舛添要一の発言 (憲法調査会)
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○舛添要一君 自由民主党の舛添要一でございます。
まず、司法全体について申し上げますと、今非常に裁判に時間が掛かる、これは私は大変問題であろうというふうに思いますので、裁判は迅速に行う、迅速でない裁判は裁判ではないと、そういうプログラム規定を述べるべきであって、被害者が亡くなっているのに加害者の方のその裁判が全く進まないと。具体的な例を言いますとオウム真理教の裁判なんかそうですけれども、こういうことは許されるべきではなかろうというふうに思っております。
それから、今最高裁判所をトップとした司法体系ができておりますけれども、一つは専門の特別裁判所を作るべきであると。行政事件、知的財産権その他専門的事項に関する事件を処理するための特別の裁判所を設け、しかしそれは終審裁判所としては事件処理はできずに、最高裁判所の下に設置されるということを一つ御提案申し上げたいと思います。
それから、憲法九条との絡みで、これは特別裁判所はできないことになっていますけれども、憲法九条で自衛権及び国際協力のために自衛隊が認められるとすれば、その規律維持やその組織に対する処置のためにはやはり軍事裁判所というのを設けるべきであるというふうに思います。これは憲法九条の改正と裏腹の問題でございます。
それから、違憲立法審査権が今最高裁判所に置かれておりますけれども、やはり憲法裁判所というのを設けるべきであろうというふうに思います。各国で憲法裁判所的なものを設けておりますけれども、新たに設ける憲法裁判所は、一切の法律、条例、命令、規則又は処分がこの憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する一審かつ終審の裁判所とするべきであろうというふうに思います。
じゃ、その憲法適合性の裁判というのをどういうふうにして行うかということでありますけれども、大きく二つのカテゴリーに分けるべきであろうと思います。第一のカテゴリーは、具体的な規範統制でございます。第二のカテゴリーは、抽象的な規範統制であります。
まず、第一の具体的な規範統制ということでございますけれども、これは憲法裁判所以外の、つまり一般の司法裁判所において係属する事件の裁判に関しまして、当該司法裁判所がその法律、条例、命令、規則又は処分の憲法適合性の判断を求める必要があるという判断をしたときにこの憲法適合性の判断を憲法裁判所に移送すると。
分かりやすく言うと、ある具体的な事件が起こって、ある法律に基づいてその事件に判断を下さないといけないと、しかし司法裁判所の、例えば東京地方裁判所、そこの裁判官が、どうもこの法律が憲法に違反しているような感じがすると、したがって自分としてはそのことがクリアできなければ判断下せないというときに、その裁判所は憲法裁判所にその当該法律が違憲なのか合憲なのか判断してくださいよと、こういうことを移送する。これが具体的なケースに対する具体的な規範統制のカテゴリーにおける憲法裁判所の機能であります。
それから、もう一つが抽象的な規範統制と呼ばれる第二のカテゴリーでありますけれども、これは、個々具体的な係争、その事件についてではなくて、国会で法律が制定、公布される、それから地方の議会で条例が制定される、つまり、法律、条例、命令又は規則が制定若しくは公布されてから例えば三十日以内とか十五日以内とか、そこの日にちは決めればいいんですけれども、例えば三十日以内に当該法律等についての内閣総理大臣、衆議院議員若しくは参議院議員の一定の議員から申立てがあったときには憲法裁判所に移送すると。つまり、具体的に言うと、我々が国会である法律を作りますと。その法律が、どうもこれは違憲のにおいがするということを例えば参議院が判断したときに、今のところ参議院議員若しくは衆議院議員の三分の一以上の議員が申立てをすれば、その法律は憲法裁判所に移送され、憲法裁判所が違憲立法審査権を行使するということになります。
それから、衆参両院とともに内閣総理大臣も同じことを、つまり内閣総理大臣が申し立てて、当該法律の憲法適合性についての判断を憲法裁判所に仰ぐことができると。
条例につきましては、地方自治体、同じように地方自治体の首長さんないしは地方議会の議員の三分の一以上の議員から憲法適合性の裁判を求める申立てがあったときには、憲法裁判所はその適合性の判断をしないといけないと。
そして、憲法裁判所が最終判断を下すまでは制定、公布された法律等は有効であると。国によっては一般国民から憲法異議の訴えができることもありますけれども、これだと余りに多くの案件が移送される危険性がありますので、今言ったように、内閣総理大臣ないしは首長、国会議員ないしは地方議員というふうに限っております。
