武部勤の発言 (本会議)

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○武部勤君 私は、自由民主党を代表いたしまして、総理の所信表明演説に対する質問を行います。(拍手)
 冒頭にまず、今回の台風二十二号を初め、今夏に相次いだ台風により亡くなられた方々に対し、謹んで哀悼の意をささげるとともに、心からお見舞いを申し上げます。与党として、政府と協力し、被害施設等の早期復旧と被災者の生活再建に万全を期してまいります。
 さて、私は、昨年の総選挙の政権公約である「小泉改革宣言」を中心に総理のお考えをお聞きしてまいります。
 かつて、二宮尊徳は、芋こじ会というものを催して、村の人々が車座になって本音で話し合う場を設けました。芋こじとは、泥のついた芋を洗うとき、おけの水の中で芋同士がぶつかり合ってきれいになることであります。本日は、本音で総理にさまざまお尋ねをいたしますので、どうか総理も本音でお答えをいただき、与党内はもとより、広く議会内、そして国民の間にも議論を起こし、日本全国で改革の芋こじをしていただきたいと存じます。
 まずは、小泉改革についてであります。
 小泉構造改革とは何か。それは、国民の自由な精神が遺憾なく発揮され、自由で活力にあふれ、伸び伸びとした経済社会の実現であり、一言で言えば、頑張る人がちゃんと幸せになれる国をつくろうということでありましょう。
 かつて、憲政の神様と言われた尾崎咢堂は、人生の本舞台は将来にありと言いました。その意味するところは、政治は常に将来を見据えていなければならないということであります。
 近年、小泉改革ほど将来を見据えて行われた改革はまれであります。小泉政権誕生前、バブル崩壊後も行われるべき構造改革が先送りされ、膨大な借金を積み上げてきました。小泉総理の就任から三年半、構造改革の成果は着実にあらわれ、我が国経済は今や政府の見通しを上回って回復しつつあります。とはいえ、郵政民営化を初めとする改革本丸はこれからであります。
 そこで、私は、日本経済が自律的な回復軌道に乗り始めた今こそ、いよいよ改革の仕上げに本腰を入れるべきときと考えるのであります。今まさに、国民の、そして民間企業の多くが望んでいる規制緩和を推進し、行政を縮小し、なおかつ、行政のサービスを向上させるときであります。
 役人はよく、規模を小さくすればサービスも縮小すると言いますが、こんなことは民間ではあり得ない話であります。民間は常に、安くてよいものを提供するために血の出る努力を重ねており、それこそが、敗戦の焼け野原から世界第二位の経済大国になった大きな要因であります。なぜ同じ人間、なぜ同じ日本人でありながら、民間にできて役人にはできないのか。それは、役人の能力が劣っているからではなく、そういう安くてよいものを出すような仕組みを私たち政治の場にいる人間がつくってこなかったからであります。
 今、小泉改革は、官にメスを入れて構造改革を行いつつあります。それは、単に行政を縮小するだけではなく、縮小しながらもサービスを向上させるという仕組みにまで盛り上げていくことが必要なのではないでしょうか。
 まずはしかし、官の規制を奪い去ることであります。
 日本経済が回復しつつあるのは、民間企業の想像を絶する努力によるものであります。ですから、その努力を無にするようなことを断じて許してはならず、さらにこの民間の勢いを持続させていくためにも、官に対する一層の改革の必要性を私は感じております。
 官とはすなわち、民に仕えるものをいうのであります。官が民間の犠牲の上に成り立つなどというおぞましい状況は、我が党は断じて許さない。そのためにも、小泉改革は何としてもやり遂げなければならないのだと考えます。改めて総理の御決意をお伺いいたします。
 次に、郵政民営化の問題であります。
 郵政民営化とは、巨大で非効率的な国営事業を民営化することで国民の負担を減らし、よりよいサービスを国民に提供するためのものであります。
 私たちは、かつての国鉄や電電公社など、民営化によってよみがえった、あるいは民営化によってサービスが向上した例をたくさん知っております。それは国民も周知の事実であります。
 郵政は、民間と類似の事業を営みながらさまざまな優遇を受け、一兆円とも言われる見えない国民負担があると言われ、さらに、その資金は特殊法人設立などに充てられ、ずさんな経営によって国民のお金が泡と消えていったのであります。預金高は民間の金融機関を大きく上回り、保険、金融、物流の巨大官製市場が日本を覆っているのであります。ですから、民営化はぜひとも強力に進めるべきであります。
 しかしながら、民営化前に民業を圧迫するような、なりふり構わぬ事業拡大が目に余ります。民間宅配業者による事業差しとめ提訴は、民営化に名をかりた民業圧迫拡大の象徴であります。
 郵政民営化につきましては、賛成派の中にむちゃな事業拡大を考える人がおり、反対派の中に本来の民営化の目的を勘違いしている方がいるという現状であります。やはりここは、郵政民営化の目的を明確にさせることが、改革推進の上で何よりも必要なことではないでしょうか。
 かつて、大平内閣時代、当時の渡辺美智雄大蔵大臣は、マスコミ、テレビに登場して、お茶の間の主婦やお年寄りに対して、例のミッチー節で売上税の必要性をとてもわかりやすく説明したものであります。
