柳田稔の発言 (本会議)
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○柳田稔君 私は、民主党・新緑風会を代表し、総理の所信表明演説に対し、質問いたします。
質問に先立ちまして、台風や水害等で被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
私の地元広島でも、厳島神社を始め、沿岸部を中心に甚大な被害を受けました。政府は、全力を挙げて迅速に被災者救援及び復旧支援に取り組んでくださいますよう心からお願いを申し上げます。また、今後の台風上陸に対する被害を最小限に食い止めるための施策について、万全を期すよう政府に要求します。
さて、小泉内閣のこれまでの取組は、決して評価できるものではありませんでした。例えば、日本経済は良くなりつつあるというものの、その理由の第一は、中国特需と言っても過言ではない中国の高度経済成長、アメリカ経済の堅調さに支えられてきているのではないでしょうか。銀行の不良債権処理についても、政府の努力はあったのかもしれませんが、大きな要因は預貯金の低金利によるものであり、言葉を換えると、国民が利子をほとんど手にせず、銀行の不良債権の穴埋めをしたためだと言えるのではないでしょうか。
さらに、企業の業績回復は、政府に頼らず、企業自体が人員削減、合理化等による効率化のためでしょう。その陰で涙を流している多くの人々のことを忘れてはなりません。
一方、国民は、一言で言うと不安でたまらないと言ってもいいかと思います。今の会社はいつまであるのだろうか、私はこのままこの会社で働き続けられるんだろうか、病気をしたら、けがをしたら、私は首になりはしないか、年金をまじめに掛け続けても、将来、年金はどうなるんだろうかというような深刻な状況でしょう。
小泉内閣発足直後の期待が裏切り続けられてきただけに、今後の小泉内閣に何を期待してよいものか、疑問も残ります。しかし、新しい内閣が発足したばかりです。是非とも以下の質問に対しまして総理のお考えをお聞かせくださいますよう、お願い申し上げます。
まずは、年金について質問させていただきます。
参議院選挙の結果を見ても、内閣改造後の各種世論調査を見ても、最重要政策課題として年金・福祉改革を望む有権者が最も多いことは明らかです。改正年金法が施行になり、今月から厚生年金保険料の引上げが始まりましたが、国民は抜本的な年金改革がなされていないことに強い不満を抱いております。総理は郵政民営化のことしか頭にないようですが、国民が求めているのは安心できる持続可能な年金制度の抜本改革です。参議院選挙中に言及された抜本改革の必要性という方針は撤回されたのですか。まず、総理の答弁を求めます。
さきの通常国会で、政府・与党は、この改正法を、負担の上限と給付の下限について具体的な数字をはっきり打ち出した一〇〇年安心の抜本改革だと説明しました。一〇〇年安心の抜本改革。保険料の上限については、二〇一七年度に国民年金は一万六千九百円、厚生年金は一八・三%に固定、給付水準は五〇%を維持という数字がマスコミをにぎわせました。しかし、真実は、政府試算でも、保険料の上限は物価・賃金上昇率に応じて更に引き上げられること、また給付水準の五〇%維持はモデル世帯が六十五歳で給付を受け始めるときだけの話であり、その後は五〇%を割り込み、人によっては四〇%も割り込むことが国会の審議の過程で明らかになりました。その上、法案が成立するまで、出生率という年金制度にとって極めて重要な数字を隠ぺいしていた事実も明らかになりました。
政府の国民に対する説明がまやかしであったことを認め、参議院において強行採決した非を認め、この改正法が抜本改革でなかったことを国民にまずわびるべきです。小泉総理の答弁を求めます。
国民に負担増を求めた改正年金法は、既に持続可能ではないことが明らかです。出生率の低下、国民年金の未納率の上昇、厚生年金脱退企業の増加、年金にまつわる不正な支出といった事実が明らかになるたび、国民の年金制度に対する不信感は高まるばかりです。
