平野達男の発言 (本会議)

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○平野達男君 私は、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)を代表して、ただいま議題となりました武力攻撃事態対処関連三法案について質問をいたします。
 今回提出された三法案の原案は、衆議院において、自由党議員などから鋭く指摘があったように、欠陥だらけの法案でありました。
 衆議院において、民主党、自由党は各々独自の法案を提出、そして、民主党が与党側と粘り強く修正協議などを行った結果、国会の議決による事態対処措置の終了など、野党側の主張がかなり取り入れられた修正案が可決され、参議院に送られてきたのであります。このことにつきましては、ひとまず評価をしなければなりません。
 しかしながら、武力攻撃、テロ、大規模災害といった国家の存亡にかかわるような非常事態において、国民の生命、財産、自由、人権、文化を守ることは国家最大の責務であります。本三法案は、この責務を果たす上での一つの通過点であるということも併せて指摘しておかなければなりません。
 以下、本三法案に関連し、大きく四つの観点から総理に質問をいたします。
 一つ目は、いわゆる有事、あるいは非常事態と言われる事態をどのようにとらえるのか、その範囲、考え方の問題であります。
 ここでいう非常事態とは、武力攻撃、テロなどが発生し、国民の生命、財産などに重大な被害が出る、あるいはそのおそれが生じた場合、さらには、食料、水など日常生活に必要不可欠なもの、石油、電気など国民経済上重要な物資、エネルギー等が欠乏し、国民生活や国民経済に深刻な影響が出てくるなど、通常の危機管理体制によっては適切に対処することが困難な事態と定義できます。したがって、非常事態の具体的な態様は、国家テロ、サイバーテロ、原発事故、大規模地震や洪水などの自然災害、エネルギー危機など様々なことが想定されます。しかるに、今回提出の三法案は、いわゆる武力攻撃事態だけを対象とした法案となっております。
 確かに、武力攻撃事態法案の第二十五条においては、大規模テロや武装工作船などの例示を示し、他の緊急事態に迅速かつ的確に対応する旨の規定を置いています。しかし、対処の考え方や具体化のための道筋も示されておらず、単なる先送りでしかありません。
 あらゆる非常事態を想定し、国民の生命、財産、基本的人権を守る原則と、対応に向けた国家の体制の枠組みを明示した非常事態基本法といった基本法の制定を急ぐべきであります。総理の見解を伺うものであります。
 あわせて、今回の法案がなぜその対象を武力攻撃事態のみに限定し、他の予想される非常事態は後回しになってしまったのか、武力攻撃事態以外の非常事態への対応に向けた現行の体制の評価を含め、総理に説明を求めるものであります。
 次に、先ほど述べた非常事態基本法の主要な部分となり得る非常事態への対応の体制の基本的な考え方であります。
 まず、非常事態への対応は、できるだけ総理に権限を集中し、総理を中心とした内閣の責任において行うべきであると考えます。また、一方で、権限の行使をチェックする国会機能の強化も不可欠です。
 また、非常事態はいつ、どこで、どのような形で発生するか予測し難いという特有の問題があります。この問題を克服するためには、まずは内閣があらかじめあらゆる非常事態を想定した対応の基本方針を閣議決定して国民に示す。それに基づき、内閣主導の下、不断に準備をしておくことが必要であると考えます。この点、総理の見解を求めます。
 専ら武力攻撃事態に対象を限定した本三法案では、平時は内閣の補助機関たる安全保障会議に対応をゆだね、事態が発生した後、内閣が対処基本方針を定めて動き出すという仕組みとなっております。非常事態への対応には判断の的確性と実行の迅速性が求められます。
 平時と非常時の対応に連続性を持たせることが必要であります。非常事態対応の平時における準備は安全保障会議、事が発生したら内閣という機能分離は検討の余地が大きいと思われますが、併せて総理の見解を伺います。
 三点目は、安全保障の理念とそれに基づく自衛隊の行動原理の確立という点であります。
