仁比聡平の発言 (憲法調査会)

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○仁比聡平君 ありがとうございます。
 私は、先ほど意見陳述の中で御紹介をしました「日独裁判官物語」という記録映画の中で紹介をされているドイツの裁判官の市民的政治的自由を享受をしている姿を御紹介をさせていただいて、この調査会の調査に、提出をさせていただきたいと思います。
 この記録映画は、まず冒頭に、我が国最高裁判事が黒塗りの車に乗ってSPの護衛を受けて裁判所に出勤をする姿に対して、ドイツの連邦憲法裁判所の判事が自らスクーターを運転してヘルメットをかぶって裁判所に出勤をするという姿を象徴的に描いています。
 この判事は、四十七年間の間にドイツ連邦憲法裁判所が五百件以上の違憲判決を下してきたことを紹介をしながら、その原点が旧ナチスによる犠牲者、この犠牲を当時の司法が作り出してきたことへの深い反省を語りながら、裁判所は市民へのサービス機関でなければならないということを強調をしています。
 ドイツでは、このような裁判そのものへの市民参加についても参審制が取られ、あるいは法律扶助制度が極めて充実をしているなど、見るべき点があるわけですけれども、裁判官の市民的自由という点で見ますと、日本の裁判官が任地や昇格に、任地や昇格において差別をされる、統制をされるということに比して、ドイツでは一方的な任地の異動というのはあり得ないという身分保障がされています。ですから、地域に密着をした裁判官が当事者と同様に社会の中で一人の市民として生きることが非常に重要であり、裁判官である前に一人の市民として市民的な自由を持っていることが裁判に当たる上でも大変大事なのだということを何人もの裁判官が語っています。
 例えば、裁判官の労働組合、裁判官組合が、市民との交流と裁判をもっと身近なものにという趣旨でビアホールで喜劇仕立ての演劇を市民の皆さんに披露をする、そういう姿も紹介をされています。
 同時に、裁判官の政治的自由も保障されています。ある裁判官は、ドイツの社会民主党の党員で、裁判官であると同時にその地の区会議員を務めておられるそうです。月に数回は党員集会に参加をする。
 このように、社会活動、政治活動は保障されているどころか活発に行われています。この記録映画撮影時のドイツ法律家反核協会の会長は高等裁判所の裁判官であり、ドイツ自然環境保護連盟の法律顧問としても裁判官がかかわっています。このオフィスには原発はもう要らないというポスターが張られていました。
 このような政治活動と司法判断は全く別問題であるという指摘がこのドイツの裁判官たちから共通して語られます。裁判官が市民と同様に言論の自由という権利を持って自ら発言をしたり意思を表示をすることに何の圧力も受けない、団結権もあり、好きなように組織を作って入ることもできる、もちろん男女両性は平等であり、このように市民と全く同等の働く者と同じ立場であるからこそ、市民より高い立場にあるのではない、これであってこそ市民の立場での裁判ができるということを指摘をしています。
 ドイツでは高校で法学の授業が行われるそうです。ここでは裁判官がボランティア活動で講師を務め、表現の自由とデモについて、生徒が反核バッジを付けてデモに参加したことを理由に処分をされた事例を材料にして講義を行っていました。少年事件の担当の判事が裁判所の法廷を公開して提供し、校内暴力を根絶をするための市民集会をそこで開き、参加をしています。法律扶助の相談にボランティアとして参加をする、そのような裁判官もいます。
 司法が人権保障の本来の役割を全うするために司法の独立が何よりも不可欠であることはこの場でも語られたとおりですが、その中で、裁判官の独立こそがその司法の独立の中核を成すこともまた明らかではないでしょうか。
 このような裁判官の市民的、政治的な自由が本当に全うされる、保障されてこそ、民主主義の国家における本来の裁判の姿が実現をできるのだということを改めて強調して、私の意見といたします。

発言情報

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発言者: 仁比聡平

speaker_id: 18362

日付: 2004-11-24

院: 参議院

会議名: 憲法調査会