永長徹の発言 (共生社会に関する調査会)
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○参考人(永長徹君) よろしくお願いします。
自分は、千葉県の佐倉市にあります公立中学校の一教員です。このような席で意見陳述あるいは提言という立場ではありません。自分は数学の教員で、障害児教育とか福祉教育とか、そういうものには全くの素人ですし、知識、理論はありません。ただ、本校が開校以来取り組んでいた福祉学習の実践の報告を今日させていただいて、自分自身もこの実践を通して感じたもの、それから巡り合った人たちからいただいたもの、これを少し御披露させていただければと思ってここに参りました。よろしくお願いします。(OHP映写)
本校は佐倉市立根郷中学校といいます。平成九年の四月に新興住宅地の中に開校いたしました。市内では一番新しい学校です。本年度七年目を迎えます。
本校は、開校当時より地域開放型の校舎の造り、それから校舎内の設備等もそれを意識した造りが施されておりまして、体育館、温室プール、さらには隣に市立図書館が連結しているというような非常に恵まれた立地条件で子供たちは学習をしています。
開校以来福祉教育に取り組んだ大きな理由の一つに、今写真にごらんいただけるかと思いますが、グラウンドのフェンスを隔てて隣に福祉の施設がございます。この施設は、視覚障害の方を中心に利用されているんですが、重複障害の方、重度の方もいまして、通所の形で利用されている方、それからこの施設の中で生活をしている方が実際にはいらっしゃいます。当然、この施設の利用者の方が白杖を持つような形で学区内を白杖訓練あるいは散歩という形で本校の生徒と道々行き違う、擦れ違う姿というのは日常のことになります。本校が開校したときにはもう既に施設がある形になりましたので、お隣付き合いという意味で福祉教育に推進しようという引き金になった一つです。
本校の過去の取組ですが、先ほど申し上げた九年度の開校のときにはボランティアクラブという二十数名の、ほんの一部の生徒を対象にして福祉の体験を、隣の「愛光」さんなどなど、職員の方の御協力などを得て実施しました。その翌年、十年度、今度は対象を全校の生徒に広げました。ただし、この十年度はあくまでも点字と手話を、技能的なものを習得しようという授業に的を絞った形で展開しました。様々な問題もありまして、十一年度以降を根郷中プランと呼ばせていただいていますが、広く浅く福祉教育をという形で計画を立てて、現在に至っています。本日のお話は、この十一年度以降の根郷中プランの実践について報告をさせていただきます。
本校は、福祉教育を進路指導の中の一部と考えています。進路指導といいましても、今で言う生き方指導、広い意味の進路指導になりますので、中学校の生活にあるすべてのものが生き方指導であるという広い視点で考えています。その生きる力の中の、特にともに生きる力ということをクローズアップして本校は福祉教育の目標を、今ごらんいただいているような目標を定め、実践することにしました。
実際のプランの具体的な目標としては、気付き、考え、行動できるという形のボランティアスピリットを養成して、卒業、その後、市民となったときに、できれば共生社会の担い手になるような子供たちが巣立ってくれればという思いでプランを作っております。
具体的な内容ですが、一年生は最初の段階として、障害を知るという形のテーマを掲げました。柱は四本です。障害についての講話。これは、それぞれ障害を持たれた方を講師としてお呼びして、それぞれの障害についての知識的なことをお話ししていただきます。その次は、これはよくいろんな学校でやっておりますが、車いすの介助、ガイドヘルプの体験。さらに、その体験を経て、学区内に出て、学校の外、ふだん通い慣れている道、横断歩道、歩道などなどを歩くことで、違う視点、違う気付きを期待した授業。さらに、四本目の柱としては、先ほど紹介しました隣の施設の利用者との交流という形の内容です。
今ごらんいただいている写真は、それぞれ視覚、聴覚、肢体不自由という形で、障害を持たれた方にお話をいただいています。
車いすの介助、さらにガイドヘルプに関しても、我々ができることを子供に教えるのではなくて、直接お仕事として施設の職員あるいは市の、佐倉市のガイドヘルプとして職業として行っている方に来ていただいて体験をします。
体験を生かす場面として、実際に外に出て、様々な、ふだん何げなく通っているものが障害に感じる、邪魔なものに感じるということを体験します。写真はないんですが、隣の「愛光」さんとの交流は本年度初めて実施したものです。
二年生ですが、テーマとしてはともに生きている人たちと語り合うということで、一年生のときに障害者当事者、障害を持たれた当事者の方との触れ合いというのを中心に行っているんですが、それを二年生の段階では、その周囲で支えている方に、これも学校の方に来ていただいて様々なお話をしてもらいます。支えている方は、ボランティアグループ、様々なボランティアのグループに来ていただいています。
写真は、「あうん」というグループ名で、目の不自由な方にテープを、市の広報であるとか読み物をテープで吹き込んでお届けしているような活動をしているグループです。
市の福祉協議会の職員には、実際にボランティアとして様々な活動をしているものを紹介してもらって、紹介を受けた子供たちが自分にできるボランティアを夏休みなどの期間に体験するような意識付けの話をしてもらいます。
「おもちゃ図書館」、これもボランティアグループなんですが、知的障害がある小さいお子さんと健常な子供たちを一緒の場でおもちゃを通して、そういう場を提供している方です。
それから、家族の方。写真の方は御長男が重い障害を持たれた方です。お母さんの立場でお話をしてもらいます。
