仙谷由人の発言 (憲法調査会)
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○仙谷委員 私の方から、会長のただいまの報告に追加をして、感じたことを若干申し上げたいと存じます。
先ほど会長の方から、アメリカの憲法事情調査の中で、スカリア最高裁判事との懇談の概要の項がございました。つまり、具体的な事件を前提にしてのみ憲法判断をするのがアメリカ型の付随的違憲審査制度であって、その方が好ましいといいましょうか、いいんだという趣旨の発言がスカリア最高裁判事との間であったわけですが、実は、先ほどのチャボットさん、それからレイノルズ委員長との懇談の中で出てまいりましたのが、現在、アメリカの連邦最高裁に、選挙資金改革法が違憲判断を求められて係属しているということでございました。私どもが行った前日だったんでしょうか、弁論が開かれたということでございました。
ちょっと興味がございましたので、どういう裁判なのかということを大使館の担当者に調べてほしいということを申し上げまして、その結果、帰国後、私のところへ到着しましたのが、お配りしております「選挙資金改革法違憲訴訟について」という用紙でございまして、ここで「原告・被告」をごらんいただき、なおかつ「2.訴訟物」というところに書いてございますものをごらんいただきますと、明らかにこれは、具体的な事件ではなくして、法律そのものを、つまり制定された法律そのものの違憲性を争う裁判という構造になっております。宣言的判決を求めるということのようでございます。
そのようなことがなぜできるのかというのは、この二枚目の(2)に書いてございますが、「二〇〇二年選挙資金改革法では、第四百三条に同法の憲法適合性を争うための宣言的判決又は差止命令に関する手続を定めており、これが本件訴訟の制定法上の根拠となります。」つまり、建前上は具体的な事件がなければ、具体的な争訟の中で憲法判断が行われるんだということになっておるわけでありますが、具体的な事件が起こる前に、この一枚目の、「主な原告」「連邦議員」というふうに書いてございますが、法律そのものを、議員やあるいはそれに影響を受ける政党組織、各種団体が、法律の違憲的な、違憲であるという宣言を求めて争訟を提起できる、そこで連邦最高裁判所がその争点について判断する、こういう構造でございますし、それを法律の中に書き込めばそういう裁判ができる、つまり抽象的な違憲訴訟ができる、こういうことになっているというのがアメリカの実態であるということがわかって、ある種の驚きとともに興味を抱いたわけでございます。
ちょっと資料を皆さん方にお配りしてございませんが、メキシコ憲法にも百五条の二項というのがございまして、一般的な性格を有する規範と憲法との間に、抵触を訴えることを目的とする違憲の訴訟を、例えば連邦議会によって制定された法律について、連邦議会下院の構成員の三三%が賛成すれば法律の違憲性そのものを提起できるというふうな規定があるようでございます。
したがいまして、各国とも、ある種でき上がった法律そのものの違憲性を争うということがやはりどこかで行われなければならないということが、どうも現代社会では築かれているようであります。
それからもう一つ、先ほど会長の報告にもございました、カナダのいわゆる最高裁判所の参照制度、これは、法律ができる前段階でも最高裁判所の憲法判断を求めることができるということでありますが、これは非常に詳しい論文を憲法調査会の事務局の方で探していただきましたので、それも資料としてつけてあるわけであります。
この一連のこの種のものを拝見いたしまして、私はやはり、そろそろ、日本の内閣法制局があたかも憲法の公権的解釈権を持つかのような、そしてそれが国民の目に見えないところで行われるような仕組みというのはどうしても考え直さなければならない。つまり、カナダのようなオープンな形で公権的なある種の解釈が立法時に示されるか、あるいは、法律がつくられた後に議員や政党の申し立てによってその違憲性が、抽象的なレベル、つまり法律のレベル、法律が適用される前段階で合憲性の判断が行われる、いわば憲法裁判所的な機能なわけでありますが、それを最高裁判所なり司法の中なりに、あるいは別の格好でつくっていくということも甚だ重要なんではないかということを感じた次第でございまして、そのことを重ねて御報告申し上げておきたいと存じます。
以上でございます。