横路孝弘の発言 (本会議)
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○横路孝弘君 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、総理大臣に質問いたします。(拍手)
総理、就任されて三年半がたちました。総理大臣という重い責任のお仕事で、毎日大変な思いをされているだろうと御拝察申し上げる次第でございます。
政治家にとって、とりわけ総理大臣にとって大切なことは、今、国民の暮らしがどうなっているのか、日本社会の現状はどうなのか、その現実を直視して、正しく状況認識し把握されることだと思います。
残念ながら、一昨日の所信表明演説の中では、案の定、改革の結果としてのつまみ食い的成果を述べられましたが、それは、国民の生活の実感や実態とはほど遠いものでございました。いかなる困難があってもくじけることなく、失敗しても挑戦をと鼓舞されましたが、失敗や挫折の多くの原因が小泉政権の政策そのものにあることを棚に上げ、自己責任論に持っていく発言に思えてなりません。
小泉総理、今、国民の生活実態はどんな状況でしょうか。
毎年、学校を卒業する若者は、夢と希望を持って社会に巣立っていくことができていますか。高齢者の皆さんは、心穏やかに、不安のない老後を送っておられるのでしょうか。若い夫婦には、安心して子供を産み育てる環境が整っているのでしょうか。地域の商店街、中小企業の経営者の皆さんは、消費が伸びて、売り上げや資金繰りに頭を痛めることが少なくなってきたのでしょうか。
残念ながら、すべてノーです。小泉さんが総理大臣になってからの数字を見ますと、高校を卒業した新卒のフリーター化率が、三五・一%から三八・四%へとふえています。赤ちゃんの出生率は、一・三三から一・二九へと減少し、生活保護を受ける高齢者世帯が、三十七万から四十三万六千世帯へとふえているのであります。自営業者の人も、実に三十万人が廃業しているのであります。
総理、総理は、構造改革を進める中で、景気は個人消費や設備投資を中心に堅調に回復していると一昨日おっしゃいましたけれども、国民生活そのものを示す数字は決してよくなっておりません。
サラリーマンの給料は、六年連続で下がり続けているのです。より深刻なのは、給料を安定的にもらうことのできない人がふえているということです。失業されている人が相変わらず三百万人を超え、職を求めても仕事がないとあきらめた人が四百万人、フリーターが四百十七万人もいるのであります。仕事につける人が減っているだけではなくて、その内容も、正規社員などの安定雇用から、パートなどの不安定雇用に変わってきています。
七月の統計によりますと、勤労者に占める非正規社員の割合が三四・六%にまで高まっています。そして、この非正規社員の八割の人々が月二十万円以下の収入で、そのうち、十万円未満の人が四割にも上っているのであります。実に、我が国勤労者の三分の一が、このような安い賃金、不十分な福利厚生などに加え、いつ職を失うかという不安を抱えて生活をしているということがわかるのであります。
その結果、貯蓄の平均保有額は四年連続で前年を下回り、収入が減って生活のために四年間で二百万円も貯蓄を取り崩しているのがはっきりしているのであります。また、貯蓄のない世帯が二〇%を超えております。この数字は、昭和三十年以来の高い数字なのであります。
そこで、総理に伺います。
総理は、景気は堅調に回復していると本当にお考えなんでしょうか。私が用いたさまざまな統計の数字は、いずれも政府発表の中からとったものでございますが、こうした国民生活の現実をどう受けとめられますか。あわせてお答えをいただきたいと思います。(拍手)
次に問題なのは、雇用の不安定化、賃金の抑制などを反映して、国民の間に所得格差が拡大をしていることであります。政府が六月に発表した所得再分配調査によりますと、世帯の所得格差が最大になっております。所得の高い方から四分の一の世帯が全体の所得の四分の三を占めるまでになり、持てる者と持たざる者の二極化が進み、階層が固定化しつつあるのであります。
金持ちはますます豊かになり、生活の苦しい人がいつまでたっても苦しいままという日本社会を皆さんは望むのでしょうか、私は望みません。人生とは、夢や希望を持ってそれに向かって努力していくこと。多くの国民は、努力すれば報われるという思いで毎日汗水流して働いているのではないでしょうか。そして、それをサポートするのが政治の役割だと思います。低所得階層が低所得階層として固定されてしまうことは、人々からやる気や活力を奪い、社会全体の沈滞を招くことになるでしょう。
