狩野安の発言 (本会議)
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○狩野安君 私は、自由民主党を代表して、総理の所信表明演説に対しまして、総理及び関係大臣に質問をいたします。
昨日の片山参議院幹事長の質問を受けて、私の女性、母親としての見方も交えながら質問させていただきます。
まず、本題に入る前に、この夏から秋にかけて大型台風の襲来などによる自然災害が相次ぎ、多くの方がお亡くなりになり、また甚大な被害が発生しました。
心より、被災者、関係者にお見舞い申し上げますとともに、政府におかれては一刻も早く災害復旧に取り組まれるよう、強くお願いをしておきます。
さて、記憶に新しいところですが、この夏は四年に一度のオリンピックが、その発祥の地ギリシャのアテネで開催されました。日本選手の活躍ぶりは、高度成長期に開催された東京オリンピックをほうふつさせる、感動的ですばらしいものでありました。
そして、今回のオリンピックの日本選手参加者を見ますと、全体で三百十二人、そして女子が百七十一人と初めて男子を上回ったとのことです。私は、オリンピック、それに引き続いて行われたパラリンピックをテレビなどでよく拝見していましたが、画面を通じて女子選手の躍動、活躍ぶりが印象深く残っています。
これからの男女共同参画社会、高齢化社会の中で女性の活躍の場も広がるものと意を強くしました。扇議長も誕生いたしましたし、今回の内閣改造で参議院自民党から初入閣された南野法務大臣に、女性を代表して頑張ってほしいとエールを送る次第でございます。
もちろん、男性にも、我々女性に負けずに頑張っていただきたいと思います。
さて、まずは経済活動に関して質問させていただきます。
我が国の全体の景気についてですが、中国を始めとする海外景気の好調に牽引され、自動車やIT関連産業などの大企業を中心にして回復軌道にあると言われます。政府の見方は、昨日の片山幹事長の質問に対する総理の答弁にもありましたように、景気は堅調に回復しているというものです。
しかしながら、私たち国会議員が地元に帰っていつも感じることは、地方の経済活動は政府が説明しているほど良くなっていないということです。自分の会社の経営が苦しい、自分が勤める会社の将来や自分の雇用が心配だという声をよく耳にします。
大企業は海外での業績が向上し、また設備投資をし、雇用も幾分増やしているようでありますが、心配なのが地方経済、中小企業の経営状況、そしてそこで働く人々の雇用、就職の問題であります。地方のハローワークは職を求める人で今でも一杯です。
したがいまして、地方への政策的、財政的なてこ入れは今後とも必要であります。この点、来年度予算などで地方経済、中小企業対策、雇用対策を拡充し、また農業面では食料自給率の向上に努めることが重要と考えます。
それとともに、来年四月にはペイオフが解禁されます。預金者が自分の預金の保全のために風説などの流布によって安易に預金を移し替えることもあり得ないわけではありません。合理的な理由もなく、地方の中小金融機関の経営不安がいたずらに高まらないような措置も必要でしょう。
また、総理は所信表明演説で観光立国の推進を強調されており、それは地方経済を潤すことにつながります。しかし、我が国は観光資源は豊富にありますが、アクセスコストや移動コストが高く、外国人向け案内も乏しく、観光インフラが未整備です。
総理は、財政構造改革の一環として公共事業の見直しを進められていますが、一方で、観光立国を始め地方経済、中小企業対策をどのように進められるのか、そこで働く人々の雇用をいかに確保し、増やしていくお考えなのでしょうか、御認識をお聞きします。
あと数年すると、我が国は人口が減り始めると言われます。一方で、高齢化が進み、二〇二五年には現役世代二人で六十五歳以上の一人を支えなければならない事態が訪れます。おおよそ現在の二倍の負担が現役世代に掛かります。こうした少子高齢化社会にあっては、若者・現役世代の負担をなるべく抑制するとともに、高齢者にも応分の負担を求めなければ長期的に社会保障制度は成り立たなくなります。
さきの通常国会で成立した年金制度改革法は、国民に負担増を求めるものでありましたが、少子高齢化社会に適合する年金制度を構築するための第一歩となる改革でありました。それだけに、私たち政権与党の国会議員は、痛みを受ける国民に制度改革の内容とその必要性を分かりやすく説明し、理解を得る努力が求められます。
厚生労働大臣には、更に進む少子高齢化社会の中で、今後とも年金制度を始め各般の社会保障制度をどのような方針、哲学に基づいて構築されるお考えなのか、御認識をお聞かせください。
また、少子化が進んでいます。少子化については、プライベートな家族の問題である、若い世代の価値判断にゆだねられ世の趨勢であるといった意見もありますが、自然の流れだとして放置しておいてよいものでしょうか。放置してはいけないと思います。子供を安心して育てられる環境が狭まり、将来への不安といった問題も大きな要因だと考えます。
そして、私のような母親の立場からは、母性を実感できない女性がどんどん増えていることを寂しく、また残念に思うのであります。かつては、日本人ほど子供をかわいがる国民はほかにないと言われていましたが、親子がほおをすり寄せるほほ笑ましい情景、にぎやかな子供の声が徐々に失われていくのはやるせない思いです。
少子化は、社会保障問題のみならず、経済活力、ひいては国の活力の低下につながり、その意味では、我が国最大の深刻な問題であると認識していいのではないでしょうか。かつて、大ローマ帝国が衰退を始めたのは、少子化などで人口が減り始めたからだと言われています。
