松山政司の発言 (憲法調査会)

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○松山政司君 本日は、「基本的人権」のテーマのうち、その根本的な問題である人権と公共の福祉、そして権利と義務の問題について意見を述べさせていただきたいと存じます。
 私は、去る五月二十九日の当調査会におきまして、百地章、中島茂樹両参考人に対して質問をさせていただきました。その際に、次の三点の問題を強調いたしました。
 一つは、人権と公共の福祉のバランスの問題であります。
 すなわち、我が国は戦前、過度に国家や社会を強調し過ぎた反動で、戦後は逆に権利と自由が過度に主張され、自分さえ良ければよいというエゴイズムが社会全体に蔓延するようになってきたのではないかと。そして、憲法制定後、既に半世紀が経過した今だからこそこのような極端から極端に振られた振り子を真ん中に戻して、普通の姿に戻す必要があると。そのために、まず憲法の公共の福祉の規定を見直す必要があるのではないかということを訴えさせていただきました。
 二つ目に、公共の福祉の内容の問題であります。
 公共の福祉は人権相互間の矛盾の衝突を調整するための原理であるとの有力な学説の影響の下で、国家、公益の利益あるいは国民全体の利益のために人権を制限することに過度に抑制的な対応が取られてきたのではないかと。そこで、このような公共の福祉についての解釈をまず見直す必要があるのではないかということを訴えてまいりました。
 次に、三点目に国民の義務の問題です。
 これについては、権利と義務は表裏一体の関係にあると、絶対的な自由や権利はあり得ずに、自由には責任が、そして権利には義務が必ず伴うものであると、基本的にそういう認識に立った上で、日本国民として果たすべき必要最小限の義務は憲法に明記すべきではないだろうかと。そしてその具体的な例として、国民の遵法義務あるいは国を守る義務、環境保全の義務を検討すべきではないかということを訴えさせていただきました。
 このような問題提起に対して、百地章参考人からお聞きしましたのは、第一点目の、戦後は人権至上主義的な風潮が蔓延しているが、個人と国家のバランス、公益と私益のバランスを取っていく必要があるとのお答えが、また第二点目は、公共の安全、秩序や公共道徳、国民生活全体の利益の維持など社会的利益や国家の存立維持などの国家的利益のためには人権の一定の制約はやむを得ない、したがって戦後の議論を見直してもう一度公共の福祉の概念を明らかにしていく必要があるとのお答えがございました。三点目は、憲法が国家権力の行使の根拠を与える授権規範であるとの見地に立てば、国家権力を一方的に制限すればよいというものではなく、国家を維持するために必要な義務は憲法に明記する必要があり、遵法の義務や国を守る義務は当然憲法に明記すべきであるとお答えがありました。
 このように、私の考えと軌を一つにするその百地参考人のお話には大いに勇気付けられた次第であります。
 そこで、このような基本的人権の大前提とも言うべきその自由と責任、そして公益と私益のバランス、公共性への配慮、他人の人権への思いやり、そして法律を守る精神、こういった姿勢を国民みんなが持つことが大切でありますが、そのためには、やはり子供のうちからこのようなことをしっかりと身に付けさせる教育が非常に重要であると思います。特に、権利と義務は表裏一体であることを学ばせる必要があるというふうに思います。
 このような観点から、私は、現在政府において進められております教育基本法の見直し作業を大いに評価するとともに、更に一段の踏み込みと改正の早期実現を強く訴えるものであります。
 さて、憲法制定後、既に半世紀が経過をいたしました。そして、今や二十一世紀という新たな世紀を迎えております。そのような中で、我が国は大きな変革のあらしの中にあると認識をいたしております。工業化社会から情報化社会へ時代が大きく転換する中で、それに伴う様々な問題が生じております。また、バイオテクノロジーなど科学技術の発達が生命倫理などに深刻な影響を与えております。さらに、少子高齢化、そして我が国の社会の構造変化も進行しつつあります。このような時代が大きく変化しつつある今だからこそ、憲法を見直し、新たな時代にふさわしい憲法に改めていくべきではないでしょうか。これは正に時代の要請でもあると認識をしております。
 その際、私は、現行憲法の優れた点は大いに生かしつつも、同時に我が国の歴史、伝統、文化を踏まえて、そして日本という国の、また国民の座標軸をしっかりとらえた言わば地に足の着いた憲法であるべきと思います。
 そのような観点から、今後のこの参議院の憲法調査会で更に一層積極的な活動を進めていけることを期待するものであります。
 以上です。

発言情報

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発言者: 松山政司

speaker_id: 33728

日付: 2002-12-04

院: 参議院

会議名: 憲法調査会