総理は、一体、この国をどんな国、どんな社会へ導こうとしておられるのでしょう。アメリカ的な競争社会ですか。日本には、みんなで協力してやってきたという日本の文化があります。総理の考えておられるところを明らかにしていただきたいと思います。
今、多くの国民がたくさんの不安を感じています。数々の不安を抱え、ストレスも多く、ひとり悶々と苦悩している人もいます。こんな不安がやはり数字にあらわれているのです。自殺された人の数、昨年三万四千四百二十七人と、過去最高になりました。特に、生活苦など経済、生活問題を原因とする働き盛り、一家の大黒柱の三十代、四十代の自殺が急増したのが特徴であります。競争に追われ、だれにも相談できずに最悪の選択をしてしまう深刻な事態に、本当に胸が痛みます。
ホームレスの増加も、国民生活の不安、苦悩の一端だと思います。全国で昨年二万五千二百九十六人、とうとう初めて四十七都道府県すべてでその存在が明らかになりました。バブル崩壊後にホームレスになった人が八〇%、かつて正社員だった人が四〇%を占めています。リストラや倒産を受け、一度挫折したらチャレンジもままならない日本社会の現実を見る思いがいたします。
生活保護の急増も顕著であります。昨年、生活保護の受給世帯は九十四万一千二百七十世帯、受給人員は百三十四万四千三百二十七人と、国民のほぼ九十四人に一人が生活保護を受けていることになります。また、受給世帯の九割は高齢者世帯、障害者世帯、母子世帯になっているのであります。
自殺もホームレスも生活保護も、本来ならみずから望まない選択肢だと考えますが、何万、何十万という人々がそのような選択をせざるを得ない状況にあるということ、そのことを政治は直視していかなくてはなりません。
小泉総理、あなたの政権のもとでのこれらの最悪の数字をどう受けとめられますか。どうしてこうなったのでしょう。その原因もあわせてお答えをいただきたいと思います。(拍手)
次に、生活保護に関連してお尋ねいたします。
厚生労働省は、去る十月十二日、三位一体改革について、地方六団体の提案を完全に無視して、逆に、生活保護制度の国庫負担軽減、国民健康保険の給付に対する都道府県の負担を新たに導入、児童扶養手当に対しても地方の費用の負担の増加を提案いたしました。
三位一体改革は、地方への権限と財源を移譲していくことが基本であるはずであります。しかし、厚生労働省の姿勢は、権限も財源も地方へは渡さない、そして、国の財政負担を軽くしてその分負担を地方に押しつけるものでありまして、到底納得のできるものではありません。
総理として、こうしたでたらめな厚生労働省の考え方をどうお考えになられますか。昨日は、岡田代表の質問に、総理は、各省にしっかり指示をしているということでございましたが、しかし、各省庁はさっぱり受けとめていないようであります。六団体の提案についての考え方ともども、お答えをいただきたいと思います。
さて、次は、改善のさっぱり進まない雇用情勢についてお伺いいたします。
雇用を取り巻く状況は厳しく、パートや派遣、業務請負など正社員でない働き方が急増し、時間外を含む長時間労働が減る気配はありません。特に女性の場合、半数以上が非正規労働になっており、男女間の賃金格差や処遇の改善も遅々として進んでいないのであります。
パートの現状は、例えば女性正社員とパート社員との賃金格差は六六・四%と、その格差は年々拡大をしています。これを放置することは、社会全体としての雇用の二極化を認めることであり、機会均等とは言えない状況の放置であります。
私たち民主党は、既に、正社員とパートの均等待遇法案を衆議院に提出しております。同一価値労働同一賃金という均等待遇と、厚生年金など社会保険の適用拡大の実現について、総理の見解を求めたいと思います。(拍手)
雇用のもう一つの問題は、長時間労働であります。今、三十代男性勤労者のうち、一日十二時間以上労働している人が二四%もいるのであります。このような残業をやめることで百六十万人の雇用が、有給休暇を消化することで百五十万人の雇用が生まれると言われています。
サービス残業はもちろん論外ですが、私たちが働き方と暮らし方を変えて、長時間労働をやめ、休暇をきちんととることのできる社会にしていかなくてはなりません。そのことで、家族と家庭の機能、役割を回復することもできるのであります。
小泉総理、雇用のあり方や働き方について、政府の責任を放棄することなく社会的な合意、コンセンサスを得るためにどのような努力をされるのか、お答えをいただきたいと思います。(拍手)
