志位和夫の発言 (本会議)
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○志位和夫君 日本共産党を代表して、小泉首相に質問します。(拍手)
小泉政権が進めているイラクへの自衛隊派兵は、今なお戦争状態が続いている他国に重火器で武装した自衛隊を派兵するという、戦後初めての道に踏み込むものです。これは二十一世紀の日本の進路、日本国民の命運にかかわる重大問題であり、国会の場で事実と道理に立った冷静な議論が尽くされる必要があります。
私は、きょうは、時間の制約もあるので、イラク問題に絞って、四つの角度から首相の認識の根本を問うものであります。
第一は、首相が、米英軍によって行われたイラク戦争の性格をどう認識しているのかという根本問題です。
イラク戦争に引き続く占領に合流するために自衛隊を派兵する以上、果たしてこの戦争に大義があったのかという根本問題への認識をあいまいにすることは許されません。
首相は、昨年三月二十日に開始されたイラク戦争に際して、イラクが大量破壊兵器を保有していると繰り返し断言し、それを戦争を支持する最大の大義としました。ところが、今に至るも大量破壊兵器は発見されていません。
さらに、この問題にかかわって、ことしに入って、米国で二つの重要な動きがありました。
一つは、ことし一月八日付の米紙ニューヨーク・タイムズが、イラクで大量破壊兵器を捜索していた約四百人の米軍チームが大量破壊兵器の証拠を何も見つけることができないままイラクから撤収したと報じたことであります。
いま一つは、ブッシュ政権のもとで二〇〇二年末まで財務長官を務めていたポール・オニール氏が、一月十一日付の米誌タイムで、二十三カ月間の在任中、私は一度も大量破壊兵器の証拠とみなせるようなものを見たことはなかったと証言したことであります。オニール氏は、更迭されるまでは国家安全保障会議に出席するなど最高機密を知り得る立場にいた人物であり、この証言は極めて重いものがあります。
首相に伺いたい。
戦争開始から十カ月、大量破壊兵器が見つからず、米軍の捜索チームも捜索をあきらめ、ブッシュ政権の元高官も証拠はなかったと述べている事実をどう説明するのですか。イラクが大量破壊兵器を保有していると断言し、それを戦争支持の唯一最大の大義にしたことは、明らかに誤りであったと認めるべきではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)
もともと、この戦争は、国連安保理の承認なしに米英軍が勝手に始めた先制攻撃の戦争であり、無法な侵略戦争であります。その戦争が占領という形で継続しているイラクに自衛隊を派兵することは、どんな形であれ、侵略戦争への加担そのものとなるということをまず厳しく指摘しなければなりません。
第二は、首相が、イラクの泥沼化ともいうべき状況の悪化の原因をどう認識しているのかという問題です。
イラクの状況は、特に昨年の八月以降、急激に悪化しました。米英占領軍への攻撃が激化しただけではなく、八月には国連のイラク事務所が攻撃され、国連は撤退を余儀なくされました。十月には赤十字の事務所が攻撃され、赤十字も撤退を余儀なくされました。ことしに入って、バグダッドの暫定占領当局への大規模なテロ攻撃も行われました。
首相は、施政方針演説の中でテロに屈してはならないと述べ、自衛隊派兵を合理化する理由にしました。もとより、民間人を無差別に殺傷するテロを許してはならないことは言うまでもないことであります。同時に、なぜイラクがテロと暴力の横行する国になったのか、その原因をつくり出したのは何であったのかが問われなければなりません。
昨年十二月、国連安保理のテロ対策委員会が報告書を発表しました。この報告書は、イラクはフセイン政権の崩壊直後からテロ集団の活動に機会を提供するようになったと述べ、さらに、外国軍の大量駐留によって、イラクはテロ集団にとっての理想の戦場となったと指摘しています。戦争と占領がテロリストを呼び寄せたという指摘は否定できない事実だと思いますが、首相の見解を求めるものであります。
首相は、テロに屈してはならないと言いますが、イラクをテロと暴力が横行する国に変えてしまったのは、米英軍の無法な侵略戦争とそれに続く不法な占領支配なのであります。米軍は、武装勢力への掃討作戦と称して、イラクの一般国民の家屋の乱暴な捜索や破壊、民衆のデモへの発砲などを行っています。こうした乱暴な占領支配が、イラク国民の怒りと憎しみを広げ、民衆自身の抵抗を引き起こすと同時に、テロ勢力と民衆が結びつく土壌を広げる結果となっているのであります。
