小泉純一郎の発言 (本会議)
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○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 市川議員に答弁いたします。
郵政民営化の必要性、公社では改革できない理由についてでございますが、郵政事業については、郵便、郵貯、簡保、いずれの分野も民間企業が自由な経営の下で同様のサービスを提供しており、公務員でなければできない事業ではなく、民間により十分運営が可能なものであります。
他方、現在の公社制度には、郵便局では郵便、郵貯、簡保しか取り扱えない等、業務範囲が限られるため環境変化にも柔軟に対応できないこと、郵貯・簡保資金は官の資金として国民負担回避のため国債等の安全資産に運用せざるを得ないこと、法人税等が非課税であること等、民間企業と対等な競争条件となっていないこと等の問題点があるところであります。公社形態を維持したままの改革では、その成果は限定的にならざるを得ません。
このため、郵政民営化を実現することにより、国の関与をできるだけ控え、民間企業と同一の条件で自由な経営を可能とすることにより質の高い多様なサービスが提供されるようにしていくとともに、郵便局を通じて国民から集めた約三百四十兆円もの膨大な資金を官から民に流す道を開く、約三十八万人の郵政公社の職員が民間人になるとともに、従来免除されていた税金が支払われること等により財政再建にも貢献するなど、小さな政府の実現に資する等のメリットを引き出し、構造改革を一層前進させ、国民の利便性の向上が図られるようにしていくことが重要であると考えております。
他方、郵便物の減少や金融の技術革新など、郵政事業を取り巻く環境は急激に変化しており、これに適時適切に対応して郵政事業の健全な経営を確保するためには速やかに郵政事業を民営化することが必要であります。また、最終的な民営化が実現するには相当年数の準備期間と移行期間が必要であること等を考慮すれば、直ちに民営化に取り組む必要があり、政府としては平成十九年四月に民営化を実施したいと考えております。
なお、郵政民営化の実現に当たっては、過疎地を始め都市部においても必要な郵便局ネットワークを維持し、また、移行期間中における代理店契約の義務付けや社会・地域貢献基金の設置など、貯金、保険の金融サービスが低下しないよう制度設計に工夫を凝らしており、国民の利便性には十分配慮しております。
郵政民営化は、私が官から民へ、民間にできることは民間にの方針の下に進めてきた改革の本丸と言うべき改革であり、郵政事業を改革する最善の案と考えております。
衆議院における法案修正についてでございますが、衆議院における修正は、政府・与党合意の中で、与党の主張を入れ、法律化されなかったものについてできるだけ法律に明記することにより、より強い担保を確保するなどぎりぎりの修正が行われたものであり、郵政民営化にかかわる国民の不安感や懸念の払拭にこの修正が役立つものであると考えております。政府として、これまでの議論の経過や衆議院での修正等を真摯に受け止め、参議院における審議において法案に対する御理解を賜るよう誠実に対応してまいります。
中央省庁基本法についてでございますが、中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第六号は、郵政事業について国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして民営化等の見直しは行わない旨を規定していますが、これは公社化までのことを規定しているものであって、公社化後の在り方を拘束するものではないというのが政府の見解であります。
民営化後の郵便局についてでございますが、郵便局の設置については、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するとの規定を踏まえ、過疎地は当然のこととして、都市部も含め、国民の利便性に支障が生じないよう十分な配慮がなされることが重要と考えております。このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務付け、さらに省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定するとともに、移行期間中における代理店契約の義務付けや社会・地域貢献基金の設置など、きめ細やかな法制上の担保を行うこととしております。
また、設置基準に基づく郵便局の設置状況について、法案においては、毎事業年度、郵便局会社からの事業報告書の提出等により、総務大臣が把握し、必要に応じ適切な措置を講ずるとともに、与党との合意を踏まえ、郵政民営化委員会による三年ごとの総合的な見直しの対象に必ずすることとしており、その結果、必要があれば委員会は政府に意見を述べ、総務大臣において適切な措置を講ずることが可能な仕組みとしているところであります。
