大脇雅子の発言 (憲法調査会)

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○大脇雅子君 私は、労働者の基本的人権の一つである労働基本権について付言したいと思います。
 憲法の二十七条は勤労権を保障し、二十八条は団結権、団体交渉権、争議権を保障しております。労働基本権は生存権的社会権に属するもので、国家が積極的な規制と関与を及ぼすことを容認する人権概念であり、十九世紀が自由権を保障したということを考えれば、二十世紀は社会権を保障するという世紀であったと思います。
 そうした社会権の中で、労働基本権というのは中核的な権利を持つということを強調したいと思います。
 とりわけ、自由権的側面としては、国家による不当な制限の禁止、団体行動に対する刑事罰の禁止、集会、結社の自由の自覚的行使としての争議権というものが保障されるべきでありますし、生存権的側面からいたしますと、対使用者の関係における権利性が強調され、企業活動の自由が一定程度の制限を受けると。団結権侵害行為は無効であり、使用者による団結への不当な介入は不当労働行為としていわゆる禁止されておりますし、ストライキ等におきます民事責任の免責が行われる。とりわけ、スト権は強制労働からの自由ということで、自己決定の権利で、労働契約に基づいて労働条件を決定するという権利が労働者に保障されているわけであります。
 こうした憲法理念の下からいたしますと、現在、ILOより、ILOの結社の自由委員会の中間報告が出されました。これは、平成十四年十一月の二十日の段階でありまして、この勧告部分は何を言っているかといいますと、この委員会は、公務員制度改革の理念及び内容について、法令を改正し、そして結社の自由の原則と調和させる権利から、率直かつ有意義な協議を行うように強く勧告すると言っております。
 問題点は、消防職員や監獄において勤務する職員への団結権を認めること、それから国の行政に直接従事しない公務員、例えば国家公務員であれば郵便ですし、地方公益事業からいえば水道、清掃など当たりますが、この人たちの結社の自由の原則に沿った団体交渉権やストライキ権を付与するようにと、そしてストライキを行う権利を正当に行使する公務員が重い民事上又は刑事上の制限に服さないための法令の改正を求めております。
 さて、日本の法令を見てみますと、警察職員、消防職員、海上保安庁職員あるいは監獄に勤務する職員は国公法の百八条の二、五項によって団結が制限されております。そして、警察職員、消防職員は地方公務員法五十二条五項によってこれまた団結権が禁止され、不当労働行為制度が存在しておりません。団交権に関しましても、非現業の国家公務員は協約の締結権がありませんし、そうした地方公益事業に関する人たちも制限をされております。
 スト権というのは、強制労働の禁止から生存権あるいは自由権の基本的な問題を阻害をしているということで、国公法九十八条はスト権を禁止しておりますけれども、代替措置を出さない限りはこれは無効だという判例もございます。
 働く権利というものは、憲法は工場、企業の外で立ち止まると言われておりまして、とりわけ国家公務員あるいは地方公務員の国際法上の理念から見た法改正、憲法理念の貫徹が必要になると思います。
 さて、民間労働者については、労働基準法が、憲法二十七条によって勤労権を保障し、最低限度の労働条件を規定しているわけでございますけれども、このところ、労働基準法における時間外労働の蔓延とリストラの影響で一人の仕事量が増えているということも一因で、厚生労働省も残業実態に関する緊急調査を行うというふうにいたしました。
 このところ過労死、とりわけ過労自殺を含む精神障害も含めました件数が増加しておりまして、過去最多のペースでございます。脳血管疾患及び虚血性疾患などいわゆる過労死の事案の労災補償状況も請求件数も伸びておりますし、認定件数も基準の緩和により増えております。
 このような点においては、やはり憲法の働く権利の理念と現実が果たして妥当しているのかどうかという観点から調査、是正が必要であると思います。さらに、雇用機会均等法とかパートタイム労働者の雇用管理に関する法律というものがございますが、とりわけこのところは正社員が減りまして不安定雇用労働者が増えております。そして、パートタイム労働者と通常労働者との賃金等の格差は拡大の傾向にございます。パートタイム労働者というだけで通常労働者と差別をされている賃金その他の労働条件、あるいは派遣や契約社員のように雇用形態が違うという理由だけでの差別的な処遇、有期契約であるということで業務自体が有期性がないにもかかわらず通常に有期性を導入いたしまして、有期性であるが理由で解雇、雇い止めをしたり、あるいは労働条件に差を設けるというところで、今現在、憲法における平等の規定にかかわらず様々な差別が職場では横溢しております。
 それから、社会保障に関しましても、年金、医療、失業、生活保護等、非常に制度自体の維持が不安定なところに来ております。憲法が本当に守られているのか、あるいは生かされているかということを検証をしていく必要があると思います。そして、そうした憲法で保障された権利が現実に具体的な権利として確保されているかどうか、個別法の検証と改正が必要であることを提言して、私の意見陳述とします。

発言情報

speech_id: 115514184X00520021204_012

発言者: 大脇雅子

speaker_id: 18926

日付: 2002-12-04

院: 参議院

会議名: 憲法調査会