鳩山由紀夫の発言 (本会議)

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○鳩山由紀夫君 政治は愛と信じています、民主党の鳩山由紀夫でございます。(拍手)
 再訪朝を発表してからわずか八日後、国民がかたずをのむ中で、小泉総理は北朝鮮訪問を決行されました。民主党の拉致問題対策本部長の任に当たってきた者として、このタイミングと状況下での訪朝に対して大きな不安を抱く一方、並々ならぬ期待感を持ってニュースを受けとめておりました。
 当日、小泉総理が、御家族の方がされているものと同じ、この青いバッジを胸元におつけになっておられるのを見て、かなり勇気づけられたのでありますが、結果は極めて残念、いや、無念と言わざるを得ません。(拍手)
 もちろん、蓮池さん、地村さんの御家族五名の方々が帰国されたことは、まことに喜ばしいことでございます。今後、五名の方々が日本の新しい環境に一日も早く溶け込めますように、政府の特段の配慮を求めます。
 しかし、前回の訪問から一年八カ月、そして拉致事件からは十年あるいは二十年以上もの歳月を耐えてこられた拉致被害者及びその御家族の思いはどうなったのでしょうか。御家族や国民の皆さんの多くは、最低でも八人の方の帰国と安否不明の方々の消息は得られるものと期待しておりましただけに、落胆は極めて大きいのでございます。
 以下、拉致被害者とその御家族、そして我が国の国益の視点に立って、今回の総理の訪朝について、民主党・無所属クラブを代表して質問をいたします。
 今回、通常の外交慣習を曲げて、一国を代表する総理みずからが北朝鮮を再度訪問されたわけです。本来ならば、北朝鮮側がすべての拉致被害者とともに来日するのが筋であるにもかかわらずであります。また、わずか九十分で会談が終了した事実も、失望に追い打ちをかけています。小泉総理は、しっかり対決してほしかったという横田早紀江さんの言葉をどう受けとめておられるのですか。
 総理は、交渉の中で、「日本にいる方々は、一人一人が生きていると信じている」と発言されたようでありますが、そのことに関して早紀江さんは、「総理御自身がはっきりと「みんなが生きているんだ」と自覚してほしいのです」と話されたのであります。そんなに短い時間で総理が怒りの声を上げてくれたとは到底思えないとの早紀江さんの言葉に、総理はこたえることができますか。日本国を背負っておられる、日本国民の命がかかっているとの認識を十分お持ちなのでしょうか。
 今回、最大の問題は、曽我さんの夫のジェンキンス氏の処遇についてでございます。米国との協議が調っていないとされる中で、総理はジェンキンス氏に保証(アイ・ギャランティー)したと言われておりますが、一体、何を保証されたのでありますか。それとも、米国との協議はもう既に調っておるのでありますか。米国との間で何らかの保証を得てから訪朝すべきではなかったのですか。(拍手)
 また、死亡あるいは不明とされている十名の方々の安否について、全く新たな事実が示されておりませんが、二〇〇二年の十月、日朝国交正常化交渉で、百五十項目にわたる質問事項を北朝鮮に投げかけていたはずです。政府は、訪朝前、その回答を前提に調査を依頼されているのが当然、自然の話ですが、まさか総理は、全く白紙の状態からの十名の安否の再調査に同意したのですか。これではさきの訪朝時と全く同じ出発点であり、期限も設けない再調査の同意で事足れりとしたことを御家族に批判されるのも当然でありましょう。(拍手)横田滋さんの、予想した中で最悪の結果という悲痛な叫びや、市川健一さんの、問題を棚上げしたも同然、私たちが苦しんでいるのになぜなのかと、込み上げてくる疑問の声が総理には聞こえないのでしょうか。
 百五十項目の質問の取り扱いを含め、再調査の具体的方針やその期限について御所見を伺いたい。
 さらに、拉致事件の重要な問題は、百名を超え、四百名とも言われている、拉致の疑いが実に濃い失踪者に関する事実の確認であります。
 小泉総理は、金正日総書記に対して通り一遍の言及しかされていないような印象でありますが、どのように調査の要求をされたのですか。二〇〇二年の九月まで政府は曽我ひとみさんを拉致被害者として認定もしていなかったことを考えますと、政府の特定失踪者問題への取り組みは大変に不誠実であります。
 今後、徹底的に調査をする体制を整えるためにも、改めて内閣に失踪者・行方不明者及び拉致問題対策本部を設置して、抜本的に政府の取り組みを強化すべきであります。総理の御見解をぜひ伺いたい。(拍手)
 今回、小泉総理は、金正日総書記に対し、日朝平壌宣言を守る限り経済制裁を発動しないと明言されました。ところが、平壌宣言には拉致問題のラの字もありません。つまり、北朝鮮側は、拉致事件を進展させなくとも経済制裁はしないとの確約を得たも同然じゃありませんか。そもそも、拉致事件は我が国の主権を侵害し、日本国民の人権と安全を踏みにじった重大事件であり、解決にはほど遠い状況の中で、この問題の全容解明、全面解決への外交カードをみずから捨ててしまうことは、外交的な大失敗であります。(拍手)
