南裕子の発言 (法務委員会厚生労働委員会連合審査会)

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○南参考人 日本看護協会の南裕子と申します。
 日ごろから、先生方におかれましては、私ども日本看護協会の活動に対しまして大変御理解を賜り、心から感謝申し上げます。そして本日は、このように貴重な時間をいただき、発言の機会を与えていただきましたこと、重ねて御礼申し上げる次第でございます。ありがとうございます。
 日本看護協会は、国民の信頼にこたえるライフサポーターとして、五十四万人の会員を擁する看護職能団体として、国民、患者中心の医療、看護を目指して活動を進めてまいりました。このような立場から、まず、これからの我が国の精神保健福祉のあり方、あるべき方向性について私どもの意見を述べさせていただきたいと思います。
 改めて申し上げるまでもないことではございますが、リハビリテーションの理念、ノーマリゼーションの理念に基づいて、入院や施設での処遇ではなく、できる限り、みずからが居住する地域で治療を受け、当たり前に暮らしていくことができる、そのような地域ケアが必要だと考えます。しかし、二十一世紀になった現在でも、精神病院に社会的入院が多数存在し、立ちおくれた地域精神保健福祉施策の充実が喫緊の課題となっています。
 精神障害者に対するサービスは、その疾病の特性から、地域での日常生活において、服薬管理や病状の変化への対応など医療のかかわりを必要とする場合が多く、服薬を中断したり、日常生活上の問題、トラブルがきっかけになって病状が悪くなることがあります。このように疾病と障害をあわせ持つ精神障害者への施策には、医療と福祉の連携が不可欠でございます。
 こういう連携を看護の視点から見ますと、社会復帰施設に看護職員を配置すること、訪問看護を拡充すること、地域生活支援センターを身近な地域に設置して、日常生活上の問題や悩みなども安心して気軽に相談できる窓口をつくることなどの体制を整備することが重要と考えます。
 精神障害者の地域生活を支援するためには、このような精神保健福祉施策にとどまらず、年金、医療、福祉・介護、雇用などの社会保障制度全体で、そして住宅政策も含めて総合的に推進することが必要でございます。そして、国、都道府県、市町村、保健、医療、福祉の関係機関、当事者団体やボランティアグループなどNPO、さらに地域住民などの協働で、重層的、総合的に支援する取り組みがぜひとも必要でございます。
 現在、社会保障審議会障害者部会精神障害分会において、社会的入院七万二千人の解消と精神病床の削減が検討されておりますが、このような基本的な立場からも、ぜひとも、国民、患者の視点、利用者の立場に立った施策をまとめていただきたいと存じます。
 次に、まず、法案に関します私たちの考え方を述べさせていただきます。
 法案につきましては、池田小学校事件を契機にして法律案が拙速に取りまとめられたのではないかという疑問を感じながら、これまでの国会審議を見守ってまいりました。法律案は、精神障害のために心神喪失等の状態となり重大な他害行為を行った者に対して、地方裁判所における審判や入院、通院等の処遇などを規定する新たな制度が現在審議されております。
 私どもは、先ほど申し上げましたように、精神医療の方向性、精神保健福祉施策のあり方を踏まえて、今回の法律案が精神保健福祉の現場にどのように受けとめられているのか、さまざまな疑問や不安を感じているということについて心配しておりました。政府においては、こうした疑問や不安にこたえて、関係する団体に法制度の説明と理解を得る努力をお願いしたかったと思います。
 特に、いわゆる再犯のおそれの要件につきましては、社会防衛的な役割を医療が担えるものではないことを心配しておりました。むしろ大切なことは、このような不幸な事件が起こらないように予防することでございます。そのために重要なことは、地域精神医療体制の充実と国民の精神障害者に対する偏見を払拭することです。もちろん、医療は犯罪防止を目的とするものではありませんが、地域での体制整備により、結果として不幸な事件を防ぐことができるのです。
 さらに、地域での受け皿が不十分なままでは、法律案の対象者の社会復帰は困難でございます。まずは地域生活を支援する体制をつくる必要があります。そのような意味からも、政策の優先順位、プライオリティーに問題がなかったのか、法律案に関しては疑問に感じておりました。
 このようなときに、塩崎議員外二名提出の修正案が出されました。修正案は、社会復帰という視点を明確にしようとしていることや、対象者等から退院の許可等の申し立てを制限する期間の撤廃、そして附則修正によって、精神医療等の水準の向上を規定するとともに、五年後の見直し規定を盛り込んでおります。私どもは、このような修正案に対して、今後の精神医療の充実の道筋を明確にするものとして評価しております。
 私どもは、法律案の対象者をなぜ重大な他害行為に限定するのか、精神保健福祉法の措置入院制度とどう違うのか、精神科治療では、犯罪に当たる行為の有無でその治療方法、治療内容は変わるものではありません。むしろ、薬物の効果が得られないなどの治療抵抗性や、職員や患者に対する暴力等の処遇の困難というものが現場では問題になっています。
 また、我が国の病院病床数百六十四万床のうち、精神病床は三十五万床です。二〇%以上が精神病床であるにもかかわらず、医療費に占める割合はたったの五%にしかすぎません。人員配置基準については、一般病床の医師数が入院患者十六人に一人、看護師数が入院患者三人に一人ですが、精神病床の医師数は入院患者四十八人に一人、看護師数は入院患者四人に一人と、一般病床と依然格差があります。
 このような格差を解消するために、特に救急などの急性期医療を初め、薬物専門治療病棟、児童思春期病棟、身体合併症病棟、さらに措置入院指定病院の指定基準につきましても、一般病床以上の人員配置基準とすることが必要だと考えております。そのような意味で、精神医療等の水準の向上を掲げた附則修正を評価いたします。そして、改善すべき課題につきまして、審議を通じましてより具体的に、より明確にしていただきたいというふうに思っています。
 修正案の、施行五年後の検討規定につきましても、起訴前、起訴後の精神鑑定や刑事施設等における医療提供体制など、刑事司法と精神医療の運用状況についても専門的な検証を加え、その上で制度全般にわたる検討を行うことが必要だと考えます。
 また、国会報告は毎年実施することが望ましいと考えますが、いかがでしょうか。情報公開が適切に行われて初めて国民の疑問や不安が軽減されると思います。
 限られた時間の中で、言い足りないところなどございますが、今回の法案が、刑事司法や精神医療の現状の検証と改善並びに地域精神保健福祉施策の具体的な充実への道筋を確実なものとしていただけたら一歩前進だと考えます。以上の私どもの意見、要望につきまして、今後の国会審議に反映していただければ幸いでございます。
 日本看護協会は、先頭に立って精神障害者の地域ケアに全力で取り組む所存でございますので、引き続きよろしく御指導のほどお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 南裕子

speaker_id: 25083

日付: 2002-12-03

院: 衆議院

会議名: 法務委員会厚生労働委員会連合審査会