武部勤の発言 (本会議)
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○武部勤君 私は、自由民主党を代表いたしまして、総理の施政方針演説に対する代表質問を行います。(拍手)
残念ながらこのような中で代表質問をしなければならないことは、国民の皆様方に対して極めて申しわけない、そういう思いでありますが、やむを得ません。
昨年は、まさに「災」の一字をもって象徴すべき、大きな自然災害が内外に相次いだ年でありました。国内では、豪雨、台風、新潟中越地震による死者・行方不明者は二百三十七人に上り、国外では、インド洋・スマトラ沖地震による津波災害で十八万人を超える犠牲者が出たのであります。犠牲となられた方々に対し、改めて御冥福をお祈りし、被災地の方々に心からなるお見舞いを申し上げるものであります。
政府は、災害対策費一兆四千億円を含む十六年度補正予算を提出しておりますが、これを速やかに成立させることがすべての国会議員の使命である、まずそう申し上げたいのであります。(拍手)
スマトラ沖地震津波災害で、我が党は昨年末に緊急対策本部を立ち上げ、一月に、タイ・プーケット島の現地調査を含めた、ベトナム・タイ・インドネシア訪問団を派遣いたしました。政府も、自衛艦派遣など迅速に行動し、ジャカルタの緊急サミットで小泉総理がいち早く五億ドルの緊急無償援助を打ち出し、債務償還の一時凍結やインド洋の津波警報システム整備など、国連の支援取りまとめに強いリーダーシップを発揮いたしました。こうした我が国の行動に対し、訪問各国の首脳より、アジアの一員としての真剣な対応に大変信頼を強くしたとの言葉が寄せられたことを報告いたしたいと存じます。
ことしは阪神・淡路大震災から十年になりますが、その記憶もいまだ鮮明な中で発生したこうした災害対策に、今後我が国はどのように取り組んでいくのか、総理にお伺いいたします。
そこで、私は、一つの提案をいたしたいと思います。
我が国の外交の基本は、日米同盟を基軸とし、アジアと国際協調重視の平和外交であります。総理は、昨年秋の国連総会で我が国の安保理常任理事国入りに強い意欲を表明されました。日本がアジアの一員として、アジア重視の国連外交を実現しようとする決意の表明でもあると考えます。戦後六十年を迎え、我が国は、もっともっとアジアで貢献し、信頼され、親近感を醸成していかなければなりません。
私は、ベトナム訪問で、アジア地域全体を網羅する感染症予防センターの設立を提唱しました。アジア地域においては、人、物、金、情報など、あらゆる交流が今後ますます拡大していきます。アジア共同体ともいうべき時代を迎える中で、鳥インフルエンザ、SARSなど、今後、未知の感染症も含めて発生をいち早く把握し、拡大を水際で食いとめることは、まさに人間の安全保障ともいうべきものであります。
アジア重視の日本の姿勢を示すためにも、環境、防災など、人間の安全保障確立に我が国が主体的な役割を果たし、貢献可能な感染症予防センター構想をぜひとも進めてはどうかと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。安保理常任理事国入りで目指す理念、決意とあわせて、総理にお伺いいたします。(拍手)
次に、総理の諸改革についてお伺いいたします。
就任して三年八カ月、総理の改革により、我が国の経済社会は、構造も意識も大きく変わり、新しい成長への力を確実に蓄えつつあります。
バブル崩壊後、我が国経済を長く苦しめてきた不良債権処理は、総理の果断なる決意、すなわち、うみを一気に出し切るとの方針により、解決への道筋がつけられました。すなわち、産業再生と一体となった二〇〇二年十月の金融再生プログラムのもとで大なたを振るい、二〇〇四年九月期決算の主要銀行の不良債権比率が四・七%と、不良債権問題の正常化は完全に視野に入りました。
総理の決断に対し、企業がばたばたと倒産する、失業者がちまたにあふれるといった声もありました。しかし、現実はどうでありましょう。失業率は二〇〇二年の五・四%をピークに低下を続け、現在は四・五%、企業倒産も、帝国データバンクがこの二十日に発表した二〇〇四年の全国企業倒産集計は、一九九四年以来十年ぶりの低い数値を示しているのであります。
