石井晴夫の発言 (郵政民営化に関する特別委員会)

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○石井参考人 おはようございます。ただいま御紹介にあずかりました作新学院大学教授の石井と申します。よろしくお願いします。
 お手元に簡単な連載記事の資料をお配りしましたけれども、これはあくまでも参考ということで、きょうは時間がございませんので、要旨をかいつまんで、そしてまたポイントを絞りながらお話をさせていただきたいと思います。
 私は、三年前の日本郵政公社法案の審議の際に、衆議院総務委員会で参考人として意見陳述をさせていただきました。あれからわずか三年で、今度は民営化反対の立場でこのところに立っております。法案成立からわずか三年で、日本郵政公社法が現在廃止されようとしております。まことに私も残念でなりません。
 日本郵政公社法案に対しましては、あれだけの国民的議論と、国会、政府、そしてまた総務省や郵政事業庁、また関係省庁等を巻き込んでさまざまな検討が行われて、その法律に基づいて二年前に日本郵政公社が設立されたばかりでございます。日本郵政公社は、国会の皆様方初め、関係者はもとより、国民各位の大変な努力によって創設されたわけであります。そのために、国会でも、そしてまた政府でも、さまざまなところで莫大なコスト、つまり税金と多大な時間を費やして、どうにか今日の軌道に乗ったシステムができ上がったわけであります。それも忘れないうちに、ましてや、今うまく事業経営が行われている組織体を分割・民営化して、将来的には解体も想定される郵政民営化の推進は、私にはどうしても理解できません。
 二〇〇五年六月三日の衆議院郵政民営化特別委員会、本委員会でございますけれども、ここに小泉総理も出席して、郵政民営化法案の審議が行われたわけであります。この法案に対しまして、与野党を問わずさまざまな皆様方から疑問、質問、問題点が提起されました。その後も今日まで、本委員会でさまざまな審議が進められ、さらに多くの問題点が明らかになったわけであります。
 このような問題点の多い法案をなぜそんなに急いで、あるいは、言われておりますけれども、本日本委員会で通し、あすの本会議に上程されるということなのか、多くの国民は全く理解できないでいます。逆を言えば、国民には本音を知らせたくないのではないかというふうに思われてしまうぐらい、今回の政府の答弁には具体性が欠けております。
 今回の郵政民営化法案の審議の中で一番私たちが理解できないのは、郵政民営化が実施され、それが仮に失敗に終わった場合、だれがどのように責任をとるのかが全く示されていない点であります。国会の中でも、地方議会や首長も、そして何よりも多くの国民が郵政民営化に慎重であるのに、強引に今国会で成立を図ろうとするこの小泉内閣は、二〇一七年までに郵政民営化が失敗した場合、その失敗の責任のとり方をまず国民に明らかにしてほしいと思います。
 将来じり貧になるからといって、今うまくいっている郵政三事業をあえて民営化し、いろいろなビジネスもできますよ、メリットも大きいですよと言われても、私たち国民にはぴんときません。むしろ、世の中の動きとは逆の方向にあり、民間金融機関は再編統合化の真っただ中にあります。規模の利益とコスト削減を必死で図ろうとしているのが現状であります。民間金融機関でもやらない事業分割や分社化、特に理解できないのは、窓口会社、郵便局会社と三事業を分けることであります。そして、委託契約によって事業を成り立たせるということであります。あとは経営者と職員の創意工夫と経営努力に任せるんだというのが、私たちは理解できません。
 小泉総理や竹中大臣あるいは政府の答弁を聞いて、郵政民営化後の姿や内容が具体的にわかったという国民は極めて少ないと思います。かねてから敬愛しております財界や金融界の先輩の方々からも、市場競争は必要であります、しかし、郵便局は地域社会の中で今まで長い間社会貢献や地域貢献を果たし、現在の法案の中でも基金を積むから大丈夫だというふうに言われても、それは心配でならないというふうに言われております。
 ましてや、今回の郵政民営化について、今までの国会やマスコミ等の説明や解説を聞いて、国民がどのくらい理解できたのか。政府はもっと時間をかけて国民に慎重な説明をする必要と責任があると指摘されております。つまり、政府が郵政民営化について説明すればするほど、今の郵政公社の民営化は必要がないのではないかというふうに国民にわかってしまうのではないかと思えてならないのであります。
 仮に、民営化がそんなにすぐれていて、郵政民営化の成功が確信できるのであれば、小泉総理や竹中大臣が完全民営化の成功まで経営者として責任を持って見届けるのが筋であるのではないかと思います。もしそれができなければ、もっと慎重に対応してもらいたいと思います。
 本郵政民営化特別委員会で、小泉総理は、郵政民営化が実施された場合の姿を聞かれた際、答弁の中で、郵便局でこんなものも売れるんだ、利用者は便利になりますよと言っています。しかし、現にコンビニや一般商店でも扱っているものを郵便局で改めて販売すれば、それこそ民業圧迫の何物でもありませんし、民間会社になるから民業圧迫にならないよといっても、今から郵便局でそのようなものを売っても利益を出せるはずがありません。ましてや、不動産仲介業、旅行代理店業、リフォームビジネスなどのマーケットは一番淘汰の激しい分野であり、もし政府で自信がおありでしたら、御説明に当たった政府の方々が経営者になって、責任を持ってやっていただけるとありがたいと思います。