ただ、ここで一つ申し上げますと、特に二番目のカテゴリーの抽象的規範統制について言いますと、私は今、衆議院議員若しくは参議院の三分の一以上の申立てがあったからということを言いましたけれども、例えばイラクに対する特別立法を国会の過半数で通過させました、制定しました。しかし、野党の皆さん方の中で、これはどうも違憲であると一生懸命抵抗したけれども通ること、阻止することできなかったと。そこで、三分の一集まることは、国会で二分の一以上で通ったものをたかだか三分の一ぐらいの議員で、野党の議員が違憲だと言ったことで憲法適合性の裁判をやっていいのかどうなのかという問題が残ります。
ですから、二分の一の過半数で国会ないし地方議会で制定された法律等が三分の一の野党の申立てによって憲法適合性を審査する憲法裁判所に移送されてよいのかどうなのかと。これは後ほど皆さん方、じっくりと議論をしていただきたいというふうに思います。実を言うと、これは立法府と司法の間の三権分立のチェック・アンド・バランスの一つにもかかわるところでございますんで、憲法裁判所を設置するときにはこういう問題が起こると。
それからもう一つは、統治行為との問題でございまして、今までは最高裁判所が違憲かどうかという判断を求められても、これは統治行為であると、司法が判断することではございませんよという形で政治の場に球を投げ返していた。
今回は、必ず憲法裁判所はどんなことでも判定を下すんですか、それともどうするんですかと、やっぱり統治行為論というのはずっと残るんですかと。もし新しい憲法裁判所のシステムを入れるとすると、今まで統治行為論である意味で判断を回避してきた最高裁判所のやり方というのをどう変えるのかということが問題であろうと思います。
それから、私は先ほど憲法裁判所を新たに設置するということで具体的な内容を御報告いたしましたけれども、実を言うと、運用の側面においては、これは内閣法制局をどうするかということと裏腹の問題でございます。内閣法制局が一元的に憲法解釈権を握っているような形で、我が立法府において、それは合憲です、それは違憲ですと、いろんな御意見をおっしゃる、これをどうするのかと。憲法裁判所ができたときに、もう内閣法制局なんて要らないのかどうなのか、このことも是非皆さん御議論いただきたいと思います。
決定的なのは、立法府の権限と司法の権限とのチェック・アンド・バランスを一番いい形で、憲法裁判所という形で実現させるということでございます。
そこで、憲法裁判所にだれを裁判官として任命するかということでございますけれども、これは今日の後半の部分で参考人が、御専門の先生が具体的な例をお挙げになると思いますけれども、例えば、フランスは九人、そして三人ずつ、それぞれ立法、行政、司法が選ぶ。そして、大統領経験者は自動的にそれに加えてメンバーとなるということでございますんで、そういうことを参考にいたしまして、国会、立法府、最高裁判所は司法、内閣、行政、それぞれの三権が推薦する名簿に基づいて、天皇が内閣の助言と承認に基づいて任命するものとするということでございますけれども、まあ広く言えば、フランスのように、例えば三権の長の経験した方々、衆参両院の議長経験者、内閣総理大臣経験者、最高裁判所長官、こういう方々は終身のメンバーとして入れた方がいいのかどうなのか、そういう問題もございますし、任期を九年にするのかどうするのかという、この問題を考えるときに、アメリカの連邦最高裁の任命を考えると分かりますけれども、共和党の大統領が共和党に近い人を選んで、そしたら次が民主党の政権になって、民主党が行うことに共和党系の連邦最高裁がどんどん違憲判決を出すというような政治性も現れてきますから、この裁判官の任期というのは非常に慎重に、九年にするのか四年にするのか六年にするのか考えないといけないというふうに思います。
それからあと一つ、司法について、まあ小さな問題なんですけれども、現行憲法の七十九条、八十条に、裁判官の報酬は在任中これを減額することができないと最高裁も地方裁も書いてあるんです。そういう規定があることを国民の皆さん御存じですか、このデフレの時代に皆さん給料下がっているでしょう、憲法で給料下げちゃいけないって決めてある職があるんですよ。皆さん御存じありません。
ここの意味は、その裁判官の独立を害するような形で政治的にサラリーを下げられることが問題なんで、そこを明記しないと、私の理解している限りでは、国家公務員を含めてほとんどみんな、国会議員もそうですけれども、このデフレ時代に、報酬が削減されたときにたしか裁判官も削減されたはずなんですけれども、額面どおり読めばこれは憲法違反になりますから、裁判官独立を害することになるような報酬の減額は、これはしてはならないというような形に書き換えておいた方が裁判官の方々のためにもよろしいかと思います。
以上、憲法裁判所の設置を中心として司法について述べさせていただきましたので、むしろ私の御報告は、皆さん方のこれからの活発な御意見を挑発したいという形での提案でございます。
以上です。
ありがとうございました。