山口那津男の発言 (憲法調査会)

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○山口那津男君 公明党の山口那津男です。
 これまでの人権に関する議論を振り返って私の意見を述べたいと思います。
 従来の人権概念は、歴史的に確立した人権カタログを憲法に列挙してあると、そして抽象的な規定を置いて新しい価値をある程度包摂できるようにしてあると、このような組立てでありました。また、統治機構も、人権との関係でいえば、公権力によって人権を積極的に実現をしたり、あるいは消極的に不可侵とするための仕組みとして機能してきたわけであります。
 この人権カタログが直接予想しない新しい現象に対して新しい人権との概念で語られる場面も多く出てきているわけでありますが、人権の名前をどう付けるかはともかくとして、人権保障の原点に戻って個人の尊厳、幸福追求権として求められる価値は何かということを追求し実現していくことが憲法の要請であると考えられます。
 個人の尊厳が脅かされる事態、今日的事態が問題でありまして、それは公権力によるもののみならず、とりわけ私人によるものがより深刻な問題であろうと思います。この私人間の人権が衝突しバランスを失する事態を修正する役割が統治機構側、つまり立法、行政、司法のそれぞれの活動に求められていると考えます。
 例を挙げて幾つか述べたいと思います。
 表現の自由とプライバシーがぶつかる場面があります。憲法二十一条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」という書き方をしております。従来は、新聞、書籍など活字メディアとの関係で議論をされたり、あるいは政治活動の自由や報道、取材の自由をめぐって公権力との関係で議論されることが多かったように思います。しかし、今日、音声、映像など多様なメディアが発達するとともに、マスメディアのみならず、パソコン、携帯電話といった本来プライベートメディアとして利用されるものもインターネットなどによって人権侵害手段となってくることも生じてきているわけであります。また、メディアの商業的な利用が個人の尊厳を侵すという事態も多発しております。これらが表現の自由の名の下に放置されていてはならないわけでありまして、抑止と侵害回復、両面でバランスを取る対応が憲法上求められております。
 もう一つの例を挙げますと、従来、法は家庭に入らずという法格言がありました。また、民事不介入の原則というものも確立しておりました。しかし、今日、家庭や家族の秩序形成機能あるいは秩序維持機能というものが著しく低下、崩壊する過程の中で、DV防止法あるいは児童虐待防止法などという立法措置が取られるようになってまいりました。これらの点については、従来の法格言や原則にとらわれないで積極的な介入がますます要請されていく場面だろうと思います。
 同時に、家庭、家族のみならず、地域社会の秩序形成維持機能というものも低下をしてきているわけでありまして、最近の報道、統計によりますと、東京二十三区の犯罪の発生件数を比較したデータがあります。これは件数で比較しておりますが、おおむね地域社会の結束の固い地域ほど件数が少ない。あるいは人口との比較においてもそういった傾向が顕著でありまして、そういった地域社会の秩序形成維持機能の低下、これを補う修正原理といいますか、対応が必要となってくるわけであります。
 それからもう一点は、経済活動の自由あるいは契約自由として語られてきた場面であります。この点についても、契約当事者あるいは活動する人々の対等性が前提であるわけでありますが、しかし、それも大きく欠如してきているわけであります。やみ金融のばっこなどというものも、本来、返済能力の乏しい者と貸す側との、もう最初からバランスのない状態の中で契約活動が行われているわけでありまして、そこにあらゆる手段を尽くした無法な取立てが行われていると、こういう実態があるわけであります。
 また、高齢化社会の著しい進展によりまして高齢者人口というものがますます増えていく中で、やはりこういった老人、あるいは未成年も考える必要があると思いますが、対等性の弱いこういった人々に対する配慮というものもこれからは必要になっていくだろうと思います。
 このような対等性の欠如という見地からいいますと、外国人あるいは難民、あるいは男性、女性という性差に基づく存在、こういったものも考慮に入れた対応が必要になると思っております。
 特に、統治機構の中の立法活動、これは行政機関の能力を十分生かしたした上での立法活動、そしてまた、司法による救済活動、これに期待をされるところが大きいわけであります。折から司法制度改革が行われている最中でありまして、言わば司法の基盤が大きくなり、そして整備されていく以上、これを利用する立場の国民に対してもっと基本的な法律知識の教育あるいは人権教育、こういった情報伝達も一方で必要なことだろうということを指摘して、私の意見といたします。

発言情報

speech_id: 115614184X00520030416_028

発言者: 山口那津男

speaker_id: 1759

日付: 2003-04-16

院: 参議院

会議名: 憲法調査会