舛添要一の発言 (憲法調査会)
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○舛添要一君 自民党の舛添要一です。
基本的人権の問題につきまして、まず第一は、障害者の人権について申し上げたいと思います。
先般、十一月二十八日に東京地裁の判断が出ましたけれども、ALS患者、つまり筋萎縮性側索硬化症、ALSと、これは全身の運動神経細胞だけが侵されます原因不明の神経難病でありまして、だんだん進行していきますと体を動かすことができなくなるということで、現在、四月現在で国内のALS患者が六千百八十人、そのうち三千人弱が人工呼吸器を着けて在宅介護を受けているという状況でありますけれども、こういう方々が投票に行けないということが憲法違反であるという訴えをなしました。東京地裁は、賠償請求については棄却いたしましたけれども、代筆で書けないということは違憲状態であると、こういう判断を述べております。
これは立法府としても怠慢でございますし、賠償請求の棄却の理由は、その当時こういうことが、憲法制定当時予想されていなかったということでありますけれども、今日、障害者の人権ということを考えますと、こういう難病の方々が自分の意思で投票するということを担保する制度を早急に作る必要があるというふうに思っています。
私は痴呆症の母親を抱えておりましたので、体は動いても、例えば痴呆で判断能力はなくなった、こういう方々の投票行動は極めていい加減でございまして、悪い例を申し上げますと、老人施設の理事長さんが、じゃ皆さんこの先生でいいですね、そうしましょうねと言って、ある特定の候補に全部入れるというようなことが行われているわけです、片一方で。ところが、ALSの患者は、筋肉は動きませんが毎日、新聞を読んで判断力は極めてクリアなんです。そして、今はIT時代でありますから、目の筋肉は動くんですね、まぶたの。そのまぶたの動きを言葉に換えることができるんです。ですから、先進国としては、こういう装置を入れてそういう方々の投票権を確保するということが、憲法十四条の法の下の平等、それから憲法十五条の普通選挙権、こういうことの要件を満たす道であると思います。
障害者を社会参画させないで、健常者の払った税金であたかも恩恵を与えるかのごとく措置をしていくという時代ではなくなったことは、介護保険の導入を見ても分かると思います。障害者の方々が社会参加をして、むしろ納税者として活動できるような、活躍できるような、そういう国にするということが我が日本国憲法の基本的人権の理想だと思いますので、技術的な進歩で十分可能だと思います。これ、我々の力で是非実現したいというふうに思います。
先般の東京地裁の判断ですと、現行の公職選挙法、これは七四年に改正されましたけれども、そのときにALS患者は入院を続けるのが通常だったので、病院など指定された施設の代理投票は可能な状態だったということを言いまして、在宅でおられる方々の投票の機会を奪われることについての配慮は何もなかった。介護保険が入りました。在宅の方がたくさん増えました。したがって、これ二つ問題がありまして、先ほど申し上げましたけれども、体は動くけれども痴呆症で判断能力がなくなった方、これはかつては禁治産、準禁治産、現在においては成年後見制度、これの制度というようなことがございます。私は母親を禁治産にしましたので、彼女はその段階で参政権を奪われました。しかし、逆に、体は萎えているけれども判断がある方々の投票権をどうするか、これを一つ問題提起にしておきたいと思います。
もう一つ、アメリカにはADA法がありまして、障害者の社会参画を妨げないようにすべきであると。我々もバリアフリーということを考えておりますし、それからノーマライゼーションということを申し上げておりますけれども、こういうことは新しい先進国の必要な法的要件としてちゃんとやるべきだと、そういうふうに思っていますので、是非障害者の方々のこの憲法で定められた普通選挙権、法の下の平等、その他の基本的人権を奪わないような施策が立法府としても必要だろうというふうに思います。
たまたま先般、ALS患者についての東京地裁の判断が出ましたので、まずその点を申し上げたいと思います。
続きまして、外国人の参政権についてでございますけれども、これも様々な議論がございました。
お許しをいただきまして、私が書きました、朝日新聞の学芸欄に書きましたこの論文を皆さんにお配りしております。これは、二〇〇〇年の六月二日の夕刊に掲載、朝日新聞の夕刊に掲載したものなんですけれども、私の父親が市会議員の選挙に戦前出たときに、ポスターにハングルのルビが打ってありました。これがなぜだろうということを非常に歴史学者として興味を持ちまして、そこにもありますけれども、現物のコピーはこれぐらい大きなやつでハングルが振ってあります。
実は、今日における外国人参政権の問題を語る前に、どうしても日本の植民地時代の話で事実がよく知られていない。結論から申し上げますと、この時期、そのときは朝鮮人と呼んでいましたけれども、日本にいる朝鮮人の方々は参政権のみならず被参政権もあったわけであります。この事実は相当の知識人でも、日本人も知らない、学校の歴史でも教えていない、ソウルに行って韓国の学者と話しても知らない。でありますから、是非議論の前提としてそれを分かっていただきたいというふうに思います。
そこにも書きましたけれども、一九二〇年に内務省が朝鮮、台湾、樺太人といえども選挙権に要するすべての要件を具備するにおいては選挙権を有するということを既に決めてありました。そのときは納税額という要件があったんですけれども、普通選挙の実施とともにそれがなくなりまして、二十五歳以上の帝国臣民たる男子で、衆議院議員については一年以上、地方議会議員については二年以上、同一市町村に居住する者は日本人も在日朝鮮人も、選挙権も被選挙権も、参議院は三十歳以上ですけれども、付与されていたわけであります。
しかも、日本語を書けない朝鮮人がいますので、内務省が三〇年一月にローマ字と同じく朝鮮文字の投票を有効とすることに省議決定をしているわけです。ローマ字と同じくというのは、既にローマ字で書いてもよかったわけです。ですから、植民地時代の帝国臣民と現在の状況は比べ物になりませんですけれども、戦前のある時期におきまして、ローマ字で書いてもよろしい、ハングルしか分からない人はハングルで書いてもいいと、こういう時代があったわけであります。
その後は戦争の進行とともに強制連行、弾圧、抵抗といった事態が起こってきますけれども、こういう時点を、こういう歴史があったんだということを踏まえた上で外国人の人権の問題も考えるべきだと思います。
私は、帰化要件を非常に緩くするならば、是非帰化していただくということは結構だろうというように思います。しかし、帰化要件が非常に厳しいままであるならば、外国人の地方参政権というのは同じ地域に住む人間として認めるということは一つの考え方であっていいと思います。
それから、もう一つは、今イラク情勢も北朝鮮をめぐる情勢も緊迫化しておりますけれども、大量の難民や亡命者が日本に来るということが当然想定される。そのときにこういう方々の人権をどうするか。これも国際情勢との絡みにおきまして十分考えておいていいことかというふうに思います。
特に、この外国人参政権と難民、亡命者の問題というのは、お隣の国、とりわけ朝鮮半島との関係が非常に深いわけでありますけれども、今、日本におります永住外国人の約九割が在日韓国・朝鮮人でありますし、想定される難民の問題も北朝鮮絡みの話でございます。
したがって、そういう新しい事態の発生ということを想定されたときに、我々は憲法を解釈するときに足りないものは立法府で補っていくと、そういう観点が必要であろうかというふうに思います。
以上二点、障害者の人権の問題と外国人の人権の問題、問題提起をしたいと思います。
ありがとうございました。