小泉総理、こうした現在の国民生活の実態、日本社会の現状を考えますと、やるべき優先課題が何であるかがはっきり見えてきたと思います。それは、年金を含めた社会保障制度の改革であります。
今月から厚生年金保険料の引き上げが始まりましたが、みんな怒っています。抜本的な改革が行われず、数多くの問題が先送りされる中で、負担増と給付減を押しつけられたからであります。今回の政府が強行した年金改正で、若い世代の年金不信を払拭することができましたか。国民年金や厚生年金の空洞化、あるいは第三号被保険者の問題など負担がばらばらなこと。負担の上限と給付の下限も、政府の当初の説明以上に負担は重く給付は少ないことが明らかになり、不信を募らせているのであります。
総理、多くの問題が先送りされていること、百年安心できる制度設計ではなかったことなど、国民のこれらの年金不信に対してお答えをいただきたいと思います。(拍手)
私たち民主党は、何よりも年金の抜本改革が大切であると受けとめ、最優先課題として取り組んでいく決意であります。
第一に、年金制度一元化についてお尋ねしたいと思います。
私たち民主党は、公平でわかりやすい、安心の持てる年金制度をつくるために、年金制度を一元化し、すべての人が所得に比例して保険料を納め、納めた保険料に比例して年金を受給することのできる所得比例年金を創設いたしますとともに、税を財源とする最低保障年金をつくり、高齢者の生活を保障する年金制度にすることを目指しています。その実現に向かって全力を尽くすことを国民の皆さんにお約束をいたします。(拍手)
現在の年金制度は、職業、働き方によって加入する年金制度が異なります。どのような職業、働き方であっても公平な年金制度にすること、すべての人が同じ年金制度に加入することができるように制度を一元化することこそが求められていると思うのであります。
しかし、与党の中では、いまだに国民年金を含めた年金制度の一元化に強い抵抗感を示す発言がなされています。総理は年金制度の一元化が望ましいと発言されてきましたが、それは国民年金を含めた一元化であると、ここではっきりと明言していただきたいと思います。また、総理が設置した社会保障懇談会では、総理は一元化に向けての明確な方向性を示しているのでしょうか。その点もあわせてお答えをいただきたいと思います。
さて、次は、年金の財源についてであります。
総理は、自分の在任中は消費税を上げるつもりはない、しかし議論は自由にやってほしいとか、二年後のことを束縛する気はありませんと、無責任な答弁をされています。そして、実質的には消費税議論を封印しているのであります。なぜ無責任なのか。基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に五年かけて引き上げる計画の中に、消費税を盛り込んでいるではありませんか。厚生労働省のパンフレットでも、二分の一へ引き上げる道筋として、消費税を含む税制改革でと明記されているのであります。前厚生労働大臣も認める発言をされております。
そこで、総理にお伺いいたします。政府が行った年金改正では、基礎年金の国庫負担を二分の一へ引き上げる財源として消費税を充てることが含まれていると思いますが、含まれているのかいないのか。国民に負担を求めることについてごまかさないでほしいのであります。総理はどう考えているのか、お答えください。
私たちは、年金制度を一元化することを条件に、年金目的消費税を創設し、将来的には最低保障年金の財源とする考えでございます。
さて、さきの通常国会において、民主、自民、公明三党による合意が結ばれましたが、その後、実行に至っておりません。
私たち民主党は、既に年金制度の抜本改革に関する考え方をまとめており、いつでも合意に基づいて与野党協議や衆参の厚生労働委員会の年金一元化に関する小委員会で議論をする準備ができていますし、協議のテーブルに着きたいと考えております。
この点について、昨日の岡田代表の質問に対して、総理は相変わらず何も答えておりません。できない理由をたくさんあげつらう総理の姿に、多くの国民は失望したものと思います。
そこで、総理にお尋ねしますが、総理はさまざまな難しい問題があると言われていますが、少なくとも民主党は、国民年金を含む一元化、納税者番号制度の導入、年金財源としての年金目的消費税の導入という一定の方向性を国民に示しています。これらの問題に解決を求められているのは総理御自身なのであります。そこから協議が始まるのであります。本心から三党合意を実現しようと考えているのか、お答えをいただきたいと思います。(拍手)
