大脇雅子の発言 (憲法調査会)
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○大脇雅子君 討論に際しまして、今般のアメリカによるイラクへの攻撃において、イラクの市民、報道関係者及び各国兵士など、亡くなった多くの方々に哀悼の意を表し、戦死者とその御家族、また傷付いて現在治療中の方々に心からお見舞いを申し上げます。
基本的人権の保障は人間の尊厳を基礎として人類普遍の原理であり、十九世紀の自由権、二十世紀の社会権、二十一世紀の平和的生存権の流れを考えるとき、今回のイラクに対する先制的武力攻撃は国際法に違反し、日本政府の米英の武力攻撃への支持は憲法の精神に反するものであり、ともに人類の英知が築いてきた国際的秩序と国際協調主義を破壊するものでした。恐怖と欠乏から免れて平和に生きる権利が地球上の全市民に対し保障されること、人間の安全保障としての基本的人権保障こそ二十一世紀の課題であると思います。
私は、基本的人権保障について次のように考えます。
現行憲法は、基本的人権として国民一人一人に自由と権利を豊かにかつ包括的に保障しています。すべての国民は個人として尊重され、かつ個人の幸福追求権を保障されることは民主政治を確立する上で必要不可欠の原理であり、憲法第十三条の意義はすべての基本的人権保障の出発点であり、基本であると思います。憲法の掲げる基本的人権は市民的、政治的、経済的分野など社会のあらゆる分野で保障されるべきであり、その自由と権利は人権法又は個別法の整備充実で現実のものとされなければなりません。
これまでもこの調査会で多くの参考人から貴重な御意見をお聞きしましたが、憲法と現実との乖離が多く指摘されています。環境権やプライバシー権利など、いわゆる新しい人権を保障するために私たち国会が積極的に立法作業を行い、時代に即し、また時代に先駆けて関連分野の個別の基本法及び個別立法や改正を図り、基本的人権保障のシステムを現実化していくことこそ憲法の予定しているところであると考えます。
基本的人権は、基本的立場として、公共の福祉の概念でもって包括的かつ均質的に制限されるものではないと解します。まず、前文及び憲法九条、同十三条により、軍事的公共性による制限は基本的に許されないものと考えます。また、憲法二十五条からの生存権など社会権は社会的共同性、社会連帯の思想を組み入れているものと考えられますので、国家による配慮義務は、社会保障や労働法制等、積極的な制度設計と法整備に及ばなければなりません。
二度の世界大戦を経験した人類は、人間の尊厳を踏みにじられ、生存そのものが危殆に瀕した結果、生存権、労働基本権、社会保障、社会福祉などの権利、すなわち社会権は国家に対して積極的関与と保護の責務を課していることを確認したものだと思われます。公共と私人、私人間の調整原理としての公共福祉概念は、あくまで表現や報道の自由、集会、結社の自由、信条、信教の自由等、精神的自由に厳格に適用されるべきであり、経済的自由については公平性を重視して個別的に基準が設定されるべきです。過度な市場万能主義は許されないと思います。今進行しつつある労働法の分野における規制緩和は、問題ごとに具体的に検討すべきで、労働権保護の視点が重要であります。
さて、これまでこの調査会で議論されてきた新しい人権、すなわち環境権、プライバシーの権利、知る権利、犯罪被害者の権利等は、個人の幸福追求権と自己決定権を包含する憲法十三条の普遍化として、必要とされる立法作業を通じて人権メニューが個別法において法規化することが重要であり、それが現行憲法の保障する人権規範を確立することであると考えます。憲法十三条は幅の広い内容を取り込むことのできる規定なので、新しい人権の問題は憲法改正の課題としてとらえる必要はないものと考えます。
マイノリティーの人権、主体より見た権利状況について述べたいと思います。
女性や子供、高齢者、障害者等の弱者、少数者を権利主体としてとらえるとき、マイノリティーに積極的な保護を打ち出して、一人一人が自己決定に基づき自由にその権利を行使し行動できるようにすること、そのために差別的取扱いを禁止するとともに、人格権の侵害を救済する機関を充実することが大切です。
女性の立場からは、男女共同参画社会基本法の制定により各地方自治体の条例や平等計画策定の動きは各地に広がっており、社会のあらゆる分野での男女平等を推進するために積極的に平等推進措置、ポジティブアクションの実現が求められています。
また、拡大する男女賃金格差の是正、通常労働者と、パートタイム労働者等、通常労働者でない非正規雇用労働者との差別の撤廃のためには、同一価値労働、同一賃金の原則の具体化及び均等処遇の原則の法制化が急務です。
男女雇用機会均等法に間接差別禁止条項を明文化すること、セクシュアルハラスメントやドメスティック・バイオレンス等、人権侵害からの保護も必要です。リプロダクティブヘルス・ライツも、性と生殖の自由な自己決定権として法の総合的確立が必要です。
子供の人権については、子供を大人に成長する子供としてではなく、子供を即時的権利の主体としてとらえることが必要であり、平等に教育を受ける権利、あらゆる人権を考慮し、考慮が払われる必要があります。
障害者と老人に対しては、一貫して優しい柔らかな社会のシステムを作ることが必要となります。
被差別部落やアイヌ民族、在日朝鮮人、外国人労働者に対する差別の解消にも、積極的に差別禁止の人権基本法と平等実現の施策のための個別法が制定されなければなりません。特に、外国人に対する合理的差別を理由とする差別が国際人権機関より指摘されていることに注意し、現況の直視と改善が必要であります。
難民問題は、難民認定機関の創設と保護の制度化が必要でありましょう。国際化の中で、日本人だけでなく、あらゆる国籍の人々が住む地域での参政権を保障し、基本的人権を保障するために、異なる言語や文化を相互に理解し、尊重することが土台になります。
国際人権規約等、国際条約の国内の司法における適用可能性の推進、立法による法整備、個人通報制度への加入の必要があります。
最後に、二十一世紀の平和的生存権を保障した現行憲法は、環境破壊の最たる行為である戦争やテロ、暴力の連鎖を断ち切る理念と行動の規範であり、日本は国際刑事裁判所にある法治のシステム化、地域人権保障システム化に努めるべきであり、憲法改正の必要がないことを改めて強調して、私の討論を終わります。