吉川春子の発言 (憲法調査会)

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○吉川春子君 日本共産党、吉川春子です。私は、四点について御報告いたします。
 まず、参議院議員として興味深かったのは、二院制に対する評価と改革についてです。
 両院が対等な権限を持つイタリーでは、現在、上院改革の憲法改正の審議が行われており、フランス、ベルギーでは上院の権限は我が国同様、下院が一定優位の規定が設けられています。同時に、上院は、お話にもありましたように、熟慮の院とか賢者の府とされ、生命倫理や非嫡出子など重要テーマについてじっくりと審議を行っています。
 ベルギーの上院議長が、世界は上院が増えている、二院制は人権保障のとりでだ、一院制はポピュリズムの危険がある、上院の持つ重要性に照らせばその経費は問題ではないと指摘されていました。日本でも、参議院があると法案が成立しにくいと一院制を主張したり、議員の数を減らしさえすればいいとの考えがありますが、これは危険だと思います。
 私は、参議院が民主主義発展に果たしてきた役割を明らかにし、また一院制の問題点も調査し、参議院は不可欠であることをアピールする必要を痛感しました。
 第二は、各国とも法律や行政処分の合憲性が裁判所で積極的に判断されている点についてです。
 イタリーでは年間八百から千件の提訴があり、四、五百件の判決を下しています。違憲と判断された法律は、さかのぼって無効とされます。ベルギーでは人権問題を更に全面的に審査できるよう検討中、フランスでは憲法裁判所のほかに行政裁判所があり、年間十万件の行政訴訟の一割はコンセイユ・デタに、行政裁判所に上がってきており、人権保障の役割を果たしています。
 フランス憲法院には懐かしいモンテスキューの像がありましたが、今や三権分立ではなく、憲法院が国会よりも強い権限があることに驚きました。我が国では、内閣と国会の法制局が合憲性について事前審査しますが、各級裁判所が合憲、違憲の判断をいろんな理由を使って避けています。人権保障のためにも、憲法判断を活発に行うべく、憲法の改正ではなく、運用の問題として考えるべき課題です。
 第三は、憲法改正についてです。
 印象的だったのは、フランスが人権カタログを持たず、一七八九年のフランス革命当時の人権宣言と第四共和制の憲法の尊重で十分であり、人権問題の対応は個別対応で可能、上院法務副委員長がおっしゃっていました。憲法を変える動きはほとんどないということです。
 確かに、フランスで憲法改正はしていますが、それは行政機構とか手続条文で、日本でいえば法律事項です。また、フランス人権宣言は女性には向けられていませんので、女性の権利について一九四七年に改憲されました。また、憲法院の構成の三分の一は女性とされ、最近、選挙の候補者を男女平等にすることの改正が行われました。フランス人権宣言の思想を受け継ぐ日本国憲法は、五十年たったから古いなどと言えるでしょうか。また、共和制など基本理念についての改憲はできませんし、問題にもなっていないそうです。
 ですから、戦争放棄等基本理念の改憲が問題になっている日本と簡単に比較はできません。新しい人権を取り入れるなどとして、諸外国の憲法改正の回数や容易さをそのまま日本に当てはめることはできないのです。
 第四に、欧州連合、欧州評議会の活動は大変刺激的でした。
 二〇〇二年一月から通貨統合が行われ、国は移動しても通貨は同じ、パスポートの提示も求めない。ヨーロッパは一つが一層進んだ感じです。欧州基本権憲章制定の方向を目指し、ソ連、東欧の激動を契機に、第二次世界大戦直後から営々と進んできた人権、民主主義、法の支配を共有する流れが一層進んでいます。欧州人権裁判所の活動は高く評価され、提訴も激増し、自らの成功に押しつぶされそうだと語っていました。
 ヨーロッパを戦場にしない。独、仏、再び戦わずと。主権を制限する連邦制か国家連合かと壮大な実験が行われています。EUの最終目的は外交・防衛政策の一致という意見もありました。日本国憲法は既に五十数年前、平和のために交戦権を行使しないと主権の制限を宣言しています。
 各国が平和の価値観を共有できる日が遠くないことを期待し、私の報告を終わります。

発言情報

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発言者: 吉川春子

speaker_id: 26901

日付: 2002-10-30

院: 参議院

会議名: 憲法調査会