民営化後の郵便局における金融サービスについてでございますが、これまで全国津々浦々の郵便局において貯金、保険のサービスが提供され、それが地域の人々の生活を支えてきた重みについては十分認識しております。したがって、郵政民営化後も、利用者の利便性を確保するために、従来どおり郵便局において貯金、保険のサービスが提供されることが重要であります。
そのため、貯金、保険のサービスについては、あまねく公平に利用させるためのユニバーサルサービスの提供義務を法律により課すこととしていないものの、郵便貯金銀行、郵便保険会社に対する免許に当たり、最低限、移行期間をカバーする長期・安定的な代理店契約、保険募集委託契約があることを条件として付すことにより、郵便局会社への業務委託が長期にわたり担保され、郵便局における貯金・保険サービスの提供が確保されます。
その後においても、郵便局ネットワークの重要性にかんがみ、全国一括の代理店契約、保険募集委託契約が継続され、基本的にはこれに基づき各郵便局において引き続き貯金・保険サービスが提供されます。
さらに、仮に過疎地などの一部の郵便局で貯金、保険のサービスの提供が困難となる場合には、社会・地域貢献基金を活用してサービスの提供を確保することとしたところであります。これらにより、郵便局における貯金、保険のサービスの提供が確保されるものと考えております。
こうしたサービスの提供については、衆議院における修正において、郵便局会社が営むことができる業務のうち、銀行業及び生命保険業の代理業務について具体的に法律上明示することとされ、これにより郵便局会社の業務としての位置付けの明確化が図られたものと考えております。
移行期間後の長期にわたり安定的な代理店契約を結ぶことができるのかというお尋ねですが、銀行免許、生命保険業免許の条件として付される代理店契約、保険募集委託契約については、郵便貯金銀行、郵便保険会社の円滑な業務運営と健全性を確保する観点から、最低限、移行期間をカバーするものであることが求められる一方、移行期間を上回る長期の契約を締結することは特に妨げる必要はないと考えております。
したがって、具体的な契約期間を移行期間を超えて十年超とすることは、免許条件を満たしている限り、郵便貯金銀行、郵便保険会社及び郵便局会社の経営判断により可能と考えております。
基金に係る法案修正及び基金の交付の仕組みについてでございますが、基金に関しましては、政府提出法案では、一兆円であれば資金交付に充てる運用益が不足することは基本的にないものと考え、企業一般の配当の動向を考慮して政令で定めるところにより計算した金額を一兆円に達するまで積み立てなければならないと規定しておりました。
しかしながら、一兆円を超える積立ても経営判断により可能であり、政府・与党合意でも、基金は地域、社会の様々な要望への対応に万全を期するため一兆円の積立てを行うが、それが完了した後においても、それまでと同様の規律ある配当の下で利益の留保と運用益の確保に努め、それらを基金へ組み入れることにより総額二兆円に達するまで積立てを継続できるものとするとされていたところであります。
衆議院における修正は、このような趣旨において法律の条文上明確化を図られたものであると理解しており、政府としてはこのような議論の経過等を真摯に受け止め、誠実に対応してまいります。
また、地域貢献業務については、御指摘のように地域の声を十分に聞いて実施していくことが重要と考えております。このため、郵便局会社が地域の有識者等の意見を聞き、これを尊重して計画案を策定した上で、主務大臣が認可の際にその適切性をチェックすることとしております。郵便局会社は、認可を受けた計画に従って、社会・地域貢献基金から地域貢献業務の実施に必要な資金の交付を受けて地域貢献業務を実施することとなります。こうした仕組みにより、地域にとって必要性の高い貯金、保険のサービスの提供が確保されることになると考えております。
議決権の連続的保有を明記する衆議院における修正についてでございますが、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の連続的保有に関しては、衆議院における法案審議においてもいろいろと議論があったところでありますが、政府としては、これまでも御説明してきたとおり、郵便貯金銀行、郵便保険会社が民間金融機関と同一の条件で自由な経営を行い、より質の高い多様なサービスの提供を可能とするとの民営化の趣旨を徹底するためには、信用が競争上決定的に重要な金融業務においては国の信用、関与を完全に断ち切る必要があり、このため、移行期間中に両社の全株式を処分することと、一方、移行期間終了後についてはこれらの会社は普通の銀行、普通の保険会社となるので、他の金融機関の株式を取得するのと同様に、持ち株会社が速やかに、独占禁止法や銀行法等の一般的な法規制の下、特殊会社の規制の範囲内で両社の株式を市場から取得することにより、結果的に株式の連続的保有が生じることを妨げないこととしております。
この株式の連続的保有を可能とするため、株主総会における権利行使や配当を受ける権利といった株主権を連続して行使することが可能となるよう、郵便貯金銀行、郵便保険会社の定款に株主の権利行使の基準日を定めることを考えているということについて、これまで、政府・与党合意に基づき、衆議院において説明してきたところであります。
