仁比聡平の発言 (憲法調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
本特別国会に当たり、衆議院では、憲法改定の国民投票法制を審議する憲法特別委員会の設置が、自民、民主、公明の賛成によって強行されました。
自民党は、国民投票法が制定されていないのは国会の怠慢だと、国民投票法制定が緊急課題であるかのように、公明党も昨年十二月の与党協議会で同法の成立を図ることで合意してきました。民主党も、今年三月には、自公民三党の担当者で国民投票法をテーマにした協議の場を設けることについて話し合ったと伝えられています。
しかし、立法不作為というのは、法の不整備により国民の具体的権利侵害があるときに問題とされるものです。今、国民の憲法改正権が侵害されているから国民投票法制定を強く要求するという世論が国民の中から起こっているでしょうか。
時事通信の七月の調査によれば、国民投票法を準備しておいていいという方は二九%にすぎず、国民の意見を十分聞いてから法案を作るべきだが四二%、憲法改正案が固まってから準備すればいいという方は一三%でした。
ほうはいと沸き起こる声は改憲ではなく、憲法を守れの声であり、国民投票法制定反対の声であります。これは、憲法は一体だれのものなのかという問題でもあります。国会の怠慢という議論は当たりません。むしろ、改憲を求める国会議員が立法不作為論を唱えるのは、改憲の準備を整え、改憲をねらう自らの動きの根拠とし、あるいは改憲への政治的雰囲気づくりをねらうものと批判されても仕方がないことだと私は強く申し上げたいと思います。
衆議院のこれらの動きにあたかも連動するかのように、当参議院の憲法調査会が国民投票制度を議題として本日再開をされたことも理解に苦しむことです。
憲法調査会は、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うことを目的とし、議案提出権を持たない調査任務に限定した機関となりました。だからこそ、調査会規程は、調査を終えたときは、調査の経過及び結果を記載した報告書を作成し、議長に提出すると定めており、この調査会の任務に照らせば、報告書の議長への提出をもって任務は終了し、幕を閉じるべきです。
最終報告書の取りまとめ内容や報告の仕方について我が党は強く異議を唱えましたが、いずれにしても最終報告書は提出をされました。にもかかわらず、調査を再開し続行することは、調査会の在り方をなし崩しにゆがめるものではないでしょうか。
我が党は、憲法改定国民投票法の制定の動きに強く反対してまいりました。なぜなら、このねらいが日本を海外で戦争する国につくりかえる九条改憲に向けた条件づくりにあることは明白であり、その意味で改憲への地ならしにほかならないからです。
国民投票法案の問題を今年から来年にかけての具体的な政治日程にしようとする動きが九条改憲という目的と一体不可分に結び付いていることは、この間、自民、民主の両党が加速させている具体的な改憲案づくりの動きによってはっきり示されました。
八月一日に発表された自民党の新憲法第一次案は九条、とりわけ九条二項の全面的改廃をねらうものです。憲法第二章の表題から戦争放棄をなくし、自衛隊を自衛軍として憲法上明記し、その自衛軍は自衛のために必要な限度での活動のみならず、国際協調の名の下に海外での活動を憲法上の任務としており、極めて重大です。民主党の前原新代表も、九条二項の削除、自衛権の明記を主張し、この点で足並みをそろえようとしています。
我が党は、あらゆる改憲論の焦点が九条改定に置かれ、中でも戦力不保持と交戦権の否認を規定した二項を変え、自衛軍あるいは自衛隊の保持を明記することが共通の主張となっていることをこれまで厳しく指摘をしてきました。この方向で改憲がなされればどうなるか。その結果は、自衛隊の現状を憲法で追認することにはとどまらない重大なものとなります。
戦後、自民党政治は、憲法九条に違反して自衛隊をつくり、増強してきましたが、戦力不保持という明文規定が歯止めになって海外での武力行使はできないという建前までは崩すことができませんでした。九条二項の改変はこの歯止めを取り払い、海外で戦争する国に日本を変えることにほかなりません。すなわち、九条二項を廃棄することは、戦争放棄を規定した九条一項を含め、九条全体を廃棄することになります。
例えば、九条改正に反対と答えた方が六二%、九条は日本の平和に役立ってきたと答えた方が八〇%という、平和と良識の声が多数を占める結果となった最近の世論調査があります。ここでも明らかなように、自衛隊の現状を憲法に書くだけの改憲なら賛成と考えている人々も含め、日本国民の圧倒的多数は海外での武力行使のための改憲には反対です。
憲法を守り生かそうという国民運動は、この間目覚ましい発展を遂げつつあります。九条の会は発足から一年余り。全国各地で行われた講演会の成功とともに、草の根での九条の会は三千を超える広がりを示しています。今ここで、広く大同団結が広がっていることを国会は重大に受け止めるべきです。この国民世論に背を向け、的を得た批判を恐れごまかそうとする小泉首相のレトリックは、国の進路を左右する重大問題について国民の判断を誤らせようとするもので重大です。