一方、民間活力も沸き上がってまいりました。総理が、官から民へ、民間の潜在成長力を引き出すために導入した一兆八千億円の先行減税や一円起業など、思い切った諸改革によって、設備投資は二けたのペースで増加しております。企業収益も、過去最高益を出す企業もあらわれるなど大幅に好転し、一時七千円台だった株価も、現在は一万一千円台で安定しております。
こうした経済情勢を反映し、成長率も実質、名目ともに増加基調が定着、特に名目成長率は、二〇〇四年度がプラス〇・八%、二〇〇五年度はプラス一・三%、二〇〇六年度はプラス二・〇%と、着実に増加を見込んでおります。これを受け、政府は、「改革と展望」二〇〇四年度改定で、基礎的財政収支が黒字化する目標年度を二〇一二年度に、一年繰り上げました。
数字はうそを申しません。総理は、一連の諸改革により、これまでだれもがなし得なかった経済成長と財政健全化の両立を実現しつつあるのであります。国民の負担である財政の出動に頼ることなく、財政を健全化する歳出構造改革が行われました。そして、規制、税制、金融の民間活力を高める改革により、我が国の社会経済構造を確実に転換しつつあるということをここで強調したいのであります。
総理の改革の成果と、これから取り組むべき改革の視点について、改革を最も知る大臣と言われる竹中経済財政担当大臣にお伺いいたします。
一方で、官の構造改革についてはさまざまな抵抗が行われております。私は、この状況について、二宮尊徳の話を思い出しました。
桜町、現在の栃木県二宮町の復興を請け負った二宮尊徳は、当初、桜町の役人や住民からいわれなき不信感を持たれ、復興事業は困難をきわめました。住民や役人は、現代風に申せばサボタージュをして全く協力せず、それでも二宮尊徳は耐えに耐えて、十五年以上の歳月をかけ、再建に成功します。そのとき、二宮尊徳はこのような歌を詠みます。
田の草はあるじの心しだいにて米ともなれば荒れ地ともなる
田んぼに生える草は、その持ち主の心がけ次第で、おいしいお米にもなれば、ただの雑草が生える荒れ地にもなるという意味であります。
今、私たちは、公的部門のリストラ、官の構造改革を進行中であります。そこでは、さまざまな抵抗、官のサボタージュともいうべき状況が生じております。
私は、抵抗する官の諸君に申し上げたい。諸君の仕事、言いかえれば、諸君が耕そうとしている田んぼには、国民が求める稲を植えているであろうか、それを大切にむだなく育てているであろうか、その心に問うてほしい。
繰り返して申します。
田の草はあるじの心しだいにて米ともなれば荒れ地ともなる
それでは、以下、改革の現状を指摘しつつ、我が党の政権公約に掲げた幾つかの項目に沿って、総理のお考えをお聞きしてまいります。
まず、公務員制度改革であります。
我が党は政権公約で、公務員制度改革法案を二〇〇四年の国会に提出すると約束しています。しかしながら、労働組合との調整がつかずにずるずると時を過ごし、ついに国会に提出されることなく年を越しました。公務員制度改革は官の構造改革の原点であり、絶対に放置していてはならないのであります。もしここで一歩引かば、これ幸いと改革への抵抗勢力は身を低くして、あらしの過ぎ去るのを待つことは必至であります。断じてこれを許してはなりません。
私は、公務員になること自体が目的化するような社会は、活力を失うと考えます。警察官、児童相談所、教育現場、不法産廃投棄など、公務員の関係する問題や事件が生じたときに、必ず言われるのは責任のなすり合いであり、不作為であります。
先日、社会保険庁の一連の不祥事に対する内部調査結果が公表されました。多額の監修料と称するキックバックの存在や、百人を超える職員の企業との癒着など、その実態、でたらめぶりは声を失うばかりであります。
社会保険庁に関しては、昨年、労働組合とのいわゆる覚書問題が明らかとなり、強い批判を招きました。その中身は、オンライン化しても合理化せずに職員の身分を保障し、業務の多寡にかかわらず合理的な配置転換を認めず、個人の職務に対する責任強化につながる改革は労働強化に通じるとしてすべて排除するなど、公務員としての責任感、使命感を全く感じさせないものであります。