 私は、郵政民営化の目的とは、国民によりよいサービスを与え、郵政公社職員にはやりがいと新しい試みにチャレンジできる土台をつくり、国家としてはむだなお金を拠出せずに済むようにする、大きく考えればこの三点ではないかと思います。
 総理に民営化の目的と改革の決意について、また、竹中大臣には、民営化を進める上で解決すべき課題はどこにあるのか、どのような民営化像を描いているのかをわかりやすくお示しいただきたいのであります。
 一点だけ、郵政民営化は、決して郵政公社職員に問題があるから起きたのではないということをつけ加えたいと思います。悪いのはシステムであって、そこで働く人々は毎日全力を尽くしておられることを疑うものではありません。
 顧みれば、かつて郵便制度が日本に生まれたとき、その役割を各地の庄屋のしかるべき方たちが請け負ってくれました。しかるに、明治政府は、維新後わずか四年で、手品のように郵便制度をつくり上げてしまったのであります。
 以上のように、日本郵便の父、前島密は、壮大かつ緻密な構想をもって郵便制度を日本に根づかせ、新しい発想と大胆な行動力で市場を切り開いたのであります。再び前島密のような構想と実行力で、民営化後の郵政公社が堂々互角の条件のもとで民間企業と戦ってほしいと私は願うものであります。
 次に、官業の民間開放についてお伺いいたします。
 尾崎咢堂は、かつて、政治は、政府の役人だけに任せておくと、役人は自然わがままになり、人民の生命財産を勝手に処分し、人民に非常な迷惑を与えることになると述べております。官製市場はまさにその代名詞である。これを民間に開放せずして、どうして改革が進み得たと言えましょうか。
 我が党は、政権公約として、「民間からの提案に基づく競争入札等により、国と地方の行政サービスを民間に移譲する。」と国民に約束いたしました。これを受けて、政府もまた、規制改革・民間開放推進会議によって、官製市場の民間開放による民主導の経済社会実現を目指すという中間報告を出したのであります。具体的には、年金の給付や徴収、刑務所など公的施設の管理運営、車庫証明などの各種登録業務、航空管制などについて、民間開放を進めるべきであるとされております。
 官と民の競争入札という画期的な政策は、民間の合理的な手段によって硬直している官製市場に風穴をあけると同時に、官のコスト意識、サービス意識の向上につながるものであります。
 総理が示された基本方針にも官業の民間開放が盛り込まれておりますが、我が国として今後どのように官業の民間開放を進めていかれるのか、お聞かせください。
 「小泉改革宣言」は、公的機関の民営化、官業の民間開放、これに加えて、生活者重視の行政へ、行政の役割の転換もうたっています。
 行政の役割とは何か。大切なことでありますから、何度でも同じことを申し上げます。官は民に仕えるものであり、民間がいかに安心して、安全で、かつ自由に経済活動ができるか、そのことをただひたすら考え、実行する、これが官の役割であります。ゆえに、官業の過剰な民間に対する関与を削減し、規制の縮小、撤廃を進めねばなりません。と同時に、悪質な業者に対する監視もまた怠ってはならないのであります。
 「小泉改革宣言」では、このような観点から、行政の新たな役割の手段として、金融取引に関する新たな法整備や消費者保護基本法の強化、裁判外紛争処理制度創設、悪質業者に対して弱い立場にある消費者を保護するための団体訴権の立法化、発注側である官庁の罰則を強化する官製談合防止法の強化、独占禁止法及び公正取引委員会の強化など総合的な法整備を提唱しております。
 既に、さきの通常国会で消費者保護法、証券取引法、特定商取引法の改正などが行われ、独占禁止法改正案など、今国会に提出される案件も多く、制度の整備は着々と進んでおります。
 しかし、なお一歩踏み込んだ消費者保護が必要ではないでしょうか。例えば、すべての金融商品を網羅して規制する投資サービス法、悪質業者に対する団体訴訟制度などであります。
 また、今回の独禁法改正では課徴金引き上げが盛り込まれておりますが、事業発注側の意向や影響を受けやすい中小建設業者にすれば、発注側が談合に関与した場合の罰則も強化しなければバランスを欠くことになります。
 関与から監視へ、事前規制から事後チェックへという行政の役割転換に当たり、こうした制度整備についてどのように取り組まれるのか、お答えいただきたいと思います。
 次に、公務員制度の改革についてお尋ねいたします。
 「小泉改革宣言」の中で、公務員改革については幾つかの視点を打ち出しております。一つは、公務員の不作為、つまり怠慢の一掃であり、一つは、現場の士気を高めるための新たな評価方法の導入、そして天下りの制限などであります。
 国民が行政に対して抱いている不満は、行政がなすべきことをなさずに、非効率な仕事を延々と繰り返し、不正や犯罪を見逃したりしている点であります。
 年金行政、学校教育の現場や児童虐待、廃棄物処理等々、事例は多々ございます。なぜ仕事を怠るのか。それは、よいことを評価するのではなく、間違いの少ない者を評価する現在のシステムが原因であります。これでは、問題にふたをして黙っていた方がよいという風潮を生んでしまいます。公務員の不作為をなくすためにも、評価制度の見直しが必要であります。
