吉川春子の発言 (憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会)
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○吉川春子君 日本国憲法について審議をしていた帝国議会貴族院帝国憲法改正特別委員会で、金森国務大臣は、二院制の意義について次のように述べています。
二院制というものは、一院専制というような傾き、又は議会の審議が慎重を欠くうらみがあるということ、及び世論が何を目当てに集結されるかということにつき、判断を的確ならしめるというような三点は二院制政治の美点として挙げられると。単純な一院制の多数決によって方針を決めることは幾つかの欠点がある。一院だけだと自己の力を信頼するに急で無理押しをする危険もある。十分に審議を尽くさないうらみもある。要約すれば、専横に陥る危険があり、議事が周到に合理的に判断される点において幾分不十分な点がある。世論は問題を前に置いて漸次集積してくるので、新しい問題が国民の十分了知されないうちに国の問題となって、国論が安定していくためには相当な時間を有する。各方面において議論されている間に、国民の世論もよく熟成し、この国会の政治を中心としつつ、うまく取り入れられていく点があるとされています。
私はこの指摘に同感し、二院制は国民の声を政治に反映していく点で欠かせないと考えています。国会は、異なる時期と異なった選挙制度で選挙された議員を持つ衆参両院での審議を通じて、国民の意思をより正確に反映できることにあります。
かつて参議院は、消費税廃止法、被爆者援護法を可決しています。これは、私は参議院の存在意義を発揮したものと考えています。また、時間を掛けて世論が熟成していくという例として、私の在職した以降の点ですけれども、八九年の消費税導入、九三年の自衛隊海外派遣のPKO法、九五年のいわゆる政治改革での小選挙区導入があります。この法案は、政府の提出当初から重大法案としての認識は一般にあったものの、衆議院段階ではさしたる混乱もなく通過したと記憶しています。
しかし、時間を追って世論が熟成し、参議院の審議段階では世論はかなり高まり、採決時にはPKO法は数日間の徹夜の牛歩が行われ、また小選挙区法案は参議院では否決されました。一院のみであったらこうした世論の熟成は経験せずに終わったでしょう。
このことをもって、だから参議院の権限を弱くしておいた方がいいと考えるならば、民主主義とは逆方向をたどらざるを得なくなり、その代償は計り知れない大きなマイナスになることでしょう。二院制は、主権在民の憲法の基本原則から見て欠くべからざるものだと言えます。
以上の点から、参議院の権限を弱くしようという意見には賛成できません。逆に、衆議院の権限を今より強化することは、議院内閣制を取る我が憲法において行政権の更なる強化につながります。
最近、マスコミ報道された自民党改憲案大綱原案には、国民からひとしく選挙されたという現行憲法を改正して、参議院に推薦議員を導入するというくだりがありますけれども、これは参議院の弱体につながります。行政権をチェックし、衆議院とのチェック・アンド・バランスの機能は、国民の直接選挙というこの足場を置くことによって十分果たすことができるからです。この点でいえば、参議院の議員定数の削減も、私たちは二百五十二から十議席削減したことについても反対したわけです。
最近の二大政党制と参議院の在り方について述べます。
参議院の選挙制度について、小林教授はさきの当委員会で、都道府県ごとの比例代表制を提案されました。その中で、民意の反映という点を強調されました。非拘束名簿方式との組合せという点について、私と意見が違いまして検討の余地はあると思いますけれども、比例代表制度そのものは民意の反映という点で最も優れた選挙制度だ、そういう提案をされたことに私は注目をいたしました。同時に、民意の反映という点では、二大政党制は国民の多様な民意を二つに絞るという点で逆行する懸念を持ちます。
小選挙区に偏りを持つ選挙制度で行われた総選挙、この夏の参議院選挙でいわゆる二大政党制が一挙に進みましたけれども、複雑な現代にあって、国民も多様な生き方を選択している中で、政党だけが二つに絞られていくということを誘導するような選挙制度は民主主義という点からふさわしいことなのかどうか。むしろ参議院にこそ多様な民意、すなわち、政党の議席を保障し、議論に参加させていく、そういった選挙制度や院の運営のルールが望ましいのではないでしょうか。
政党政治について、参議院が政党化していくことについて批判的な意見もありますけれども、私はそうは思いません。
かつて吉田茂首相は、二院制を置いたゆえんは、政党化を防ぐというのではなくて、国政を慎重に審議する時間を十分に与える、たとえ衆議院において可決した法律案といえども、更に時間を置いて参議院で慎重審議するというところに参議院の妙味があるのでありますと、既に民主政治であり、また政党政治を取った以上、参議院のみが政党化を防ぐということはできないと述べています。
多様な民意、多様な政党の意見を議席に反映し、いかに反映していくかということが求められていくと思います。とりわけ、首班指名など憲法上の優位が認められている衆議院に対して、政権と一定の距離を保ち得る参議院のより重要な責務であるとも言えると思います。
以上の点から、二院制の下でより参議院の機能を発揮できるように、選挙制度、運営ルールを用いていくことが求められており、憲法改正とは別次元の問題だと考えています。憲法ができている、その参議院制度を積極的に機能させていく努力が求められていると考えます。
最後に、参議院の改革については近々発足するとされております各派代表者会議等で検討されると聞いていますので、私たちの党は、日本国憲法を前提として、より民主的な参議院にするために積極的にこの場でも提案していきたいと考えています。
以上です。