これは、社会保険庁だけの問題ではなく、公務員、なかんずく官公労全体の職務に対する意識が民間企業の労働者とかけ離れてしまっているというべきなのかもしれません。国鉄を民営化せざるを得なかった原因も、親方日の丸意識に染まり切った労働組合の存在でありました。民間企業に勤める多くの国民は怒りに震えていることを自覚すべきであります。
公務員制度改革は、主として官公労の強い反対によって難航しておりますが、本来、国民が費用を負担する公務員の雇用、評価、賃金等、制度改革に労働組合の了解を求める必要があるのかどうか、国民は疑問を感じているのではないでしょうか。総理の公務員制度改革に関するお考え、御決意をお伺いいたします。
また、社会保険庁については、私は昨年の代表質問で、業務の民間移譲を含めた抜本改革を提唱したところでありますが、もはや民営化以外に改革の道はないと考えます。社会保険庁改革にどう取り組むのか、総理の率直なお考えをお聞かせください。
次に、郵政改革についてお伺いいたします。
いわゆる郵政民営化は、官から民へ、規制や官製市場改革の大きな柱であり、全体で四十万人に及ぶ公務員制度改革であります。さらに、肥大化した公的部門の効率化、スリム化に資する特殊法人改革であり、かつ、三百五十兆円もの巨額な資金を民間市場に開放する金融構造改革であります。また、国民負担の軽減と、よりよいサービス提供を可能とする改革でもあります。ここは、大きな視野に立って、何としても改革を断行しなければなりません。
改革により、公務員が民間人となることに対する不安があることは理解いたします。しかし、公務員であり続けるために、改革に反対することがあってはなりません。改革は、二〇〇七年四月から民営化に着手し、十年かけて完全な民営会社に移行するという長期にわたるものであり、現在の局舎網や雇用の維持に大変な配慮をしているのであります。国民の立場からいえば、郵便のユニバーサルサービスも維持されるのであります。
郵政公社職員の方たちに申し上げたい。かつて、ジョン・F・ケネディはこう述べています。ニューフロンティアは約束ではない、挑戦である。民営化という新天地、ニューフロンティアには確かに困難もありましょう。しかし、そこには挑戦をする、みずからの力を思う存分試すことができるチャンスがあるのであります。憶することなく、勇気を持って新時代を切り開いていただきたいのであります。
先日の施政方針演説で、郵政改革にかける総理の熱意のほどがよくよくわかりました。我が党も精力的に論議の集約に努めてまいりますので、政府・与党がともに協力して、国民のためによりよい具体案づくりを目指すべきであります。改めて郵政改革の実行実現に向けた総理の御決意をお伺いいたします。
次に、官業と官製市場の民間開放、規制改革についてお尋ねいたします。
官業と官製市場は既に我が国GDPの四割に達し、その多くは、みずから予算を使うのみならず、ファミリー企業に独占的に業務を行わせ、あるいは業法により業界をコントロールし、あるいは特定の業界や団体を補助金で囲い込むなど、閉鎖的な秩序と環境のもとに置かれております。言ってみれば、日本は経済社会の隅々まで官による統制がはびこっていると言って過言ではありません。
天下り問題とも密接に関係する官業あるいは官製市場を民間開放していくことは、官の既得権益の破壊そのものであります。それだけに官の抵抗も強く、しかも、あらゆる規制や権限は法律でかたく守られており、これを壊すのは相当の力仕事であります。
政府は、来年度に市場化テストのモデル事業を始めますが、実施対象は三つにとどまり、内容も中核的な業務は除外し、官は入札に参加せず、民間企業だけで競争入札を実施するなど、不十分なものであります。いかに官僚が自分たちの権限に固執し、改革に抵抗し、骨抜きにしようとするか、いつまでもこんな状況を許すわけにはまいりません。
総理は昨年来、何度も市場化テストを大胆に進めるよう指示しておりますが、現状をどう見ておられるのか、また、ことしの通常国会には何としても市場化テスト法を提出すべきだと考えますが、その御決意とあわせてお伺いいたします。
次に、地方分権についてお伺いいたします。