 冷戦終えん後、我が国は、何か事があれば、起これば、言わば外圧により、PKO協力法、周辺事態法、テロ特別措置法といった特別法を制定し、その都度自衛隊法などの改正を行うという形で安全保障に関する法整備を行ってまいりました。
 こうした対応は、我が国の安全保障についての明確な基本原理を確立しないまま、かつ自衛隊の行動については内閣法制局の憲法解釈なるものに基づいて決めるなど、場当たり的、なし崩し的に行われてきたことは否めません。このことは、さきのイラク戦争の戦後を含めた我が国の対応についても例外ではありません。
 基本原則を持たないパッチワーク的な対応の結果、我が国の安全保障の考え方は一層あいまいさを増しているのであります。
 例えば、有事の際、後方地域において米軍などに物品などの提供を行ういわゆる兵たんは武力行使と一体化するのではないという解釈は、世界の常識と懸け離れたものであります。さきの大戦において兵たんが切断され、飢餓によって多くの兵士、市民が命を落とした我が国が言うべきこととも思われません。さらに、武器の性能が格段に進歩した近代戦争において、そもそも後方地域なるものが現実としてあるのかどうかという疑念は常に付きまといます。
 国連憲章においてその保有が認められ、保有しているが行使できない権利として憲法解釈されているいわゆる集団的自衛権についても、解釈自体の是非を始めとして、そもそも行使できない権利など権利ではないとする有力な指摘が出てくるなど、その位置付けは依然として不明確であります。
 問題は、こうした一連の政府解釈は法理論を追求しての結果なのか、現実的な対応を迫られた結果の行政上の解釈なのか、判然としなくなってきていることであります。
 言い換えれば、このまま放置しておけば、今後ともその場の雰囲気や外圧により、なし崩し的に我が国の安全保障の理念は変わっていく危険性を秘めているということであります。こうした意味において、我が国の安全保障は不安定な台座に置かれたガラス細工のようなものであり、これこそ非常事態であります。
 また、貿易立国であり、国連中心主義を掲げる我が国は、国際社会の一員として、国連が行うあらゆる平和、安全の維持活動に積極的に参加すべきであります。
 今こそ、日本国憲法の平和主義と国際協調主義の理念を踏まえ、我が国の安全保障の理念と、それに基づく自衛権行使の考えをしっかりと位置付けた自衛隊の行動原則、国連の平和活動への参加原則などをしっかりと確立すべきであります。そして、これらを基本法として制定し、内外に明確な形で示すべきであると思いますが、総理の見解を伺います。
 また、安全保障という国家の根幹にかかわる立法活動が内閣法制局という政府の官僚組織の解釈に大きく左右される状態は、三権分立の原則からしても放置できません。内閣法制局は廃止し、その機能を立法府たる国会に持ってくるべきと考えますが、総理の見解を伺います。
 最後に、非常事態における総理の在り方についてであります。
 武力事態などの国家レベルの非常事態への対応の仕組みをいかに精緻に構築したところで、それが有効に働くかどうかは最高指揮者たる総理の双肩に掛かっております。りそな銀行の二兆円の公的資本注入は金融危機の到来を告げています。非常事態の一歩手前というべきでありましょう。非常事態において、あるいはその可能性がある状態においてなお丸投げをする総理がいるとすれば、国の滅亡につながりかねない悲劇であります。
 備えあれば憂いなし、総理が繰り返し言った言葉であります。総理は国民に向かって語ったようでありますが、この言葉は総理自身にも向けられなければなりません。
 国家の非常事態に備え、小泉総理の総理としての日ごろの備え、心構えはどのようにされているのか。こうしたことを含め、平時の総理はどうあるべきか。さらには、非常事態になった際、あるいはそのおそれが生じた場合、総理はどうあるべきか。小泉総理はどのようなあるべき総理像、リーダー像を描き、行動されているのか。言わば小泉総理の宰相論、是非お聞かせ願いたい。
 この場において、総理の言葉で、時間はたっぷりございますので、この場でしっかりとお話ししていただくことを最後にお願いを申し上げまして、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 平野達男

speaker_id: 8154

日付: 2003-05-19

院: 参議院

会議名: 本会議