首相、テロ勢力を呼び寄せた根本原因である戦争と占領に加担しながら、テロに屈してはならないと言うのは、甚だしい自己矛盾ではありませんか。(拍手)
さらに重大なことは、米英軍による占領統治が続いていることが、国際社会の人道支援にとっても最大の障害になっていることであります。
赤十字国際委員会は、昨年十月の攻撃の後、バグダッドやバスラからの撤退を余儀なくされました。赤十字国際委員会は、アフガニスタンやチェチェンの紛争、ルワンダやブルンジの内戦でも、撤退することなく活動を続けています。その赤十字国際委員会がなぜ撤退を余儀なくされたのか。
赤十字国際委員会のケレンバーガー委員長は、その理由について、イラクでは最大の人道組織である赤十字国際委員会さえ攻撃の対象とされていると述べています。そして、米軍による警護の申し出を拒否して、赤十字はいかなる軍事力のもとでも活動することはできない、中立で独立した人道組織として活動することが死活的に重要だと述べています。さらに、ケレンバーガー委員長は、イラクの現状では赤十字の再開はあり得ないこと、その原因は、米英軍主導の占領統治が続く限り状況の改善は望めないことにあると言い切っています。
首相は、厳しい戦争下で人道支援の活動に従事してきた赤十字国際委員会の委員長のこの言明をどう考えますか。
イラクの現状は、国連はおろか赤十字さえ撤退せざるを得ない状況なのです。その直接の契機となったのはテロ勢力による攻撃ですが、そのテロと暴力を横行させる根本原因となったのは、米英軍による戦争と占領であります。人道支援と占領支配は両立しないのであります。首相は、自衛隊派兵の最大の理由に人道復興支援を挙げていますが、国際社会の人道支援を不可能にした戦争と占領に加担しながら人道を語るとは、偽善と欺瞞そのものではありませんか。
アナン国連事務総長は、占領が終結すればすぐに暴力や抵抗活動は減るだろうと述べました。占領支配を終結させてこそ、国際社会が安心してイラクへの人道支援を行う条件がつくれます。今、日本政府に求められているのは、米英軍主導の占領支配を一刻も早く終結させ、国連中心の復興支援に枠組みを移し、イラク国民の手に速やかに主権を返還するための、憲法九条を持つ国にふさわしい外交努力であります。首相の見解を求めるものです。
第三は、自衛隊の占領軍への参加と日本国憲法が両立し得るのかという問題であります。二つの点について、首相の見解を問うものです。
一つは、占領軍への参加は憲法が禁止した交戦権の行使に当たるのではないかという問題であります。
昨年十二月十二日付で、連合国暫定当局、CPAのブレーマー行政官から日本政府にあてて書簡が出され、そこには、自衛隊は連合国要員としてCPA命令第十七号に定められたように処遇されると明記されています。CPA命令十七号とは、イラク占領軍の構成員は、刑事、民事、行政のいかなる裁判権からも免除され、逮捕、拘禁もされないというものですが、自衛隊にもこれが適用され、法的に占領軍の一員としての地位を持つことが認定されたのであります。
さらに、自衛隊が実際に行う任務も、占領軍の一員そのものの活動です。首相は専ら人道復興支援活動を強調しますが、基本計画や実施要項には、安全確保支援活動も行うことが明記されています。
首相は、安全確保支援活動の中には、武装した米兵の輸送、イラク人による米占領軍への抗議、抵抗運動の鎮圧への支援、フセイン軍残党に対する米軍の掃討作戦への支援など、米英占領軍が行う軍事作戦への支援も含まれることを認めています。すなわち、実態的にも自衛隊は、占領軍が行う占領支配の一翼を担うことになるのであります。
しかし、これまでの政府の見解でも、相手国の領土の占領、そこにおける占領行政などは、自衛のための必要最小限度を超えるとされ、憲法九条二項の交戦権に当たるものとして禁止されるとされてきました。この見解に照らせば、法的にも占領軍の一員としての地位が保障され、実態的にも占領支配の一翼を担うことになる自衛隊は、まさに憲法で禁止された交戦権の行使をすることになるのではありませんか。はっきりと答弁していただきたい。