 今後、北朝鮮が拉致事件を進展させなくとも経済制裁を発動させないのか、また、特定船舶等入港禁止法案が国会に提出されている中で、どういうつもりでこのような約束をされたのか、明確な答弁を願います。もし拉致事件の解決等に向け具体的な進展がない場合には、国会として、政府に対し、より強い対応を求める決意があることを、ここで表明しておきます。(拍手)
 我が国のみならず世界の安全保障に重大な影響をもたらす北朝鮮の核問題について、小泉総理は、基本的には平壌宣言の内容を再確認しただけでありました。しかし、平壌宣言以来、北朝鮮によるNPT脱退や核保有の示唆など、その前提がもう既に変わっているのであります。小泉総理は、北朝鮮が平壌宣言の精神を守っているという認識で訪朝されたのですか。北朝鮮が平壌宣言を遵守してきたのかどうか、総理の宣言の解釈をぜひお示しいただきたい。(拍手)
 また、来月、六者協議の場で北朝鮮に、完全で検証可能かつ後戻りできない核放棄、いわゆるCVIDをアメリカ、中国、韓国、ロシアとともに働きかけていくときに、NPT脱退や核保有について不問に付すような小泉総理の姿勢が解決への前進になるとは到底思えません。来月予定されている六者協議は実質的な成果を上げられるのかどうか、金正日総書記との会談を踏まえ、総理の見解を伺います。
 今回、御家族の帰国と引きかえと見られるような形で、小泉総理は、人道支援と称して、米二十五万トンと一千万ドルの医療支援を約束してこられました。これは、今後の拉致問題の交渉にあしき前例をつくったのみならず、家族の帰国を人道支援と引きかえにしないという従来の総理の発言にも反するのじゃありませんか。(拍手)
 ちなみに、総理、米二十五万トンは幾らになるかおわかりでしょうか。政府買い入れ価格でいえば、五百七十五億円とも言われております。巨額であります。米でないとすれば、一体、支援をすると決めて、その後、内容をこれから決めようというのでありましょうか。
 政府は、拉致事件を国家によるテロ行為であると言っていますが、今回、身の代金を払ったと言われても仕方がないような形で人道支援と称する食糧、医療援助を行うことは、まさにテロに屈することじゃありませんか。(拍手)いま一度、拉致事件はテロ行為と認識しておられるのか、改めて総理にただします。さらに、今後、残る十名の方やあるいは特定失踪者の方々について進展があるたびに人道支援などを要求されたらどうするんですか、総理の認識を伺います。
 小泉総理の再訪問に関する北朝鮮の報道を見ていますと、拉致問題には一言も触れられておりません。報道では、「小泉首相は、過去に共和国との関係において好ましくないことがあったことに遺憾の意を表し、平壌宣言を誠実に履行することで敵対関係を協調関係に変え、関係を正常化していく意志を表明した」、さらには、「今後、日本は反共和国制裁法発動を中止し、在日朝鮮人を差別せず友好的に接することと、信頼関係回復のため、共和国への人道支援を即時再開し、米二十五万トン、一千万ドル相当の医薬品を提供すると明言した」と報道されているのであります。
 このような報道をどう思われるのでありますか。これでは、まさに日本が再度過去の問題で謝罪をし、平壌宣言以降、信頼関係を損なったことへのおわびの印としての人道支援をするという理解になってしまいます。小泉総理は、それでよしとされるのでしょうか。北朝鮮がこのような認識で、国交正常化交渉を急いでもいいのですか。明快な答弁を求めます。(拍手)
 また、国交正常化交渉の開始の時期は、十名の安否の確認の後としたいとする細田官房長官や自民党の安倍幹事長と、それにこだわらないとする外務省との間で意見が分かれているようでありますが、どちらをとるのでしょうか。また甘い判断でしょうか。とてもたまりません。
 今回の会談は、一方で、年金で落ちた小泉政権の支持を高めようとする政治の道具として拉致問題が扱われてしまいました。他方で、日本からの経済支援によって金正日体制の基盤強化につなげようとする北朝鮮の思惑で首脳会談が設定されました。この両者の政治的な思惑が一致したのであります。違いますか。お答えください。少なくとも、結果として、小泉首相の訪朝は金正日体制の基盤強化に手をかしたことになりますが、それでもよろしいんでしょうか。
 拉致事件、そして東アジアの平和と安定に関する課題を多く残したままに終わった今回の訪朝は、準備不足などがたたった余りにも稚拙なものでありました。総理は、かつて私の委員会質問に対し、拉致問題が解決するなら訪朝すると答えられたのですが、結果は、拉致問題にしても核問題にしても、解決にはほど遠いもので終わりました。
 そもそも、拉致事件は北朝鮮の犯罪行為であり、条件を出して論じ合うような交渉の場ではありません。日本が北朝鮮に解決を要求する問題であります。それを甘い条件で解決を図ろうとしたことが失敗だったんじゃありませんか。(拍手)
 日本国を代表する総理みずからが乗り出した外交として、将来に禍根を残すことになった小泉総理の政治ショーを強く糾弾し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 115905254X03520040525_028

発言者: 鳩山由紀夫

speaker_id: 11584

日付: 2004-05-25

院: 衆議院

会議名: 本会議