渡辺孝男の発言 (憲法調査会)

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○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男です。
 私は、憲法に関して、二点について意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず第一点は、我が国の憲法は、我が日本国民にとっての最重要の法であり、最も基本的な法であるがゆえに、現役世代のみならず将来世代のことを十分に視野に入れた内容のものでなければならないということであります。
 私は山形県の米沢市に住んでおりますが、当地の江戸時代の名君、上杉鷹山公は、世子治広に米沢藩を譲るに当たって、人君の心得三箇条、いわゆる伝国の辞を与えました。その第一箇条には、「国家は先祖より子孫に伝候国家にして、我私すべき物には之れ無く候」とあります。正に、現役世代が将来世代のことを考えずにわがまま勝手にしてはならないと戒めているわけであります。
 現憲法におきましても、前文の冒頭に、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、」、中略、「この憲法を確定する。」と書かれてあります。また、第十一条でも、「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と書かれており、将来世代のことを視野に入れて書かれています。この考え方は当然今後も堅持する必要があります。
 さて、地球温暖化の問題や多くの品種が絶滅している現状を考えますと、将来世代のことを考慮して環境の保護を憲法に明記する必要があると考えます。
 また、貴重な資源が枯渇しつつあることを考えると、資源の無計画な利用、資源の浪費を抑制し、将来世代のことを考えて、節度ある利用、再生が可能であれば再生を考えての利用が必要であります。正に循環型社会、持続可能な社会を目指すことを明確に打ち出す必要があります。
 ドイツでは、ドイツ連邦共和国基本法が近年改正され、第二十a条に、「国は、来たるべき世代に対する責任を果たすためにも、憲法的秩序の枠内において立法を通じて、また、法律及び法の基準に従って執行権及び裁判を通じて、自然的生存基盤及び動物を保護する。」とあります。日本も参考にすべきと考えます。
 将来世代のことを十分考慮するという観点からすると、財政の健全化や年金制度の世代間の負担と給付の公正化も重要となります。近年、財政規律や財政の健全化を憲法に明記すべきとの意見も出されています。十分に検討に値する課題と考えます。
 次に、第二点は、新しい人権と呼ばれているものの中に分類される自己決定権と生命倫理に関してであります。
 我が国の憲法は我が日本国民にとって最も重要であり、しかも基本的な事項を定めるものでありますが、その中には、日本の風土、伝統、文化などに根差した日本に独特のものが盛り込まれることもあり得ますし、また、重要で基本的であるがゆえに世界の国々の国民に共通するものも当然含まれてきます。基本的人権などは各国とも当然重要視していますが、その内容や憲法の書きぶりについては各国で差異も見られます。
 新しい人権と呼ばれている自己決定権や生命倫理に関しては、人工妊娠中絶や尊厳死、安楽死の問題、あるいはクローン技術、ヒト胚移植などの生命科学技術の研究や人への応用などの例で明らかなように、個人の希望と人間の尊厳、そして学問の自由などの重点の置き方の違い、思想信条、宗教の違いなどによってその対応は各国、各州で様々であります。
 私は、人工妊娠中絶や尊厳死、安楽死などはその影響が個人や家族あるいは医療関係者など、現役世代の国民の一部の段階にとどまる場合が多いと推測されますので、憲法レベルで特記する必要性は少ないと考えますが、クローン技術の人への応用や、動物と人とのキメラの形成につながるような生命科学技術の人への応用は、現役世代や同時代の生態系のみならず、将来世代や生態系に影響を及ぼす可能性があり、人間の尊厳、人類の生存あるいは地球の生態系に広範囲かつ長期的に重大な影響を及ぼす可能性がありますので、禁止できるように憲法のレベルで規制の条文を盛り込むべきと考えます。
 世界における具体例を見ますと、二〇〇四年六月採択の欧州憲法条約Ⅱの六十三条二d、「人間の再生的クローニングの禁止。」のような直接的な表現や、一九九九年採択のスイス連邦共和国憲法第百十九条一、「人間は、生殖医療及び遺伝子技術の濫用から保護される。」といった包括的な表現の条文があります。私は、憲法に盛り込む条文としては、スイス連邦共和国憲法のような包括的な表現のものがふさわしいと考えます。
 以上、二点に関して私の憲法に関する考え方を述べさせていただきました。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 渡辺孝男

speaker_id: 11238

日付: 2005-02-25

院: 参議院

会議名: 憲法調査会