吉川春子の発言 (憲法調査会)
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○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
地方自治について発言をいたします。
戦前の憲法と現在の憲法との大きな違いの一つが、憲法第八章での地方自治の保障です。これは、今の憲法の大事な特徴を成しています。歴史上、日本で初めて認められた権利であり、制度です。学会でも多数が、地方自治の本旨は国から独立した地方公共団体が存在し、原則として国の監督を排除して、自主的、自立的に、直接間接を問わず住民の意思によって地方の実情に即して仕事を行うということが認識とされています。戦前は、知事は官選、市長も市議会の推薦する候補者の中から内務大臣が天皇の裁可を得て決められることになっていました。町村長も町村会の選挙で知事が認可するという仕組みでした。
戦前の不幸な歴史の反省から、地方自治の確立が戦後の日本の民主化にとって不可欠の要素であるとしてこの八章が加わったと思います。その内容は、地方自治体の自治権の強化、地方自治を導入することによって地方自治を確立するということが核心です。
九十二条、地方自治の本旨に関連して述べます。
憲法は、第八章を地方自治に当て、地方自治の本旨をうたい、自治体首長と地方議会の住民による直接選挙、また地方公共団体による財産管理、事務処理、行政執行の権限を認め、法律の範囲内で条例を制定することができると定めています。この憲法に基づいて地方自治法が制定されています。地方自治が制度的に憲法上保障されたことは世界でも画期的なことです。憲法九十二条に明記された地方自治の本旨とは、自治体に自治権を保障する団体自治と住民に地方自治参加の権利を保障する住民自治と二つの原理から成っており、これは車の両輪を成すものです。
自治体は、その地方自治体については国から法的に独立した政治、行政の主体として憲法でその自主的存在が保障されています。地方自治体の存在理由は、地域住民の福祉を増進させることにあります。現憲法の地方自治を強化していく上で何が大事かという議論を深めていくべきであると思います。
小泉内閣の三位一体改革は、地方に一定の税源を移す代わりに地方交付税と国庫補助負担金を大幅に廃止、縮減し、結果として国から地方への財政支出を削減しようというものです。財務省が七、八兆円の交付税の削減を主張する一方、今廃止、縮減の重点的対象に挙げられている国庫補助負担金の多くは、福祉、教育に関して国が義務として地方に支出すべきものばかりです。交付税を削減し、国庫補助負担金の廃止、縮減では、国民の権利として保障すべき福祉や教育の水準を保てなくなってしまいます。福祉、教育など一定水準のナショナルミニマムをどの自治体も提供できるように、国が地方交付税などその財源を確保する義務があると思います。
地方交付税の縮小は地方農村部の自治体の財政に重大な困難を持ち込むものです。財源保障機能と財源を調整する二つの機能を持っているのが地方交付税です。また、国庫補助負担金も約七割は福祉、教育へ、国の義務的支出で、地方の財源保障のもう一つの柱です。政府が財政危機を口実に暮らしや福祉の自治体による上乗せ措置を押さえ付け、市町村合併の押し付けや地方財源の切捨てを進めているということは、地方自治の破壊につながるものと言わざるを得ません。
これに対して、今全国で、暮らし、福祉を守るという自治体本来の姿を取り戻そうという新しい流れがあります。脱ダム宣言を行い、福祉、教育や地域振興に力を注いでいる長野県始め、各地で住民の立場に立つ自治体が広がっています。
介護保険についても、制度が導入されるときから、保険料、利用料の減免を要求し、その結果、保険料減免は四百三十一の自治体で、利用料減免は全国の自治体の四分の一、八百二十五の自治体で実施されております。
また、乳幼児医療費無料化を一九七一年に我が党が最初で国会に取り上げましたけれども、今この運動が広がり、今日では全国すべての自治体が何らかの助成措置を設けるまでになっています。
少人数学級問題でも、父母や教職員の皆さんが運動をした結果、今では二十一の道県、一政令指定都市で、小中学校の低学年を中心に三十人、三十五人以下などの少人数学級が実施され、更に広がろうとしています。
政府は、半ば強引に市町村合併を推し進めています。そのために、合併特例債や地方交付税措置を行っています。現在、三千十六まで減らされた市町村を更に千まで減らそうとしています。政府は、年度末までに二千七百を下回る見込みと、昨日、総務大臣がおっしゃっていました。これに対して、国による合併押し付けは自主的な地方、地域の発展と暮らしの向上の努力を妨げ、地方自治を侵すものです。このねらいは、国から地方への財政支出を削ることにあり、地方の切捨てです。全国町村会は、提言を行い、地域の多様性を認めず、自立と尊厳の精神を否定するような市町村再編は我が国の将来に大きな禍根を残すと警告を発しています。
