簗瀬進の発言 (憲法調査会)

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○簗瀬進君 国民投票制度について発言をさせていただきたいと思います。
 まず冒頭に、民主党の憲法調査会でのこの問題についての議論の現状について御報告をさせていただきたいと思います。
 後に述べる論点整理について述べさせていただきますが、その各論点について、十四の論点がございますけれども、それについての憲法調査会の役員会案が本年の四月二十五日に提示をされまして、現在、憲法調査会の総会で論議を継続をしている段階であるということでございます。したがいまして、論点整理の中身というものについては、我が党の憲法調査会の役員会の了承案ということで御理解を賜ればと思っております。
 さて、国民投票制度全般についての私なりの考え方を述べさせていただければと思っております。
 まず、今、舛添委員からも述べられましたいわゆる立法の懈怠論についてでございます。
 今まで憲法改正手続法が制定されていなかったことをもって国会の立法の懈怠とする論調があるわけでございますが、私は、むしろこれは先輩たちのある意味で深い見識を示していると考えるべきであると思っております。
 かつて、後藤田正晴先生と憲法九条についての議論をさせていただいたことがあります。私は今もって感銘を受けている先生のお言葉でございますが、先生はこうおっしゃられました。アジアの人々に戦争の記憶が薄れるまでは九条改正には手を付けるべきではない。はっきりとこのようにおっしゃっておられたのを今もって思い出した次第でございまして、後藤田先生には、間違いなく憲法改正の高まりが国民の間に、この熟度が高まっていくということを長期的な展望で見定めていくべきであるといった考えがあったということが分かってくるだろうと思います。
 今まで国会が手続法を定めてこなかったということについては、改正の必要性を感じる国民の論調を慎重に見極めながら手続法の制定を考えるといった、国会のある意味での深い良識を示していたものと考えるべきであると思います。
 そこで、手続法の重要性について述べさせていただきたいと思っております。
 私は、実体法と手続法は不即不離の関係にあるということをもう一回確認をすべきなんではないのかなと思っております。民主主義の本質は、よくデュー・プロセス・オブ・ロー、適正な手続と、このような言われ方するわけでありますけれども、改正手続法というのは国民の憲法改正権限の発動の手続を定めるものでありまして、法秩序における位置付けというものもむしろ、憲法規範と法規範という、こういうヒエラルキーがあるわけでありますけれども、憲法規範と一般の法規範の中間に位置付けられるべきものである。すなわち、ある意味では準憲法規範としての取扱いを手続法にしていくのが正しいんではないのかなと考える次第でございます。
 今申し上げましたように、法秩序のヒエラルキーにおいて憲法改正手続法というのは通常の法律と随分違って重い存在だと、このように考えてみたときに、形式的には憲法五十九条の衆議院の再議決の対象となるのが法律ではありますけれども、この憲法改正手続法については、むしろ憲法五十九条、衆議院の三分の二による再議決の対象にはならないと、このように考えるべきなんではないのかな、民主主義の原点である国民の憲法改正権限の発動様式を定める準憲法規範として、憲法五十九条の適用から除外されるべきであると私は考えるべきだと思います。
 三番目に、改正手続法を軽視すべきではないと、このように申し上げたいと思います。
 憲法改正手続は、時には事実上、憲法改正の方向性を決めかねない側面も持っています。しかも、法形式は法律ということでありますから、場合によっては先ほどの衆議院の三分の二の再議決の問題も出てくるということもあるわけでございまして、もし手続法の審議過程で数の論理のみがまかり通れば、その後の憲法改正行為自体の失敗をある意味で暗示することになる、民主主義の崩壊につながる危険を招くことになるということをここで強調しておきたいと思う次第でございます。
 次に、手続法の論議に果たすべき衆参の役割について考えてみたいと思います。
 私は、今参議院においては調査会方式でこの国民投票制度についての論議をスタートさせるわけでございまして、そのことに心から敬意を表したいと思っております。一方で、衆議院は憲法調査特別委員会をつくり、法案の提出権を認めた上での論議のスタートと、ここに衆と参のある意味での性格の違い、あるいは期せずしての役割分担があるのではないのかなと、このように意識いたしております。
 衆議院はある意味で論点提起型であり、リーダーシップも、国民をある意味で引っ張っていくといったそういう牽引車のような役割をすることが期待をされるかもしれませんけれども、私はこのような衆議院の論点提起型に対して参議院はむしろ論点を深化させていく、このような役割を演ずるべきなのではないのかなと思っておる次第でございます。
 そして、この手続法を議論する場合に、特に啓蒙・啓発活動、国民の理解の重要性というようなものを強調したいと思っております。
 手続法を議論する意味は、もちろん第一番目は改正行為に必要な手続を策定をするということでありますが、もう一つ、これはある意味ではもっと重要なことだと思うのは、国民が手続法を議論する過程で憲法改正の具体的なイメージを持つということだと思っております。参議院は、特にこの手続法を議論をしながら、ある意味での憲法改正に至る思考のトレーニングといいますか、それをしていただくという、そういう大きなプロセスの意味を持っているんではないでしょうか。参議院は特にこの側面を重視すべきだと思っております。手続法を検討する過程での、場合によっては国民の大きな参加、あるいは手続法の議論の中での国民シンポジウムの開催、これも行って、本当に手続法の議論を通しながら、やがてしっかりと考えていただかなければならない憲法改正についての一種の訓練を行っていく、こういう側面を非常に大切にすべきだと考えております。