 さらには、行政の役割転換などで新業務のために増員が必要となっても、安易に増員をせずに、仕事の電子化や外部委託を進め、浮いた人員を配置がえすることで確保すべきであります。
 私の農水相時代、消費者に軸足を置いた農林水産行政にすべく、八千人の食糧庁を廃止して、その半分を新しい消費・安全局に配転するという大改革を実行しました。今や、食の安全、安心のために、彼らは生き生きとして活躍しているのであります。
 公務員改革とは、単に非効率な行政制度を見直すことではなく、公務員がはつらつと働ける環境をつくることだと考えますが、総理の御所見を伺いたいと存じます。
 次に、補助金改革についてお伺いいたします。
 地方にできることは地方にという道州制を初めとする地方分権改革は、官から民へと並ぶ小泉改革のもう一つの柱であります。国から地方に事業事務と権限を移譲する補助金改革は、地方六団体が実に苦労に苦労を重ねてまとめていただいた改革案であります。にもかかわらず、各省は省益のみを優先し、反対するだけではなく、地方自治体に対しておどしともとれる圧力をかけている実態が明らかになりました。
 補助金改革は、総理から関係大臣に対して、地方の改革案を真摯に受けとめ、実現に向けて率先し、責任を持って全力で取り組むようにと強い指示が出されました。年内にも、税源移譲、交付税改革を含めた三位一体改革の全体像を示すとの考えも述べておられます。関係大臣は政治家としての矜持を必ずや発揮してくれるであろうと確信いたしますが、補助金改革にかける総理のリーダーシップに期待をし、改めてその御決意を伺いたいと存じます。
 最後に、各種世論調査において国民の関心が最も高い社会保障制度改革についてお伺いいたします。
 我が国は、少子化が進む一方で、社会保障関係費の当然増が毎年一兆円に達しております。抜本的な制度改革に踏み切らない限り、現役世代のみで高齢世代を支え続けることはもはや不可能であります。現役世代の負担能力を第一に考えた社会保障制度全体の再設計が求められているのは、そのためであります。
 今こそ、老後の安心とともに、子供たちの未来のために真剣な取り組みが必要であります。
 さきの国会で、与党と民主党は、社会制度改革に関する三党合意を取り交わしました。党派の立場を超え、与野党協力して将来にわたって安定した社会保障制度を構築することが、我々政治家に課せられた使命と考えます。三党合意に署名した民主党初め野党各党の諸君に、まずそのことを申し上げたいのであります。(拍手)
 しかしながら、社会保障が相互扶助であるというならば、現役世代にのみ過剰な負担を押しつけず、世代間が互いに思いやり、痛みを分かち合わなければなりません。また、現役世代のみに負担を課す定率減税より、すべての世代が公平に負担する消費税を財源の柱として考えるべきではないか。
 さらには、実態が明らかになればなるほど社会保険庁のでたらめぶりは目に余るものがあります。年金制度に対する国民の強い不満と不信感を払拭するため、業務の民間移譲を含め、社会保険庁の解体も視野に入れた抜本改革や、社会保険の個人勘定化も検討すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 さて、質問の終わりに臨み、一言申し上げます。
 三年後の二〇〇七年には、参議選、統一地方選が行われ、衆議院もまた任期満了を迎えます。私は、今や政党政治は、日本の将来と政権をかけた真剣勝負の場に立たされていると痛感いたします。
 この八月、私は衆議院調査団としてブラジルを訪問しましたが、その際にお会いした日系人の方々は、だれしもが年齢よりはるかに若々しく見え、その目は少年のように輝いていたことが印象的でありました。甲子園を沸かせた高校野球健児も、アテネ・オリンピックやパラリンピックで活躍した日本選手の皆さんも、また、サマワで人道復興支援に汗を流している自衛隊員諸君にも共通する、気迫と気概に満ちたまなざしだったように思います。それは、困難の先には希望があるという強い信念に裏打ちされたものだと考えます。
 これまで何度か引用した尾崎咢堂は、政治家はみずからの良心に従って行動すべきであると言っております。私は、総理はまさにそのことを実践されておられるのだと確信しております。なぜならば、強い反対が予測されることを率先するには、信念と、信念を支える良心が必要だからであります。
 「小泉改革宣言」は、我が党が国民に約束した政権公約であることは言うまでもありません。我が党の一員として、私も、みずからの良心に従って信念を貫きたいと思います。その信念はすなわち、改革の推進と、そのための環境づくりであります。私も、尋常ならざる決意でこの難局に臨む覚悟であります。(拍手)
 結びに当たり、この場をおかりし、総理の求める、守られる政治資金制度、透明な政治資金制度の確立を我が党はかたく国民の皆様にお約束いたします。そして、我々は、断固たる決意で総理をお支えいたします。
 小泉総理の揺るぎなき改革貫徹を確信し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 116105254X00220041013_006

発言者: 武部勤

speaker_id: 7886

日付: 2004-10-13

院: 衆議院

会議名: 本会議