 ましてや、コンビニでも利益が上がらない店舗はすぐに閉鎖、撤退してしまう状況の中で、同時に激戦の小売業や他業種に参入して十分利益が出せると言われるのでしたら、その根拠を明確に私たちに示してもらいたいです。
 政府は、郵政民営化のメリットやその効果を、総論ではなく、もっと国民にわかりやすく、具体的数値をもって示してもらいたいのです。同時に、現行の郵政公社の制度のもとでのメリットや経済効果あるいはさまざまな波及効果をあわせて算出し、両者を詳細に比較検討して、国民にその本質をあらわす責任があると思います。
 五十円、八十円の信書も市場競争によって安くなる可能性がありますよと総理は言います。しかし、政府の予想に反して、経営環境がますます厳しくなり、料金が安くならず、むしろ値上げされた場合には、政府はどのように責任をおとりになるのでしょうか。
 今ほど日本の将来の姿が求められているときはありません。資源の少ない日本は、まさに技術と知恵と資本力を出して社会基盤をこれからしっかり築いて、さらに国益を守ることが二十一世紀に本当に必要なことであると思います。
 郵政民営化はこうした国益と地域社会を根本から崩壊させるものであり、郵政民営化によって郵便局ネットワークが寸断されれば国民生活は破綻の道を歩むことになります。その危険性が極めて高い中で、大きなリスクを抱えてなぜあえて郵政民営化を断行するのか、私たち国民には理解できません。小泉総理の構造改革は国民を幸せにする改革であるということを、今でも私たちは信じております。しかし、残念ながら、この郵政民営化に関しては、国民を不幸にする改革であると言わざるを得ません。
 もう一つ大切な点は、安全と安心とは異なるということです。JR西日本福知山線の大事故もそうですが、事故現場にATS—Pという新しいシステムを導入したからといって、安全は確保されても、人々の不安感はそう簡単にはぬぐえません。郵便局を民営化しても、設置基準など幾つもの安全措置を講じるので、地方の郵便局はなくならず、心配は要らないと言われても、民営化されてしまえば、いつ自分の郵便局が不採算等の理由で撤退されるのかわかりません。国民は、地域の生活そのものを奪われる不安に常にさいなまれることになります。若い人々や転居が可能な方々は、大臣が言う、都心へ出てくることも可能であるかもわかりません。しかし、そのことによって地域社会はますます疲弊し、美しく安全で安心な日本が地方から崩れることになります。
 国営公社の郵便局は、普通局、特定局、簡易局を問わず、文字どおり地域社会に安心感を与えています。警察や消防と同じように、安心を担保するには、御存じのように、コスト、お金がかかるのです。このことを国会や政府の皆様方には改めて御認識いただきたいと思います。
 郵便貯金は、全国四千九百二十六万世帯のうち、四千二百二十二万世帯に利用されています。国民の八五・七%の人が郵貯を利用しています。郵貯利用の目的は、病気や不慮の備え、不治の病、老後の蓄え、子供の資金、国営であるから安心、さまざまです。郵貯法には、国民の福祉の増進を図り、あまねく公平に利用できると明記されています。つまり、小口、個人の利用がほとんどであります。郵便局は、国民のためを第一の目的として、さまざまなサービス提供と、地域、社会、国際貢献を実施しているのであり、民間金融機関とは根本的に目的が異なります。したがって、郵便局と民間金融機関とは、それぞれの役割に応じてバランスよく今日では私たちの生活に溶け込んでいるのです。
 一方、民間金融機関は、どうしても利益優先になりがちになり、取れるところから取る方式を基本にしております。その一例としては、土曜、日曜、平日夜間のATMの利用には百五円等の手数料を取っております。最近、幾つかの銀行では、個人客に対する手数料を値上げしているところもあります。郵便局も、民営化されれば当然そのようになります。
 竹中大臣は、郵政民営化によって郵貯は一般の銀行になるので、郵貯法を廃止し、従来の理念とは異なるスタンスでビジネスモデルを構築すると言っておられます。周知のとおり、一般の銀行になるということは利益追求の民間企業になることであり、ビジネスの基本は採算性で、株主のみに、あるいはステークホルダーのみに責任をとる経営形態に変わるということです。
 したがって、採算の合わない郵便局は廃止されることは目に見えております。都市部のみならず、地方部においても郵便局数が減ることは明らかです。設置基準では一市町村に一カ所以上と言われておりますけれども、市町村数は今までの約三千百カ所から千八百カ所程度までに減る状況にあり、過疎地に定義された約七千局の論議ばかりが先行しておりますけれども、実際は過疎地以外の地方都市の郵便局が危機に瀕しております。
 このように国民生活に直接影響を与える最重要課題については、幾つもの先進国で直接国民の真意を問う国民投票が行われております。もちろん、国会は国民の代表の場であることはよく私たちも理解しておりますけれども、私たちの生活に直結している郵政民営化の是非については、国民投票も視野に入れて考えていただきたいと思います。初めての試みとして、私は、ぜひこの国民投票ということも考えていただければというふうに思います。
 さまざまな問題点が明らかになっております。時間がございませんので多く語れませんけれども、あとは質疑応答のときに答えさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 石井晴夫

speaker_id: 2976

日付: 2005-07-04

院: 衆議院

会議名: 郵政民営化に関する特別委員会