 いずれにしても、手続法については拙速な議論を慎んでいくべきであると、このように思っております。
 さて、以上のような前提を述べさせていただいた上で、現在、民主党の憲法調査会の総会にかかっております役員会案を御紹介をさせていただきたいと思います。論点は、先ほど申し上げたように一から十四まで十四の項目にまたがっておりまして、時間内にどれだけ御説明できるか分かりませんけれども、できるだけ頑張ってみたいと思っております。
 まず、論点の第一番目は、国民投票制度がカバーする範囲ということでございます。
 通常、当然、憲法改正の手続法としての側面も持つわけでございますけれども、それと同時に、ある意味で広く国民の積極的な政治参加を考える直接民主制の補完的導入というこの余地も、この国民投票法の議論をしながらしっかりと考えていくべきなんではないのかな。例えば、憲法改正に限らず、皇室典範、家族制度の在り方あるいは生命倫理など、国民の重大な関心事や政策テーマについても国民投票を行うべきであると、このように考えておる次第でございます。これについては、必ずという必要的投票もあるかもしれませんが、任意的投票ということを容認をするという方向もあると。この辺については若干詰まってはおらない部分もあるんですけれども、そんなことを積極的に、直接民主制を補完する新たな制度というようなものもこの議論を通じて検討すべきだと、このように考えております。
 論点の二でございますけれども、憲法改正をする際に限界があるのではないかと、こういうふうな考え方であります。
 私ども民主党の役員会では、憲法改正の限界をやっぱりしっかりと認めておいた方がいいだろうと。平和主義、国民主権あるいは憲法改正規定、これらについては根本規範としての憲法の中核を成す部分でありまして、これについては改正の対象から除外をすべきであろうと、このように考えております。
 論点の三は、発案権の所在でございます。
 もう御案内のとおり、憲法九十六条一項は、憲法改正の場合に国会による発案ということを前提にいたしております。すなわち、発案権は国会が独占をする形になっておるわけでございますけれども、今後、国民による発案も一定の条件下で認めるべきなのではないのかな。これは、先ほどの憲法改正の限界論の中に憲法改正手続を含めた場合に若干抵触をする部分も出てくるかもしれませんけれども、いずれにしても、憲法改正権は国民が持っている民主主義の原点の権利であると。このように考えてみたときに、国会にのみ憲法改正の発案権を独占をさせておくよりも、むしろ国民による発案も一定の条件下で認めた方がよいと、このように考えるべきだろうというのが私どもの役員会案でございます。
 また、内閣の発案権、憲法改正について内閣の発案権を通常の法律と同じように認めるべきだという議論もありますけれども、これについては、通常の法律とは違った扱い、もっと重い国民の根源的な権限の発動であると。このように考えてみたときに、まあ議院内閣制を前提にした内閣が憲法改正の発案権を持つということは相入れないんではなかろうかというのが私どもの役員会の結論でございます。
 論点の四は、憲法改正の方式でございます。
 これについては、一括提案や個別提案とも絡んでくる話でございますけれども、憲法改正のやり方については、前文も含めて日本国憲法の表題から後の部分すべて改正をしようという全面改正方式、それから、前文、それから各条項の後に修正条項を入れていくという修正条項方式等がありますけれども、私たち民主党の役員会では、むしろ現行の法律のように、実際、一つ一つの逐条改正といいますか、逐条改正で法律の中にそれを溶け込ませていくといった、まあ書換え改訂方式などと言われておりますけれども、そういうやり方がやっぱり前後の脈絡がよく分かって、国民に近い憲法を実現する上では最もふさわしい方法なのかなと、このような結論を出しております。
 また、総議員の意義ということでございますけれども、本当に残り時間が大変少なくなってまいりましたので、あと重要な点を若干ピックアップをさせていただきます。
 まず、先ほど舛添さんもおっしゃられておりましたけれども、国政選挙との政治的関係についてはこれを政局にしないと、通常の国政選挙と憲法改正の手続は合わせないということで私どもも一致をいたしております。
 それから、国民投票についての運動規制でございますけれども、これは公職選挙法の適用は原則的に認めるべきではないと。むしろ、憲法改正は正に民主主義の一番原点の、国民の大変積極的な、主体的な活動であるということを前提にすれば、様々な、例えば自らポケットマネーを切りながら、皆さんにごちそうしながらということになりますと、これは公職選挙法では当然、買収、供応というような形になるんですけれども、そんなえげつない形でなければ、非常にオープンな形で、様々な議論が国民の間でわき起こるということを前提にすると、公職選挙法の適用というようなものを原則考えずに、いわゆる憲法改正の国民投票手続にふさわしいかふさわしくないかという、そういう別の観点でこのルールを作っていった方がいいだろうと、このように思っておりますし、またマスコミ等による報道もどんどんどんどん積極的にやっていただきたいと、このように思っております。
 また、国民投票の方式については、個別投票とかあるいは一括投票がありますけれども、私どもは個別投票方式がよろしいだろうと、このように考えております。
 さらには、国民投票権者の範囲でございますけれども、十八歳以上の日本国民とすべきだろうと、このように考えております。
 その他、たくさんまだ尽きせぬ論点があるんですけれども、これは今後の議論の中でおいおい御説明をさせていただければと思っております。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 簗瀬進

speaker_id: 23746

日付: 2005-10-12

院: 参議院

会議名: 憲法調査会