田英夫の発言 (憲法調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○田英夫君 社民党の田英夫です。
 我が国の司法制度については、各党の皆さんから御指摘がありましたように、時間が掛かるとか最高裁の問題とか、非常に問題が多いことはもう事実でありますが、その中で特に憲法に対する司法の判断が非常に、良く言えば慎重なのかもしれませんが、出てこない、明快に出てこない。このことは今の日本の司法制度の中の最大の問題だと思いますが、なぜそうなってしまったのか。
 特に、最高裁の役割が非常にあいまいですね。最高裁の判事を内閣が任命すると、このことは三権分立を配慮したことでしょうけれども、結果として、自民党政権が長い間続いてきた、はたと気が付くと最高裁の判事はみんなその政権によって任命された人たちになってしまっているということに気が付きます。それは制度上そうならざるを得ないというか、当然のことかもしれませんが、このことが一つの原因だと思います。
 国民審査はありますけれども、国民は最高裁の判事のことをほとんど承知していないと。言わば、形式的な審査をやっても、結局は丸を付けておけばいいという程度の結果しか出てこない。本当に最高裁の何たるかを知るようにするにはどうしたらいいかということも一つの問題でしょう。
 もう一つは、今も言われていましたが、違憲審査、特に違憲審査を明快にしないということが続いております。自衛隊ができてもう長い歴史が積み重なっているにもかかわらず、自衛隊の違憲ということに対して明快な判断が最高裁から出てこない。私は、自衛隊は極めて違憲のおそれが強いと思いますよ。戦力という言葉、日本人で戦力という言葉を正しく知っている人は、今の憲法第九条第二項のあの言葉と、世界で五指に入る自衛隊の正に戦力とを比べてどう考えるんでしょうか。もうそのことに対しては国民の皆さんはあきらめてしまっているのかとさえ思います。
 そこで、日本と同じような憲法を持ち、本当にそれを保ち続けて実行しているコスタリカという国のことを話してみたいと思いますが、実は、この憲法調査会は昨年、ちょうど一年ほど前に代表団を送ってコスタリカの憲法を調査してまいりました。私は残念ながらこの代表団には入りませんでしたけれども、最近、今年の九月に私ども社民党の代表団が、国会議員は三人でしたが、このコスタリカを調査してきました。それは、コスタリカで極めて注目すべき違憲判決が出たからであります。
 もう皆さん、代表団の報告がありますが、この調査会でも団長だった市川一朗さんが詳しい報告をしておられて、もちろん速記録に載っておりますから、昨年の十二月三日の調査会で詳しい報告をしておりますから中身は申し上げませんけれども、要点だけ言えば、コスタリカの最高裁は、憲法裁判所ではなくて最高裁の中に四つの部門を持っていると。その四つの部門の中の一つが憲法法廷。つまり、日本と同じ最高裁判所の中に役割分担をして憲法判断をする部門を作っていると。つまり、今、日本も憲法裁判所を作れという御意見もあるようですけれども、そういう変化を、改正をしなくても、今の最高裁の中にはっきりと役割分担をして憲法判断をする部門を作ればいいということをコスタリカの現実は教えています。
 そして、これももう皆さんよく御存じのとおりですが、コスタリカは日本と同じように軍隊を持たないという憲法を一九四九年に作っております。自衛のためにやむを得ず必要な場合には軍隊を持つということを決めている点が日本と違います。日本の第九条は、軍隊は持たない、戦力は持たないというんですから。にもかかわらず、現実はコスタリカの方が以後、軍隊を持たないし、戦争もしないということを守り抜いている。
 それどころか、今年の四月にコスタリカの一人の大学生が、コスタリカ政府がアメリカのイラク戦争を支持したということを取り上げて、これは憲法に反するという訴訟を起こしました。それはアメリカが戦争を始めた昨年の三月、その直後から、この一人の学生は改めて自分の国の憲法のことを学び、国際法を学び、そしてそれをまとめて訴訟を起こした。これに対して、コスタリカ最高裁は今年の九月に判決を下して、コスタリカ政府の決めたアメリカのイラク戦争支持は違憲であると、同時に国連憲章にも違反するという明快な判決を下しています。
 なぜこういうことになってくるのか。残念ながら、コスタリカでは一九四九年に、先ほど申し上げたように、つまり日本のこの現行憲法ができた直後にコスタリカでも軍隊を持たないという憲法を作ったわけですけれども、その後、歴代の大統領、政府、そして国民の皆さんもこの憲法を守ることに誇りを持ってやってきています。
 例えば、一九八六年、アリアス大統領、この人は中米和平の、真ん中のアメリカですね、中米和平の五か国会議というのを作り、中米に続いていた内戦や紛争を解決してしまったために、その功によって一九八七年、ノーベル平和賞を受けていますが、歴代のコスタリカの大統領はそうした伝統を守ってそれぞれの平和活動をやっています。
 なぜあの中米の、あそこの国の人たちがそういう平和主義になったのか、これはもっと調べなければ分かりませんが、私は、八七年のノーベル賞を、平和賞を取ったアリアス大統領とは、金大中、韓国の金大中氏の紹介でソウルで会ったことがありますが、いかにも平和主義者の穏やかな人物だったことを知って、改めて、やはりこれはそういう国民性がこの平和憲法のために築き上げられてきているんだろうかとさえ思ったわけであります。
 我が国の憲法、そして、にもかかわらず、それに違反するおそれのあるような軍事力を持っている現状に対して最高裁が正しい判断を下さないということに対して極めて強い遺憾の意を申し上げて、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 116114184X00520041124_010

発言者: 田英夫

speaker_id: 16046

日付: 2004-11-24

院: 参議院

会議名: 憲法調査会