そこで、厚生労働大臣に、深刻な少子化問題に対する取組に関して御所見を伺いたいと思います。
また、高齢化社会は高齢者にとって肩身の狭くなるような社会ではいけません。高齢者が生きがいを持って長生きできる社会にしていきたいものです。そして、高齢者は過去の日本の良いところも悪いところも体験しており、元気な高齢者が日本社会を立て直す知恵や工夫を後世に伝える環境を作っておきたいものです。健康で、社会への奉仕などの生きがいを持って長生きできるお年寄りが数多く地域で活躍する社会、安心して暮らせる社会環境を作る必要があります。
〔議長退席、副議長着席〕
そこで、厚生労働大臣には、どのように健康寿命の長期化を実現していかれるのか、そしてお年寄りに生きがいを持って地域での生活をエンジョイしていただける社会システムを作られていくのか、お考えをお聞かせください。
高齢化社会にあっては、社会保障を充実させることが当然求められます。しかしながら、国家財政が厳しい今日において、いかに社会保障といえども予算を十分に確保するのは難しくなってきました。
加えて、将来課題として、年金の一元化を含めた年金改革に加え、介護保険の見直し、医療制度の改革など、社会保障制度の全般的な見直しを進めなければなりません。その改革の視点は、公費負担の在り方の見直し、そして自助自立型の費用負担手法の導入など、増大する社会保障負担への対応をどのように国民の納得を得ながら進めるかといったことでしょう。
そうした中で、しっかりとした社会保障財源を確保するために、消費税など財源手当ての仕組みをどうすべきかとの議論もなされることになると思います。選挙という国民の審判を仰ぐ立場である私たち国会議員も、国民に負担を強いるからといって、消費税問題から逃げるわけにはいきません。
厚生労働大臣としては、消費税の在り方を含めて社会保障財源をいかにしっかりと確保していくお考えなのか、基本的な政策認識をお聞きします。
かつて、日本の教育は、先進諸国に追い付き追い越せという経済成長の追求といった時代背景も影響したと思いますが、やたらと知識を詰め込む教育、正解を出すことを求める教育、偏差値で人間の能力を測る教育に偏っていました。それが受験競争を激化させ、受験に勝つためには人を押しのけてでもといった自己中心的な若者を生み出したとも言われています。そして、時間を掛けて自分なりに物事を筋道立ててじっくり考え、最終的に解決策を見いだすという、言わば学校教育の本質的な在り方がなおざりにされる傾向があったことは否めません。
この反省から、文部科学省はゆとり教育を進め、自由な時間の中で考える力をはぐくもうとしてきました。ただ、ゆとり教育が学校現場で実践される中で、時間的な余裕を生徒に与える一方、ゆとり教育の本来の目的である心の余裕を児童や生徒の中にうまくはぐくんでいけなかったのではないでしょうか。
自らの体験などを顧みますと、子供は時間は与えられましたが、家ではテレビゲームや漫画など興味本位に時間を過ごしているように思えます。人とのかかわる時間が少なくなることは、社会的自立を遅らせる一因だと考えます。
文部科学省としても、ゆとり教育を進める際、学校現場などに対して、もう少し生徒の心に余裕を持たせながら沈思黙考することの価値を見いだすような指導ができなかったのでしょうか。また、自然や社会とのつながりを学ばせることで、環境への理解や社会性を育成するゆとり教育が実践できなかったのでしょうか。文部科学大臣の所見を伺います。
改めて指摘するまでもありませんが、昨今、学校におけるいじめ、不登校、引きこもりなどの問題が余り改善されず、青少年の規律、モラルの衰退を招いています。教育の荒廃が青少年による犯罪の多発、凶暴化、また犯罪の低年齢化が一段と進む事態につながっている面があります。
私の個人的な体験を挙げて恐縮ですが、先般、地方で独り暮らしをしていた私の知人が凶暴な若者の手によって殺りくされるという、身につまされる事件がありました。身近な出来事だっただけに、我が身のことのように戦慄を覚えたものです。
こうした地方にも広がる治安の悪化には、もちろん不法入国の外国人の増加に伴う外国人犯罪の頻発や凶暴化も影響していますが、教育の荒廃を背景とした日本の青少年の問題行動が存在していることは認めざるを得ません。
日本人の精神構造、若者の心の在り方がゆがんできています。問題が深刻なだけに、それへの対処法は一筋縄ではいかないでしょう。
総理は、三位一体に代表されるように、経済や財政の構造改革をこれから一段と進める方針であり、それは日本の経済社会制度の改革を通じ、経済、財政の効率化につながるものと期待されます。これは、冷徹な判断とでも申しましょうか、クールハートで進められなければなりません。
ですが、私は、総理には、そうした制度改革に加えて、日本人の心、姿勢、モラルといった精神構造にも更に温かく改革の手を差し伸べていただきたいと思います。温かい心、ウオームハートで、若者の心の病を治し、和と規律ある、そして安心できる日本を再構築していただくよう強くお願いしたいと思います。
日本人は、かつて世界で最も優れた道徳観を持つ民族の一つであったはずです。失われつつある日本人の伝統的美徳を回復させることこそ、私たちが将来に向かって果たすべき最大の課題であると思います。最後に、この点に関する総理の御所見をお聞きし、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