二つ目に、さらに重大なことは、派兵された自衛隊がイラクの一般民衆を殺傷しかねない立場に置かれることです。
政府は、相手が国または国に準ずる組織であろうが、物取りであろうが、テロリストであろうが、急迫不正の侵害があった場合に正当防衛として武器を使用できると答弁しています。首相自身も、自衛隊員が相手を殺すかもしれないと答弁しました。
しかし、占領軍の一員としての自衛隊を攻撃対象としてくる可能性があるのは、テロ集団などだけではありません。一般のイラク人によっても武力抵抗が起こっていることは、広く指摘されていることです。イラク戦争直前まで国連イラク査察団の報道官を務めた国連広報官の植木安弘氏は、一般のイラク人の中にも反米、反占領感情が強い人たちが多くいる、この強い反感から武力抵抗に出る人たちもいることを理解しなければなりませんと述べています。こうした一般のイラク人に対しても、自衛隊が銃口を向け、殺傷することが起きかねないのであります。
首相は、これも正当防衛だから仕方がないと言うのでしょうか。他国に占領軍として乗り込んだ軍隊に対して、その国の国民がやむにやまれぬ気持ちで抵抗する、そうした国民を武器をもって殺傷する、これが憲法で禁止された武力行使でなくて何だというのでしょうか。(拍手)
日本の国は、戦後、ただの一人も他の国の国民を殺傷してきませんでした。これは、憲法九条が海外での武力行使をかたく禁止してきたからにほかなりません。このことが、世界やアジア、中東の人々にとって、日本へのどれだけの信頼の源泉となってきたかは、はかり知れないものがあります。
首相、自衛隊のイラク派兵は、この貴重な財産を一気に破壊しかねないものではありませんか。あなたは、自衛隊がイラクの民衆を殺傷するという事態に仮に立ち至ったときに、我が国の国益をどれだけ深刻に損なうことになるという認識をお持ちでしょうか。しかと答弁いただきたい。
第四は、首相は施政方針演説で、イラクへの自衛隊派兵を国際社会の一員としての責任として合理化しましたが、首相の言う国際社会とは一体何かということであります。
現在、米英軍主導のイラクへの占領支配に軍隊を派兵して合流している国は、政府の説明でも、日本も含めて世界でわずか三十八カ国、国連加盟国百九十一カ国の五分の一にすぎません。非同盟諸国首脳会議に参加する諸国、アラブ・イスラムの諸国の圧倒的多数は、派兵を拒否しています。世界平和に重要な責任を負っている国連安全保障理事会の理事国の中でも、十五カ国のうち軍隊を派兵している国は五カ国にとどまっており、フランス、ロシア、中国、ドイツを初め、派兵を拒否している国が多数派であります。
首相は、施政方針演説で、自衛隊など人的貢献を行わない国は国際社会の一員としての責任を果たしたとは言えませんと言い切りましたが、この論理に従えば、フランス、ロシア、中国、ドイツなどの国々、さらには非同盟諸国首脳会議やアラブ・イスラム諸国の圧倒的多数の国々は、国際社会の一員としての責任を果たしていない国ということになるのでしょうか。はっきり答弁願いたい。
結局、首相の言う国際社会とは、アメリカの一国の利益を世界平和の利益の上に置いたアメリカ中心の国際秩序ではありませんか。
しかし、二十一世紀の世界の動きは、アメリカがどんな強大な軍事力をてこにしてアメリカ中心の国際秩序をつくろうとしても、世界は思いどおりにはならないことを示しています。イラクへの無法な侵略戦争が国際的に孤立したこと、それに続く軍事占領支配も国際的に孤立していることが、それを証明しているではありませんか。
どんな超大国であれ、自国の利益を世界平和の上に置く横暴勝手は許されない、国連憲章に基づく平和のルールを何よりも大切にする、これこそが、二十一世紀の世界の本当の国際秩序となりつつあるのであります。そのときに、アメリカから、地上軍を出せ、お茶会ではないとしりをたたかれ、言われるままに自衛隊を差し出す、アメリカへの卑屈な従属の姿勢を、そうした態度をとることが、どんなに有害で愚かな行為かは明らかであります。
イラクへの自衛隊派兵は、アメリカの無法な侵略戦争に加担し、不法な占領支配に合流し、日本国憲法を破壊し、平和の国際秩序を願う世界の大勢に逆行する、歴史的暴挙であります。我が党はイラクへの派兵計画を直ちに中止することを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