昨年十一月、今後二年間に行う三位一体改革の全体像が決定されました。二兆四千億円の税源移譲を含む全体像が示されたことは評価すべきと考えます。しかしながら、ここにもまた既得権を死守しようとする官僚の強い抵抗があり、結果として、来年度に幾つもの大きな課題が先送りされたのも事実であります。
私は、個人的にはほとんどの仕事を地方に任せるべきであると考えます。財政力の格差や地方の行政力に対する疑問も残りますが、地方分権改革は、地方を全面的に信頼しなければ進まないのであります。できるだけ地方の裁量度が高まる改革を抵抗を排して進めていくべきだと考えますが、総理の地方分権改革に対するお考えをお聞きいたします。
また、補助金改革と権限移譲を抜本的に進めるためには、道州制のような行政制度の大きな改革が必要だと考えます。我が党の政権公約は、将来の道州制の検討と北海道の先行展開をうたっておりますが、先般、党政調会に道州制調査会を設置し、その中で北海道道州制特区小委員会を設けたところであります。道州制、なかんずく北海道での先行的展開の今後の取り組みについて総理にお伺いいたします。
次に、特別会計と特定財源制度であります。
特別会計や特定財源が国の財政、税制を少なからずゆがめております。年金や雇用保険の積立金が第三者のチェックが入りにくい形でさまざまな事業に流用され、巨額の損失を出しております。さらにまた、事務運営費や豪華な社宅などに湯水のように使われている実態が、社会保険庁の不祥事などを通じて明らかとなりました。特定財源についても、一たんできた制度は既得権となり、財政を硬直化させているのであります。
特別会計、特定財源の見直しについて、今後どのように取り組んでいくのか、総理にお伺いいたします。
以上、総理の改革に対し官の抵抗が特に顕著な分野について、改革の決意をお聞きいたしました。総理におかれては、残る改革の焦点は官の構造改革にあるとの明確なメッセージを、ぜひ国民に強く送っていただきたいと思います。
次に、少子化問題についてお聞きいたします。
私は、女性がなぜ子供を産もうとしないのか、これは社会全体の問題としてとらえなければならないと考えます。子供を産まない女性が問いかけているのは、お金や制度にはかえられない、今の我が国社会に対する信頼感の喪失だと考えるからであります。
現在の日本社会は、せつな的で、一獲千金を夢想し、個人主義がはびこり、かつて社会全体にあったやわらかな連帯感も失われ、家庭にいてさえ漠然とした不安を感じるという状況であります。子供を取り巻く環境も、相次ぐ児童虐待や学校における事件の多発と凶悪化など、目を覆いたくなる毎日であります。こうした社会状況の中で、多くの女性が子供を産むことにちゅうちょするのは無理からぬところであると考えます。
であるならば、少子化は政治が全力を挙げて解決しなければならない問題であります。子供が健全に育つ社会とは、大人も健全である社会であります。政治は、国民の力をかりながら、健全な社会を築く努力をさらに進めねばなりません。
総理の少子化に対する御認識、解決への決意をお伺いいたします。
次に、少子化問題を解決する上でも、今後最も重要な政治課題の一つである若者をめぐる現状について質問いたします。
昨年公表された厚生労働省の就業形態の多様化に関する総合実態調査によれば、非正社員の比率が四年前に比べて二七・五%から三四・六%へ七・一%も上昇し、正社員比率は六五・四%まで落ち込んだことが明らかになりました。特に若者の状況は厳しく、十人に一人が失業者、働く若者の五人に一人はフリーターであるとされております。
さらに、近年は、働くことも学ぶことも放棄した、ニートと呼ばれる若者も急速に増加しつつあります。ことしは、十五歳から三十四歳までの人口の二・七%、八十七・三万人にも達すると試算されております。
このような若者が置かれている現状を放置すれば、早晩、大きな社会問題となることは必至であります。
若者を取り巻く環境が幸福になって初めて、社会は安定し、治安が保たれ、少子化にも歯どめがかかるのであります。若者のわがままを許すのではなく、努力する若者がきちんと報いられ、将来に夢を持てるようにすることが政治に求められていると考えますが、総理は、若者が置かれている現状をどのように認識し、対応していかれるのか、お考えをお示しください。
次に、持続可能な社会保障制度の構築についてお尋ねいたします。