年金制度を協議する上で必要なことは、情報の開示であります。
さきの国会で厚生労働省が故意に行った合計特殊出生率隠しのように、将来の年金の負担と給付の問題に直結する数値が公表されないことは、年金についての十分な検討、議論を阻害するものであります。それは、厚生労働省に限りません。例えば、国民年金加入者の所得分布がどうなっているかなどは、財務省が持っている情報が開示されないとはっきりしないのであります。
今回の反省に立って、政府の持っている情報を迅速に明らかにして、国民全体が正しい情報のもとに議論ができるようにしなければならないと考えますが、総理の認識をお伺いいたします。
次に、無年金問題についてお尋ねいたします。
国が学生無年金障害者となった者を放置したことに対し、違憲判決が出され、早急な救済措置が必要だということになりまして、民主党、与党からもその方向に法案が出されています。与党案は、学生と主婦についての救済は入っておりますが、国籍要件によって排除されていた在日外国人については、今後の検討課題として先送りされています。しかし、年金制度に加入したくても加入できなかった在日外国人無年金障害者に対しても、直ちに救済に乗り出すべきだと考えますが、総理の御認識をお伺いしたいと思います。
さらに、年金を取り扱う社会保険庁の問題であります。
同僚民主党議員がこの間国会で追及をして明らかにしてきたように、社会保険庁のとんでもないむだ遣いや流用、そして汚職事件、目を覆うばかりであります。これらがどれほど国民の年金に対する不信感を増幅したことでありましょうか。総理、このような社会保険庁の現状をどうなさるのでしょうか。民間人の任命でお茶を濁すのですか、お答えをいただきたいと思います。(拍手)
私たちは、社会保険庁を廃止し、国税庁と統合し歳入庁にして、公正、公平、効率的な保険料徴収を行うことを提案しているのであります。
安心と信頼の置ける年金制度や社会保障制度をつくることは、日本経済の新しいスタートのためにも必要なのであります。サービス経済化が進んだ現在の日本の経済構造のもとでは、公共事業投資より社会保障、社会福祉投資の方が、生産波及効果はもとより、雇用拡大効果はとりわけ大きいのであります。このことを総理、しっかりと認識をしていただきたいと思います。
昨日、岡田代表が、政治と金の問題で、総理御自身関係者を説得するかどうか、このことを質問いたしましたときに、政治家は他人から言われるまでもなく、みずからの問題を説明することが重要だと答弁されました。
伺いたいのは、総理御自身が、自民党の最高責任者である総裁として関係者を説得するのかしないのかという問題であります。再度お答えをいただきたいと思います。
また、国会での証言の取り扱いは各党各会派で十分議論してほしいという答弁がありましたが、自民党が証人喚問や参考人招致を否決すれば実現できないのであります。今、国民の政治に対する目が厳しい中で、何としても真相を明らかにすることが信頼を回復する道だと思います。自民党総裁としてリーダーシップを発揮されるかどうか、お答えをいただきたいと思います。(拍手)
小泉総理、あなたの行ってきた三年半の政治は、さまざまな国民の声に耳を傾けることなく、反対する声は抵抗勢力と決めつけて議論を封殺してまいりました。そして他方、戦後六十年にわたって築き上げてきた国の原則を、いとも簡単に議論なしに変えてきたのであります。イラクへの自衛隊派遣、多国籍軍への参加もそうであります。平和国家日本を構成してきたのは、武器を輸出しない、海外派兵を行わない、核武装は行わない、専守防衛に徹するといった原則ではないでしょうか。戦後、憲法のもとでつくり上げてきた原則をすべて投げ捨てて、日本はどんな道を歩むのでしょうか。
総理、国民の願いと生活に目を向けてください。ただ郵政、郵政と叫ぶことではなく、ブッシュ大統領に身も心もささげることでもありません。必要なことは、夢と希望を持って安心して暮らせる国民生活、そこへの長期的展望に立った着実な歩みであります。
総理、空虚な言葉だけで何の説明責任も果たさない無責任な政治、パフォーマンス政治、ワンフレーズ政治、ワイドショー政治とやゆされてきた政治はもうやめてほしいというのは、多くの国民の思いであります。
今日の国民の置かれている生活の状況、社会の状況を明らかにして質問いたしました。率直な、そして真摯な御答弁を心から御期待申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