首相は、本国会の答弁でも、戦争をするために憲法を改正するわけじゃない、なぜ九条を変えれば戦争をすることになるのか分からないと語気を荒げてみせ、憲法の中に自衛隊の位置付けが明確でない、自衛軍を持つことは憲法違反でないというような規定は設けなければならないと述べて、自衛隊の認知のみが九条改憲の意味であるかのように強弁をしています。
しかし、これは小泉政権が世界の中の日米同盟路線の下で推し進めるイラク戦争という戦場への自衛隊の派兵継続と、海外派兵の本来任務化の企て、米軍と共同対処できる自衛隊の実戦部隊化と戦争体制、米軍支援体制の整備、米軍再編の下での在日米軍基地の再編強化など、戦争のリアリティー、軍隊、基地の現実と憲法改悪をあえて切り離してみせる詭弁にほかなりません。
この世界の中の日米同盟路線と表裏一体となり、自衛隊の明記や集団的自衛権の行使、国防の責務など、海外での武力行使は絶対にできない歯止めとなっている九条を取り払おうとのねらいがアメリカから発生したものであることは、二〇〇〇年十月のアーミテージ報告であからさまにされました。アーミテージ・レポートは、日本は引き続き合衆国のアジア関与のかなめ石であるだけでなく、日米同盟はアメリカの世界規模の安全保障戦略の中心を占めていると言い、それほど重大な日米同盟であるにもかかわらず日本が集団的自衛権を否定していることが同盟協力を束縛するものとなっていると述べ、同氏は、憲法九条は日米同盟の邪魔者だとまで露骨に改憲を迫っています。
アメリカ国防総省のジョン・ヒル日本担当上級部長は、本年七月十九日、都内の講演で、在日米軍再編に関連してこう言っています。驚くべきことは、戦後六十年たった今でも多くの日本人がそうした道、すなわち自衛隊の役割拡大を明示した防衛計画大綱などが適切かどうか疑っていることだ、いかなる国家の防衛にとっても集団的自衛権が憲法上許される範囲を超えるかどうかという議論は全くばかげたものだなどと口を極めています。
日本経団連も、一月十八日の「わが国の基本問題を考える」の中で、九条はアメリカとの同盟協力の足かせであるとして攻撃をしています。
このような世界の中の日米同盟路線が猛威を振るうなら、更に泥沼化を深めるイラク戦争のように、平和と公正、安定と繁栄を願う人類の要請を裏切って、国際秩序は惨たんたる状況を呈することになることは必至です。
九条二項の歯止めとしての意義について、九〇年十月十二日、内閣法制局は重要な国会答弁を行いました。そこでは、自衛隊は戦力でない、すなわち自衛のための必要最小限度の実力組織であるから九条に反するものではないとの政府の立場の結論として三つのことが述べられています。
第一に、いわゆる海外派兵、つまり武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されないこと。第二に、集団的自衛権は憲法九条の下で許容されている我が国を防衛するための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されないこと。第三に、国連の平和維持活動を行う国連軍についても、その国連軍の目的、任務が武力行使を伴うものであればこれに参加することは許されないこと。この三点です。これは、防衛ハンドブックにも防衛に関する統一解釈として掲載をされていますが、政府自ら政府の立場に立っても九条の極めて重要な大きな歯止めとしての役割を認めたものであり、極めて重要です。
この九条二項を改廃するなら、立ち所にこの内閣法制局の言う歯止めは消失し、解禁をされることになります。すなわち、第一に自衛隊を海外へ、他国の領土、領海、領空に派遣して武力行使をさせること。第二に、同盟国の戦争に参加する集団的自衛権の行使、具体的にはアメリカの戦争に参加して共同作戦に従事すること。第三に、国連の軍事行動、例えば従来許されないとされてきたPKFはもちろん、国連が組織する武力行使すべてへの参加が憲法上可能になるわけです。
さらに、交戦権の否認という憲法原則を改廃することは、伝統的な戦時国際法上交戦国が有する種々の権利、すなわち相手国兵力の殺傷及び破壊、相手国の領土の占領、そこにおける占領行政、中立国船舶の臨検、敵性船舶の拿捕など、これまた国会答弁で憲法上禁じられると政府がこれまで認めてきた行動を憲法上解禁することになります。これらが、戦争をしない国から地球上どこででも戦争をする国への重大な変貌、変質にほかならないことは余りにも明らかです。
多くの国民はこのような改憲に反対しています。私たち国会議員が今力を注ぐべきは、この国民の声に真摯に耳を傾け、憲法をいかに生かすかを真剣に考えることです。それこそが、全国民の代表として憲法を論じ、憲法にかかわる私たち国会議員の憲法尊重擁護義務の重みにかなうものではないでしょうか。
我が党は、国民各層と共同して、広く憲法改悪反対の揺るぎない国民的共同をつくり上げる一翼を担って奮闘する決意を表明し、意見表明といたします。
ありがとうございました。