小泉親司の発言 (憲法調査会)

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○小泉親司君 日本共産党の小泉親司でございます。
 基本的人権に関連して発言をさせていただきたいと思います。
 まず指摘をしたいのは、皆さんも御承知のとおり、日本国憲法は人権に関して大変先駆的な内容を持っているというふうに思います。第三章の国民の権利及び義務では、十九条で思想及び良心の自由、二十条での信教の自由、二十一条での集会、結社、表現の自由、二十三条の学問の自由など、国民の市民的権利、政治的権利を明記していると思います。同時に、日本国憲法は、国民の生存権、二十七条、二十八条の労働基本権、それから二十六条の教育を受ける権利などの社会権を規定していることが大変先駆的だというふうに思います。
 社会権は二十世紀の世界史の大きな流れから確立されてきたもので、十九世紀までは人身の自由、言論の自由、宗教の自由など、国家の介入を許さないという意味での自由権が人権の中心でありました。しかし、一九四八年の国連第三回総会で採択された世界人権宣言、この中では、何人も社会の一員として社会保障を受ける権利を有し、かつ国家的努力及び国際的協力を通じて、また各国の組織及び資源に応じて自己の尊厳と自己の人格の自由な発展に欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利の実現に対する権利を有すると規定されたところであります。
 こうした社会権を明確に規定しているのは、サミットの七か国の中でも日本とイタリア以外にはないと。イタリアの憲法は第二条で、共和国は個人としての、また、かの人格が発展する場としての諸社会結合体においての人間の不可侵の権利を認めかつ保障するということを規定をしております。
 これらの点については既に、当調査会でも議論が開始された基本的人権に関する調査でも、例えば戸波江二参考人は、社会権は十九世紀の自由主義社会のもたらした社会問題、貧富の差だとか富の偏在だとか、いろいろそういう社会問題が出てきて、それを克服するために社会権の考え方が出てきた、この社会権が入っている憲法というのはヨーロッパや西欧の憲法では比較的少ない、日本国憲法はこの社会権の規定を入れているところがとても画期的なところだと述べていることでも明らかだと思います。
 この点は大変憲法の先駆的なところであって、私は、第九条の恒久平和主義の問題ばかりじゃなくて、基本的人権においても日本国憲法を改正する必要は全くないというふうに思います。今、大事なことは、憲法の先駆性をいかに現実の国民生活に反映させていくのか、憲法を生かした国づくりを進めることだというふうに思います。
 二番目に発言をしたいのは、それでは日本国憲法の先駆性が現実の政治にどのように生かされているのか、その点であります。
 この点については、憲法調査会の最も大事な仕事は日本国憲法についての広範かつ総合的な調査を行うということでありますので、憲法調査会が今後の人権問題のテーマで調査追求すべき大変重要な課題であるというふうに思います。
 憲法と実態の乖離の問題については、既に今国会では基本的人権に関しまして、もう二十人の参考人から意見をお聞きしておりますけれども、この中でも大変様々な意見や示唆があったと思います。十一月十三日に行われました「経済的自由」についての調査では、戸波江二参考人が、日本国憲法は経済の放らつな自由は認めていないということを述べられております。西谷敏参考人からは、労働法というものは、端的に言えば、使用者の一方的な決定、つまり経済的自由を規制すること、ここに最も基本的な性格を持っているというふうに述べられて、憲法と労働基本権との関係についての指摘がありました。
 憲法に照らして、今日の労働現場を見た場合の問題についてどうなのかと。この点についても何人かの参考人から、例えば、ホワイトカラーの長時間の労働は依然として過労死の問題とか様々な社会問題を生み出しており、企業経営上の効率性だけを重視して社会保障の観点が欠落しているとか、派遣労働者の勤務条件が非常に問題がある、あるいは派遣契約が途中で解約されて簡単に事実上解雇される、あるいは派遣先による事前面接という法律上許されないような行為が横行しているといった問題が指摘されているところで、労働現場での労働者の実態が憲法と乖離している現実が指摘されているというふうに思います。
 また、現在の日本の大きな問題は憲法自体にあるのではなくて、憲法自体が現実の社会なり、あるいは現実の政治あるいは政策の中で十分考慮されていない、そこにむしろ基本的な問題があるんだと、国会の議論の中でももっと憲法論を、憲法を踏まえた政策論をやっていただきたいという御意見もあった。
 こうした指摘をやはり調査会もしっかりと踏まえて、一層この憲法と実態の問題での乖離の問題についての議論を深めていく必要があるのじゃないかというふうに私は思います。
 憲法と現実との乖離の問題でもう一言付け加えさせていただきますと、最近、国民の人権がますます制限、統制の方向に進んでいるのではないかと、そうした動きに私は大変懸念を表明するものであります。
 さきの通常国会と今国会でも、憲法で保障されている基本的人権も公共の福祉のために必要な場合には合理的な限度において制約が加えられることがあり得るといった有事法制や、国民のプライバシー侵害が問題となった防衛庁のリスト問題、人権擁護法案、個人情報保護法案などが現在議論になっております。本来、民主主義国家においては国民の人権が国の支配権力から守られることが基本であるにもかかわらず、公共の福祉を理由に国家権力が人権をゆがめるといったこのような動きに対して多くの国民が疑念を持っていることは、今国会の状況が端的に私は示しているというふうに思います。
 このように、憲法の理念と国民の置かれている現状は大きく乖離しているというふうに言わざるを得ないと思います。調査会の中でも、広範かつ総合的な調査というテーマで、やはり憲法と実態の乖離について十分な調査を行うことが必要であるというふうに思います。
 三つ目には、環境権とプライバシー権、いわゆる新しい権利の問題について最後に発言をさせていただきたいと思います。
 四月二十四日の参考人の質疑で戸松秀典参考人は、環境権を十三条なり二十五条なりそういうところから読み取って、憲法上の権利ではあるけれども、それを実現するためには環境保全にかかわる様々な立法をしなくてはいけない、その立法の下に具体的な施策がなされれば、それで環境権なる人権が具体的に保障されるというふうに述べておられます。また、五月八日には初宿正典参考人から、プライバシーの権利については十分に現行の憲法十三条の解釈として読み込み得るから、これを改めて明文で、改正で取り入れるべきだとは考えていないというお話がありました。
 そもそも、新しい人権は私たちは、憲法の人権規定を踏まえて国民の運動によって発展的に生み出されてきた権利であって、第十三条の幸福追求権の問題点など、現憲法の人権規定によって根拠付けられているというふうに思います。我が党は、憲法が、国民の経済生活上の権利を含めまして、世界でも最も、世界でも先駆的な基本的人権の規定を持っており、それらを基礎とすれば環境やプライバシーの問題などにも十分対応できる懐の深い構造を持っていると考えております。このことは、この間の憲法調査会の議論や参考人の指摘を通じても一層明らかになったのではないかというふうに思います。
 このように、私たちは、新しい権利は憲法の改正ではなく憲法の基本原則に基づいて法律でしっかりと保障されるべきものだというふうに考えております。
 以上で発言を終わります。

発言情報

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発言者: 小泉親司

speaker_id: 29210

日付: 2002-12-04

院: 参議院

会議名: 憲法調査会