また、合併の強制に反対して、小さくても輝く自治体フォーラムが開催されました。これは、顔が見える小規模自治体の個性あふれる住民自治を発展させるように開かれたものです。実践的な住民自治を掲げて、補助事業に頼らない田直し事業や在宅介護を中心としたげた履きヘルパーなどで注目されています長野県栄村の高橋村長は、行政サービスは国が確実に決めるものではなく、町村が創造するものだと語っています。基礎的自治体の適正規模を、人口と行政コストの関係という机上の計算だけで割り出せるものではないと考えます。人口規模だけでなく、面積や地形、気候、風土、住民の生活様式など、総合的に判断されるべきではないでしょうか。
さいたま市は、旧浦和市、旧大宮市、旧与野市の三市が合併して政令市になりました。合併によって負担は高い方に、サービスは低い方に合わせ、高齢者や低所得者が多く加入している国民健康保険税は旧三市のときよりも大幅に値上げされ、年収三百万円の世帯で十万円の負担増、二百万円の世帯で八万五千円の負担増に跳ね上がっています。合併を推進する最大の理由も、住民のことは念頭になく、自治体の数を減らした方が国から地方への財政支出を減らせるということであるとすれば大問題です。
総務省の試算では、市町村を千自治体程度に減らせば四兆から五兆円地方財源を減らせるというものです。町村合併を進めるねらいには、その先には道州制があります。道州制をめぐっては、今、都道府県を事実上なくして全国を七から十程度の道州に分けるなど、様々な案が出されています。
経団連は、市町村を千程度に編成することと一体に、道州制を含め具体的な検討に早急に着手し、市町村合併特例法の期限までに方向性を取りまとめるべきであると強調しています。道州制になれば確かに財界が巨大プロジェクトなど大型開発を進めるには都合は良いのでしょうが、住民の自治はほとんど実態を失うおそれがあると思います。
住民自治、自治体自治という地方自治の本旨の内容を一層豊かにすることは、二十一世紀に大きな課題です。それは、ヨーロッパ地方自治憲章など、世界の流れにも沿ったものだと思います。十九世紀のフランスのトックビルや、二十世紀イギリスではブライスといった識者たちが、地方自治は民主主義の源であり、その基本を養う小学校だと述べています。私も、地方自治は民主主義の学校だと思っております。そういう憲法に保障された地方自治の本旨の実態についてむしろ議論をもっと深めていく必要があると考えています。
九十三条は、地方自治体の長や議会の議員を直接選挙すべきことにしています。住民の代表である議員が自治体の行政をコントロールします。その点からいえば、町村合併によって地方議会の定数が大幅に削減されることは、住民の意思が議会に反映しにくくなり、行政コントロールの機能が低下することにつながります。
また、住民の意見の議会への反映については次のような課題があります。
現在、六十万人を超える永住外国人の地方参政権の実現を急がなくてはなりません。最高裁も、永住外国人に地方参政権を保障することは憲法上禁止されているものではないと判決を下しています。九五年二月です。また、多くの国々でも実施済みか実施に向けた積極的な検討が行われています。
永住外国人の地方参政権といった場合に、選挙権とともに被選挙権をも含むと私たちは考えます。
また、これは中央の選挙も含めてですけれども、十八歳選挙権の実現は、青年の権利と自立、日本社会の現実からいっても急がれます。私たちは、創立したときから一貫して十八歳選挙権、党創立時から十八歳選挙権を要求してきました。今や百五十か国以上に及び、サミット諸国で十八歳選挙権を実施していないのは日本だけです。
国政においては代議制を基本としていますが、地方政治においては代議制と直接民主主義が大きな柱として位置付けています。地方自治には、住民の直接参加を直接請求の仕組みとして定めています。これを実質的に保障することが必要です。
今、地方で住民投票を行う場合に一番何が問題かといいますと、その条例を議会が作ってくれない、それが一番の問題になっています。住民投票のハードル自身を低くしないといけないと思います。ハードルの低さと議会の審議を充実させる、最低その二つの条件は必要であります。
一九八〇年代以降、ヨーロッパ自治憲章、国際地方自治体連合、世界地方自治宣言が出されています。これらは地方自治、住民自治だけでなく、事務配分に関する市町村優先の原則、権利に関する自主財源の確保、自主課税権の保障などを内容としたものです。ここに自治に関する世界の趨勢が示されています。
最後に、憲法の地方自治に関する規定を変える必要はなく、これを充実、発展させるための努力が行政にも国会にも求められていることを述べて、私の意見とします。
ありがとうございました。