横光克彦の発言 (本会議)
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○横光克彦君 社民党の横光克彦でございます。
私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、総理の施政方針演説に対し、質問を行います。
冒頭、少数政党にもかかわらず、こうして質問の場を与えていただきましたことに対し、各党の配慮に心から感謝を申し上げます。(拍手)
質問に入ります。
まず、政府が自衛隊をイラクに派遣したことに関して質問をいたします。
私たち社民党は、イラクに対して、医療や生活物資、水道、電気、通信、道路、これらの復旧や整備など人道復興支援に協力していくことは当然のことだと考えております。国民も、こうした支援、協力には何らちゅうちょしないはずでございます。しかし、そのための自衛隊の派遣をめぐっては、国論は二分どころか派遣反対の方へ傾いており、国民の多くは、自衛隊派遣に危惧を抱いております。自衛隊派遣だけがイラク国民に評価される支援ではないからであります。NHKの調査では、政府は派遣について説明責任を果たしていないという回答が八割にも達しています。総理は、この国民の声をどう受けとめておられますか。まず、お聞かせください。
政府は、一月十六日、陸上自衛隊先遣隊をイラクへ派遣しました。しかし、大きな戦争が終わったとはいえ、今なお連日のように小さな戦争が続くイラクに自衛隊を派遣できるような状況ではないことは明白であります。赤十字も攻撃の対象にされました。国連事務所も攻撃を受けました。日本の外交官二人も犠牲になりました。アメリカ兵の犠牲はふえる一方であります。イラク戦争開始以来、米兵の死者は五百人を超えました。そして、何よりも、イラク市民の犠牲者は一万人に迫るとの報道もあります。日本の外交官二人を初め、これまでのすべての犠牲者に心から哀悼の意を表します。
総理もブッシュ大統領も、国際協調、国際協調と叫びますが、フランス、ドイツ、ロシア、中国という世界の大国がイラクに一兵たりとも派兵していないという現実を見たときに、この国際協調という言葉がむなしく聞こえ、逆に、アメリカ追従が鮮明になるばかりでございます。
強調しておかなければならないことは、今回の米英によるイラク攻撃には全く大義がないということでございます。これは決して忘れてはなりません。イラク攻撃の口実であった大量破壊兵器は、いまだに見つかっておりません。アメリカやイギリスは証拠があると言って戦争に突入したのですが、今となっては、むなしくなるばかりでございます。こういった大義がない中で、復興支援の名のもとに自衛隊をイラクに派遣することは、アメリカやイギリスの占領政策に加担することになる、これが国民が反発する大きな理由なのであります。このことについて、総理の認識をお聞かせください。
孟子の言葉に、「天の時は地の利にしかず、地の利は人の和にしかず」という有名な言葉がございます。人の和がなければ何事も成功しないという意味でございます。総理の決断された自衛隊のイラク派遣に、人の和、すなわち国民の総意はありません。「聖人には常の心なし、百姓(ひゃくせい)の心を以て心と為す」という老子の至言もあります。中国の古典の名言や至言に精通しておられる総理ですから、説明の必要はないでしょう。総理は、自分の考えに固執することなく、百姓(ひゃくせい)、つまり民の声に耳を傾けるべきなのであります。
自衛隊員の方々やその御家族にとって、不安は限りなく大きいと思います。イラク現地はいまだに戦場であり、隊員は常に生命の危険と隣り合わせです。みずからの任務に対して国民の多くが反対している中では、隊員の士気も上がりにくいと思います。何のための任務かという疑念も当然起きるでしょう。
自衛隊の任務は専守防衛であって、日本の国土と国民を守ることにあります。海外での活動はPKOまでとなっております。イラク特措法が憲法違反であり、さらにそのイラク特措法にも違反するという二重の法律違反を犯してまで、イラクのような国外で戦闘に遭遇するなどということは、そもそも想定されておりません。これは政府の自衛隊員に対する契約違反行為であり、さらに言えば、甚だしい人権侵害であると言わざるを得ません。
総理は、国益国益と申しますが、国民一人一人の生命を顧みずして真の国益などありません。総理、ここは、派遣される自衛隊員、その御家族の方々のためにも派遣中止を決断していただきたい。そして、自衛隊派遣ではなく、イラク国民や周辺アラブ諸国が納得し、理解を示す復興支援こそ追求していくべきだと思います。総理の御決断をお聞かせください。
続いて、政府予算案についてお伺いをいたします。
政府予算案は、残念ながら、国民生活の視点が希薄だと言わざるを得ません。今、国民の多くが期待しているのは、現下のデフレ経済を好転させるための予算であります。
現在、我が国の経済に明るい兆しが見えてきたと言われています。しかし、地方や中小企業や一般労働者には全くその実感はありません。わずかの明るさを総理は改革の成果だとおっしゃいますが、とんでもありません。これは、良好な輸出環境と相まって、民間の血のにじむような自助努力の結果なのであります。
自助努力といっても、裏を返せばリストラであり、その結果、失業率は依然として五%台で高どまり、家計可処分所得が減少し、家計貯蓄率の低下が急激に進んでいるという数字がこれを示しています。いわば、働く人々の犠牲、家計の犠牲によって今の景気は支えられていると言っても過言ではありません。
景気を本格的な回復基調にしていくためには、雇用失業対策や、年金、医療などの福祉を最優先とした、家計を助ける予算編成を行い、将来不安を払拭する以外に道はありません。
