首藤信彦の発言 (本会議)

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○首藤信彦君 民主党の首藤信彦です。
 民主党・無所属クラブを代表して、政府提出法案及び条約について質問申し上げます。(拍手)
 現在まだ、イラクで武装集団に拉致され人質となっている三人の日本人がおられます。また、南部のサマワでは、まるでベトナム戦争時のテト攻勢のような四月五日のシーア派一斉蜂起によって、ナシリヤ、バスラなど南部の諸都市が不安定化し、状況によっては自衛隊員が退路を断たれて孤立する可能性も出てきました。
 このような事態は、イラクへ自衛隊を派遣する根拠となったイラク特措法の論議で最初から何度も論議となった問題です。事件と事態が発生して初めて、政府がイラク社会に何らの情報チャンネルも影響力も、また、このような緊急事態への対処能力も本質的に欠いているということがわかりました。
 危機管理の要諦はプリペアードネス、すなわち、どれだけ事前に準備できているかということにあります。事前準備なき泥縄の対応は、危機管理ではなく管理危機であると言われます。まさに今回の日本政府の対応は、またまた管理危機を具現化したものと言えます。(拍手)
 三人の人質を拉致した犯行グループが、アメリカ占領軍のファルージャ撤収ではなく直接日本政府の対応を求めている以上、政府は、事件の解決をアメリカに全面的に依存するのではなく、独自チャンネルによる一刻も早い事件の解決と人質の解放を実現することを強く強く要請いたします。(拍手)
 そのイラクのファルージャでは、イラクの怒れる民衆のリンチに遭ったアメリカの民間軍事会社ブラックウオーターの社員への報復として、アメリカ軍が同市を包囲し、その結果、六百人から七百人と言われるイラク人の死者を出しました。その中には多数の、一説によると半数と言われる非戦闘員、特に女性と子供たちの犠牲者も含まれております。また、最近の映像を見ますと、ヘリコプターの三十ミリ機関砲から直接人間に向かって撃っているという映像がございます。これは、明らかにジュネーブ条約の武器使用基準に反する蛮行と言えます。
 また、宗教及び地域社会のシンボルであるモスクに対して攻撃がなされました。文民への攻撃、宗教・文化施設の破壊は、とりもなおさずジュネーブ条約違反であり、戦争犯罪として定義づけられるものであります。日本政府は、直ちにアメリカに対し、このような国際犯罪行為を控えるように忠告すべきです。それこそが同盟国としての責務であると思います。
 さて、このような背景の中で、今回、武力攻撃事態への対処のために、国民保護法制を含む七法案、ジュネーブ条約追加議定書承認を含む三件の条約が国会に提出されました。
 しかしながら、日本に対しては、外部からの外国軍の侵入などの武力攻撃事態はこの五十九年間発生したことなく、このたび初めて、武力攻撃事態に国民がどう対応し、政府がどう国民を守るかという法律が国会で論議されることになります。
 また、我が国憲法において、そのような事態は想定されているものではありません。現行憲法は、第二次世界大戦という、我が国の未曾有の人命と国民資産が失われ人権が侵害された戦争が終結し、恒久平和を希求する中で起草されたものであり、緊急事態や武力攻撃事態を想定したものではないことは明らかです。憲法に込められた人権、文化的生活の概念及びそれを実行する行政システムは、あくまでも平時におけるそれであり、緊急時におけるそれは想定されていません。
 そもそも、緊急時における人権とは何か、緊急時における諸価値の優先度などはどこに定義されているんでしょうか。したがい、何らかの基本法的な枠組みにおいて、緊急時における国家及び国民の行動及び責任を明確にする必要があります。
 したがい、憲法に緊急事態の想定がない以上、国民保護法制の策定には緊急事態基本法の先行成立が前提条件と理解されますが、それが今回法案の前に国会に提出されていない理由を提案者にお聞きいたします。国民保護法制を先行させ、後で基本法をつくるというのでは、まるで、犬がしっぽを振るのではなく、しっぽが犬を振るような非論理的な話であります。(拍手)
 次に、旧憲法では、戒厳令や非常大権が明記され、その上に、日中戦争に際し、人的及び物的資源を統制、運用する大権を政府に与えた一九三八年の国家総動員法、あるいはまた本土決戦に向けての戦時緊急措置法が成立し、国家レベルでの緊急事態対応がなされました。国家総動員法と今回の国民保護法制との相違点はどこにあるか、明確に提案者にお答え願います。
 憲法に想定されている人権と武力攻撃事態において守らなければならない人権とは、全く同じものか、異なったものか、お答え願います。これは提案者及び法務大臣にお願いいたします。
 生存権ですら、緊急事態においては平時と違うと考えられます。例えば、阪神大震災においては、限られた医療機関に殺到する患者の生存率を高めるために、ある種の患者選別が行われたと言われております。紛争に巻き込まれれば、戦場では負傷度によって、重傷度によって患者選択が当然のように行われ、重傷者は切り捨てられる可能性もあります。このことが全体数では生存者数を高めるということから、そういう行為も行われることがあるからであります。
 緊急時、武力攻撃事態に対し、政府、行政側の要請、強制に対し、住民側の不服従行為があると想定されますが、そうした不服従権はどう扱われるのか、それを担保する法的根拠は何か、提案者及び法務大臣にお聞きいたします。
 また、憲法に外国軍駐留の規定がない以上、また、本件法案がテロ、緊急対処事態まで対象範囲としている以上、緊急時における駐留外国軍との協力関係の策定には、これまでの米軍行動関連措置法などの改定だけではなく、日米安保条約そのものの改定、あるいは憲法の修正が必要となると考えられますが、それらが同時に提出されるどころか、具体的な検討過程にも入っていない理由をお聞きいたします。