小泉総理は、参議院選挙中、国民に説明する時間がなかったと何度も言われました。にもかかわらず、さきの臨時国会の会期はたった八日間しか設けられず、総理の口から年金改革についての説明は何らなされませんでした。その後、こんなにも長い間国会が開かれなかったということは、総理が自ら説明責任を放棄したとみなされても仕方がありません。国民は、総理から納得できる説明がないまま、保険料の負担に耐えることになったのです。「知らしむべからず、よらしむべし」、国民への説明責任についてどうお考えなのか、総理の見解を求めます。
国民は、今後、年金制度がどうなっていくかについて納得のいく説明がないまま負担増に耐えようとしています。全国のサラリーマン世帯は今月の給与明細を見て保険料の負担増に嘆くことでしょう。
民主党は、年金制度の一元化、負担と給付の明確化を掲げ、さきの総選挙のときから、年金目的消費税を導入することについて、安心できる持続可能な年金制度への抜本改革として国民に理解を求めてきました。実質的増税ではあっても、国民は民主党の説明に納得して、負担に耐えようと言ってくれる方もおりました。政府が説明責任を放棄し、年金の抜本改革から逃げ、負担増を国民に求めているからこそ、強い不満があるのです。
今後、年金保険料が自動的に引き上げられる中、国民年金の未納者の増加、厚生年金の脱退企業の増加は目に見えて明らかです。年金制度に深刻な影響をもたらします。例えば、先日、地方社会保険事務所で違法に厚生年金を脱退しようとする企業を黙認、手助けしていた事実が明らかになりました。企業の保険金逃れは収納率には反映しませんが、全体の保険料収入が減り、将来の給付水準に悪影響が出ることは避けられません。また、厚生年金から脱退した企業の従業員は国民年金に移らなければなりませんが、本人が手続をしない限り、無年金になりかねません。無年金者の増大は、ひいては生活保護の拡大など社会保障財政を圧迫する懸念があります。
以上、るるお話ししましたように、年金制度は危機的状況にあると考えます。一〇〇年安心の年金とうたった与党のうたい文句とは裏腹に、国民は大変な不信感を持つことになりました。しかし、このままでは国民が不幸せです。
民主党は、今すぐにでも年金制度の抜本改革に着手すべきだと考えています。与野党を超えて、国会が責任を持って国民が安心できる年金制度の抜本改革をすべきだと考えています。
このように申し上げると、総理は、与党は、三党合意、三党合意としかお話しになりません。一〇〇年安心の年金制度抜本改革を行ったが、三党合意に基づいて年金制度抜本改革をやりましょう。つまり、簡単に言うと、抜本改革は行ったが、抜本改革をやりましょうでは、だれが考えてもお話になりません。先ほどから申し上げているとおり、まず総理がさきの年金改正の誤りを認め、強行採決した非を認め、国民に陳謝することから始まります。その上で、三党合意に基づいて抜本改革を行うのが常識ではありませんか。総理の答弁を求めます。
次に、医療について質問します。
患者の自己負担を一割から二割に引き上げた平成九年の改正のとき、総理、覚えていますか、橋本総理、小泉厚生大臣でした。その際、総理は、国民に負担増だけ求めるわけにはいかない、平成十二年度には医療の抜本改革を実施しますと国民に約束しました。しかし、現実は負担増だけで、抜本改革は実施されませんでした。
さらに、患者の自己負担を二割から三割に引き上げた平成十四年度の改正のとき、小泉総理大臣でした。その際にも、負担増だけで医療の抜本改革はなされませんでした。負担増は国会で強行採決してでも国民に強いるが、抜本改革は先送り、先送りです。これが小泉厚生大臣、小泉総理大臣の実績です。
郵政の民営化と医療の抜本改革と、どちらが国民にとって必要なんでしょう。二度も国民との約束を破った小泉総理ですが、自称、改革なくして日本の再生と発展はないとの信念をお持ちの現在の総理大臣ですから、なぜか空々しく聞こえますが、医療の抜本改革をいつまでにどうするのか、答弁を願います。
次に、介護について質問します。