しかし、来年度予算は、編成の重点が構造改革なのか景気回復なのか不明確であり、我々には中途半端な内容であるとしか映りません。来年度予算の重点はどこにあるのか、総理の明確な御答弁をお願いします。
次に、年金制度改革についてお尋ねをいたします。
我が国の年金制度は、今や、若い人を中心に深刻な不信が広がり、中高年を中心に大変な不安が募っております。そういう中で、今回の改正は、国民からの信頼を回復し、安心を取り戻す最大のチャンスであったにもかかわらず、政府の示した案は、国民を再度裏切り、不信、不安を助長するものであるということを申し上げなければなりません。
特に、十年来の課題であります国庫負担の引き上げについて、総理は、年金課税の適正化により基礎年金の国庫負担割合二分の一への引き上げに道筋をつけたとおっしゃっております。
しかし、年金課税強化による増収の見込みは、約一千六百三十二億円にすぎず、二分の一への引き上げに要する約二兆七千億円にははるかに及びません。与党が交わした合意書によれば、二〇〇七年度を目途に税制の抜本改革を行い、その上で二〇〇九年度までに二分の一を実現するとありますが、御自分の任期終了後の改革にまつという答えであり、あなたの言う、改革に道筋をつけたと言っても、単なる逃げ口上、問題の先送りとしか受け取れません。その点についてどのようにお考えでしょうか。
次に、道路公団改革についてお尋ねをいたします。
総理は、むだな道路はつくらないと明言をし、高速道路の新規建設を抑制する考えを示してきました。しかし、結果的には高速道路整備計画の九千三百四十二キロの道路建設を進める内容になっており、看板に偽りあると言わざるを得ません。
今回の政府・与党合意をめぐっても、道路族側からは、ああいうものになってよかったという喜びの声が聞こえる一方で、総理が意見を基本的に尊重したという道路関係四公団民営化推進委員会は、政府・与党合意に反発した二人の委員の辞任などで空中分解し、機能停止に陥っております。本当に推進委員会の意見を尊重したというのであるならば、意見をまとめるために努力した二人の委員が怒りを込めて辞任などするはずがありません。
公団改革をめぐる迷走、混乱は、総理の常套手段であった改革派対抵抗勢力の構図が利権の分捕り合いであったことをあらわしているのではないでしょうか。道路四公団の不明朗な経営、道路建設に関する特定の議員との癒着関係、ファミリー企業の存在や天下り問題など、一連の問題にメスをしっかり入れることから始めるべきであります。難しい問題はすべて半世紀後に先送りするというのであるのならば、何ら改革の名に値しないと考えますが、総理、いかがですか。
次に、総理が構造改革の本丸と位置づけておられる郵政民営化問題についてお尋ねをいたします。
郵便局は、地域で最も身近な国の機関として、国民の利便に大きく貢献しております。特に、生活弱者への貢献は大きく、国民の日常生活に深くかかわっております。少子高齢化社会が急速に進展し、二〇二五年には三人に一人が高齢者となる中、国民生活のセーフティーネットとして、全国の郵便局とそのネットワークを、国民生活共有の社会的インフラ、住民への公共サービスの拠点として積極的に活用していくことこそが大きな課題であると思います。
総理は、かつて公約としていた三十兆円をはるかに超える国債の発行に踏み切りましたが、その多くを引き受けているのは郵貯・簡保資金であります。銀行を国営化して郵貯を民営化するという矛盾にお気づきにならないのでしょうか。総理、国債管理政策をどうされようとしているのか、明らかにしていただきたいと思います。郵政の民営化より、少子化の克服を初め、医療や年金など社会保障制度を将来にわたって維持するための政策こそ必要であろうと思います。
以上、申し上げましたように、総理が改革の成果を叫べば叫ぶほど、私たちは、その成果のなさに、むしろむなしくなるばかりであります。
最後に、今我が国が危うい方向に進もうとしている現状に言及しないわけにはまいりません。
イラクへの自衛隊派遣は言うに及ばず、憲法改正の動き、その憲法の理念に基づく平和国家日本の原理原則であります、つまり、国是であります武器輸出三原則の見直しの動き、さらには、大本営発表に限りなく近づきかねない情報統制などなど、これまで考えられなかったことが、今、なし崩し的に動き始めております。
総理、あなたは憲法前文を持ち出して、国際社会において名誉ある地位を占めたいとおっしゃいました。しかし、私には、アメリカに対して名誉ある地位を占めたいと言っているふうにしか聞こえません。憲法を引用するのであれば、憲法九条こそ引用すべきであります。
あの悲惨な戦争から五十八年が経過いたしました。憲法九条と先人たちのたゆまぬ御努力のおかげで、私たちの国は、この間、どこの国ともただの一度も戦争することなく、平和な国として繁栄してまいりました。与えた痛み、受けた痛みを忘れ去ってしまうには、五十八年という歳月は余りにも短過ぎると思います。
私は、日本の宝であります憲法九条の旗を世界にはためかせることができたときにこそ、日本が国際社会において名誉ある地位を占めることができると確信をいたしております。
一歩踏み込めば、引き返すことがいかに困難なことであるかは、これまでの歴史が証明するところであります。いつの日か、ああ、こんなはずではなかったのにと言っても、もうそのときは遅いのです。それだけに、国会の責任が、本院の責任がいかに重要であるかということはおわかりのことと思います。
総理を初め、国民の代表者であります議員の皆様方にこのことを強く申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