吉川春子の発言 (憲法調査会)
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○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
二院制小委員会報告に関連して意見を述べます。
憲法調査会は日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うためのものであり、その報告書は調査の経過と結果について報告すべきで、一定の方向性を指し示すものであってはならないと思います。ところが、本報告書には、何々することで一致した、認識が一致している、おおむね一致した意見であった等の記述が十か所以上にわたってあります。
また、憲法調査会は法律案提案権も審議権もありませんが、憲法調査会が改憲の意図を持って設置された経緯はあります。そして、現在、調査会での議論の実態と離れて、改憲の世論喚起や改憲の方向付けとする場として利用されようとしています。
そうした憲法調査会の枠組みの下で設置された二院制小委員会の報告書も、改憲の方向を示すものとして利用されることを否定できず、反対しました。特定の人の政治的意図によって政治的に利用されるおそれがあるという不安を私は持たざるを得ません。
日本国憲法は、第二次世界大戦、太平洋戦争の反省から、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないように決意して制定されました。六十年前の今日、三月九日夜半から十日未明にかけて、東京はアメリカのB29による無差別攻撃により、江東、深川、墨田など下町を中心に十万人以上の犠牲が出ました。これを皮切りに全国に空襲が広がり、ついには広島、長崎に及んだわけです。
今、国会からほど近い六本木ヒルズで東京大空襲展が開かれています。私は両親と空襲の一年前に長野県に疎開しましたが、東京大空襲展を見て、もしこのまま中央区に住んでいたならどうなっていたか分からなかったと思いました。空襲に遭われた多くの人々の苦しみと無念さを思い、こうした犠牲の上に制定された日本国憲法九条を改憲しようとするどんな動きも阻まなければと決意しています。また、盧武鉉韓国大統領の植民地支配に反省のない日本への最近の批判を見ても、憲法九条を守ることがアジア近隣諸国との友好関係発展の道であると考えます。
次に、具体的内容に関連して意見を述べます。
参議院が独自性を発揮すべき機能、衆議院とどのような役割・機能分担を行うか、また参議院は長期的、基本的な政策課題を重点的に行うという問題についてです。
私は、殊更参議院の独自性という形で衆議院との違いを強調する必要はないと思います。むしろ、役割や機能の分担を考えるに当たって、現行憲法に沿って、これは報告書の文言ですが、参議院は六年間と任期も長く、しかも解散がなく安定していること、全国単位の比例区と都道府県単位の地方区という選挙制度の下で何十万という支持を得て議員になっていることなど、参議院の特性を生かすことで十分であると考えています。
更に言えば、参議院が長期的、基本的な政策課題を重点的に行うことを強調し過ぎますと、二院制の下で、結果的に衆議院は長期的、基本的な政策課題を余り行わないというような意味になることになって、他院の権限にまで影響を与えるのではないかと懸念します。
また、参議院がチェックの院として決算審査を重点的に行うこと、決算と並んで行政監視、すなわち国政調査や政策調査を充実させ、チェックに重点を置く監視の院として権威を高める問題についてです。
国会は、立法府であると同時に、三権分立からいって当然に行政府に対するチェックが重要な機能です。これは衆参両方に求められているものです。議院内閣制であるため、衆議院がややもすれば行政に近いうらみはありますが、だからといって、参議院がチェックの院、衆議院はチェックの院とは違うということにはもちろんなりません。
また、多様な民意を反映させるために参議院の議員構成をどのようにするか。それと関連して選挙制度についてです。
私は、この点で重要なのは、衆議院との違いだけではなく、参議院が多様な民意をいかに反映させることができるかであると思います。国民から見て、参議院の存在価値を高めるためには、鏡のごとく民意を反映できる選挙制度、一票の価値の平等をどのように担保するかが最重要課題であると思います。そして、国会の運営で、少数意見に配慮することも多様な民意の反映という点から欠かせません。
こうした観点から、あえて言えば、十人未満の小会派を議院運営から排除することではなく、参加させることも重要課題だと私は考えます。もし二大政党制ということで少数意見を切り捨てるようなことになれば、多様な民意の反映とは相反することになるのではないかと思います。
一九九七年五月、参議院五十周年を記念して上院議長会議が開かれました。この会議は、直接選挙で選ばれる上院を持つアルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、フィリピン、ポーランド、コロンビア、ノルウェー、ルーマニアの八か国の上院議長が参加されました。ベルギー議長の上院は熟慮の府であるという言葉は私の心にも響きました。どの国も上院改革、とりわけ多様な意見を反映させるための努力をしている点を実感いたしました。
かつては貴族院、庶民院などの階級代表で構成されていた二院制、三院制が、現在は多くの国で直接選挙が採用され、日本は加えて異なる時期に異なる選挙制度で選ばれた議員によって法案が二回審議されるという制度を導入しましたが、これは人類の英知の到達点であると思います。この制度は、衆参どちらの院で審議されても、次の院でもっと深く問題点をえぐる議論がなされることが可能です。これは人権保障の担保でもあります。
これに対し、審議の効率化を目的にして参議院の権限を弱めたり、一院制論も主張されていますが、民主主義の基礎を危うくするものであり、反対です。
立法府がもっと議員立法を盛んに行い得る体制を整えること、ほとんどが行政府提出の法律を通してやるという現状を抜本的に改めることが必要です。参議院で議員立法をより可能にする体制を保障することは改憲を必要としませんし、参議院の存在価値を高めることにつながるのではないでしょうか。
憲法調査会を憲法改正を喧伝する場とするのではなく、五年間の日本国憲法についての調査、議論した結果をそのまま国民に報告することが憲法調査会の報告書の在り方であることを強調して、発言を終わります。