椎名一保の発言 (憲法調査会)

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○椎名一保君 お許しをいただきまして、本日、国井委員の差し替えで出席をさせていただいております椎名でございます。よろしくお願いいたします。
 内閣に関する発言をさせていただきます。
 議会制民主主義を取る以上、政策決定に当たり議会の多数の同意を得なければならないことは当然でありますが、現在の政策決定システムでは、各省庁と内閣、政党との関係、一律の国務大臣の出席義務、会議の定足数など、最終的に議会の同意を得るに至るまでの間に余りにも多くの時間を要するシステムになっているのではないでしょうか。政治主導の政策決定システムをより徹底させるとともに、そのプロセスを大胆に合理化し、時代の変化に即応してスピーディーに政治判断を実行に移せるシステムとすべきであると考えます。
 まず、現行憲法では必ずしも明確となっていない事項について憲法上明記すべきであります。例えば、閣議における内閣総理大臣のリーダーシップ、衆議院の解散権の行使主体及び行使要件などが挙げられます。
 総理のリーダーシップについて発言をいたします。
 現行憲法は、「行政権は、内閣に属する。」と規定し、合議体に行政権を帰属させる議院内閣制を採用しております。現在の規定では、内閣総理大臣に帰属することが明らかな権限が余りにも少なく、閣議にかけずには何もできないような状況であるとして、総理のリーダーシップを発揮できるような環境を整えるべきであるとの批判が古くからなされております。これに対して議院内閣制は、あくまでも総理個人ではなく、合議体としての内閣を行政権の主体とする体制であるため、実質的な大統領制に近づけることに慎重な意見もありますが、総理を頂点にリーダーシップが発揮され、また責任を負う体制が必要であると考えます。特に緊急時など機動的な意思決定ができるように、閣議の在り方等を考え直してもよいのではないかと思われます。
 そこで、閣議の位置付け、対国会の責任の在り方等、内閣法の規定の在り方を考え直す必要があると思います。
 まず、現在は、内閣法三条、「各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分担管理する。」の規定があります。それぞれの大臣がそれぞれの主務について最終的な決定権を有する感のある分担管理原則により、結果として総理の地位が弱められていると批判されてまいりましたが、憲法に触れるという問題もあり、一連の行政改革では手付かずに終わりました。新たに憲法上も、各主任の大臣が首相の下にあり、首相ないし閣議により決定される方針の下にあることを明確化すべきであります。
 また、内閣法六条の「閣議にかけて決定した方針に基いて、」という縛りがリーダーシップを妨げているのではないかと言われております。閣議における内閣総理大臣のリーダーシップは、現在の内閣法の制定過程においても、閣議を主宰することは、議案の設定、発議を含めリードするという趣旨で、単なる司会者以上の意味が込められていたという経緯もあります。総理のリーダーシップを確保する環境が憲法の明文上も明らかになるように改正を図るべきであると考えます。
 総理指名、内閣の構成について申し上げます。
 内閣総理大臣は第一院、執行の府である衆議院の中から選ばれるべきとの意見には一定の理があると思われますが、総理の指名権は、内閣が国会に対して責任を負うことの一つの表れであり、議院内閣制である以上、衆参両院とも有するという現行の規定を維持すべきであります。
 また、国務大臣に参議院議員が就任できることについても、これまでどおり維持すべきであると考えます。
 首相の公選について申し上げます。
 首相公選制についても議論がありますが、唯一の採用国でありますイスラエルの失敗の例にかんがみ、慎重な検討が必要であろうと思われます。ただ、首相の選出過程をより透明にし、その地位に民主的正当性の根拠をより強く与えるという意味では、イギリスの方式を参考にするのも一案であると思います。
 政権選択選挙である衆議院の総選挙の際に、政党は内閣総理大臣候補を明示して選挙を戦うように義務付けることにより、首相候補の選出に有権者が関与する仕組みを採用することを提案いたします。
 解散権について申し上げます。
 解散権については、現在の六十九条所定の場合以外にも、これに匹敵するような重大な事態が生じた場合に、例えば議会制民主政治の運営上、新たに国民の意思を問うことについて客観的かつ十分な理由があると認める場合には、理由を明示して衆議院を解散できることを明文で規定すべきであります。
 天皇陛下の国事行為を定める条文を利用して解散することは、天皇は「国政に関する権能を有しない。」としていることとの整合性からも問題があり、解散権の主体と要件について明文の規定を置き、六十九条の場合以外についても、所定の要件を満たす場合には、内閣ないし内閣総理大臣は解散できる旨の規定を置くべきであります。
 その際、例えば参議院議員が半数しか在職していない場合には解散を避けるべきとの議論もあります。解散権の行使の限界についても慎重な配慮が必要であると思われます。
 国民投票について申し上げます。
 個別の重要な政策課題につきましては、内閣総理大臣がイニシアチブを取る国民投票制を採用してはどうかという意見もあります。現行憲法は代表民主制を基調としており、新憲法においても基本的な構造は踏襲されるべきものと考えますが、政治上大きな影響力を持つこともあり、規制する法制がないままに事実上頻用されることは問題であります。あくまでも、補完的役割を果たすものとして検討する余地はあろうかと思われます。
 さらに、憲法の規定を見直すべきものとしては、総理大臣以下の国務大臣の国会への出席義務、法律案の提案権の所在に関するものがございます。
 総理大臣以下の国務大臣の国会への出席義務について申し上げます。
 大臣の出席義務そのものは議院内閣制のシステムからは削除をすべきではないと思います。しかし、政治主導を確立しつつ国会を円滑に運営するには、大臣に対する時間的拘束を緩和し、副大臣などの代理出席でよいとするなど、憲法の規定を見直すべきであると思います。
 ただし、副大臣の憲法上の位置付けなどについては今後検討する必要があります。具体的な職名を出すとなると憲法上定義が必要になる等の問題もあります。第一義的には、国会等の要求がある場合は自ら出席しなければなりませんが、自ら出席することが困難なやむを得ない事情がある場合は、法律の定めるところに従い代理の者を出席させなければならないとする規定を置くべきであります。
 法律案の提案権について申し上げます。
 法律案の提案権は国会議員に限定する方向で憲法の規定を見直すべきであります。現在の規定では、議案に法案も含めて解釈されておりますが、位置付けがあいまいであります。国会は立法府であり、行政府である内閣はあくまでも法律を執行する機関であるということを明確にし、政治主導の国政を推進する観点から、議員に限定することが望ましいと思われます。
 もちろん、実際には複雑化、多様化、専門化した国民のニーズをすべて国会が掌握し、立法に反映させることは非常に困難であります。国務大臣たる国会議員が内閣の意を呈した法案を提出することになります。また、予算関連法案については、内閣の予算編成権との関係もあり、別途の取扱いが必要となるでありましょう。
 最後に、委任立法について申し上げます。
 また、内閣ではなく議員が実質的にも法案の提案主体となる場合には、行政による円滑な執行を確保するため、委任立法が重要になってくると思います。白紙委任的なものが許されないことは論はまたないが、委任の趣旨、目的、範囲を事前に明確に法律の形で定めることを要求するとともに、諸外国の例に倣い、事後的に国会がチェックしていく仕組みを確立することも必要になると思います。
 以上でございます。

発言情報

speech_id: 116214184X00420050302_006

発言者: 椎名一保

speaker_id: 20696

日付: 2005-03-02

院: 参議院

会議名: 憲法調査会