衆議院における修正は、株主総会における議決権の行使に関する事項を郵便貯金銀行、郵便保険会社の定款に必ず定めなければならない旨を規定することにより、これまで政府として御説明してきた議決権等の行使の面で、株式の連続的保有を可能とすることを法律上しっかりと担保したものであると理解しております。
政府としては、このような議論の経過等を真摯に受け止め、誠実に対応してまいります。
郵政民営化法第百五条及び第百三十四条の決定後の郵便局会社による郵便貯金銀行の株式の取得についてでございますが、先ほど申し上げたとおり、郵政民営化法案において郵便貯金銀行、郵便保険会社株式について完全処分を求めている理由は、信用が決定的に重要である金融事業において、イコールフッティングを確保する観点から、国の信用、関与を完全に断ち切る必要があるとの考え方に基づくものであります。持ち株会社の一〇〇%子会社である郵便局会社が移行期間中に郵便貯金銀行等の株式を保有することは、郵政民営化法のこのような趣旨に反することとなります。
ただし、イコールフッティングの観点から問題がないと認められた結果、御指摘の郵政民営化法第百五条又は第百三十四条の決定がなされた後は、郵便貯金銀行、郵便保険会社は普通の銀行、普通の保険会社となります。この場合、郵便局会社が他の民間金融機関と同様に、密接な取引関係を有する郵便貯金銀行、郵便保険会社株式を、特殊会社としての性格を考慮しつつ、経営判断により保有することは可能であり、民間の慣行に照らしても問題とすべきことではないと考えております。
もとより、移行期間終了後は、郵便貯金銀行、郵便保険会社は普通の銀行、保険会社となることから、特殊会社としての性格を考慮しつつ、経営判断により他の民間金融機関と同様な株式保有は可能であり、その結果、株式の連続的保有の生ずることは妨げられません。
民営化会社の経営の自由度の確保に関する取組及び預入限度額・保険金額の限度額に関する政令の改正についてでございますが、移行期間中の民営化会社の業務拡大についてはイコールフッティングと経営の自由度のバランスを取ることが重要であります。このような観点から、郵政民営化関連法案においては、一方で民業圧迫にならないよう、他方で経営が順調にいくよう、郵政民営化委員会を活用し、透明、公正なプロセスの下、新規業務に進出し、円滑に民間経済の中に吸収統合されるよう制度設計しております。
また、郵便貯金銀行の預入限度額、郵便保険会社の保険金額の限度額については、郵貯、簡保の巨額な資金が無理なく市場に溶け込むよう、民間金融機関とのイコールフッティングの状況及び郵便貯金銀行と郵便保険会社の経営状況等を勘案して、民営化委員会の意見を聴取した上で政令で定めることとなっております。
このような透明、公正なプロセスの下、郵便貯金銀行や郵便保険会社の限度額を改定していく制度的枠組みとなっておりますが、これに加えて、規制がより実情を踏まえた適切なものとなるためには、当事者である郵便貯金銀行や郵便保険会社の経営者の意見を十分に聴取することが重要であると認識しており、政府としても適切に対応してまいります。
第三種、第四種郵便物についてでございますが、郵便事業については、国民生活に密着した基礎的な通信手段として重要な社会的機能を有してきたところであります。民営化後の郵便事業会社が引き続きこのような機能を有するサービスを提供していくことが必要だと考えております。第三種、第四種郵便物については、社会、文化の発展や福祉の増進等という観点から、現在、政策的低料金とすることを義務付けております。民営化後も、改正郵便法案により、郵便事業会社に同様の義務付けを行うこととしております。
また、災害時における郵便料金の免除等については、現在、公社において必要があると認めるときはこれを行うことができる旨の現行郵便法の規定に基づき、公社が企業の社会的貢献として行っているものであります。民営化後も郵便法の当該規定は存置することとしており、引き続き郵便事業会社がその企業の社会的貢献として行うこととなると考えております。
さらに、郵便事業株式会社法案において、特に第三種、第四種郵便物のうち盲人用の点字、録音物等やひまわりサービスといった社会福祉の増進に寄与する郵便サービス及び災害時における郵便料金の免除等については、社会・地域貢献基金からその実施に必要な資金を受けられることとし、確実かつ安定的な実施を確保することとしております。
これらの措置により、郵便の社会貢献サービスの提供が確保され、国民利用者の利便性がしっかりと維持される仕組みとしております。
民営化委員会による見直しについてでございますが、郵政民営化は国民の利便の向上及び経済の活性化を図るために行われるものであります。民営化委員会は、こうした目的に照らして、経営形態の在り方を含めた郵政民営化に関する事項全般について何らかの問題が生じているようなときには、問題点についても見直しを行うこととなると考えられます。
なお、当然のことながら、民営化委員会における総合的な見直しは、郵政民営化法に定められた理念、方向に即して行われるべきものであります。(拍手)
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