来年は介護保険制度改正があります。政府の審議会がまとめた介護保険の見直しについてでは、被保険者、受給者の対象年齢引下げ及び障害者支援費との統合問題について両論が併記されました。
審議会の場でも、この国会の場でも、制度改正についての議論がきちんと行われるよう、審議時間を十分に確保していただくことをまずお願い申し上げます。冒頭にこのようなお願いをしなければならないのは誠に残念です。
さて、介護保険制度の導入から四年がたち、制度の問題点が徐々に明らかになりました。
やはり、一番の懸念は財政問題です。制度発足時に比べ、要介護認定者は八割増の三百九十万人、給付費も二〇〇四年度は五兆五千億円と一・七倍になりました。今後、高齢化の進行を考えると、より給付が増えていくことが予想されます。
しかし、問題は保険料の引上げには限界があることです。この十月から厚生年金の引上げも始まりました。現役世代にこれ以上の負担増を求めることは、もはや雇用を脅かしかねない深刻な問題です。医療費や年金控除の廃止による税負担などにより、高齢者に負担増を求めることも厳しくなっています。だれが財政を支えるのか、早急に手を打たなければならないことはだれの目にも明らかです。総理の見解を求めます。
また、市町村ごとの保険料負担の格差も深刻です。六十五歳以上の保険料は、最も高い自治体と最も低い自治体で三・三倍もの開きがあります。その上、二〇〇三年度は約百七十の市町村で保険財政が実質赤字になっています。住む場所によって負担にも給付にも大きな違いが発生することはできるだけ避けなければなりません。市町村で格差が広がらないよう、財政調整の仕組みを整え、公平にサービスが行き渡るようにすべきです。このことについて総理はどうお考えか、見解を求めます。
介護保険制度の障害者支援費制度との統合についての議論が活発に行われています。どちらもサービス利用者の自己決定権を確立した画期的な制度でした。福祉は行政から与えられるものではなく、自ら選ぶものになりました。
しかし、問題はやはり財政です。支援費制度は初年度で予算を百二十八億円も超過、国の補助金が不足する事態になっています。何をもって財源を賄うかが重要な問題です。介護保険と統合した場合、自己負担が発生するのではないかと障害者側は心配しています。
社会福祉は国の責務です。何を保険で、何を税で行うのか、真摯な議論が求められています。今後の政府の対応方針について、政府の答弁を求めます。
次に、凶悪犯罪の増加と治安対策について質問いたします。
先週五日、広島県にて、十七歳の女子高生が家に侵入してきた男に刺され死亡、悲鳴を聞いて駆け付けた祖母も刺されて重傷を負うという大変痛ましい事件が発生しました。毎日のように殺人の報道が目に付きます。我が国の治安は年々悪化の一途をたどり、一昔に比べれば犯罪認知件数は非常に多く、その一方で検挙率は低いという極めて厳しい状況が続いています。
内閣府が先月十八日に発表した治安に関する世論調査によると、最近の治安に関する認識について、八六・六%の方がここ十年間で日本の治安は悪くなったと答えており、治安の悪化が国民生活に深刻な影を投げ掛けていることがうかがえます。
また、警察庁では、ここ三年間で一万人以上の警察官を増員するなどの取組を行っています。しかしながら、治安の悪化は、景気の動向や国民意識の変化など、様々な要因が複合的に絡み合っており、これらに対する総合的な対策なくしては根本的な解決策にはなり得ません。
これら治安の回復のために、地域パトロールの充実や警察力の強化なども必要ではありますが、この対策だけでは不十分ではないでしょうか。なぜ犯罪を犯すのか、いかに犯罪を生じさせないかという視点も必要であると考えますが、この点につき政府としてどのように考え、またどのような対策を取るおつもりなのか、総理にお伺いいたします。
次に、北朝鮮問題について質問します。
二〇〇四年九月二十五日と二十六日に二回目の日朝実務者協議が行われましたが、期待されていた新たな安否情報はありませんでした。事実上のゼロ回答です。北朝鮮の外交姿勢はもちろん非難されるべきですし、北朝鮮に真剣に日朝交渉を行う意思がないと見るべきでしょう。
