土井たか子の発言 (憲法調査会)

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○土井委員 社会民主党・市民連合の土井たか子でございます。
 憲法調査会の最終報告書について意見を申し述べます。
 戦前、軍部の暴走を許し大きな惨禍を引き起こした反省から生まれた日本国憲法は、国家権力に対して厳しい規制や制限を加え、主権者としての国民の権利を保障する立憲主義の原則に立っています。日本国憲法を貫く平和主義は、まさに日本国民の総意であり希望であります。
 憲法九条は歴代の政権に縛りをかけ、日本は朝鮮戦争にもベトナム戦争にも参戦をすることなく、平和憲法を持つ国として世界各国に認められてまいりました。
 世界では、この五年間にも多くの戦争や武力紛争がありましたが、問題の解決に武力を用いることでもたらされたのは、数十万、幾百万人の死傷者と残された人々の悲しみと苦しみであり、生活基盤と自然環境の甚大な破壊でしかなかったのです。だからこそ戦争に反対し、平和の回復に情熱を傾ける全世界の人々に、私たちは自信と誇り、勇気を持って日本国憲法第九条の平和主義を掲げたいのです。九条は今こそ生かされなければなりません。
 ところが、日本国憲法は施行から五十八年の今、最大の危機に瀕しています。それは、国民の多くが平和を願い、人権と自由の保障と充実を願い、憲法を生かす政治を求めているにもかかわらず、憲法を尊重、擁護する義務を負っているはずの国会議員の多くが、憲法の諸原則を誠実に実行するのではなく、それらを否定し、破棄することを主張し、改憲のための動きを公然と進めているからであります。憲法調査会の五年間の経過とその議論も、この誤った流れに沿うものでありました。とりわけ九条が改憲の標的とされています。
 憲法調査会の設置に当たり、その目的は、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う、このようにはっきりと決められまして、憲法の理念が実現されているか否か、その原因と責任、実現方策等を誠実かつ客観的に検証することが憲法調査会の最大の課題であります。そうした調査が行われていたならば、憲法と現実の乖離という主張の当否も明らかになったはずです。ところが、改憲を主張する政党の委員の数に応じ、現憲法への批判と、どの条項をどう変えるかという意見が主流とされ、改憲の方向性がつくられています。最も典型的な例は、九条違反の立法を行いながら、その違反の現実に合わせて憲法を変えようとする論議であります。また、日本国憲法が保障する基本的人権は、「侵すことのできない永久の権利」であるにもかかわらず、調査会の論議は、人権の救済と実現ではなく、逆に、国民の義務をふやすことに多くの時間が割かれるなど、本末転倒とも言える状況でありました。したがって、当調査会の本来の目的が達成されたと言うことはできません。
 憲法調査会の運営についても不適切な点が多々見られました。二〇〇四年八月五日の調査会では、自民、民主、公明三党の改憲に向けての論点整理などが報告されまして論議されましたが、このようなことは当調査会の趣旨に照らして明らかに反するものであって、三党の意見だけを取り上げることなど公正を欠くものでありました。
 最高法規を議論する調査会の討議の場において、定足数を満たさない場面が残念ながらたびたび見られましたが、民主政治や立憲政治の将来に無責任とのそしりを免れません。また、最終報告書の編集方針や内容自体についても、調査会を開いて全員で議論して決めるべきだという当然の要求は実現しませんでした。
 参考人や中央、地方公聴会の公述人、意見陳述人の多くが、憲法を変えることではなく、憲法を生かすことの重要性を訴えていました。しかし、特に地方公聴会での意見などは、一人当たりわずか二行から五行に圧縮されてしまいまして、広範、多様な意見を正確に伝えることはできておりません。
 最終報告書は、さまざまな問題意識やニュアンスの違いといった多様性を捨象し、多数意見をつくらんがための恣意的な基準で類型化され、改憲の方向性を示すものとなっております。
 憲法を生かす立場からの調査や記述も極めて不十分です。最終報告書では、日本が集団的自衛権の行使を憲法上禁じられていることに対しての国際的、国内的な意義と歴史的重みについてはほとんど言及されておりません。
 また、最終報告書の中に、「今後の憲法論議等」として、「憲法問題を取り扱う国会の常設機関」と「憲法改正手続法」に関する意見まで盛り込まれております。このテーマ自体が調査会の目的を明らかに逸脱しておりまして、あくまでも番外の議論にすぎず、報告書に掲載することは許されることではありません。
 私たちは、当調査会が以上のような方向と内容で運営され、最終報告書が作成されたことに断じて反対であり、憤りを持って遺憾の意を表明いたします。
 戦争を放棄し、紛争を対話によって解決する二十一世紀を私たちは希求いたしております。このような憲法の危機に対し、すべての人々が強い関心を持ち、日本国憲法を守り生かすために、ともに努力を払われるよう切に訴えたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 116204184X00520050415_011

発言者: 土井たか子

speaker_id: 16322

日付: 2005-04-15

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会