井上喜一の発言 (憲法調査会)
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○井上(喜)委員 今、イラク問題、北朝鮮問題がありまして、我が国の安全保障をどう考えていくのか、現行憲法あるいは日本が加入しております条約、これについてどのように考え、どのような運用をしていくのか、こんなことじゃないかと私は思いました。憲法をどうつくっていくかというのはそれとして、別に問題がありますけれども、現行の憲法、条約を前提とすれば、このイラク問題、北朝鮮問題を前提にいたしまして、どのように日本が安全保障問題を考えていくべきか、こんな問題じゃないか、そういう問題意識を持ちまして、これから述べてみたいと思います。
日本国憲法の安全保障の規定というのは、ちょうど日本が占領下のときでありまして、色濃く占領政策が今の憲法に反映されておりまして、まさに武装解除そのものというような状況でありまして、そういう中でどう考えていくのか、こういうことだと思います。
確かに、第二次世界大戦後の状況を見ますと、世界的規模の非常に大きな戦争とか紛争、そういうのが発生する可能性というのは大分低下をしてきていると思うんです。これは、第二次世界大戦前と非常に違ったことだと思います。相互依存関係が非常に強化をされてくるとか、あるいは、国際的に協調する場面が多くなってきておりまして、言いかえれば、外交的にいろいろな問題が解決できるような状況も出てきている、こんなようなことが背景にあるんではないかと思います。しかし、他面、宗教、人種なんかを原因といたします地域紛争が増加していることも、これまた事実でございます。
我が国につきまして、それじゃこの周辺の状況をどう認識するかということでありますけれども、私は、我が国の周辺、これは北東アジア地域と言ってもいいのでありますけれども、非常な不安定要因に囲まれているといいますか、不安定要因が多く存在する地域じゃないかと思います。
これは、民族とか言語とか政治体制も違うということで、言ってみれば、共通性が余りない地域じゃないかとも思いますし、また、非常に大きな軍事力が存在している地域とも言えると思いますし、さらには、政治体制としても不安定な国もありますし、我が国との間に国交がいまだ樹立をしていない国、あるいは領土問題を抱える国などもありまして、私は、我が国の平和と独立の確保のためには、また、今日のこの繁栄、こういったものを維持するためにも、今日の我が国の周辺の状況を見ましたときに、今まで以上に、これまで以上に安全保障の体制を強化していく必要がある、こういうぐあいに認識すべきじゃないかと思います。
そういう意味で、より積極的な、より強い安全保障の体制の構築というのが求められている、こんなふうに考えます。ただ、我が国一国だけで安全保障の体制を完結していく、こういうことは不可能でもありますし、非現実的なことであることは言うまでもないわけでありまして、そういう意味では、可能な限りの我が国の防衛力の整備をするということは当然にいたしましても、他国との協調によりまして対処していくということが必要だろう、こう思います。
我が国自身の問題として考えなくちゃいけない問題があると私は思うのであります。それは、憲法との関係でいいますと、憲法解釈によってできるのか、あるいは憲法改正しないといけないのかという、この辺の問題はあるところではありますが、一応それを別にいたしまして、それはそれとして検討するにいたしまして、一つは、やはり専守防衛の考え方ですね。
どうも、今のこの専守防衛といいますのは、原則的に日本の領土それから領海、領空を守る、こういう考え方だと思うのでありますけれども、今日の状況といいますのは、その考え方を一歩出て、限定的あるいは局地的な侵攻への対応、あるいはミサイル発射に対する対応などにつきましては独自で対応する能力、すなわち敵地を攻撃するような能力まで高めて持っていく必要があるんじゃないか、そういう必要が出てきているんじゃないか、そんなふうに思います。
それからもう一つは、集団的自衛権の行使についてであります。
これは、国連が主導いたしますいろいろな国際協調に参加をしたり、あるいは米国とのいろいろな共同行為をする、そういう場合に、より積極的に参加していけるような、そういう検討が必要ではないのか。今の集団的自衛権は、日本の憲法上認められないという解釈でありますが、余りにも厳格過ぎて、現実的に有効に働かないような、より現実的に、もうちょっと機能的に働かせた方が日本の安全保障にとっていいんじゃないか、そういうことを検討する必要が出てきているんじゃないか、こんなふうに考えるわけであります。この二点。
それから、今、国連による軍事力の体制につきましては、国連中心主義ということで国連がすべて取り仕切っていくのが一番いいんだというような御発言もありましたが、私は、国連が創設されました当初に期待されました、国際社会の平和や安全を守っていく、そういうのを維持していく機能というのが、どうもそのとおりに有効に働いていないようにも思うのでありますけれども、このイラクの問題につきましても、それはそのように言えるのじゃないか、こんなふうに思うわけであります。
しかし、国連というのは、軍事力を行使する以外のところでは大変な成果を上げているところもあると思うんですね。例えば、国際的な平和維持の上で、多国間の対話でありますとか、あるいはPKOなどによります復興の援助あるいは人道援助、こういうことでは大変大きな役割を果たしておりまして、私は、国連としてはこういうような分野がこれからも期待をされる分野じゃないか、より国連らしい機能が発揮される分野じゃないか、こんなふうに思います。
そういう意味で、私は、国連というのは第二次世界大戦の戦勝国が中心になって今安全保障理事会が構成され、あるいは国連全体がそういう中で動いているようになっておりますけれども、もう少し世界の政治、経済あるいは軍事的な、そういうような面で主導的な地位にある国を多く入れて、私が今申し上げましたような分野でより積極的に貢献していくことが本来の国連的な役割を果たすようになるんじゃないか、こんなふうに考える次第であります。
次に、アメリカとの関係であります。
やはり日米両国は、経済的、政治的にも共通の基盤がある程度もう確立しているし、日本の地政学的な重要性もありますし、アメリカの軍事的な優位性というのもありますし、かなり相互の補完関係を持つ両国だと思います。
私は、我が国の安全保障について、国連に過度に期待するよりは、基本的にアメリカとの同盟関係を通じて安全保障体制を構築していくことが我が国の国益にかなうものだと思います。安全保障上の脅威については、今後とも、そういう意味で、日米安全保障体制のもとで日米が機能的に連絡して対処していくことが不可欠である、そのように考えます。
以上であります。