魚住裕一郎の発言 (憲法調査会)

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○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 憲法についての我が党の基本的な姿勢は、国民主権主義、恒久平和主義、また基本的人権の保障、この憲法の三原則を堅持することを前提に、憲法の在り方について議論をすることは避けない論憲の立場であり、この憲法の原則を踏まえつつ、必要な点においては加憲も考え得るという立場であります。
 憲法九条についても、堅持することを基本として、特に自衛権や国際協力、国際貢献の問題も含め、論点を浮き彫りにして、党内でタブーを設けないで議論を尽くした上で最終結論を得るということにしておりまして、現在、鋭意精力的な検討を進めているところであります。
 以下、個人的な見解を述べます。
 まず、国際平和主義と国際協調主義に立脚する現行憲法、とりわけ、それを具体化した第九条でございますが、不戦条約、国連憲章の流れをくむものであり、今後とも堅持すべきものであります。異論があるかもしれませんけれども、私は、制定後半世紀以上の歳月を経て、今や憲法は国民の間にしっかり根を張り、定着してきているというふうに見ております。また、憲法九条の内容については、政府の解釈や様々な実定法の立法化により明確な形で示されてきていると判断をいたします。とりわけ、自衛権や自衛隊を認め、また国際貢献ができるとする憲法解釈は既に確立しており、そのような中であえて今更憲法を改正する実益がどの程度あるのか疑問であります。むしろ、我が国の戦後の歴史を振り返るとき、様々に変化する国際環境の中で、我が国が平和国家として節度を保った対応が取られてきたのは、この九条、特に第二項の存在に負うところが大きいと言えます。
 このように、平和国家としての節度を保ちつつ、時代の変化に柔軟に対応し、かつ暴走に対する歯止めとして九条の存在意義は非常に高く、したがって、今後ともこのような九条は堅持すべきであるというふうに考えます。
 なお、この九条は堅持しつつ、今までの立場を明示するべく自衛隊を憲法に位置付けてはどうかという意見も党内にあることは御紹介をしておきたいと思います。
 次に、国際貢献でございますけれども、二十一世紀において我が国が目指すべきこの国の形は、自国の利益にのみとらわれる視野の狭い一国平和主義や一国国益主義の道ではあってはならない。積極的平和主義、すなわち国際貢献国家日本であるべきであり、平和、人道の国日本であると考えます。これは、正に日本国憲法、特に前文の精神の示す道であるとも考えます。
 我が国は、テロ、貧困、戦争、地球環境、人口、感染症など、今日の国際社会が直面する深刻な不安の解決に対し率先して取り組むべきであります。特に、その場合、一人一人の人間としての視点から、世界じゅうのすべての人々がこれらの脅威から解放され、人間として生存と尊厳が保障されるいわゆる人間の安全保障の確立が重要であると考えます。
 そのために、ODAを戦略的に活用し、また紛争地域の平和構築に国際社会と協力して積極的に貢献していくべきであると考えます。このような国際貢献の分野については、我が国は経済的貢献のみならず人的貢献、知的貢献など、その総力を挙げて取り組むべきであります。
 我が党は、国際平和貢献センターというものを設置して、国際平和の構築に資するため、各分野の専門的人材を育成し、派遣するとともに、国際平和貢献プロジェクトを我が国が積極的に世界に発信することを提唱をしております。
 また、このような観点から、NGOの育成や平和研究の推進、さらに軍縮の推進、国際刑事裁判所への参加、対人地雷除去の推進、難民の受入れの拡大なども今後我が国が取り組むべき課題であると考えております。
 次に、国連についてでございますが、平和の構築や貧困、格差の是正、地球環境など、二十一世紀の全人類が直面する課題の解決のために、国連が果たすべき役割も重要であると考えます。冷戦終結後の今日、国連がその本来の機能を発揮する道を切り開くことも可能となりました。我が国はこのような方向に向けて努力すべきであり、集団安全保障など、国連の機能強化を進めるべきであります。
 また、同時に、我が国は国連による平和維持、平和構築活動に積極的に参加するとともに、国連決議に基づいて正当な目的のために行われる活動に対しても、可能な限り協力を行うことも検討されるべきであると考えます。これは現在の憲法九条の下においても十分可能なことであります。
 次に、日米安保についてでございますが、我が国は国連への積極的な貢献を今後一層推し進めることが非常に重要でありますが、同時に日米安保条約を基軸とした従来からの日米間の協力関係は維持していく必要があります。日米安保体制は我が国の防衛のために必要であるとともに、世界第一、第二位の経済大国であり、またODAの二大供与国でもありますこの日米両国が協力関係を維持することは、アジア太平洋地域のみならず、世界の平和と繁栄のためにも重要であると考えるからであります。そのような観点から、我が国は今後とも日米間の協力関係の維持に努めるべきであると考えます。
 と同時に、中国を始めとする近隣のアジア諸国との平和友好関係の維持促進にも努力を傾注するべきであると考えます。そのためには、様々なレベルで、また広範な分野での人的交流の拡大を図るとともに紛争要因の除去に努め、地域の問題については可能な限り平和的解決の道を追求するよう努める姿勢が必要であります。また、長期的視点からは、今後、東アジア地域での安全保障の枠組み構築に我が国は積極的に取り組むべきであると考えるものであり、それがまた憲法の示す道であると考えます。
 最後に、集団的自衛権の問題についてでございますが、この議論に際しては、果たして具体的にどのような場合に実際に集団的自衛権の行使を認める必要があるのか、そしてそれが本当に集団的自衛権の問題であるのか。特に、この集団的自衛権行使をどうしても認めなければ国家存立が危うくなる場合は本当に存在するのか。またあるいは、憲法に集団的自衛権行使を明記した場合どのようなリスクが生じるのか。さらに、他の解釈との長短、優劣はどうなのか。以上のような問題を抽象的なレベルではなく、より具体的に事案に即して吟味し、議論、検討していく必要があると考えます。
 また、集団的自衛権については、その保有と行使を区別する政府解釈がしばしば批判されているところでございますが、国際法上、保有するということが認められた権利を実際に行使するか否かは、正に主権国家たるそれぞれの国が自らの判断で決すべき問題であり、具体的には主権者である国民の意思により制定された憲法等によって各国が各々決めるべき問題であると考えます。それは三月三日の本調査会における浅田、大沼両参考人の発言からも明らかであります。
 いずれにせよ、集団的自衛権の問題については、憲法を改正してまでその行使を認める必要があるのかどうかを十分に吟味する必要があります。個人的には、改正してまでその行使を認める必要性はないと考えるものであります。
 以上、平和主義と安全保障について私の見解を申し述べましたが、このような平和主義と安全保障の問題、とりわけ九条の問題を考えるに際しては、我が国の歴史、国民の体験を踏まえ、第九条が果たしてきた役割を振り返る歴史的視点、それと南北格差やテロリズムなど、国際社会の現状や動向に対するグローバルな視点、そして世界や日本の将来についての長期的な視点、この三視点を踏まえて総合的に考える必要があると思います。
 第九条の問題については、突き詰めれば、我が国が今後、普通の国としての道を歩むのか、それとも平和国家として我が国の長所を生かした形で世界の平和と繁栄のために貢献する道を歩むのかという選択の問題であります。私は、後者の道を選択するものであります。
 以上であります。

発言情報

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発言者: 魚住裕一郎

speaker_id: 33637

日付: 2004-04-07

院: 参議院

会議名: 憲法調査会