少子高齢時代を迎え、人口減少の始まりも目前となっております。今後、若い世代やこれから生まれてくる世代の負担に当然のように依存できる状況にはないと考えます。毎年一兆円を超える規模で膨らんでいく社会保障費を、給付水準を引き下げて、一刻も早く次の時代にも持続可能な制度に改め、引き継いでいくことは、我々世代の責任であります。
厚生労働省は、年金、介護、医療と順次改革を進めておりますが、社会保障制度全体を見据えた抜本改革の必要性が長く指摘されながら、いまだに各制度をばらばらに手直ししているのが実態であります。
縦割りにより、制度全体の改革を行政が行い得ないとすれば、それはやはり政治が責任を持ち、与野党の立場を超えて、国民のために真剣な議論を行うべきであります。
昨年五月、与党と民主党が社会保障制度全体の一体的改革を行う三党合意に署名してから、既に八カ月以上が経過しております。このような状況を、心ある民主党の議員はどう考えるのか。私は、改めて民主党に対し、三党合意を履行し、ともに国民のために責任を果たしていくことを呼びかけるものであります。
少子高齢社会に持続可能な社会保障制度のあるべき姿をどのように考えるべきか。私は、直接の保険料負担をこれ以上ふやさないことを前提に給付水準を引き下げ、あわせて自助努力を支援する手厚い措置を講じ、さらに社会保障制度全体の中心的な財源として、広く薄く、国民全体で負担する消費税を活用していくべきと考えますが、こうした考えに対する御意見も含めてお尋ねいたします。
次に、これも深刻な状況にある学力低下の問題と教育改革についてお尋ねいたします。
我が国の子供たちの学力が著しく低下している現実が、内外の調査などにより次々と明らかにされています。私は、このような事態を招いた原因の一端は、ゆとり教育を推進し、教員組合の問題や教育現場の問題を地方任せにして、真っ向から取り組んでこなかった文部科学省の教育行政にあることは否定できないと考えます。
中山文部科学大臣は、日本の学力は低下傾向にあるとはっきり認識すべきだと明言し、文部科学官僚の学校現場訪問など、教育行政の意識改革を促す改革方針を明らかにされておりますが、これまでの教育行政に欠けていたのは、まさに中山大臣のような見識と、官僚を指導するリーダーシップであります。(拍手)
今後は、真摯な反省に立ち、ゆとり教育を早急に転換し、問題教員や教える能力のない教員を排除する教員免許の更新制度導入や、学校運営の自由化推進、教育委員会制度の見直しなど、実態に即した教育改革を直ちに進めるべきであります。
また、少子化の進展により、子供一人当たりの教員数や予算額は年々ふえているにもかかわらず、学力低下が進み、不登校や学級崩壊などの問題が拡大している事実は、国による画一的な教育が限界に来ていることを示しております。
私は、国は、教育の理念や教育内容の充実、教育水準の向上と、教育現場の問題解決に向けた各教育委員会との密接な連携など、教育の実態面に、より主体的にかかわり、責任を果たしていくべきだと考えます。それ以外のことはすべて地方に任せて、ふるさとを愛する心、そして日本を愛する心が子供たちにはぐくまれていくような、地域の多様性を生かした教育環境をつくっていくべきだと考えます。
総理は学力低下問題をどのように認識し、また今後の教育改革をどう進めていこうとしておられるのか、お伺いいたします。あわせて、教育基本法の改正について、総理の基本的なお考えをお聞かせください。
次に、我が国の治安を悪化させ、国民生活の不安をかき立てている金融犯罪への対処方針についてお伺いいたします。
最近の金融犯罪、詐欺事件の増加は尋常ではありません。しかも、ハイテク技術の進展を反映し、被害に遭った本人がすぐには気づかないとか、落ち度がないにもかかわらず被害に遭うといったケースが激増しているのであります。例えば、国民が最も安全と考えている銀行の預金口座から知らないうちに預金が引き出されるといったこととか、盗まれてもいないカードが偽造されて被害に遭うといった事件が相次いでおります。
