田英夫の発言 (憲法調査会)

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○田英夫君 第八章の地方自治は、言うまでもなく、明治憲法の中央集権、これを廃して、民主主義を基本として地方政治、住民の自治を行うということを九十二条から九十五条にかけて規定しているわけですけれども、これは、更に細かなことを規定すべきだという御意見もあるようですけれども、私どもは地方自治の基本をこのように決めてあるこの条項はそのまま維持するべきだと思っております。
 この基本的な精神は、住民、あるいは市民と言ってもいいと思いますが、そこの地域の住民の皆さんの意思によってその地域のことが決められていくという極めて原則的なこと、これを大切にしていこうと、言わば民主主義の原理を地方政治の中で確立していこうということを決めているわけですが、実際には、依然として中央集権時代の精神、習わし、あるいはやり方が中央の省庁、行政府によって続けられているという事実があります。
 今回の小泉内閣のいわゆる三位一体と言われるこの改革、改革と言えるかどうかも問題だと思います。第一に、中央の行政府が決めて、そして地方がこれを受けて、一体国会で議論をしただろうかということがまず疑問であります。
 今、いろんな議論が省庁間の間でも、あるいは地方との間でも出ていて、収拾が付かないと言ってもいい状態になってしまっている。これは、一に掛かって、地方自治ということの精神を一本、こう筋を通して、みんなが一致してわきまえているという状態にないからだろうと思います。
 それぞれの問題については、私ども国会ももっともっと議論をして、いい結論を出していかない内容のものもあります。中央が統括していた方がいいというものもあるかもしれません。しかし、今の方向は、むしろ中央あるいは地方の財政の窮迫というものを原因にして、それで問題を処理しようと、そこを救おうということが主な理由になっているようでありますが、それは本末転倒ではないかと思います。
 例えば、義務教育費の国庫負担という問題、これも今回の三位一体の中で大きな議論のテーマに中央と地方の間でなっているわけですし、一般の国民の皆さんの中にもこれについてはいろいろな御意見があると思います。
 しかし、この国会でそのことをきちんと国を代表、国民を代表して議論をしただろうか。これは全く不十分ですね。いわゆる義務教育費の国庫負担というのは、ある意味でいうと教育の基本として大切にされてきたわけです。この部分を、財政が理由とはいいながら、地方に全面的に渡してしまっていいのか。地方は当然のことながら、その自治体の考えによってそれぞれ変わったやり方をするでしょう。この辺に、いわゆる地方自治と中央の政治のやり方というものの調整の一番問題があるんだろうと思います。
 その議論の場は国会でなけりゃならないと。それが今全く無視されて進められている辺りに、いわゆる地方自治というものに対する考え方がまだまだ中央省庁の中で特に無視されていると思います。
 もう一つ、平成の大合併と言われている合併の問題もまた地方自治ということの本当の精神をわきまえてやっているだろうか。むしろ、中央から呼び掛けて大合併が進められている。その結果、古くから日本の地方で行われてきた本当の住民の間の協力と、あるいは事実上の住民の自治ということが無視されてしまっているんじゃないか。
 本当に古くから、日本の農村は、みんなで村の人が協力をしてお米を作ると、そういうやり方が何百年も続く中で、おのずから地方の自治というものが進められていて、それを今本当に中央集権ではなくて、それぞれの地域でうまく進むようにしてきていると。それを合併という、これもまた主として財政を理由として合併をしてしまう結果、その地域の住民の皆さんの古くからの在り方というものが壊されていると。また、早い話が、日本人にとって古くから懐かしい村や町の名前も消えつつあります。これは小さなことのようで、実は意外に大きな問題だと私は思います。もっとそうした、あの村がとかあの町がという、そういうことを大切にする精神を文字どおりそれこそ大切にしていかないといけないのではないか。大合併ということに対しても、もっとお互いに国会で議論をすべきだと思っています。
 そして、住民投票についても、これも確かに地域住民の自治の極限は住民の直接投票による決定だということになるでしょう。しかし、一方で本当にすべてをそういうやり方で決めていいのか。今の第八章の憲法ではいわゆる代表民主主義、直接の民主主義ではなくて代表の民主主義といいますか、それぞれ自治体の議会というものを選挙して、それによって自治を行っているということが基本になっております。もちろん、テーマによっては住民の皆さんの直接の意思を聞いた方がいいという場合があるでしょう。それはその地域のそれぞれの議会の議論を経た上でテーマによって住民投票を行うという手続が正しいのではないかと私は思っております。
 以上です。

発言情報

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発言者: 田英夫

speaker_id: 16046

日付: 2004-10-27

院: 参議院

会議名: 憲法調査会