十年度に点字、手話の講座に限って授業を行っていたんですが、やはり技能習得には、年間十時間程度でも結局は月に一度ですので習得を目指すことが無理ということは分かりました。それ以降、根郷中プランになってからは、時間的には年間四時間という形で減ってはいるんですが、逆に技能習得を目指すよりも、逆に聾者の方それから目が見えない方との触れ合いの時間であって、手話、点字を通したコミュニケーションを図るような機会を提供できているのではないかというふうに感じています。
特に、毎年毎年改善をしているつもりで進んでいるんですが、点字の授業も隣の施設を利用している方に来ていただいて、子供たちが自分で打った点字を読んでもらって、といってもまだ自分の名前が打てるか打てないか程度なんですけれども、何々さんと利用者の方に読んでもらってにっこりできるというような場面です。利用者の方も、ふだんどうしても交流している人間の数が少ないので、学校に出向き、中学生、子供相手なんですけれども、たくさんの人たちと触れ合う機会を隣の施設の職員の方も喜んでくれています。
手話に関しても、一つの教室に市の聾者協会の方が講師として来ていただきます。写真にはありませんけれども、生徒の後ろに、手話のボランティアグループの方が二名必ず来ていただきます。講師の方と子供たちとのコミュニケーションがうまくいかないときに助けていただく、通訳していただくという形です。もちろん、学校の教員、担任もおりますので、一つの教室に大人が四人で一つの授業が成立するという形になります。右下の写真の子供たちの後ろに立っていられる方が手話のボランティアのグループのお二人です。
本年度、二年生では養護学校との交流、さらに聾学校との交流もカリキュラムに組みました。これも本年度初めてやったものです。組んだ我々としても、実際に行って子供たちがどういう取組をしてくれるのか非常に不安だったんですが、結局は、年間を通して行っている福祉の学習の身に付いたものをこの場で子供たちが、同じ年齢の養護学校、聾学校の子供たちの前で変わった自分を出せた、変わった自分を見付けられたというような場面になったのではないかというふうに感じました。
三年生は、更に視点を、社会全体に視野を広めようということで、共生社会の実現に向けてという形で学習内容を組みます。街の点検、福祉施設の訪問、さらに福祉社会を考えて三年間で学んできたこと、それから自分の夏休みなどの体験も含めて意見を発表して終わり、卒業というような形のカリキュラムです。
街の点検は、一年生のときには実際、車いすあるいはアイマスクという形で学区を、学校の外に足を運んでいるんですが、今回はテーマを与えます。本屋で本を買う、コンビニで物を買う、郵便局ではがきを出すなどのグループごとのテーマを与えます。さらに、範囲も広げて、公共の機関にも乗ってみる。そこでそんな街を、支援する立場と、車いすを介助する立場、ガイドヘルプする立場と車いすに乗る立場、アイマスクを付けた立場、両方の立場から気付いたことを記録して発表し合うというような形を取っています。
子供たちの授業内容は、当然いつもいつも公開できるわけではないので、保護者の福祉教育に理解を広めるという形の行事を年間一度の割合で開催しています。
今写真に出ておりますのは、忍足さんという耳の不自由な女優さんで、映画なども何本か撮られている方ですが、トークショーをしていただいています。
それから、この写真は千葉県の車いすのバスケットのチームなんですが、先日も大きい大会で日本一になってくれたチームなんですが、実際に試合を見せてもらったり、子供たちも車いすの、バスケット用の車いすに乗ってというような交流もします。
それから、つい先日、やはり行事として、目が不自由な方たちを中心とした新星78という団体があります。クラシックのコンサートを開いてもらいました。ただ音楽をということではなくて、それぞれ人生の途中で目が不自由になられた方もいますし、生まれ付き不自由な方もいらっしゃるわけですが、音楽に対する情熱とか、夢を持つことの大切さなどなどをインタビュー形式で、本当に子供に分かりやすいような内容の話をしてもらっていました。
さらに、これは小中の連携というテーマの行事なんですが、その行事のテーマも福祉関係のテーマを取り上げています。隣接の学区内の小学校なんですが、三年生を呼んで中学二年生が、ごらんのようにグループになって、ミニ先生になって手話を教えている場面です。教える立場になったとき、それから自分より小さい子供に何か伝えようとしたときの生き生きした表情が、我々教員にもいつもの表情とまた違う表情を見せてくれました。
こちらは、四年生を対象とした点字をやはりミニ先生になって教えている場面です。
我々職員の研修も、生徒と同じような立場で、白杖の体験、アイマスクの体験、ガイドヘルプの体験などなども含めて行っています。隣接の図書館の職員も一緒に交えて研修をしたり、我々の意識を変えることの大切さもこの七年間の歩みの中で強く感じている一つです。
授業前後の講師の打合せです。授業が成功するかどうかという点では、先ほど申し上げたように大人がたくさんいる授業ですので、前後の打合せが必要になってきます。
お時間がありませんが、実際にこういう形で福祉の教育を実践しているわけなんですが、子供たちにどうしてもつかんでほしいのは対等の意識です。何かしてあげるとか、言葉は悪いですけれども、上から下に見下ろしたような形の視点ではなくて、対等の意識が、人間観が作り上げられればという気持ちでやっています。
子供たちの変容は遅いです。目に見えないものもたくさんです。ほとんどだと思います。我々も手ごたえを感じない部分はたくさんあります。ですが、十年、二十年、卒業までの三年間で何かということではなくて、十年、二十年先の、この卒業した子供たちのどこかにいつか何かが芽生えてくれるんじゃないかという気持ちで、それを期待して子供たちには伝えるべきことを伝えようという機会を提供し続けたいと思っています。
以上です。ありがとうございました。