今後、対北朝鮮外交の見直し、検討が必要であり、対北朝鮮外交を抜本的に立て直す時期に来ていると考えます。例えば、対話と圧力から圧力と対話に方針を変更される時期かと私は思いますが、総理からしっかりとした方針を伺いたい。
民主党は、拉致事件及び大量破壊兵器の解明、解決なくして国交正常化はあり得ず、経済制裁も視野に入れて検討すべきときに来ていると考えております。町村外務大臣が経済制裁の可能性について言及していますが、小泉総理の見解を求めます。
次に、沖縄問題について伺います。
先日は普天間基地で海兵隊ヘリ墜落事故が起き、その直後に嘉手納基地で米空軍F15戦闘機二機が接触事故を起こしました。これらは一歩間違えば大惨事となり得た深刻な事故であり、沖縄の人々の不安が高まりつつある中、早急な原因究明や再発防止策の確認が必要不可欠であります。
しかし、米軍当局は日本の事故現場検証も認めず、日本の領土である大学構内をも封鎖しました。私は、地位協定の趣旨がゆがめられたと認識しており、早急に改定することが必要であると考えますが、総理は地位協定の見直し、どうされるか、答弁を求めます。
イラク戦争について質問いたします。
一体、イラク戦争の正当性はどこにあったのでしょうか。ラムズフェルド・アメリカ国防長官は、ニューヨークの講演で、旧フセイン政権と国際テロ組織アルカイーダとの関係について、両者を結び付ける強力で十分な証拠は見ていないと発言しました。パウエル・アメリカ国務長官は、アメリカ上院の公聴会で、対イラク攻撃を正当化する根拠としたイラクの大量破壊兵器の保有について、いかなる備蓄も発見されなかったし、発見されないだろうと述べ、イラクでの大量破壊兵器の発見を断念したことを明らかにしました。
先日、アメリカ議会に提出されたアメリカ政府調査団の最終報告書によれば、この未発見となっていた大量破壊兵器が存在しないということが決定付けられました。開戦時には大量破壊兵器などはイラク国内には存在せず、具体的な開発計画もなかったと報告されております。これら一連のアメリカの高官の発言や報告書等の内容についてどのようにお考えなのか、総理の見解を求めます。
一方、イギリスにおいては、イラクに大量破壊兵器が発見されなかったことがはっきりした結果、十月十三日、ブレア首相はイギリスの国会で、大量破壊兵器の認識が誤っていたことをイギリスの国会で陳謝されました。ブレア首相は過ちを認め、正されました。
「政は正なり」とおっしゃった小泉総理は、日本のこの国会で陳謝される気はありませんか。情報収集中とか精査の途中とかという答弁で逃げないでいただきたい。イラク開戦のときには、直ちに支持を表明した総理ですから。
防衛計画の大綱について質問します。
政府は、今年じゅうに新たな防衛計画の大綱を発表するとしています。しかし、この大綱が何を基に策定されているのか、疑問が残ります。なぜなら、我が国の防衛計画に直接関係してくるはずの米軍のトランスフォーメーションについての議論はまだなされていないにもかかわらず、大綱の作成が進んでいるからであります。また、政府が国民の意見を反映し、国民的コンセンサスを図ろうとしているのかにも疑問が残ります。
安全保障と防衛力に関する懇談会報告書には、米軍の軍事プレゼンス、日米協力の重要性が述べられています。新大綱が防衛力の整備、維持、運用についての基本方針を示す計画である以上、日本における米軍の役割が明確になっていない中で、どのように議論を進めているのか、総理の明確な答弁を求めます。
最後に、政治を変え、日本を良い方向へと進めるためには、唯一政権交代が必要です。私は、民主党が政権を担い、国民の手に政治を取り戻す日も近いと感じております。日本は本格的な二大政党制の時代を迎えました。
総理には、「政は正なり」とおっしゃる以上、国会論戦から逃げずに、質問に明確な御答弁をいただけますようお願いして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