こうした犯罪は、信用によって成り立ち、機能している金融制度の信頼を根底から覆し、機能不全に至らしめる危険をはらんでいるのであります。何ゆえかといえば、例えば、預金等が引き出される被害に遭った被害者は自分に落ち度がなかったことを立証する責任を負っており、金融機関は責任を負わなくてもいい仕組みに現在はなっております。つまり、被害者が立証し、損害賠償を金融機関に求めることは至難のわざでありますが、逆に、立証責任を負わない金融機関の人間が犯罪に関与しても発覚しにくいということになります。
実際に、被害者は一様に金融機関への不信感と不満を抱くと伝えられております。一方、金融機関の職員による横領や使い込みといった犯罪も増加しており、現行制度のまま放置すれば、利用者と金融機関との相互不信が次第に広がり、金融制度は、その成り立つ根幹である信頼を失い、機能不全に陥るのであります。こうした犯罪は決して軽視すべきではなく、政治や行政が機動的に対応し、効果的かつ総合的な封じ込め対策を直ちに講じる必要があります。
我が党の政権公約は、金融サービスを含めた消費者保護法制の強化をうたい、PL法のサービス部門への拡大検討を打ち出しております。これは、製造物責任と同じように、金融商品やサービスについても提供側がリスクを負い、責任を負う仕組みにすることで、消費者に対する誠実な経営姿勢が確立され、法令遵守や企業の社会的責任につながると考えるからであります。このような考えに基づいた投資サービス法の制定や、金融犯罪や振り込め詐欺などの詐欺犯罪から国民を守り、効果的に封じ込める団体訴権制度の整備について、総理のお考えをお聞きいたします。
次に、イラク支援についてお尋ねいたします。
昨年十二月、イラク人道復興支援活動への自衛隊派遣継続が閣議決定されました。いよいよ一月三十日には国連安保理決議一五四六に規定される政治プロセスの節目ともなる国民議会選挙が予定され、イラクの安定と復興は極めて重要な局面を迎えました。このような時期に、我が国が、イラク人自身の民主的で安定した国家ができるよう可能な限りの支援を行うことは、国際社会の一員として当然の責任であります。
自衛隊の安全確保につきましては、私自身、昨年十二月に現地を視察いたしまして、以下のような感想を持ちました。サマワの治安情勢は、予断を許さないものの、他の地域と比べれば安定しており、治安情勢などの情報収集を徹底し、周辺の警戒や警備を強化するなどの措置により、安全確保に万全を期することができるということであります。
現地には大野防衛庁長官もお入りになりましたが、現地を見てどう感じられたか、自衛隊員の士気はどうであったか、今後、どのようなことに力点を置いて活動を継続していくつもりなのか、防衛庁長官にお伺いいたします。
次に、日朝関係についてお尋ねいたします。
総理、国民は怒っております。
北朝鮮は、横田めぐみさんの遺骨と称して、別人のものを提出してまいりました。その他の拉致被害者についても、何ら誠実な物証を提出するに至っておりません。このことは、北朝鮮が日本を愚弄しているとしか言いようがありません。
拉致被害者の御家族は、もし自分の娘が、息子が、父が、母が拉致されたとしたら、どんな思いでいられるかとおっしゃいます。私は、それを聞くたびに胸が痛くなります。
国民は今、政府の出方をじっと見守っております。政府は国民の生命財産を守ってくれるのか、それを注視しているのであります。
もちろん、核やミサイルの問題をないがしろにはできません。平壌宣言では、日朝関係の正常化は、拉致、核、ミサイル問題の包括的解決をうたっております。しかし、拉致問題の解決なくして正常化はあり得ないのであります。そのことを北朝鮮はきちんと認識しているのかどうか。かくなる上は、経済制裁発動もやむを得ないのではないでしょうか。
北朝鮮は、テロ組織への武器密輸、麻薬取引等を大きな外貨獲得手段としているとの報道もなされております。六カ国協議についても、一向に進展がなく、次の開催時期をずるずると引き延ばし、時間稼ぎを繰り返しております。国際社会全体の関心をもっと北朝鮮に対して向けさせなければなりません。そのような啓発行動や拉致問題解決の国際世論を高める外交努力をもっともっとすべきなのであります。
拉致問題解決について、経済制裁を含め、今後どのような基本姿勢で取り組んでいかれるのか、総理にお尋ねいたします。
次に、日中関係についてお伺いいたします。
