患者さんたちがもちろんすべてなんですが、どうもその辺が、いきなり最初からもう医療の方に判断が仰がれて、対象者の方にそういう対象行為に対する意識みたいなものが少し薄れてきて、それがその後の病院の中での入院治療にかなりかかわってくる、支障を来すというところが一つ。これは私自身の考え方で、司法精神医学を専門にしていらっしゃる方がそう思っていらっしゃるかどうかわかりませんが、そんな印象を一つ持っております。
 最も大きな問題は、そこにbとcというふうに書いたことなんです。bの点では、例えばよくなって、大分もう症状も薄れて、そしてほぼ社会復帰の活動もできるような状態になったときに、では実際、措置を解除して新しくまた別な形にして、あるいは将来退院をするというときに、現在のやり方では全く医療サイドだけにその判断を仰がれているので、大変それは苦慮することが多いというのが現場であります。
 すべてがそうだというわけではなくて、多くの例では、非常によくなって、実際社会復帰をしていって、そしてその後何事もないというのが大変多いわけですが、一部の方に限って言うと、多少よくなって社会復帰可能なんだけれども、もしもそれで対象行為をまた繰り返すようなことになったらどうだろうということで、大変医療の方にも責任をかぶされているので、その辺をちゅうちょして、そのために退院が長引く、あるいは入院が長引く事態が起きるということが大変あります。その辺が現場としては非常に苦慮していることが一つあります。
 もう一つは、退院をした後、現在のあれでは、普通の病院、松沢病院なら松沢病院の外来を通院して治療を続けるわけですが、いつの間にか受診しなくなる、来院しなくなるということで、患者さんたちがどちらの方向に行くのかよくわからない、その辺の不安があります。
 本当にきちっとフォローできないという体制の中で、医療だけでいくと、現行ではそうせざるを得ないのでということがあって、いろいろな事例がありますが、事例のことは余りきょうはお話をいたしませんが、そういうことでまた同じような対象行為を繰り返したといった事例があったりとかさまざまなことがあって、その辺は非常に我々現場にいる者として不安で、そういう不安がまた先ほど言ったような退院させることをヘジテートしてしまう、そういうことがあります。
 それから、もう一つの問題、これはもう当然なんですが、現在私どもの病院では、対象行為で入院している患者さんは百人近くいらっしゃる。一つの病棟は、割とそれを固めて治療をしている病棟がありますし、ほかの患者さんたちはあちこちの病棟に散らばっていて、一緒になって治療をしているというところがありますが、治療環境が余りよくなくて、例えば、看護スタッフも含め、あるいは医師のスタッフ、あるいはもちろんハードの面のスペースだとか設備も含めて、大変不十分な状況の中でやっていかなければいけない、医者にとっても看護にとっても大変ストレスの多い職場なんですが、その辺で大変苦慮していることがあるので、その辺はもう非常に大きな問題として残る。
 そのほか幾つか細かいことはあると思いますが、大きく言えばそのようなことを現場で困っていると。
 それで、私の意見、あるいは、私ども実際携わっている者の意見としては、この問題は医療だけではどうしても解決できない面があって、どうしても司法というものの力をかりて、一緒になってそういう対象者の精神医療のためにやっていかなければいけないというのが我々の共通した意見であります。
 そういう意味で、今回の法案は、入り口のところでも途中でもかなり法的な縛りというのはきちっとかかっているので、あるいは、そのフォローをする外来においてもそうなので、大変それは私どもにとっては好ましいので、ぜひこの法案は成立させてほしいというふうに願っております。
 これからの問題点は、必ずしもこの法案だけの問題ではなくて、司法精神医学という領域での問題ですが、いろいろなことがありますが、一つは、やはりこれだけが独立してひとり歩きをしていってはだめなので、一般の精神医療のシステムと非常に密な連携をとりながらやっていかないといけないという基本的な考え方があります。したがって、そういう意味では、一般の精神医療の質を極めてレベルアップしなければいけないというのは、もう当然なことだというふうに考えております。
 そのほか、今度できます保護観察所の長や社会復帰調整官の役割を、単にその名前、形だけではなくて、実体を伴った形できちっとしてやっていかないと、その人たちが非常に大きな役割をこれからとっていかざるを得ない、とっていくだろうと思いますので、その辺の実体化にできるだけ努めてほしいという願いがあります。
 そのほか責任能力の判定の問題だとか、あるいは起訴前鑑定の基準化の問題とか、さまざまなことがありますが、これは必ずしもこの法律にかかわらないことですが、そういうことも将来的にはやはり十全にしていっていただかなければ、この制度自体がうまく働かないんじゃないかというふうに思っております。
 ちょっと延びましたが、以上でございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 松下正明

speaker_id: 22224

日付: 2002-12-03

院: 衆議院

会議名: 法務委員会厚生労働委員会連合審査会