 例えば、フィリピン憲法において、外国軍の駐留の期限が明記されておりますが、憲法に明記のないまま同盟関係を増幅していくには、もはや限界に来ていると判断されております。
 朝鮮半島有事など北東アジアでの武力紛争を想定した場合は、国連安保理決議と国家としての意思決定の優先度や、あるいはまた国連軍、多国籍軍との位置づけを明記する必要がありますが、それらが今回の法案、条約に含まれていない理由を外務大臣にお聞きいたします。
 次に、国民保護法制における問題点についてお聞きいたします。
 武力攻撃事態の対象は、脅威は、現実には日本全体ではなく、北東アジアに直面する自治体や東南アジアと直結する位置にある自治体、そうした自治体にこそ影響は集中的に出ると思いますが、国民保護法制の中で、そうした地域に集中した特別対応を明記する必要がないのはなぜか、提案者に質問いたします。
 同様に、日本が体験した最後の戦争である第二次世界大戦と異なり、都市化の集積が甚だしく、都市が周辺並びに世界に対して極めて高度な依存状態にある以上、都市を防衛するには特別の措置が必要となりますが、それが認識も明記もされていない根拠を提案者にお聞きいたします。
 また、現実に都市ではどのような緊急事態対応が可能なのか、総務大臣にお聞きいたします。
 武力攻撃事態等における米軍の行動に伴い我が国が実施する措置についてお聞きいたします。
 そもそも、武力攻撃事態における一元的な指揮権はだれにあるのでしょうか。韓国の場合は、それは米軍にあると明記されております。果たして、日本においてはだれが一元的な指揮権を握ることになるのか、提案者、外務大臣あるいは防衛長官にお聞きいたします。
 また、武力攻撃事態における対処方法において、政府、自治体、自衛隊、アメリカ軍の主張が異なるとき、どこの意思が貫徹されるか、提案者にお聞きいたします。
 次に、ジュネーブ条約関係についてお聞きいたします。
 ジュネーブ四条約及び二つのプロトコールと、国民保護法制、日米安保との矛盾についてお聞きします。
 そもそも、一九五三年に加盟したジュネーブ四条約において、これはサンフランシスコ条約で日本に課せられた義務でしたが、それにもかかわらず国内の法的措置がとられなかった真の理由は何ですか。
 例えば、ジュネーブ条約には、教育・広報義務、周知義務などがあるはずですが、公式説明としては、既に個別違反などは刑法で担保されているなどと言われておりますが、実際は、ソ連に抑留され強制労働に従事させられた日本兵への給与の補償の問題や、強制移住させられた半島出身者の帰還の問題などがその背景にあると言われておりますが、本当の理由は一体何でしょうか、外務大臣にお聞きいたします。
 自衛隊、アメリカ軍、民間防衛組織、個人などがジュネーブ条約に違反する行動の責任を問われる場合、日本国内あるいは海外でそれぞれどのように裁かれるのか、明確にお答えください。法務大臣及び外務大臣にお聞きいたします。
 第二次世界大戦では、多くの日本兵が、ジュネーブ条約の存在すら知らず、戦争犯罪に加担し、BC級戦犯として処刑されました。これは私も昔読んだ本にありますが、「かんな萌ゆ、いとし妻子にもう会えぬ」、これは、私の記憶では、モンテンルパ刑務所で、処刑を直前にしたBC級戦犯が、窓からかすかに見えるカンナを見て詠んだ句と言われておりますが、こうした思いを二度と繰り返してはならない。その意味で、外務大臣及び法務大臣に、この問題について御説明を要求いたします。
 今回、日本がジュネーブ四条約対応国内法を制定し、追加議定書を批准し、国内法を整備しても、追加議定書に一切加盟していないアメリカとどう協力していくのでしょうか。アメリカ軍は日本の法規を遵守しなくても、国際法上はそれが認められていますが、ジュネーブ条約で厳格に禁止されている行為をアメリカ軍が実行した場合、日本はそれをどのように阻止し、また、その結果の責任をどのように回避できるでしょうか、外務大臣にお聞きします。
 また、アメリカ軍の一元的指揮権のもとで、自衛隊や民間防衛組織、あるいは個人がジュネーブ条約に規定される犯罪行為を行った場合、国際人道法上はどう日本国民を守ってくれるでしょうか。北朝鮮はジュネーブ条約の第一追加議定書に署名しておりますが、北朝鮮は自国で裁判を受け、アメリカは、アメリカ兵は母国で英雄として扱われ、日本人だけがハーグに連れていかれて裁かれるのでしょうか。外務大臣に、この点をお聞きいたします。
 前にも申しましたが、都市が脆弱で、外部依存度が極めて高く、自己防衛ができない以上、ジュネーブ条約に基づいて多くの都市が、安全地帯、中立地帯、非防守地帯、非武装地帯を自主宣言する可能性がありますが、その場合、自衛隊、アメリカ軍、日本政府はどのように対応するか、総務大臣にお聞きいたします。
 ここまで質問してきたように、今回政府が提案いたしました七つの法案、そして三つの条約、そのいずれもが、その一つ一つに関して、その審議で国会会期全体を使ってもおかしくないような非常に重要な案件であります。これを一括して国会に提出した政府の行為は、まさに神を恐れぬ行為と言わざるを得ません。政府の猛省を求めて、質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣井上喜一君登壇〕

発言情報

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発言者: 首藤信彦

speaker_id: 27368

日付: 2004-04-13

院: 衆議院

会議名: 本会議