一月十七日、中国の趙紫陽元総書記死去のニュースが全世界を駆けめぐりました。趙紫陽元総書記といえば、一九八九年、天安門広場に集まった民主化を求める大勢の学生たちに囲まれ、理解を示し、武力制圧事態を避けるため、ハンストを中止するよう涙とともに訴えた姿を私は今でも鮮明に思い出すのであります。まさに、改革・開放と民主化のシンボルとして、歴史に刻まれるべき指導者であったと思います。心より御冥福をお祈りいたします。
さて、日中間ではさまざまな問題が起きております。中国の東シナ海での資源開発問題に続いて、原子力潜水艦の領海侵犯など、国家主権にかかわる大事であります。特に、原子力潜水艦の領海侵犯は、我が国の安全保障上極めて憂慮すべき事柄であり、ないがしろにはできない問題であります。
しかし、一方で、日中間の経済・文化交流は順調に拡大を続けているのであります。
小泉総理がAPECでの日中首脳会談で発言されたように、両国が局部的な問題で応酬を続けていくのは不幸なことであります。両国が、大局的な見地から、未来志向で信頼関係を強固にし、アジア地域の安定と繁栄に協力していくことが求められていると思います。
日中関係を今後どのように良好なものにし、発展させていくか、総理にお聞きいたします。
次は、日ロ関係についてであります。
町村外相は、さきのロシア訪問で、ラブロフ外相とプーチン大統領の来日準備の加速を確認したものの、来日時期の確定には至りませんでした。これは、北方領土問題について、プーチン大統領が昨年、一九五六年の日ソ共同宣言は歯舞、色丹の二島返還で領土問題全体を終わりにすることを打ち出していると発言し、これに対する我が国の対応を見きわめているためとも伝えられております。
大統領の発言は、言うまでもなく、ロシア側の都合のよい、勝手な解釈にすぎません。九三年にエリツィン大統領が来日した際の東京宣言には、四島の名前を具体的に明記し、その帰属の問題を解決することによって平和条約を早期に締結するよう交渉を継続すると明記しているのであります。我が国は、我が国固有の領土である四島の帰属問題をまずロシアとの間で明確にした上で、返還の時期や条件については柔軟に対応するとの正論を押し通すべきであります。
ことしは、日本とロシアが国交を開いて百五十年になります。隣国である両国が、懸案である領土問題を解決し、平和条約を締結すれば、あらゆる面での交流が一気に拡大し、両国はもとより、極東アジア地域全体の発展や安定に大きな効果を及ぼすことになります。大統領の来日を前に、そのメリットをロシア側によく理解させることが重要ではないかと考えますが、今後の日ロ関係にどう取り組んでいかれるか、お尋ねいたします。
以上、我が国が直面する内外の課題について質問をいたしました。質問に立って改めて痛感したことは、我が国は今、多くの深刻な問題を抱え、時代の転換の岐路にあるということであります。あらゆる制度、システムが疲弊し、陳腐化し、限界に来ております。しかるに、改革のスピードは、さまざまな抵抗に遭って遅延を余儀なくされる場面も多く見られます。
我が党は今、十一月十五日の立党五十年記念の日に向け、新しい日本の道しるべともいうべき新しい憲法の草案づくりに取り組んでおります。
五十年前、我々の先哲は、立党宣言の冒頭で「政治は国民のもの」とうたい上げました。
小泉総理、どんなに抵抗があっても、既得権の殻を破り、公的部門のリストラを進め、自由と責任が共存する経済市場と公正な社会を実現いたしましょう。
さらに一言申し上げます。
本年は、第二次世界大戦が終結して六十年目の年に当たります。当時の首相である鈴木貫太郎は、周囲のだれもが口にできなかった終戦を、命をねらわれながらも、豪胆なまでの勇気と、細心の注意を払いながらなし遂げてきました。鈴木貫太郎は、内閣書記官長の迫水久常にこう言ったそうです。いろいろ人が中傷したりして苦しいだろうが、人が何と言おうと、信じたとおりどんどんおやりなさい。
僣越ではございますが、この言葉を私は総理にお贈りいたします。そして、選挙のあるなしにとらわれず、常在戦場の民主政治の基本に立って、日本と日本の未来のために、思う存分、渾身の力を込めて改革に取り組んでいただきたいとの願いを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